122 / 595
3.成長
121.噂
しおりを挟む
私の隣に日住君が座り、その隣に金井さんが座った。
2人が楽しそうに話す姿を眺めていた。
たまに話を振ってくれて、相槌を打ちつつ、のんびり過ごす。
1時間経ったあたりで、(永那ちゃんは、そろそろ家についたかなあ?)なんて考える。
「空井さん」
突然、私とは別のクラスの同級生に話しかけられる。
生徒会の業務連絡で話したことはあるけれど、彼女から普通に話しかけられるのは初めてだ。
「なに?」
「あの、空井さんって…両角さんと仲良いって本当?ですか」
久しぶりの同級生からの敬語に少し緊張する。
隣には彼女と同じクラスの子もいる。
「ああ…まあ…」
「えー!やっぱり本当だったんだ」と、2人が手を重ねて言う。
「私達、めっちゃ両角さんと佐藤さんのこと応援してて」
応援?
私は首を傾げる。
「…空井さんに言うことじゃないとは思うんですけど、ほら…あの2人って、お似合いっていうか…ね?」
2人はお互いに顔を見合わせて「ね?」「ね?」と言い合っている。
「正直、両角さんと佐藤さんって付き合ってるんですか?」
思わず顔が引きつる。
どう答えればいいかわからないし、答えたいとも思わない。
「両角先輩は体育祭のとき“好きな人”のカードを引いて、空井先輩の手を引いていましたよね?」
金井さんが爆弾を投下する。
「あ、そうそう!…それも気になってた!」
「三角関係?」
私は視線を下げて、唾を飲む。
やっぱり、恋話ってめんどくさいし、どうでもいいなあ。なんて。
「ちょっと、先輩方…そういう話はやめましょうよ」
「え、日住君?」
「え、なになに。怒ってる?」
2人は顔を見合わせている。
「私達は、ちょっと推しカプがどうなってるのか知りたかっただけで…ねえ?」
もう1人が頷く。
“推しカプ”?なにそれ。
「日住君が怒ることじゃなくない?」
「…すみません。でも、聞いてて良い気分しなくて」
私は小さくため息をつく。
旅行の初日で空気を悪くするわけにもいかないし、普通に答えるしかないか…。
「日住君、ありがとう。…あの2人は付き合ってないよ」
「え!そうなんだー」
「やっぱりまだ友達なんだね」
2人が楽しそうにする。
“まだ”とは?
これからも、友達だよ。
「ちょっ…」
「いいから、大丈夫だから」
日住君が珍しく眉間にシワを寄せているから、制止する。
「ありがとうございました~」なんて言って、2人がまた距離を取って、楽しそうに話し始めた。
人を勝手に妄想の道具にしないでほしい。
「金井、なんであんなこと言ったんだよ?」
「両角先輩の相手は、どこかの誰かじゃないって教えてあげたの」
私は苦笑する。
そんなこと言わなくていい。
「先輩、なんで言わないんですか?相手は私ですよって」
「…なんでそんなこと言わなきゃいけないの?」
金井さんがの目が大きく見開かれて、口元が緩む。
「先輩、目が怖いですよ」
そう言われて、ハッとする。
自分の頬をペシペシ叩く。
「金井、先輩を振り回すなよ」
「日住君には関係ないでしょ」
金井さんはプイとそっぽを向いてしまった。
「すみません」
なぜか日住君に謝られる。
「私だったら、嫌です」
そっぽを向く金井さんが言う。
「私だったら、好きな人と他の人が“お似合い”なんて、勝手に言ってほしくない」
胸がチクリと痛む。
金井さんの言っていることは正しい。
正しいけれど、それが正解ではないと、わかる。
「なんで、先輩は笑っていられるんですか?」
私、笑えてたんだ。知らなかった。
悔しげな表情を向けられて、思わず、本当に笑みが溢れる。
「べつに…笑えてるわけじゃないよ。でも、私と永那ちゃんのことは、私達が1番知っているとわかっているから。そこは揺るがないし。…永那ちゃんと佐藤さんが綺麗なのは事実だし。どうしても表面上は、仕方ないんじゃない?」
金井さんの喉が上下する。
「そう、ですか」
「空井先輩も、綺麗です」
「え!?」
日住君が俯いて、膝で手を握りしめている。
突然褒められて、どう答えればいいかわからない。
「ひ、日住君…ありがとう。…そんな、あの、励ましてもらわなくても、大丈夫だよ?」
日住君の頭がもっと下を向いてしまう。
「俺、本当に先輩のこと、綺麗だと思ってます」
まっすぐ見つめられて、顔に熱がおびていく。
「あ…ありがとう…」
今度は私が、俯いた。
あれ?日住君?…どうしたの?
