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3.成長
161.夏が終わる
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「え?それで?…それでどうしたの?全然聞きたくないけど」
「そのまま…私は胸を揉んで…佐藤さんは、その、自分で…」
永那ちゃんが頭を抱える。
「なにやってんだよ、ホントに」
「朝、キスされそうになったから、それは阻止したんだけど…誉ならいいのか?とか永那ちゃんなら?とか聞かれて、全部だめって答えたら、やっぱり穂だよね?って聞かれて…もちろん、ダメって言ったけど」
「…穂は、私がそうなったら、どう思うの?」
「…嫌、だ」
「そうだよね?」
永那ちゃんは両手で顔を覆って、「あ゙ー」と唸りながら倒れる。
「接近禁止って言ったじゃん!男はみんな狼…んー…あいつは男じゃないけども!1回キスされてるんだから、襲われる想定くらいできるでしょ!なんで一緒に寝ちゃうの!?」
「お母さんが…“こんな可愛い子を、こんな時間に1人で帰しちゃダメ”って言って…。わ、私も、不安だったよ!?でも…予備の布団もないし、床で寝るわけにもいかないし…誉も大きくなったから、一緒に寝るっていうのも…」
「んー」
顔を手で覆って倒れたまま、永那ちゃんは動かない。
「永那ちゃんは…すごいね」
「なにが?」
いつもより、冷たい言い方。
「あんなに可愛い人に、あんなふうに泣かれたり、迫られたりしても、揺らがなかったんだもんね。私、胸に手を押し付けられたとき、もう、耐えられなかったよ…」
顔ももちろんだけど、性格も可愛いんだもん。反則じゃない?
永那ちゃんが「ハァ」とため息をつく。
顔を覆っていた手を外して、勢いよく起き上がる。
「ま、そっか」
私は彼女を見て、首を傾げる。
「私もきっと、穂と同じ状況だったら、無理だったと思う。なんなら、襲って、そのままヤっちゃってたよ」
「え!?そ、そうなの?…でも、昔から佐藤さんに迫られてきたんじゃないの?」
「そんな、胸に手を押し付けられたことなんて…ない」
私は目を白黒させる。
「そもそも、口にキスされたこともないし、ほっぺにチューされたのが1番迫られたときだったよ」
永那ちゃんの顔に優しさが戻る。
「あいつの家で、やたら露出度の高い服を着て“シてもいいよ”とか言われたことはあるけど、言われただけで何もされなかったから、そのまま帰ったし。腕に胸を押し付けられるのはしょっちゅうだったけど…まあ、それでもけっこうキツかったけど、耐えられるレベルだった」
永那ちゃんが私を見る。
「だから…まあ、もし千陽がそういうことを私にしようと思って実行していたとしたら、耐えられなかったと思う」
「そ、そっか…」
「でもこれからは、ちゃんと気をつけてよ?…もう、嫌だよ?」
「…はい。頑張ります」
永那ちゃんの左眉が上がって、またため息をつく。
「穂が“頑張れる”ように、私がお仕置きをしましょう。次はしないように、ね?」
「え!?」
ニヤリと笑われる。
この笑みは…。
思い返せば、最初のエッチのときも、公園のエッチのときも“お仕置きエッチ”だった…。
最初は、私から言ったんだけど。
永那ちゃん、気に入ってるのかな…。
永那ちゃんはスマホを出して、何やらやり始める。
「だ、だめだよ!」
「なにが?」
チラリと視線をこちらにやる。
「あの…ど、動画とか、撮っちゃだめだよ?…リベンジポルノは、気をつけないと…永那ちゃんが、そういうことをする人とは思わないけど…」
永那ちゃんは鼻で笑って、すぐに視線をスマホに戻した。
「穂、ここの住所教えて?」
「な、なんで?」
「プレゼントを買ったから」
「プレゼント?」
「たぶん明日届くから」
そう言われて、家の住所を言う。
お仕置きって言ってたのに、プレゼント?
