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2.変化
94.夏休み
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朝、私はトイレに行って愕然とした。
なんとなく胸が張っている感覚はあった。
でもいつもより違和感は少なく、スマホに記録をしているのに、すっかり存在を忘れていた。
たいていの女子なら月に1回はくるもの…生理だ。
どうしよう…。
いや、どうすることもできないんだけど。
確実にプールに被るし、それに…今日は…。
永那ちゃんのためにお昼の準備はしてある。
プレゼントも、喜ぶかはわからないけれど、用意した。
でも彼女が1番欲しているもの…コトは…生理ではできないのでは?と焦る。
直接家に来ると言ってくれたけれど、なんだか申し訳なくなって、早くこの心の重みから解放されたくて、私は駅まで歩いた。
当たり前のように永那ちゃんはもう駅にいて、目が合うと笑ってくれる。
それが余計、申し訳なさを助長させて、顔が引きつる。
永那ちゃんはすぐに気づいて、首を傾げた。
「穂、どうした?」
「ああ…えっと、永那ちゃんに謝らなきゃいけないことがあって…」
「なに?」
私は彼女の肩に手を添えて、彼女の体を傾けさせる。
耳に口を近づけた。
「生理になっちゃった…」
カーッと顔が熱くなって、彼女から距離を取る。
顔を見れなくて、俯く。
「そっかあ。それはしょーがないね」
チラリと彼女を見ると、優しく笑みを浮かべていて、拍子抜けする。
「ガッカリ…しないの?」
「まあ、少しは?でも、べつに穂が悪いわけじゃないんだから」
頭をポンポンと撫でられて、手を握られる。
「おあずけ、だね」
振り向いて、ニヤリと笑う姿に、心を鷲掴みにされる。
「プール、どうしよう?」
「タンポンいれれば大丈夫だよ」
「タンポン?」
「そう。やってあげよっか?」
「うぇ!?な、なんで!?自分でやるよ!」
「初めてだとけっこう大変だけど」
「いい!」
聞いたことはあるけれど、よくわからない物。
みんなどうやってそういうことを知るんだろう?
ネットで調べればすぐにわかることかな?
「穂、お腹痛かったり、具合悪かったりしない?大丈夫?」
「え?うん、大丈夫」
「そっか、よかった」
永那ちゃんがいつも以上に気を使ってくれて、その優しさに心があたたまる。
「穂は生理重くないほう?」
「うん、いつも少し胸が張るくらい。永那ちゃんは?」
「私は酷いときは酷いかな」
「そうなんだ…どのくらい?」
「めっちゃメンタル不安定になるし、1回倒れて痙攣したこともある」
「え!?それ大丈夫なの?」
「まあ、大丈夫っしょ」
永那ちゃんはなんてことないみたいに言う。
本当なら病院に行ったほうがいいはずなのに。
そんなふうに話をしていたら、あっという間に家につく。
「永那ちゃん!」
「誉君、おはよ」
「おはよ」
誉が出迎えてくれる。
永那ちゃんは少し誉に慣れたようで、私にするように、頭をポンポンと撫でていた。
「ねえ、夏休み毎日家来るって本当?」
永那ちゃんが左眉を上げて、私を見る。
私が首を傾げると、永那ちゃんはプッと笑った。
「毎日来ていいの?」
「いいよ、どうせ暇だし」
「誉君は友達と遊ばないの?」
「遊ぶよ。たまに家に来るかも。そしたらみんなで遊べばいいよね?」
「そうだね」
永那ちゃんが楽しそうに笑う。
「水曜さ、みんなでプール行くんでしょ?…俺も行きたかったなあ」
「お、一緒に行くか?」
「え!?いいの!?」
「誉」
私が誉を睨むと、肩を落としてしょんぼりする。
終業式の日、家に帰ってからプールに行くと伝えたら、誉は自分も行きたいと騒ぎ始めた。
近所の小さなプールにしか連れて行ってあげたことがないし、寂しい思いをさせるのは罪悪感があったけれど、私も初めてのことで。
そんな大切な日に誉を連れて行くのは、少し躊躇われた。
私だって純粋に楽しみたい。
だから前と同じ要領で、誉は連れていけないと伝えてあった。
永那ちゃんは私と誉を交互に見て、笑う。
「じゃあ、今度3人で海にでも行く?」
「マジ!?行く!!」
「よーし!決定!」
誉が両手をあげて喜ぶ。
でもすぐに「あ」と、何かを思ったようで、永那ちゃんを見る。
「あのさ…優里ちゃんと佐藤さんは行かないの?」
「2人も呼びたい?」
誉は少しモジモジしながら頷いた。
永那ちゃんと目が合って、2人で笑い合う。
永那ちゃんが誉の肩を抱く。
「おいおい、どっちが好みなんだ?」
永那ちゃんがオジサンみたいな顔をしている。
「えぇっ…んー…どっちも好き」
「ふぁーっ!二兎を追う者は一兎をも得ず、だぞ!」
「なにそれ?」
永那ちゃんが膝をついて項垂れる。
「2つのものを同時に手に入れようとしても、結局どっちも得られないって意味だ。いいか?欲張りはいかん。どっちかに絞るんだ」
誉が神妙な面持ちで、永那ちゃんの話を聞いている。
そんなこと、真剣に聞かなくていいのに…。
「今、あの2人に恋人はいない。…誉、チャンスだぞ」
「えぇ!?そ、そうなの?」
なんとなく胸が張っている感覚はあった。
でもいつもより違和感は少なく、スマホに記録をしているのに、すっかり存在を忘れていた。
たいていの女子なら月に1回はくるもの…生理だ。
どうしよう…。
いや、どうすることもできないんだけど。
確実にプールに被るし、それに…今日は…。
永那ちゃんのためにお昼の準備はしてある。
プレゼントも、喜ぶかはわからないけれど、用意した。
でも彼女が1番欲しているもの…コトは…生理ではできないのでは?と焦る。
直接家に来ると言ってくれたけれど、なんだか申し訳なくなって、早くこの心の重みから解放されたくて、私は駅まで歩いた。
当たり前のように永那ちゃんはもう駅にいて、目が合うと笑ってくれる。
それが余計、申し訳なさを助長させて、顔が引きつる。
永那ちゃんはすぐに気づいて、首を傾げた。
「穂、どうした?」
「ああ…えっと、永那ちゃんに謝らなきゃいけないことがあって…」
「なに?」
私は彼女の肩に手を添えて、彼女の体を傾けさせる。
耳に口を近づけた。
「生理になっちゃった…」
カーッと顔が熱くなって、彼女から距離を取る。
顔を見れなくて、俯く。
「そっかあ。それはしょーがないね」
チラリと彼女を見ると、優しく笑みを浮かべていて、拍子抜けする。
「ガッカリ…しないの?」
「まあ、少しは?でも、べつに穂が悪いわけじゃないんだから」
頭をポンポンと撫でられて、手を握られる。
「おあずけ、だね」
振り向いて、ニヤリと笑う姿に、心を鷲掴みにされる。
「プール、どうしよう?」
「タンポンいれれば大丈夫だよ」
「タンポン?」
「そう。やってあげよっか?」
「うぇ!?な、なんで!?自分でやるよ!」
「初めてだとけっこう大変だけど」
「いい!」
聞いたことはあるけれど、よくわからない物。
みんなどうやってそういうことを知るんだろう?
ネットで調べればすぐにわかることかな?
「穂、お腹痛かったり、具合悪かったりしない?大丈夫?」
「え?うん、大丈夫」
「そっか、よかった」
永那ちゃんがいつも以上に気を使ってくれて、その優しさに心があたたまる。
「穂は生理重くないほう?」
「うん、いつも少し胸が張るくらい。永那ちゃんは?」
「私は酷いときは酷いかな」
「そうなんだ…どのくらい?」
「めっちゃメンタル不安定になるし、1回倒れて痙攣したこともある」
「え!?それ大丈夫なの?」
「まあ、大丈夫っしょ」
永那ちゃんはなんてことないみたいに言う。
本当なら病院に行ったほうがいいはずなのに。
そんなふうに話をしていたら、あっという間に家につく。
「永那ちゃん!」
「誉君、おはよ」
「おはよ」
誉が出迎えてくれる。
永那ちゃんは少し誉に慣れたようで、私にするように、頭をポンポンと撫でていた。
「ねえ、夏休み毎日家来るって本当?」
永那ちゃんが左眉を上げて、私を見る。
私が首を傾げると、永那ちゃんはプッと笑った。
「毎日来ていいの?」
「いいよ、どうせ暇だし」
「誉君は友達と遊ばないの?」
「遊ぶよ。たまに家に来るかも。そしたらみんなで遊べばいいよね?」
「そうだね」
永那ちゃんが楽しそうに笑う。
「水曜さ、みんなでプール行くんでしょ?…俺も行きたかったなあ」
「お、一緒に行くか?」
「え!?いいの!?」
「誉」
私が誉を睨むと、肩を落としてしょんぼりする。
終業式の日、家に帰ってからプールに行くと伝えたら、誉は自分も行きたいと騒ぎ始めた。
近所の小さなプールにしか連れて行ってあげたことがないし、寂しい思いをさせるのは罪悪感があったけれど、私も初めてのことで。
そんな大切な日に誉を連れて行くのは、少し躊躇われた。
私だって純粋に楽しみたい。
だから前と同じ要領で、誉は連れていけないと伝えてあった。
永那ちゃんは私と誉を交互に見て、笑う。
「じゃあ、今度3人で海にでも行く?」
「マジ!?行く!!」
「よーし!決定!」
誉が両手をあげて喜ぶ。
でもすぐに「あ」と、何かを思ったようで、永那ちゃんを見る。
「あのさ…優里ちゃんと佐藤さんは行かないの?」
「2人も呼びたい?」
誉は少しモジモジしながら頷いた。
永那ちゃんと目が合って、2人で笑い合う。
永那ちゃんが誉の肩を抱く。
「おいおい、どっちが好みなんだ?」
永那ちゃんがオジサンみたいな顔をしている。
「えぇっ…んー…どっちも好き」
「ふぁーっ!二兎を追う者は一兎をも得ず、だぞ!」
「なにそれ?」
永那ちゃんが膝をついて項垂れる。
「2つのものを同時に手に入れようとしても、結局どっちも得られないって意味だ。いいか?欲張りはいかん。どっちかに絞るんだ」
誉が神妙な面持ちで、永那ちゃんの話を聞いている。
そんなこと、真剣に聞かなくていいのに…。
「今、あの2人に恋人はいない。…誉、チャンスだぞ」
「えぇ!?そ、そうなの?」
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