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2.変化
113.夏休み
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ずっしりと背中に重みを感じて、スゥスゥと寝息が聞こえてきて、笑ってしまう。
座りながら寝るって、首とか腰とか痛くならないのかな?
ヘッドボードに置いてある本を手に取って読み始める。
少し経ってから「ただいまー」と誉の声が聞こえる。
永那ちゃんは私の肩で寝息を立てたまま、起きそうにない。
「姉ちゃん?永那?」
部屋のドアが開いてたから、誉が顔を出した。
「おかえり」
小声で言うと、誉は何度か瞬きして「ただいま」と小声で返した。
一度いなくなって、手を洗ってきたのか戻ってくる。
手には漫画があって、ベッドに寄りかかるように座るから驚く。
いつもならリビングで読むのに。
手を伸ばして頭を撫でると、嬉しそうに私を見上げた。
「永那ちゃん」
太ももを撫でる。
1時間も彼女の重みを感じると、さすがに私も背中が痛くなりかけているのがわかる。
「…ん」
珍しく彼女がすぐに起きた。
誉が振り向く。
「永那、おはよー」
「ん?」
永那ちゃんは目を擦って、あくびをしながら伸びる。
「誉、いたんだ」
「うん」
「おはよう、永那ちゃん」
「おはよ、穂」
誉が今日私達が何をしていたのか聞くから、2人で料理をしたと話した。
私達も誉が何をしていたのか聞いたりしながら、永那ちゃんが帰る支度をする。
次の日は、3人で料理をした。前日に買った野菜の余りを活かす。
誉がいるからキスすることもままならなくて、私の体は、まるで今にも噴火しそうなマグマみたいになっている。
自然とため息も増えて、永那ちゃんがそれに気づいているのか、ニヤニヤ笑っていた。
私は知らんぷりする。
土曜日、生徒会の清掃ボランティアがある。
金井さんには公園で会ったけれど、約1ヶ月ぶりの生徒会の活動。
朝9時に制服で学校集合。学校周辺の清掃をする。
「おはようございます、空井先輩」
日住君が笑いかけてくれる。
「おはよう」
「おはようございます」
日住君の横には金井さんが立っていた。
先生が用意してくれたゴミ袋や軍手、ゴミ拾い用のトングをそれぞれ受け取る。
今日の参加人数は10人。思ったよりも多かった。先生も合わせると12人だ。
生徒会長が簡単に挨拶と説明をして、2グループに分かれてゴミ拾いをする。
「暑いですね」
ほんのり日焼けした日住君が言う。
「そうだね」
「先輩、ちょっと日に焼けました?」
お互いに同じことを思っていたとわかって、笑う。
「この前の水曜日にプールに行ったんだ」
「え!そうなんですか。俺も昨日友達とプール行きましたよ」
行ったプールが同じだった。
まあ、近場で大きめのプールと言えば、あそこしかないもんね。
「私、初めてウォータースライダーに乗ったんだけど、けっこう怖いんだね」
日住君が目を大きく開いた。
すぐに弧を描いて、口元を隠す。
「え?笑ってる?」
「い、いえ」
そう言う顔は綻んでいて、むぅっと唇を尖らす。
「今どき、子供でもそんなこと言いませんよ」
しゃがんでゴミを拾っていた金井さんが立ち上がる。
「え…えー、そうなの?やっぱりみんな、怖くないの?」
「あれ、小学生でも楽しく滑ってるじゃないですか」
金井さんの視線が冷たい。
「私も楽しく乗れるようになりたいとは思ってるんだよ?」
プッと、ついに日住君が吹き出す。
金井さんは呆れたような顔をして、ゴミを探す。
私もトングをカチカチさせながら、タバコやら何かの包装紙を拾っていく。
「先輩が行くんだったら、俺も水曜日に行けばよかったな」
日住君が笑いながら言う。
「人が怖がってるところをそんなに見たい?」
「ハハハッ」と軽快に笑われる。
「そういうわけじゃないですけど、楽しそうだなって思って」
よくわからない。
「金井さんはプールとか行かないの?」
「プールはないですけど、海に行く予定はあります」
「へえ!どこの?」
「ハワイです」
目を白黒させる。
まさかの海外。
「いいなあ、ハワイ。俺も行きてー」
「す、すごいね…」
「お土産、楽しみにしててください」
「…うん」
そういえば、金井さんは日住君と過ごしたりしないのかな?
「先輩は、お祭り行きますか?」
「え?お祭り?」
「近所の…8月末のです。次のボランティアの翌日にある…」
「ああ…行く予定は特にないけど、弟が行きたいって言ったら行くかも?…でも、弟も友達と行くだろうし、行かない可能性のほうが高いかな?」
「そうなんですか…。俺、金井と行く予定なんですけど、先輩も一緒にどうですか?」
「え!?」
なんというタイミング…。
2人で夏祭りかあ。青春だなあ。
「私はいいよ。2人で楽しんで」
金井さんを見ると、一瞬目が合って、すぐにそらされてしまった。
お祭りは基本的に夕方からだし、永那ちゃんとは一緒に行けないから、少し寂しさもある。
でも毎年必ず行っているわけでもないから、どうということもない。
去年は、誉が友達と行くと言うから、私は行かなかった。
3時間ほどの清掃を終えて、解散となった。
座りながら寝るって、首とか腰とか痛くならないのかな?