「よし!…絶対に私が来るまで開けないように」
永那ちゃんの家に届くようにすればいいのに。
「さて、浴衣姿の可愛い彼女が目の前にいるのに?何もしないと言うのもおかしな話だから…」
私は…永那ちゃんがもっと怒ったり、悲しんだり…それこそ佐藤さんと絶交とか言い出さないか不安だったけれど。
もう切り替えたらしく、ニコニコ笑っている。
「え、永那ちゃん…怒ってないの?」
「まあ、悪いのは9割方千陽のほうだろうし?穂に怒っても仕方ないよ…隠されて、後でバレる…みたいなことにはなってないわけだし」
永那ちゃんがベッドに乗って、私の背後に回る。
後ろから抱きしめられて、心臓がピョンと跳ねた。
「穂、好きだよ」
その言葉に安心して、回された手を握る。
「私も、永那ちゃん、好き」
耳から、首筋にかけて、キスを落とされる。
「今日も簪つけてくれてる…これ、めっちゃ可愛い」
「一昨日、言われたから…」
永那ちゃんがお祭りで会いに来てくれたとき、髪型を褒めてくれた。
部屋で見せたときはお団子にしただけだったから“見れて良かった”と嬉しそうにしていた。
永那ちゃんは、ずっと…滞在していた30分くらいの間、ずっと、私を抱きしめていた。
最後の5分だけ焼きそばを買って、口付けを交わして、帰っていった。
抱きしめられている最中「こんなエロい姿、あの後輩が先に見たなんて思うと、妬くなー」なんて耳元で囁いた。
屋台の食べ物の匂いがたくさんしてくるのに、永那ちゃんの匂いが鼻を通って、私もギュッと抱きしめた。
このまま一緒にいたい…と思ったけど、来てくれただけでも嬉しくて、わがままなんて言えなかった。
だから、今日。
今日も褒められたくて、喜んでもらいたくて、あのときと同じようにした。
「そのまま…私は胸を揉んで…佐藤さんは、その、自分で…」
永那ちゃんが頭を抱える。
「なにやってんだよ、ホントに」
「朝、キスされそうになったから、それは阻止したんだけど…誉ならいいのか?とか永那ちゃんなら?とか聞かれて、全部だめって答えたら、やっぱり穂だよね?って聞かれて…もちろん、ダメって言ったけど」
「…穂は、私がそうなったら、どう思うの?」
「…嫌、だ」
「そうだよね?」
永那ちゃんは両手で顔を覆って、「あ゙ー」と唸りながら倒れる。
「接近禁止って言ったじゃん!男はみんな狼…んー…あいつは男じゃないけども!1回キスされてるんだから、襲われる想定くらいできるでしょ!なんで一緒に寝ちゃうの!?」
「お母さんが…“こんな可愛い子を、こんな時間に1人で帰しちゃダメ”って言って…。わ、私も、不安だったよ!?でも…予備の布団もないし、床で寝るわけにもいかないし…誉も大きくなったから、一緒に寝るっていうのも…」
「んー」
顔を手で覆って倒れたまま、永那ちゃんは動かない。
「永那ちゃんは…すごいね」
「なにが?」
いつもより、冷たい言い方。
「あんなに可愛い人に、あんなふうに泣かれたり、迫られたりしても、揺らがなかったんだもんね。私、胸に手を押し付けられたとき、もう、耐えられなかったよ…」
顔ももちろんだけど、性格も可愛いんだもん。反則じゃない?