「やめてよ、こんな、電車の中で」
金井さんの声が冷え切っていて、少し心が落ち着く。
「ごめん」
日住君が謝って、ポリポリと頭を掻いた。
私が横目で見ていたら、目が合って「すみません」と謝られた。
…なんか、気まずい。
そのまま私達は無言で電車に揺られた。
幸いその時間は30分程度で、電車をおりると、自然の匂いが鼻を通って、体を満たした。
みんなのテンションも上がって、生徒会長の後に続いた。
2人が楽しそうに話す姿を眺めていた。
たまに話を振ってくれて、相槌を打ちつつ、のんびり過ごす。
1時間経ったあたりで、(永那ちゃんは、そろそろ家についたかなあ?)なんて考える。
「空井さん」
突然、私とは別のクラスの同級生に話しかけられる。
生徒会の業務連絡で話したことはあるけれど、彼女から普通に話しかけられるのは初めてだ。
「なに?」
「あの、空井さんって…両角さんと仲良いって本当?ですか」
久しぶりの同級生からの敬語に少し緊張する。
隣には彼女と同じクラスの子もいる。
「ああ…まあ…」
「えー!やっぱり本当だったんだ」と、2人が手を重ねて言う。
「私達、めっちゃ両角さんと佐藤さんのこと応援してて」
応援?
私は首を傾げる。
「…空井さんに言うことじゃないとは思うんですけど、ほら…あの2人って、お似合いっていうか…ね?」
2人はお互いに顔を見合わせて「ね?」「ね?」と言い合っている。
「正直、両角さんと佐藤さんって付き合ってるんですか?」
思わず顔が引きつる。
どう答えればいいかわからないし、答えたいとも思わない。
「両角先輩は体育祭のとき“好きな人”のカードを引いて、空井先輩の手を引いていましたよね?」
金井さんが爆弾を投下する。
「あ、そうそう!…それも気になってた!」
「三角関係?」
私は視線を下げて、唾を飲む。
やっぱり、恋話ってめんどくさいし、どうでもいいなあ。なんて。
「ちょっと、先輩方…そういう話はやめましょうよ」
「え、日住君?」
「え、なになに。怒ってる?」
2人は顔を見合わせている。
「私達は、ちょっと推しカプがどうなってるのか知りたかっただけで…ねえ?」
もう1人が頷く。
“推しカプ”?なにそれ。
「日住君が怒ることじゃなくない?」
「…すみません。でも、聞いてて良い気分しなくて」
私は小さくため息をつく。
旅行の初日で空気を悪くするわけにもいかないし、普通に答えるしかないか…。
「日住君、ありがとう。…あの2人は付き合ってないよ」
「え!そうなんだー」
「やっぱりまだ友達なんだね」
2人が楽しそうにする。
“まだ”とは?
これからも、友達だよ。
「ちょっ…」
「いいから、大丈夫だから」
日住君が珍しく眉間にシワを寄せているから、制止する。
「ありがとうございました~」なんて言って、2人がまた距離を取って、楽しそうに話し始めた。
人を勝手に妄想の道具にしないでほしい。
「金井、なんであんなこと言ったんだよ?」
「両角先輩の相手は、どこかの誰かじゃないって教えてあげたの」
私は苦笑する。
そんなこと言わなくていい。
「先輩、なんで言わないんですか?相手は私ですよって」
「…なんでそんなこと言わなきゃいけないの?」
金井さんがの目が大きく見開かれて、口元が緩む。
「先輩、目が怖いですよ」
そう言われて、ハッとする。
自分の頬をペシペシ叩く。
「金井、先輩を振り回すなよ」
「日住君には関係ないでしょ」
金井さんはプイとそっぽを向いてしまった。
「すみません」
なぜか日住君に謝られる。
「私だったら、嫌です」
そっぽを向く金井さんが言う。
「私だったら、好きな人と他の人が“お似合い”なんて、勝手に言ってほしくない」
胸がチクリと痛む。
金井さんの言っていることは正しい。
正しいけれど、それが正解ではないと、わかる。
「なんで、先輩は笑っていられるんですか?」
私、笑えてたんだ。知らなかった。
悔しげな表情を向けられて、思わず、本当に笑みが溢れる。
「べつに…笑えてるわけじゃないよ。でも、私と永那ちゃんのことは、私達が1番知っているとわかっているから。そこは揺るがないし。…永那ちゃんと佐藤さんが綺麗なのは事実だし。どうしても表面上は、仕方ないんじゃない?」
金井さんの喉が上下する。
「そう、ですか」
「空井先輩も、綺麗です」
「え!?」
日住君が俯いて、膝で手を握りしめている。
突然褒められて、どう答えればいいかわからない。
「ひ、日住君…ありがとう。…そんな、あの、励ましてもらわなくても、大丈夫だよ?」
日住君の頭がもっと下を向いてしまう。
「俺、本当に先輩のこと、綺麗だと思ってます」
まっすぐ見つめられて、顔に熱がおびていく。
「あ…ありがとう…」
今度は私が、俯いた。
あれ?日住君?…どうしたの?
「やめてよ、こんな、電車の中で」
金井さんの声が冷え切っていて、少し心が落ち着く。
「ごめん」
日住君が謝って、ポリポリと頭を掻いた。
私が横目で見ていたら、目が合って「すみません」と謝られた。
…なんか、気まずい。
そのまま私達は無言で電車に揺られた。
幸いその時間は30分程度で、電車をおりると、自然の匂いが鼻を通って、体を満たした。
みんなのテンションも上がって、生徒会長の後に続いた。
41
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる