いたずらはため息と共に

常森 楽

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3.成長

153.海とか祭りとか

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お祭り当日。
夕方に待ち合わせると混むからと、いつも通り朝にマンションに向かった。
空井さんが着付けてくれると言うので、あたしは洋服で行く。
動画で浴衣の着方を見てみけど、自信がなかったから安心した。
空井さんは昔おばあちゃんに教えてもらったのだと言っていた。

家につくと、弟はもう既に甚平を着ていた。
空井さんはまだ洋服だった。
「千陽、おはよ」
「おはよ」
「佐藤さん、おはよう」
あたしは頷いて、いつものようにテレビの前に座る。
弟がハンディファンを見せてくる。
…どうでもいい。

お昼を食べた後、空井さんに浴衣を着ようと誘われた。
2人で空井さんの部屋に入る。
部屋には全身鏡が置かれていた。
「鏡なんて部屋にあったっけ?」
「…よく覚えてるね。クローゼットにしまってたんだけど、着付けるのに必要だから出したんだ」
「ふーん」
あたしの浴衣は、白地に紺色の桔梗が描かれたもの。
水墨画のようなタッチで、花柱の部分が黄色だから、アクセントになっている。
紺色の帯に、白の帯締めをつける。
下駄はシンプルに、鼻緒が白、台が黒に近い焦げ茶色。
空井さんはあたしの着付けからしてくれる。
あたしが服を脱ぐと、空井さんは頬をピンク色に染める。
そんな顔されたら、またキスしちゃうよ?なんて。
嫌われるだろうから、しないけど。
キャミソールを脱ごうとしたら「はだけたら大変だから、そのままで!」と言われてしまった。
あたしは目を細めて彼女を見る。
空井さんは恥ずかしそうに、前髪を指で梳く。

浴衣の袖に手を通す。
空井さんが前に立って、着付け始める。
学校でもそうだったけど、彼女の視線はすぐにあたしの胸元にいく。
胸が大きいのは自覚してるけど、そんなに見なくても…。
男のほうがよっぽど、さりげなく見ようとしているのが伝わってくるくらい。
あたしは気まぐれに彼女の手を取って、胸に押し付けた。
彼女の目が見開かれて、顔が真っ赤になる。
さわられるのは慣れてても、さわるのは慣れてない?
「そんなに見たいなら、見せてあげるのに。空井さんになら特別に、さわらせてだってあげるよ?」
「なん」
「あたしのこと、好きだって思ってくれてるんでしょ?永那から聞いた」
彼女の言葉を遮って答える。
空井さんの喉が上下した。
「空井さんからしたら、あたし、いっぱい嫌なことしただろうに…あたしのこと、好きなんでしょ?だから、特別」

彼女が固まって動かない。
あたしは、あいている自分の手を後ろに回してブラのホックを外す。
「さわって?」
永那にも、こういうふうにすれば良かったのかも。もっと早くに。
ブラを上にずらして、キャミソール越しに胸をさわらせる。
「でも」
それでも彼女は動かない。
「あたしは永那には言わないし、空井さんも言わなければいいでしょ?…胸をさわるなんて、女子同士ではよくあることなんだし」
更衣室で女子同士で胸の話をして、お互いにさわったりする。
真面目な空井さんは、みんなとそんなことしたことないかもしれないけど、こんなの…
「普通のことだよ。優里にも、何度もさわられてるよ?」
そう言うと、空井さんがあたしを真っ直ぐ見た。
唾をゴクリと飲んで、優しく揉み始める。
「すごい」
なにその感想。
「あ、ありがとう」
空井さんはまた前髪を指で梳いて、ブラをつけ直してくれる。
そっちのほうがエロいんだけど。
思わず笑う。

その後は、大人しく着付けてもらった。
「綺麗だね」
…弟がしょっぱなから“綺麗”とか吐かしてきたのは、姉譲りか。
一緒に過ごすようになる前は、ハッキリ自分の考えを言って、言い方もキツくて、厳しい印象があったけど…ハッキリ自分の考えを言うってことは、こういうこともハッキリ言うってことだよね。
あたしは手鏡を出して、髪を結っていく。
空井さんが服を脱いで、浴衣を着る。
あたしはニヤリと笑って、彼女に後ろから抱きついた。
「え!?」
「さわらせてあげたんだから、空井さんのもさわらせて?」
浴衣とキャミソールのなかに手を忍ばせて、ブラのホックを外す。
手を前にやって、彼女のを直接さわる。
「ちょっ」
鏡越しに、彼女の顔が真っ赤になっているのを見る。
永那が女の子を襲いたくなる気持ちが、少しわかった。
…可愛い。
「やわらかい」
手から少し溢れるくらいの、ちょうどいいサイズ。
永那は、いつもこれをさわってるんだ。
真ん中の突起に触れる。
肩がピクッと動く。
ああ、なんか、ゾクゾクする。
「さ、佐藤さん…だめ…」
少し抓ると「んっ」と声が漏れる。

「佐藤さん…!だ、だめだよ…これは、普通じゃないでしょ?」
手を押さえられる。
「そうだね」
あたしは手を抜く。
空井さんは汗をタラリと流して、ブラをつけた。
手鏡の前に座り直して、あたしは髪を結い直す。

2人の準備が終わってリビングに出ると、弟は寝転んで漫画を読んでいた。
ドアが開いたことに気づいて、起き上がる。
「う、わー…綺麗」
またそうやって、目をキラキラさせないで。
「千陽、写真嫌いなんだよね?」
「どうして?」
あたしは弟を睨む。
「いや…綺麗だから…撮りたかっただけ。でも、嫌がられるのは嫌だし、やっぱいいや!」
「べつに、いいけど」
あたしは奥歯を噛みしめる。
「え?いいよー」
「いいって言ってんじゃん。…もう、二度と言わない」
「ちょっ!待って!撮る!撮らせてください!」
弟はポケットからスマホを出す。
つい、睨む。
「姉ちゃんもー、隣に立って」
「え?私も?」
「早く!」
ぎこちなく、笑みを作る。
カシャッと音が鳴って、あたしはホッとする。
「絶対、どこにも、誰にも、あげたり送ったりしないでよ?」
「うん!」
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