110 / 595
2.変化
110.夏休み
しおりを挟む
■■■
しっかり日焼け止めを塗っていたはずなのに、キャミソールの紐の部分とショートパンツで隠れていた部分が、白くなっている。
家に帰って、温かいシャワーを浴びると、肌が少しピリついた。
初めてのウォータースライダー、怖すぎて、永那ちゃんに甘えてしまった。
…でも優しく受け止めてもらえて、嬉しさもあった。
いつかは、ああいうのにも乗れるようになりたい。
将来的に、もし遊園地とかでデートするってなったら、ジェットコースターにも乗るんだよね?
だから、乗れるようになりたい。
私はそういう、みんなが簡単に乗れてしまうような物に乗った経験がほとんどない。
まだお父さんがいた頃、一度だけ遊園地に連れて行ってもらったと思うけれど、まだ小さかったから、危険な乗り物には乗らなかった。
「永那ちゃん、かっこよかったな」
“楽しい雰囲気は壊れないし、壊れさせない”
私は友達ができたことが嬉しくて、最近は、何か思うところがあってもグッと堪えて言わないように心掛けていた。
私が何か言うことで、クラスの楽しい雰囲気を壊したくなかったから。
一度味わってしまった楽しさを、失いたくないと強く願って。
テスト返却期間中ほとんどの人が、寝ているか、お喋りをしているかだった。
復習は大事だし、せっかく先生が授業をしてくれているのだから、ちゃんと授業を受けるべきだと思っている。
寝ているのは人の邪魔になるわけでもないから良いとしても、喋っているのは正直迷惑だった。
前の私なら「先生の話が聞こえないから静かにしてくれない?」と言っていたと思う。
掃除だって、夏休み前ということもあってか、みんなまた適当にしていた。
本当はそれも、言いたかった。
夏休み前だからこそ、しっかりやるべきなのでは?と。
永那ちゃんには、私が言わずに我慢していたことを見抜かれていたのかな。
次の日、駅前で待ち合わせ。
やっぱり永那ちゃんはもう、ついていた。
いつものように時計台に寄りかかっている。
「永那ちゃん」
「穂、おはよ」
「おはよう」
永那ちゃんが頭を撫でてくれる。
普段は行かないけど、少し離れたところに朝8時から開いているスーパーがある。
近所のスーパーは10時からだから、散歩がてら2人で歩く。
「誉がね、海をすごい楽しみにしているみたいで、カレンダーに“海!”って赤字で大きく書いてたの。笑っちゃったよ」
「誉、可愛いなあ。でも気持ちはわかるよ。…また穂の水着姿が見られるの、すっごい楽しみだし」
「もう、また永那ちゃんはそういうこと言って」
頬を膨らませると、指でつつかれた。
スーパーに到着して、何を作ろうか考える。
永那ちゃんが、チャプチェみたいに珍しい物が食べたいと言うから、事前にいろいろ調べてみたけど、“珍しい物”がよくわからない。
私はスマホを出して、永那ちゃんに見せる。
永那ちゃんがスマホを覗き込むから、顔の距離が近くて少しドキドキした。
「普段、よくこのサイトのレシピを使ってて」
「へえ」
お気に入りに登録してあるレシピをスライドして見せていく。
「何か、気になるものある?」
「ビビンバ食べたい」
フフッと笑う。
ビビンバって珍しいものなのかな?
「じゃあ、今日はビビンバにしよう」
食材をカゴに入れていく。
お財布を出そうとしたら、サッと永那ちゃんが払ってくれる。
「後で払うね」と言うと「私に買わせて?」と頭を撫でられる。
「でも」
「ほら、前に優里が言ってたでしょ?家にお邪魔させてもらってるし、火も調味料とかも使わせてもらってるんだからって。それに、これからもお昼をご馳走してもらい続けるのは、申し訳ないからさ」
「…わかった。ありがとう」
買い物袋も持ってくれて、なんだか、同棲してるカップルみたいな気分になる。
「誉は?」
家について、買った物を冷蔵庫にしまっていく。
「友達に誘われたって、遊びに行ったよ」
「そっか。じゃあまた2人でいられるんだ」
背中にぬくもりを感じた後、腰から手が伸びてきて、抱きしめられる。
首筋に彼女の顔が触れて、少しくすぐったい。
チュッと音がする。
1回、2回、3回と、唇が触れるたびに私の顔に、永那ちゃんの顔が近づいてくる。
4回目、頬にキスされて、私は彼女の腕の中で振り向く。
冷蔵庫を片手で閉めると、見計らったように彼女の唇が私のに重なる。
やわらかい感触。
触れ合うだけで、気持ちいい。
何度も彼女を求めるように、彼女も私を求めるように、離れてはくっつき、くっつきは離れるのを繰り返す。
少しずつ、彼女の息が荒くなる。
同時に私は押されていって、冷蔵庫に寄りかかった。
両手で頬を包まれる。
少し見つめてから、また重なった。
しっかり日焼け止めを塗っていたはずなのに、キャミソールの紐の部分とショートパンツで隠れていた部分が、白くなっている。
家に帰って、温かいシャワーを浴びると、肌が少しピリついた。
初めてのウォータースライダー、怖すぎて、永那ちゃんに甘えてしまった。
…でも優しく受け止めてもらえて、嬉しさもあった。
いつかは、ああいうのにも乗れるようになりたい。
将来的に、もし遊園地とかでデートするってなったら、ジェットコースターにも乗るんだよね?
