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2.変化
93.友達
「あれ?あたし達、お邪魔だったかも」
佐藤さんがニヤリと笑いながら目の前に立った。
「優里、そこあけろ」
永那ちゃんが私と優里ちゃんの間にお尻をねじ込んでくる。
気づけば永那ちゃん達の家の最寄り駅で、既に電車のドアが開いていた。
私、永那ちゃん、優里ちゃん、佐藤さんの順で座る。
永那ちゃんは黒のスキニーに、ベージュの半袖の襟付きシャツを着ていた。
今のところ、永那ちゃんは黒のスキニーパンツとテーパードパンツしか履いているところを見たことがないけれど、この2着を着まわしているのかな?
足元でキラリとお揃いのアンクレットが光って、心がふわふわする。
佐藤さんはアイボリーのシアーパフスリーブのブラウスに、白のデニムを着ていた。
肌が透けて見えていて、つい彼女の胸元に目がいく。
「おはよう、穂」
永那ちゃんの爽やかな笑顔に、胸がキュッとしまる。
「おはよう、永那ちゃん」
「今日も可愛いね」
頭を撫でられて、ボッと顔が熱くなる。
「永那…よくそんな爽やかに言えるよね…」
優里ちゃんの視線が痛い。
どんな水着がいいか、みんなでスマホを眺めながら話し合っていると目的地についた。
水着の特設コーナーがあって、私達は一緒に見て回る。
「穂!これは!」
永那ちゃんが持ってくるものはどれも布面積の小さいものばかりで、最初は苦笑して断っていたけれど、そのうち無視するようになった。
しょんぼりしているから、こっそり耳打ちする。
「そんなにクラスメイトに、私の肌を見せたいの?」
永那ちゃんの目が見開いて、耳が真っ赤に染まる。
それからは真面目に選んでくれるようになって、ワンピースタイプのものや、一見普通の服に見えるようなタンキニといった種類の水着を探してきてくれた。
店員さんに試着を勧められて、3人とも何着か試着した。
永那ちゃんが見たいと騒ぐから見せると、しゃがみこんで顔を隠していた。
「最高すぎる…」
スマホで写真を撮ろうとするから、その前にカーテンを閉めた。
店員さんに注意されていて、カーテン越しに笑ってしまう。
気に入った物を各々購入して、他のお店を見て回る。
心なしか、通り過ぎる人の視線を感じる。
特に男性が多い気がして、よく観察してみると、みんな佐藤さんを見ているようだった。
永那ちゃんと優里ちゃん、当の本人の佐藤さんも何も気にしていないみたいだった。
「こんなのいつものことだから」
佐藤さんが冷めた目を私に向ける。
永那ちゃんは首を傾げる。
優里ちゃんは笑いながら「最初はびっくりするよねー」と共感してくれる。
「千陽も永那も生まれながらにして恵まれた顔面だから、人から見られるのは慣れっ子なんだよね。永那は髪切ってから女の子からの視線が増えた気がする」
永那ちゃんは「そうかな?」なんてとぼけていた。
優里ちゃんが前に“穂ちゃんがいてくれてよかった”と言ったけど、私の方こそ優里ちゃんがいてくれてよかったと心底思う。
「去年みんなで海行ったときなんて、ホントすごかったんだよ。ナンパの数々が」
優里ちゃんが少しゲッソリする。
私は苦笑しながら(そういえば、永那ちゃんはどんな水着なんだろう?)なんて考えた。
4時前には電車に乗り込んで、帰途につく。
行きと同じ順番で座り、永那ちゃんにそっと手を握られた。
慌てて優里ちゃんと佐藤さんを見たけど、2人は楽しそうに話していて、こちらを向いていない。
私がホッとして握り返すと、指が絡まった。
そのぬくもりにドキドキして、手元を見つめた。
今更なにを…とも思うけれど、まだ堂々といられるほどの度胸はなかった。
永那ちゃんを見ると、優しく笑みを浮かべていた。
彼女の唇が動く。
何かを伝えたいことはわかるけど、読み取れない。
彼女はそれを察して、私の耳に唇を近づける。
「明日、楽しみだね」
