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2.変化
96.夏休み
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「永那ちゃん、寝たの?」
音量を小さくして、誉はテレビを見ていた。
「うん、12時半くらいに起こそうかな」
今は9時半過ぎだから、3時間は寝かせてあげられる。
できれば食後も寝かせてあげたい。
部屋から持ってきた本を広げて、椅子に座る。
静かな時間が過ぎる。
この家に私と誉以外の人が存在することが不思議で、でも彼女は私の部屋で静かに眠っていて、結局いつも通りの夏休みみたいに過ごしている。
11時半頃になって、私はハンバーグ作りに取り掛かる。
普段はお昼にわざわざハンバーグを作ったりはしない。
今日は永那ちゃんがいるから特別だ。
とは言え、明日からはいつも通り、適当な食事に戻すけれど。
誉は暇になると近所の公園に行くことが多いけれど、今日は永那ちゃんがいるからか、ずっとリビングでゴロゴロしている。
誉がこんなにも私の友人(恋人)に興味を示すとは思いもしなかった。
案外、今まで私に友達がいなかったことを、彼なりに心配してくれていたのかもしれないと思うと、愛おしくも感じる。
12時半過ぎにお昼が出来上がる。
誉は目を輝かせて、椅子に座った。
…そうだ。永那ちゃんは前に誉の席に座っていたけれど、今回は誉の向かいに座ることになるのか。
永那ちゃん、不貞腐れたりしないかな…?
そんな心配をしながら、部屋のドアを開ける。
永那ちゃんはスゥスゥと寝息を立てていた。
起こすところを誉に見られたくないので、ドアを閉める。
「永那ちゃん、ご飯出来たよ」
彼女の髪をそっと撫でてから、カーテンを開けた。
日の光が射し込んで、彼女は眉間にシワを寄せるけれど、起きる気配はない。
仰向けで寝ている彼女の顔が、光に照らされている。
私はゴクリと唾を飲んでから、彼女の唇に唇を重ねた。
体温が混ざり合うまでの間、私は彼女の感触を楽しむ。
そっと唇を離して、彼女の唇に舌を這わす。
自分からこんなことをしているなんて恥ずかしくて、心臓の音がドクドクと鳴る。
でも恥ずかしさ以上に、私は興奮していた。
待ちわびていたかのように、ずっと期待していたかのように、体が動く。
最初はゆっくり、撫でるように舐めた。
最後は、彼女の中に入りたくて、チロチロとくすぐるように触れる。
フフッと彼女が笑って、目を薄く開いた。
「くすぐったいよ、穂」
彼女が起きたことに驚いて離れようとすると、サッとうなじを掴まれる。
そのままグッと引き寄せられて、唇を押し付けるような形になる。
彼女が笑っているから、自然と、出していた舌が彼女の中に入る。
吐息が混ざり合って、唾液も混ざり合って、私達は同じものになろうとする。
くちゅ、くちゅと音が鳴るにつれて、私の腕の力が抜けていく。
枕に手をついている私の腕が、少しずつ曲がっていく。
髪がカーテンのように下りて、太陽の光を遮った。
鼻から抜ける息は熱をおびて、少し息苦しい。
彼女に舌を吸われる。
ただそれだけのことなのに、体はピクッと反応して、腕の力が完全に抜けた。
コツンと額がぶつかって、彼女の上に倒れ込む。
ハァ、ハァと肩で息をしても、呼吸が整わない。
「ご飯?」
彼女が聞くから、私はなんとか頷いた。
永那ちゃんは優しく背中をトントンと叩いてくれる。
少し落ち着いてきて、私は上半身を起こす。
彼女が、髪を耳にかけてくれる。
まだ少し息は荒く、上半身を支える腕は少し震えている。
でも、彼女を見ていたいと思った。
「私、永那ちゃんと、シたい」
気づいたらそんな言葉が口をついていた。
永那ちゃんの目が大きくなって、口角が上がる。
彼女の喉が上下に動く。
「私も」
そう言われて、彼女の照る唇を見つめる。
彼女は私の視線に気づいたようで、上半身を起こしてくれる。
掠める程度に触れ合って、またぬくもりを感じる。
「姉ちゃん?」
一気に心拍数が上がる。
私達は物凄い勢いで距離を取って、正座する。
「あ…ああ、誉」
「永那ちゃん、まだ起きないの?」
ノックもせずにいきなりドアを開けられるとか、そういう不作法な教育をしなくてよかったと、心底思う。
誉はドアのすぐ向こう側に立って、話しているようだった。
「ごめん、誉。今起きた」
「早くしてよー、冷めちゃうよ?」
「お、おお」
私達は顔を見合わせてから、声を出して笑った。
私が立ち上がろうとすると、腕を掴まれる。
後頭部が支えられ、頬に手が添えられる。
唇にぬくもりが戻ってきて、私は目を閉じた。
そしてあっという間に口元が寂しくなる。
彼女が笑う。
私は物足りなくて、下唇を噛んだ。
永那ちゃんは立ち上がるのと同時に、私の頭をポンポンと撫でる。
手を差し伸べられたから、私のを重ねると、引き寄せて、抱きしめてくれた。
「今年の夏休みは、すっごく楽しみだな」
そう耳元で囁かれて、離される。
永那ちゃんがドアを開けると、本当にドアの目の前に誉が立っていて、つい後ずさる。
「遅いよ」
眉間にシワを寄せて頰を膨らませる誉。
永那ちゃんが誉の頭をポンポンと撫でる。
私と誉の扱いが同じなのが、なんだかなあ…と思いつつ、私は口元を綻ばせた。
音量を小さくして、誉はテレビを見ていた。
「うん、12時半くらいに起こそうかな」
今は9時半過ぎだから、3時間は寝かせてあげられる。
できれば食後も寝かせてあげたい。
部屋から持ってきた本を広げて、椅子に座る。
静かな時間が過ぎる。
この家に私と誉以外の人が存在することが不思議で、でも彼女は私の部屋で静かに眠っていて、結局いつも通りの夏休みみたいに過ごしている。
11時半頃になって、私はハンバーグ作りに取り掛かる。
普段はお昼にわざわざハンバーグを作ったりはしない。
今日は永那ちゃんがいるから特別だ。
とは言え、明日からはいつも通り、適当な食事に戻すけれど。
誉は暇になると近所の公園に行くことが多いけれど、今日は永那ちゃんがいるからか、ずっとリビングでゴロゴロしている。
誉がこんなにも私の友人(恋人)に興味を示すとは思いもしなかった。
案外、今まで私に友達がいなかったことを、彼なりに心配してくれていたのかもしれないと思うと、愛おしくも感じる。
12時半過ぎにお昼が出来上がる。
誉は目を輝かせて、椅子に座った。
…そうだ。永那ちゃんは前に誉の席に座っていたけれど、今回は誉の向かいに座ることになるのか。
永那ちゃん、不貞腐れたりしないかな…?