ヘッドボードに置いてある本を手に取って読み始める。
少し経ってから「ただいまー」と誉の声が聞こえる。
永那ちゃんは私の肩で寝息を立てたまま、起きそうにない。
「姉ちゃん?永那?」
部屋のドアが開いてたから、誉が顔を出した。
「おかえり」
小声で言うと、誉は何度か瞬きして「ただいま」と小声で返した。
一度いなくなって、手を洗ってきたのか戻ってくる。
手には漫画があって、ベッドに寄りかかるように座るから驚く。
いつもならリビングで読むのに。
手を伸ばして頭を撫でると、嬉しそうに私を見上げた。
「永那ちゃん」
太ももを撫でる。
1時間も彼女の重みを感じると、さすがに私も背中が痛くなりかけているのがわかる。
「…ん」
珍しく彼女がすぐに起きた。
誉が振り向く。
「永那、おはよー」
「ん?」
永那ちゃんは目を擦って、あくびをしながら伸びる。
「誉、いたんだ」
「うん」
「おはよう、永那ちゃん」
「おはよ、穂」
誉が今日私達が何をしていたのか聞くから、2人で料理をしたと話した。
私達も誉が何をしていたのか聞いたりしながら、永那ちゃんが帰る支度をする。
次の日は、3人で料理をした。前日に買った野菜の余りを活かす。
誉がいるからキスすることもままならなくて、私の体は、まるで今にも噴火しそうなマグマみたいになっている。
自然とため息も増えて、永那ちゃんがそれに気づいているのか、ニヤニヤ笑っていた。
私は知らんぷりする。
土曜日、生徒会の清掃ボランティアがある。
金井さんには公園で会ったけれど、約1ヶ月ぶりの生徒会の活動。
朝9時に制服で学校集合。学校周辺の清掃をする。
「おはようございます、空井先輩」
日住君が笑いかけてくれる。
「おはよう」
「おはようございます」
日住君の横には金井さんが立っていた。
先生が用意してくれたゴミ袋や軍手、ゴミ拾い用のトングをそれぞれ受け取る。
今日の参加人数は10人。思ったよりも多かった。先生も合わせると12人だ。
生徒会長が簡単に挨拶と説明をして、2グループに分かれてゴミ拾いをする。
「暑いですね」
ほんのり日焼けした日住君が言う。
「そうだね」
「先輩、ちょっと日に焼けました?」
お互いに同じことを思っていたとわかって、笑う。
「この前の水曜日にプールに行ったんだ」
「え!そうなんですか。俺も昨日友達とプール行きましたよ」
行ったプールが同じだった。
まあ、近場で大きめのプールと言えば、あそこしかないもんね。
「私、初めてウォータースライダーに乗ったんだけど、けっこう怖いんだね」
日住君が目を大きく開いた。
すぐに弧を描いて、口元を隠す。
「え?笑ってる?」
「い、いえ」
そう言う顔は綻んでいて、むぅっと唇を尖らす。
「今どき、子供でもそんなこと言いませんよ」
しゃがんでゴミを拾っていた金井さんが立ち上がる。
「え…えー、そうなの?やっぱりみんな、怖くないの?」
「あれ、小学生でも楽しく滑ってるじゃないですか」
金井さんの視線が冷たい。
「私も楽しく乗れるようになりたいとは思ってるんだよ?」
プッと、ついに日住君が吹き出す。
金井さんは呆れたような顔をして、ゴミを探す。
私もトングをカチカチさせながら、タバコやら何かの包装紙を拾っていく。
「先輩が行くんだったら、俺も水曜日に行けばよかったな」
日住君が笑いながら言う。
「人が怖がってるところをそんなに見たい?」
「ハハハッ」と軽快に笑われる。
「そういうわけじゃないですけど、楽しそうだなって思って」
よくわからない。
「金井さんはプールとか行かないの?」
「プールはないですけど、海に行く予定はあります」
「へえ!どこの?」
「ハワイです」
目を白黒させる。
まさかの海外。
「いいなあ、ハワイ。俺も行きてー」
「す、すごいね…」
「お土産、楽しみにしててください」
「…うん」
そういえば、金井さんは日住君と過ごしたりしないのかな?
「先輩は、お祭り行きますか?」
「え?お祭り?」
「近所の…8月末のです。次のボランティアの翌日にある…」
「ああ…行く予定は特にないけど、弟が行きたいって言ったら行くかも?…でも、弟も友達と行くだろうし、行かない可能性のほうが高いかな?」
「そうなんですか…。俺、金井と行く予定なんですけど、先輩も一緒にどうですか?」
「え!?」
なんというタイミング…。
2人で夏祭りかあ。青春だなあ。
「私はいいよ。2人で楽しんで」
金井さんを見ると、一瞬目が合って、すぐにそらされてしまった。
お祭りは基本的に夕方からだし、永那ちゃんとは一緒に行けないから、少し寂しさもある。
でも毎年必ず行っているわけでもないから、どうということもない。
去年は、誉が友達と行くと言うから、私は行かなかった。
3時間ほどの清掃を終えて、解散となった。
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