小声で言われて、久しぶりの感覚に背筋がゾワッとした。
あたたかい息が耳にかかって、少しのくすぐったさもある。
すぐに顔が離れて、永那ちゃんの口角が上がる。
明日…。
永那ちゃんが家に遊びに来る。久しぶりの2人きり。
体が勝手に期待し始める。
心臓の音が、目を覚ましたみたいにドクドクと鳴る。
パッとぬくもりが消える。
何が起きたのかと思って永那ちゃんのほうを見ると、佐藤さんが既に立ち上がっているのが視界に入った。
永那ちゃんも立ち上がって、伸びをする。
「じゃあ、またね」
「また水曜ねー!」
永那ちゃんの笑顔は変わらず優しくて、背を向けられて見えなくなるのが寂しくてたまらなくなった。
それでも電車が発車するまで窓から手を振ってくれることが嬉しくて、手を振り返した。
「永那、少し雰囲気丸くなったなあ」
優里ちゃんが言う。
「そうなの?」
「うん、前はもうちょっと冷めてたというか…全部のことに興味ないみたいな顔してたからさ。あんな楽しそうにしてるのは初めて見るかも」
その言葉に、嬉しくなる。
私は楽しそうにしている永那ちゃんしか知らないけれど、永那ちゃんにとって私が安心できるような存在であれたらいいなと思っていたから。
そうあれているのなら、嬉しい。
優里ちゃんとも駅で解散して、私は水着の入った袋を握りしめた。
プールなんて、中学の授業ぶり。
クラスで行くプールは、かなり大きめのプールらしく、スライダーもたくさんあると聞いた。
4人で行くプールは中規模で、スライダーもあるけれど、海を模したプールがあって、のんびりできるのが特徴らしい。
夏らしいことなんて、誉とお祭りに行ったくらいで、他にはない。
初めて好きになった人と、初めての友達と、プール。
思わず口元が緩んだ。
夏の湿り気をおびた風が、私を包む。
ジワッと汗が滲むから、ハンカチを取り出した。
暑いのは嫌いだったけれど、こんな夏なら悪くないかもしれないと思える。
佐藤さんがニヤリと笑いながら目の前に立った。
「優里、そこあけろ」
永那ちゃんが私と優里ちゃんの間にお尻をねじ込んでくる。
気づけば永那ちゃん達の家の最寄り駅で、既に電車のドアが開いていた。
私、永那ちゃん、優里ちゃん、佐藤さんの順で座る。
永那ちゃんは黒のスキニーに、ベージュの半袖の襟付きシャツを着ていた。
今のところ、永那ちゃんは黒のスキニーパンツとテーパードパンツしか履いているところを見たことがないけれど、この2着を着まわしているのかな?
足元でキラリとお揃いのアンクレットが光って、心がふわふわする。
佐藤さんはアイボリーのシアーパフスリーブのブラウスに、白のデニムを着ていた。
肌が透けて見えていて、つい彼女の胸元に目がいく。
「おはよう、穂」
永那ちゃんの爽やかな笑顔に、胸がキュッとしまる。
「おはよう、永那ちゃん」
「今日も可愛いね」
頭を撫でられて、ボッと顔が熱くなる。
「永那…よくそんな爽やかに言えるよね…」
優里ちゃんの視線が痛い。
どんな水着がいいか、みんなでスマホを眺めながら話し合っていると目的地についた。
水着の特設コーナーがあって、私達は一緒に見て回る。
「穂!これは!」
永那ちゃんが持ってくるものはどれも布面積の小さいものばかりで、最初は苦笑して断っていたけれど、そのうち無視するようになった。
しょんぼりしているから、こっそり耳打ちする。
「そんなにクラスメイトに、私の肌を見せたいの?」
永那ちゃんの目が見開いて、耳が真っ赤に染まる。
それからは真面目に選んでくれるようになって、ワンピースタイプのものや、一見普通の服に見えるようなタンキニといった種類の水着を探してきてくれた。
店員さんに試着を勧められて、3人とも何着か試着した。
永那ちゃんが見たいと騒ぐから見せると、しゃがみこんで顔を隠していた。
「最高すぎる…」
スマホで写真を撮ろうとするから、その前にカーテンを閉めた。
店員さんに注意されていて、カーテン越しに笑ってしまう。
気に入った物を各々購入して、他のお店を見て回る。
心なしか、通り過ぎる人の視線を感じる。
特に男性が多い気がして、よく観察してみると、みんな佐藤さんを見ているようだった。
永那ちゃんと優里ちゃん、当の本人の佐藤さんも何も気にしていないみたいだった。
「こんなのいつものことだから」
佐藤さんが冷めた目を私に向ける。
永那ちゃんは首を傾げる。
優里ちゃんは笑いながら「最初はびっくりするよねー」と共感してくれる。
「千陽も永那も生まれながらにして恵まれた顔面だから、人から見られるのは慣れっ子なんだよね。永那は髪切ってから女の子からの視線が増えた気がする」
永那ちゃんは「そうかな?」なんてとぼけていた。
優里ちゃんが前に“穂ちゃんがいてくれてよかった”と言ったけど、私の方こそ優里ちゃんがいてくれてよかったと心底思う。
「去年みんなで海行ったときなんて、ホントすごかったんだよ。ナンパの数々が」
優里ちゃんが少しゲッソリする。
私は苦笑しながら(そういえば、永那ちゃんはどんな水着なんだろう?)なんて考えた。
4時前には電車に乗り込んで、帰途につく。
行きと同じ順番で座り、永那ちゃんにそっと手を握られた。
慌てて優里ちゃんと佐藤さんを見たけど、2人は楽しそうに話していて、こちらを向いていない。
私がホッとして握り返すと、指が絡まった。
そのぬくもりにドキドキして、手元を見つめた。
今更なにを…とも思うけれど、まだ堂々といられるほどの度胸はなかった。
永那ちゃんを見ると、優しく笑みを浮かべていた。
彼女の唇が動く。
何かを伝えたいことはわかるけど、読み取れない。
彼女はそれを察して、私の耳に唇を近づける。
「明日、楽しみだね」
小声で言われて、久しぶりの感覚に背筋がゾワッとした。
あたたかい息が耳にかかって、少しのくすぐったさもある。
すぐに顔が離れて、永那ちゃんの口角が上がる。
明日…。
永那ちゃんが家に遊びに来る。久しぶりの2人きり。
体が勝手に期待し始める。
心臓の音が、目を覚ましたみたいにドクドクと鳴る。
パッとぬくもりが消える。
何が起きたのかと思って永那ちゃんのほうを見ると、佐藤さんが既に立ち上がっているのが視界に入った。
永那ちゃんも立ち上がって、伸びをする。
「じゃあ、またね」
「また水曜ねー!」
永那ちゃんの笑顔は変わらず優しくて、背を向けられて見えなくなるのが寂しくてたまらなくなった。
それでも電車が発車するまで窓から手を振ってくれることが嬉しくて、手を振り返した。
「永那、少し雰囲気丸くなったなあ」
優里ちゃんが言う。
「そうなの?」
「うん、前はもうちょっと冷めてたというか…全部のことに興味ないみたいな顔してたからさ。あんな楽しそうにしてるのは初めて見るかも」
その言葉に、嬉しくなる。
私は楽しそうにしている永那ちゃんしか知らないけれど、永那ちゃんにとって私が安心できるような存在であれたらいいなと思っていたから。
そうあれているのなら、嬉しい。
優里ちゃんとも駅で解散して、私は水着の入った袋を握りしめた。
プールなんて、中学の授業ぶり。
クラスで行くプールは、かなり大きめのプールらしく、スライダーもたくさんあると聞いた。
4人で行くプールは中規模で、スライダーもあるけれど、海を模したプールがあって、のんびりできるのが特徴らしい。
夏らしいことなんて、誉とお祭りに行ったくらいで、他にはない。
初めて好きになった人と、初めての友達と、プール。
思わず口元が緩んだ。
夏の湿り気をおびた風が、私を包む。
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暑いのは嫌いだったけれど、こんな夏なら悪くないかもしれないと思える。
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