そんな心配をしながら、部屋のドアを開ける。
永那ちゃんはスゥスゥと寝息を立てていた。
起こすところを誉に見られたくないので、ドアを閉める。
「永那ちゃん、ご飯出来たよ」
彼女の髪をそっと撫でてから、カーテンを開けた。
日の光が射し込んで、彼女は眉間にシワを寄せるけれど、起きる気配はない。
仰向けで寝ている彼女の顔が、光に照らされている。
私はゴクリと唾を飲んでから、彼女の唇に唇を重ねた。
体温が混ざり合うまでの間、私は彼女の感触を楽しむ。
そっと唇を離して、彼女の唇に舌を這わす。
自分からこんなことをしているなんて恥ずかしくて、心臓の音がドクドクと鳴る。
でも恥ずかしさ以上に、私は興奮していた。
待ちわびていたかのように、ずっと期待していたかのように、体が動く。
最初はゆっくり、撫でるように舐めた。
最後は、彼女の中に入りたくて、チロチロとくすぐるように触れる。
フフッと彼女が笑って、目を薄く開いた。
「くすぐったいよ、穂」
彼女が起きたことに驚いて離れようとすると、サッとうなじを掴まれる。
そのままグッと引き寄せられて、唇を押し付けるような形になる。
彼女が笑っているから、自然と、出していた舌が彼女の中に入る。
吐息が混ざり合って、唾液も混ざり合って、私達は同じものになろうとする。
くちゅ、くちゅと音が鳴るにつれて、私の腕の力が抜けていく。
枕に手をついている私の腕が、少しずつ曲がっていく。
髪がカーテンのように下りて、太陽の光を遮った。
鼻から抜ける息は熱をおびて、少し息苦しい。
彼女に舌を吸われる。
ただそれだけのことなのに、体はピクッと反応して、腕の力が完全に抜けた。
コツンと額がぶつかって、彼女の上に倒れ込む。
ハァ、ハァと肩で息をしても、呼吸が整わない。
「ご飯?」
彼女が聞くから、私はなんとか頷いた。
永那ちゃんは優しく背中をトントンと叩いてくれる。
少し落ち着いてきて、私は上半身を起こす。
彼女が、髪を耳にかけてくれる。
まだ少し息は荒く、上半身を支える腕は少し震えている。
でも、彼女を見ていたいと思った。
「私、永那ちゃんと、シたい」
気づいたらそんな言葉が口をついていた。
永那ちゃんの目が大きくなって、口角が上がる。
彼女の喉が上下に動く。
「私も」
そう言われて、彼女の照る唇を見つめる。
彼女は私の視線に気づいたようで、上半身を起こしてくれる。
掠める程度に触れ合って、またぬくもりを感じる。
「姉ちゃん?」
一気に心拍数が上がる。
私達は物凄い勢いで距離を取って、正座する。
「あ…ああ、誉」
「永那ちゃん、まだ起きないの?」
ノックもせずにいきなりドアを開けられるとか、そういう不作法な教育をしなくてよかったと、心底思う。
誉はドアのすぐ向こう側に立って、話しているようだった。
「ごめん、誉。今起きた」
「早くしてよー、冷めちゃうよ?」
「お、おお」
私達は顔を見合わせてから、声を出して笑った。
私が立ち上がろうとすると、腕を掴まれる。
後頭部が支えられ、頬に手が添えられる。
唇にぬくもりが戻ってきて、私は目を閉じた。
そしてあっという間に口元が寂しくなる。
彼女が笑う。
私は物足りなくて、下唇を噛んだ。
永那ちゃんは立ち上がるのと同時に、私の頭をポンポンと撫でる。
手を差し伸べられたから、私のを重ねると、引き寄せて、抱きしめてくれた。
「今年の夏休みは、すっごく楽しみだな」
そう耳元で囁かれて、離される。
永那ちゃんがドアを開けると、本当にドアの目の前に誉が立っていて、つい後ずさる。
「遅いよ」
眉間にシワを寄せて頰を膨らませる誉。
永那ちゃんが誉の頭をポンポンと撫でる。
私と誉の扱いが同じなのが、なんだかなあ…と思いつつ、私は口元を綻ばせた。
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