永那ちゃんが「ハァ」とため息をつく。
顔を覆っていた手を外して、勢いよく起き上がる。
「ま、そっか」
私は彼女を見て、首を傾げる。
「私もきっと、穂と同じ状況だったら、無理だったと思う。なんなら、襲って、そのままヤっちゃってたよ」
「え!?そ、そうなの?…でも、昔から佐藤さんに迫られてきたんじゃないの?」
「そんな、胸に手を押し付けられたことなんて…ない」
私は目を白黒させる。
「そもそも、口にキスされたこともないし、ほっぺにチューされたのが1番迫られたときだったよ」
永那ちゃんの顔に優しさが戻る。
「あいつの家で、やたら露出度の高い服を着て“シてもいいよ”とか言われたことはあるけど、言われただけで何もされなかったから、そのまま帰ったし。腕に胸を押し付けられるのはしょっちゅうだったけど…まあ、それでもけっこうキツかったけど、耐えられるレベルだった」
永那ちゃんが私を見る。
「だから…まあ、もし千陽がそういうことを私にしようと思って実行していたとしたら、耐えられなかったと思う」
「そ、そっか…」
「でもこれからは、ちゃんと気をつけてよ?…もう、嫌だよ?」
「…はい。頑張ります」
永那ちゃんの左眉が上がって、またため息をつく。
「穂が“頑張れる”ように、私がお仕置きをしましょう。次はしないように、ね?」
「え!?」
ニヤリと笑われる。
この笑みは…。
思い返せば、最初のエッチのときも、公園のエッチのときも“お仕置きエッチ”だった…。
最初は、私から言ったんだけど。
永那ちゃん、気に入ってるのかな…。
永那ちゃんはスマホを出して、何やらやり始める。
「だ、だめだよ!」
「なにが?」
チラリと視線をこちらにやる。
「あの…ど、動画とか、撮っちゃだめだよ?…リベンジポルノは、気をつけないと…永那ちゃんが、そういうことをする人とは思わないけど…」
永那ちゃんは鼻で笑って、すぐに視線をスマホに戻した。
「穂、ここの住所教えて?」
「な、なんで?」
「プレゼントを買ったから」
「プレゼント?」
「たぶん明日届くから」
そう言われて、家の住所を言う。
お仕置きって言ってたのに、プレゼント?
「よし!…絶対に私が来るまで開けないように」
永那ちゃんの家に届くようにすればいいのに。
「さて、浴衣姿の可愛い彼女が目の前にいるのに?何もしないと言うのもおかしな話だから…」
私は…永那ちゃんがもっと怒ったり、悲しんだり…それこそ佐藤さんと絶交とか言い出さないか不安だったけれど。
もう切り替えたらしく、ニコニコ笑っている。
「え、永那ちゃん…怒ってないの?」
「まあ、悪いのは9割方千陽のほうだろうし?穂に怒っても仕方ないよ…隠されて、後でバレる…みたいなことにはなってないわけだし」
永那ちゃんがベッドに乗って、私の背後に回る。
後ろから抱きしめられて、心臓がピョンと跳ねた。
「穂、好きだよ」
その言葉に安心して、回された手を握る。
「私も、永那ちゃん、好き」
耳から、首筋にかけて、キスを落とされる。
「今日も簪つけてくれてる…これ、めっちゃ可愛い」
「一昨日、言われたから…」
永那ちゃんがお祭りで会いに来てくれたとき、髪型を褒めてくれた。
部屋で見せたときはお団子にしただけだったから“見れて良かった”と嬉しそうにしていた。
永那ちゃんは、ずっと…滞在していた30分くらいの間、ずっと、私を抱きしめていた。
最後の5分だけ焼きそばを買って、口付けを交わして、帰っていった。
抱きしめられている最中「こんなエロい姿、あの後輩が先に見たなんて思うと、妬くなー」なんて耳元で囁いた。
屋台の食べ物の匂いがたくさんしてくるのに、永那ちゃんの匂いが鼻を通って、私もギュッと抱きしめた。
このまま一緒にいたい…と思ったけど、来てくれただけでも嬉しくて、わがままなんて言えなかった。
だから、今日。
今日も褒められたくて、喜んでもらいたくて、あのときと同じようにした。
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