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3.成長
154.海とか祭りとか
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4時頃マンションを出ると、浴衣姿の人がチラホラいた。
空井さんは簪を器用にさして、髪を上げている。
「誉、はぐれないでよ?」
「わかってるよー」
会場近くになると人がごった返していて、たまにぶつかってくる人なんかもいて、それだけで疲れる。
あたしは慌てて弟の腕を掴んだ。
弟が目を見開いてあたしを見る。
睨むと、少し頬を赤らめながら、そっぽを向いた。
人に寄りかかると、少しだけ疲れも癒える気がする。
弟の腕に抱きつくようにしながら歩く。
弟が持つハンディファンから風が吹いているけど、生ぬるい風がくるだけで、全然涼しいと思えない。
「千陽、何か食べたい物とか、やりたいこととかある?」
「べつに」
「そっかあ、じゃあ俺、ヨーヨー釣りやりたい!…姉ちゃん、いい?」
空井さんが頷く。
屋台がたくさん並んでいる。
ヨーヨー釣りの屋台について、あたし達は3人でやる。
弟は器用に1つ、オレンジ色の水風船を取っていた。
まだ紐が切れなくて、もう1つ取る。
今度は紫色。
そこで、こよりが切れてしまう。
空井さんも1つ、透明の水風船を取っていた。
あたしも集中して挑戦してみたけど、ようやく輪ゴムに引っ掛けられたと思ったら、水に浸かり過ぎたのか、持ち上がらずに切れてしまった。
「俺のあげる!どっちがいい?」
あたしは紫色の水風船を受け取る。
その後も、弟が行きたいと言うところについていく。
チョコバナナ、綿あめ、りんご飴(あたしはぶどう飴)、唐揚げ、じゃがバター、きゅうりの1本漬け、フランクフルト…たくさん食べた。
土日両日とも、小さな打ち上げ花火がある。
祭りの終わり際にあるから、それを楽しみに来る人もいる。
夜になるにつれ、どんどん人が増えていく。
「空井先輩」
弟が射的をしているのを眺めていたら、声をかけられた。
「あ、日住君と金井さん」
2人とも浴衣を着ていた。
…カップル?
でも、男のほうが空井さんを見て顔を赤らめている。
チラチラ空井さんを見るけど、真っ直ぐ見れない…みたいな感じ。
「佐藤さん、生徒会の後輩の日住君と、金井さん」
空井さんがわざわざあたしに紹介してくれる。
2人ともあたしをジッと見て、ペコリと頭を下げた。
「こちら、佐藤さん…と、今射的してるのが弟」
「…先輩方、綺麗ですね」
男が言う。
やっぱり、こいつかな。空井さんに告白した奴は。
顔もそこそこ整っていて、モテそう。
空井さんは、なに?モテる人にモテるタイプ?
「穂ちゃーん!千陽ー!」
聞き覚えのある声。
人混みをかき分けて、優里が走ってくる。
「わー!!2人とも似合ってるねー!」
優里は部活帰りらしく、制服を着ていた。
少し離れたところに制服を着ているグループがいるから、あれがバドミントン部の人達なのだろう。
射的を終えた弟があたし達の輪に入る。
「ねえ!写真撮ろー!」
優里が言う。
「SNSにあげたいから、千陽はダメだったらちょっと待ってて」
そう言われてあたしは少し距離を取る。
「あ、じゃあ先輩、俺達はこれで…」
そう言って、日住とやらが頭を下げる。
空井さんが頷いたのを確認して彼は歩き出すけど、少し名残惜しそうに空井さんを見ていた。
「撮るよー!」
優里が言って、弟がピースする。
カシャッと音が鳴る。
「SNSにあげるね?」
空井さんが頷く。
空井さんはSNSをやっていないらしく、優里のアカウントを興味深げに眺めていた。
「優里、俺もSNSにあげたいから送ってー!」
「いいよー!」
「じゃあ、今度は千陽も一緒に!」
あたしは小さくため息をついて、3人の輪に入る。
笑顔は作らない。
カシャッと音が鳴って、すぐにあたしはそっぽを向く。
「私、部活のみんなのところに戻るね!会えてよかったー!またねー!」
写真だけ撮って優里は去って行った。
「誉、ちょっと疲れちゃった。どこかで休も?」
空井さんが言う。
あたしもちょうど休みたかった。
どこもかしこも人だらけ。
かき氷を買って、会場から抜けた。
チラホラ人はいるけど、飲食店の裏側に回って、3人でしゃがむ。
弟が「姉ちゃん達、ちょっと、ヨーヨー近づけて」と言いながら、スマホのカメラを起動する。
弟が持つ水風船に、自分達のを近づける。
それを撮って、弟は楽しげにしていた。
「佐藤さん、足、痛くない?」
空井さんがポーチから絆創膏を出す。
あたしは下駄を脱いで、足の親指の付け根が赤くなっているのを見る。
「はい」
空井さんが絆創膏をわたしてくれる。
彼女も痛かったらしく、絆創膏を貼っていた。
あたしのかごバッグが振動する。
スマホを取り出すと、珍しく永那からの電話だった。
「なに?」
「今どこ?」
弟と空井さんがあたしを見る。
「どこって言われても…お祭り会場の近くで休んでる」
「今から行くから!」
少しイラついているような声でそう言われて、あたしの胸はキュゥッと締めつけられる。
…かっこいい。
「電話、出られるようにしといて」
「わかった」
そう言うと、すぐに切れる。
「なに?」
弟が聞く。
「永那、来るんだって」
「え?そうなの?」
空井さんが驚く。
「どっか、わかりやすい場所にいたほうがいいかも」
あたしが言うと、2人は頷いて立ち上がる。
空井さんは簪を器用にさして、髪を上げている。
「誉、はぐれないでよ?」
「わかってるよー」
会場近くになると人がごった返していて、たまにぶつかってくる人なんかもいて、それだけで疲れる。
あたしは慌てて弟の腕を掴んだ。
弟が目を見開いてあたしを見る。
睨むと、少し頬を赤らめながら、そっぽを向いた。
人に寄りかかると、少しだけ疲れも癒える気がする。
弟の腕に抱きつくようにしながら歩く。
弟が持つハンディファンから風が吹いているけど、生ぬるい風がくるだけで、全然涼しいと思えない。
「千陽、何か食べたい物とか、やりたいこととかある?」
「べつに」
「そっかあ、じゃあ俺、ヨーヨー釣りやりたい!…姉ちゃん、いい?」
空井さんが頷く。
屋台がたくさん並んでいる。
ヨーヨー釣りの屋台について、あたし達は3人でやる。
弟は器用に1つ、オレンジ色の水風船を取っていた。
まだ紐が切れなくて、もう1つ取る。
今度は紫色。
そこで、こよりが切れてしまう。
空井さんも1つ、透明の水風船を取っていた。
あたしも集中して挑戦してみたけど、ようやく輪ゴムに引っ掛けられたと思ったら、水に浸かり過ぎたのか、持ち上がらずに切れてしまった。
「俺のあげる!どっちがいい?」
あたしは紫色の水風船を受け取る。
その後も、弟が行きたいと言うところについていく。
チョコバナナ、綿あめ、りんご飴(あたしはぶどう飴)、唐揚げ、じゃがバター、きゅうりの1本漬け、フランクフルト…たくさん食べた。
土日両日とも、小さな打ち上げ花火がある。
祭りの終わり際にあるから、それを楽しみに来る人もいる。
夜になるにつれ、どんどん人が増えていく。
「空井先輩」
弟が射的をしているのを眺めていたら、声をかけられた。
「あ、日住君と金井さん」
2人とも浴衣を着ていた。
…カップル?
でも、男のほうが空井さんを見て顔を赤らめている。
チラチラ空井さんを見るけど、真っ直ぐ見れない…みたいな感じ。
「佐藤さん、生徒会の後輩の日住君と、金井さん」
空井さんがわざわざあたしに紹介してくれる。
2人ともあたしをジッと見て、ペコリと頭を下げた。
「こちら、佐藤さん…と、今射的してるのが弟」
「…先輩方、綺麗ですね」
男が言う。
やっぱり、こいつかな。空井さんに告白した奴は。
顔もそこそこ整っていて、モテそう。
空井さんは、なに?モテる人にモテるタイプ?
「穂ちゃーん!千陽ー!」
聞き覚えのある声。
人混みをかき分けて、優里が走ってくる。
「わー!!2人とも似合ってるねー!」
優里は部活帰りらしく、制服を着ていた。
少し離れたところに制服を着ているグループがいるから、あれがバドミントン部の人達なのだろう。
射的を終えた弟があたし達の輪に入る。
「ねえ!写真撮ろー!」
優里が言う。
「SNSにあげたいから、千陽はダメだったらちょっと待ってて」
そう言われてあたしは少し距離を取る。
「あ、じゃあ先輩、俺達はこれで…」
そう言って、日住とやらが頭を下げる。
空井さんが頷いたのを確認して彼は歩き出すけど、少し名残惜しそうに空井さんを見ていた。
「撮るよー!」
優里が言って、弟がピースする。
カシャッと音が鳴る。
「SNSにあげるね?」
空井さんが頷く。
空井さんはSNSをやっていないらしく、優里のアカウントを興味深げに眺めていた。
「優里、俺もSNSにあげたいから送ってー!」
「いいよー!」
「じゃあ、今度は千陽も一緒に!」
あたしは小さくため息をついて、3人の輪に入る。
笑顔は作らない。
カシャッと音が鳴って、すぐにあたしはそっぽを向く。
「私、部活のみんなのところに戻るね!会えてよかったー!またねー!」
写真だけ撮って優里は去って行った。
「誉、ちょっと疲れちゃった。どこかで休も?」
空井さんが言う。
あたしもちょうど休みたかった。
どこもかしこも人だらけ。
かき氷を買って、会場から抜けた。
チラホラ人はいるけど、飲食店の裏側に回って、3人でしゃがむ。
弟が「姉ちゃん達、ちょっと、ヨーヨー近づけて」と言いながら、スマホのカメラを起動する。
弟が持つ水風船に、自分達のを近づける。
それを撮って、弟は楽しげにしていた。
「佐藤さん、足、痛くない?」
空井さんがポーチから絆創膏を出す。
あたしは下駄を脱いで、足の親指の付け根が赤くなっているのを見る。
「はい」
空井さんが絆創膏をわたしてくれる。
彼女も痛かったらしく、絆創膏を貼っていた。
あたしのかごバッグが振動する。
スマホを取り出すと、珍しく永那からの電話だった。
「なに?」
「今どこ?」
弟と空井さんがあたしを見る。
「どこって言われても…お祭り会場の近くで休んでる」
「今から行くから!」
少しイラついているような声でそう言われて、あたしの胸はキュゥッと締めつけられる。
…かっこいい。
「電話、出られるようにしといて」
「わかった」
そう言うと、すぐに切れる。
「なに?」
弟が聞く。
「永那、来るんだって」
「え?そうなの?」
空井さんが驚く。
「どっか、わかりやすい場所にいたほうがいいかも」
あたしが言うと、2人は頷いて立ち上がる。
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