だから、乗れるようになりたい。
私はそういう、みんなが簡単に乗れてしまうような物に乗った経験がほとんどない。
まだお父さんがいた頃、一度だけ遊園地に連れて行ってもらったと思うけれど、まだ小さかったから、危険な乗り物には乗らなかった。
「永那ちゃん、かっこよかったな」
“楽しい雰囲気は壊れないし、壊れさせない”
私は友達ができたことが嬉しくて、最近は、何か思うところがあってもグッと堪えて言わないように心掛けていた。
私が何か言うことで、クラスの楽しい雰囲気を壊したくなかったから。
一度味わってしまった楽しさを、失いたくないと強く願って。
テスト返却期間中ほとんどの人が、寝ているか、お喋りをしているかだった。
復習は大事だし、せっかく先生が授業をしてくれているのだから、ちゃんと授業を受けるべきだと思っている。
寝ているのは人の邪魔になるわけでもないから良いとしても、喋っているのは正直迷惑だった。
前の私なら「先生の話が聞こえないから静かにしてくれない?」と言っていたと思う。
掃除だって、夏休み前ということもあってか、みんなまた適当にしていた。
本当はそれも、言いたかった。
夏休み前だからこそ、しっかりやるべきなのでは?と。
永那ちゃんには、私が言わずに我慢していたことを見抜かれていたのかな。
次の日、駅前で待ち合わせ。
やっぱり永那ちゃんはもう、ついていた。
いつものように時計台に寄りかかっている。
「永那ちゃん」
「穂、おはよ」
「おはよう」
永那ちゃんが頭を撫でてくれる。
普段は行かないけど、少し離れたところに朝8時から開いているスーパーがある。
近所のスーパーは10時からだから、散歩がてら2人で歩く。
「誉がね、海をすごい楽しみにしているみたいで、カレンダーに“海!”って赤字で大きく書いてたの。笑っちゃったよ」
「誉、可愛いなあ。でも気持ちはわかるよ。…また穂の水着姿が見られるの、すっごい楽しみだし」
「もう、また永那ちゃんはそういうこと言って」
頬を膨らませると、指でつつかれた。
スーパーに到着して、何を作ろうか考える。
永那ちゃんが、チャプチェみたいに珍しい物が食べたいと言うから、事前にいろいろ調べてみたけど、“珍しい物”がよくわからない。
私はスマホを出して、永那ちゃんに見せる。
永那ちゃんがスマホを覗き込むから、顔の距離が近くて少しドキドキした。
「普段、よくこのサイトのレシピを使ってて」
「へえ」
お気に入りに登録してあるレシピをスライドして見せていく。
「何か、気になるものある?」
「ビビンバ食べたい」
フフッと笑う。
ビビンバって珍しいものなのかな?
「じゃあ、今日はビビンバにしよう」
食材をカゴに入れていく。
お財布を出そうとしたら、サッと永那ちゃんが払ってくれる。
「後で払うね」と言うと「私に買わせて?」と頭を撫でられる。
「でも」
「ほら、前に優里が言ってたでしょ?家にお邪魔させてもらってるし、火も調味料とかも使わせてもらってるんだからって。それに、これからもお昼をご馳走してもらい続けるのは、申し訳ないからさ」
「…わかった。ありがとう」
買い物袋も持ってくれて、なんだか、同棲してるカップルみたいな気分になる。
「誉は?」
家について、買った物を冷蔵庫にしまっていく。
「友達に誘われたって、遊びに行ったよ」
「そっか。じゃあまた2人でいられるんだ」
背中にぬくもりを感じた後、腰から手が伸びてきて、抱きしめられる。
首筋に彼女の顔が触れて、少しくすぐったい。
チュッと音がする。
1回、2回、3回と、唇が触れるたびに私の顔に、永那ちゃんの顔が近づいてくる。
4回目、頬にキスされて、私は彼女の腕の中で振り向く。
冷蔵庫を片手で閉めると、見計らったように彼女の唇が私のに重なる。
やわらかい感触。
触れ合うだけで、気持ちいい。
何度も彼女を求めるように、彼女も私を求めるように、離れてはくっつき、くっつきは離れるのを繰り返す。
少しずつ、彼女の息が荒くなる。
同時に私は押されていって、冷蔵庫に寄りかかった。
両手で頬を包まれる。
少し見つめてから、また重なった。
40
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる