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2.変化
102.夏休み
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アパートの前につく。
「ここ…。ボロくて恥ずかしいわ…」
「そんなことないよ」
穂は向かいのブロック塀に寄りかかった。
「…んじゃ、ちょっと行ってくる」
穂が頷く。
彼女は今日ノースリーブで、白い腕がいつもより見えている。
風が吹いて、彼女の髪が揺れる。
階段を上って見下ろすと、彼女は日の光に照らされて輝いていた。
目が合って、微笑んでくれる。
それに笑い返して、私はそっと玄関のドアを開けた。
お母さんはまだ寝ている。
ホッとして、音が鳴らないように、紙袋から服を出す。
少し光沢感のある素材。足首がキュッとしまっていて、ゆったりとした太もも部分とでメリハリがある形。
私は毛玉だらけのスウェットを脱いで、彼女からのプレゼントを穿く。
家に全身鏡がないから確認できないけど、さらりとしていて着心地がいい。
ハンカチをポケットに入れる。
洗面台の鏡で顔と髪を確認する。
ドアを開ける前、足元をもう一度見た。
足首にはお揃いのアンクレット。
パンツにそっと触れて、撫でる。
フゥッと幸せを噛みしめるように息を溢した。
振り返ってお母さんを見る。
カーテンが閉まった部屋で、まだ寝ている。
ドアを開けると、音で気づいた穂が見上げてくれる。
私は階段を下りるけど、彼女はずっと私から視線を外さない。
私が近づくと、駆け寄ってきてくれる。
その姿が愛おしくて、抱きしめた。
「永那ちゃん、似合ってるね」
「ありがとう」
キスしたくなって、グッと堪える。
彼女の手を握って、指を絡ませた。
そのまま一緒に、穂の家に向かう。
「本当はいつプレゼントしてくれようとしてたの?」
「んー…」
穂は俯いて、足元を見ながら、口ごもる。
私がジッと見て返事を待っていると、彼女と目が合った。
額に滲む汗。ピンク色に染まる頬。光に照らされて透ける茶色の瞳。
彼女の全てがあまりに綺麗で、息を呑む。
立ち止まって、彼女が私の肩に手を添える。
体を傾けると、彼女の唇が私の耳に触れた。
「エッチのとき」
囁かれて、顔が熱くなっていく。
フフッと彼女が笑うから、それが余計、心をくすぐる。
…だめだ。我慢なんてできないよ。
私は彼女をブロック塀に押しやって、顎をそっと上げた。
唇を重ねる。
彼女の握った手に力が入る。
「そんなこと言うなんて、ずるいよ」
離れて、彼女を見る。
彼女が照れたように笑う。
まだ遠くに家が見える。
こんな場所で、こんなこと、穂に出会う前の私は絶対しなかった。
また彼女と重なって、私は彼女の存在を確かめるように、舌をなかに入れる。
彼女はそれを受け入れてくれて、お互いの唾液が混ざっていく。
汗が垂れる。熱い風が吹く。セミの鳴き声がやたら大きく聞こえて、少し鬱陶しいくらいだ。
子供の声が遠くから聞こえて、体が離れる。
私達は笑い合って、また歩き出した。
子供が走って通り過ぎて行く。
2人で子供の背中を見送って、今度こそ駅に向かう。
電車の中は涼しい。
家ではあまりエアコンをつけない。
お母さんが1人のときは危ないからつけているけど、夜に起きているときとか、私がいるときはつけないようにしている。
それでも最近は扇風機と外の風だけでは耐えられなくて、つけることも増えたけど。
汗がどんどん引いていく。
「誉、友達の家に遊びに行くんだって」
「じゃあ、2人きり?」
「そう。でも…できないのが残念」
彼女がどんどん魅力的になっていく。
いつだったか、彼女は“もっと求めて嫌われないか怖い”と話してくれた。
嫌いになるどころか、もっと好きになっている自分がいる。
彼女が嫌がらず、積極的になってくれることが嬉しい。
それだけ私を受け入れてくれているのだと実感できるから。
穂の家についても、エアコンが既につけられていて、涼しかった。
「永那ちゃん、寝る?」
「んー、でもけっこう汗かいちゃったからな…」
「お風呂入る?」
「穂も入る?」
穂は歯を見せて笑う。
「入らない」
「残念」
私はシャワーを借りる。
穂が用意してくれたバスタオルがふかふかで、前にも思ったけど、ずっと顔を埋めていたくなる。
家ではハンドタオルを使っていて、何年も同じものを使っているから、ゴワゴワどころかカピカピしている。
アカスリで皮膚を削っているみたいな気持ちになる。
私がいつもの癖で、ドライヤーをかけずに出ると、穂が「寒くない?」と聞いてくれる。
頷いて、ラグに倒れ込む。
穂が私の頭のそばに座って、頭を撫でてくれる。
「気持ちいい」
目を閉じると、意識が遠のいていく。
「ここ…。ボロくて恥ずかしいわ…」
「そんなことないよ」
穂は向かいのブロック塀に寄りかかった。
「…んじゃ、ちょっと行ってくる」
穂が頷く。
彼女は今日ノースリーブで、白い腕がいつもより見えている。
風が吹いて、彼女の髪が揺れる。
階段を上って見下ろすと、彼女は日の光に照らされて輝いていた。
目が合って、微笑んでくれる。
それに笑い返して、私はそっと玄関のドアを開けた。
お母さんはまだ寝ている。
ホッとして、音が鳴らないように、紙袋から服を出す。
少し光沢感のある素材。足首がキュッとしまっていて、ゆったりとした太もも部分とでメリハリがある形。
私は毛玉だらけのスウェットを脱いで、彼女からのプレゼントを穿く。
家に全身鏡がないから確認できないけど、さらりとしていて着心地がいい。
ハンカチをポケットに入れる。
洗面台の鏡で顔と髪を確認する。
ドアを開ける前、足元をもう一度見た。
足首にはお揃いのアンクレット。
パンツにそっと触れて、撫でる。
フゥッと幸せを噛みしめるように息を溢した。
振り返ってお母さんを見る。
カーテンが閉まった部屋で、まだ寝ている。
ドアを開けると、音で気づいた穂が見上げてくれる。
私は階段を下りるけど、彼女はずっと私から視線を外さない。
私が近づくと、駆け寄ってきてくれる。
その姿が愛おしくて、抱きしめた。
「永那ちゃん、似合ってるね」
「ありがとう」
キスしたくなって、グッと堪える。
彼女の手を握って、指を絡ませた。
そのまま一緒に、穂の家に向かう。
「本当はいつプレゼントしてくれようとしてたの?」
「んー…」
穂は俯いて、足元を見ながら、口ごもる。
私がジッと見て返事を待っていると、彼女と目が合った。
額に滲む汗。ピンク色に染まる頬。光に照らされて透ける茶色の瞳。
彼女の全てがあまりに綺麗で、息を呑む。
立ち止まって、彼女が私の肩に手を添える。
体を傾けると、彼女の唇が私の耳に触れた。
「エッチのとき」
囁かれて、顔が熱くなっていく。
フフッと彼女が笑うから、それが余計、心をくすぐる。
…だめだ。我慢なんてできないよ。
私は彼女をブロック塀に押しやって、顎をそっと上げた。
唇を重ねる。
彼女の握った手に力が入る。
「そんなこと言うなんて、ずるいよ」
離れて、彼女を見る。
彼女が照れたように笑う。
まだ遠くに家が見える。
こんな場所で、こんなこと、穂に出会う前の私は絶対しなかった。
また彼女と重なって、私は彼女の存在を確かめるように、舌をなかに入れる。
彼女はそれを受け入れてくれて、お互いの唾液が混ざっていく。
汗が垂れる。熱い風が吹く。セミの鳴き声がやたら大きく聞こえて、少し鬱陶しいくらいだ。
子供の声が遠くから聞こえて、体が離れる。
私達は笑い合って、また歩き出した。
子供が走って通り過ぎて行く。
2人で子供の背中を見送って、今度こそ駅に向かう。
電車の中は涼しい。
家ではあまりエアコンをつけない。
お母さんが1人のときは危ないからつけているけど、夜に起きているときとか、私がいるときはつけないようにしている。
それでも最近は扇風機と外の風だけでは耐えられなくて、つけることも増えたけど。
汗がどんどん引いていく。
「誉、友達の家に遊びに行くんだって」
「じゃあ、2人きり?」
「そう。でも…できないのが残念」
彼女がどんどん魅力的になっていく。
いつだったか、彼女は“もっと求めて嫌われないか怖い”と話してくれた。
嫌いになるどころか、もっと好きになっている自分がいる。
彼女が嫌がらず、積極的になってくれることが嬉しい。
それだけ私を受け入れてくれているのだと実感できるから。
穂の家についても、エアコンが既につけられていて、涼しかった。
「永那ちゃん、寝る?」
「んー、でもけっこう汗かいちゃったからな…」
「お風呂入る?」
「穂も入る?」
穂は歯を見せて笑う。
「入らない」
「残念」
私はシャワーを借りる。
穂が用意してくれたバスタオルがふかふかで、前にも思ったけど、ずっと顔を埋めていたくなる。
家ではハンドタオルを使っていて、何年も同じものを使っているから、ゴワゴワどころかカピカピしている。
アカスリで皮膚を削っているみたいな気持ちになる。
私がいつもの癖で、ドライヤーをかけずに出ると、穂が「寒くない?」と聞いてくれる。
頷いて、ラグに倒れ込む。
穂が私の頭のそばに座って、頭を撫でてくれる。
「気持ちいい」
目を閉じると、意識が遠のいていく。
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