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3.成長
160.夏が終わる
■■■
佐藤さんは朝とお昼を一緒に食べて、帰った。
この時間ならまだそこまで混んではいないはず。
食事中、彼女はご機嫌だった。
約束通り、私は佐藤さんを“佐藤さん”と呼び、佐藤さんは私を“空井さん”と呼んだ。
佐藤さんが帰って、1人部屋にこもった。
…どう、永那ちゃんに話せばいいんだろう。
頭を抱えた。文字通り、本当に。
永那ちゃんは、あんな凄まじい攻めに耐えたの?
私は、泣いている彼女を突き放すなんてできなくて、つい許してしまった。
お、恐ろしい…。
海の日、佐藤さんが泣いたから、肩を少し抱いたと永那ちゃんから謝られた。
“永那が言ったから好きになったのに。責任取ってよ。あたしには永那しかいないのに”と泣かれて、ついそうしてしまったと。
私は全然、肩を抱くくらい気にしないから、謝らなくていいと言ったけど、永那ちゃんは気にしているみたいだった。
そんな永那ちゃんに…私は何て説明をすればいいの?
怒るかな。悲しむかな。呆れるかな。
…永那ちゃんがどんな反応をするのか、全く想像できない。
それこそ佐藤さんが言うように、本当に“絶交”なんてことになったら洒落にならない。
夜まで考えても何も思い浮かばず、夜ご飯を久しぶりに失敗して、お母さんと誉に心配された。
そしてベッドの前に立って、また頭を抱えた。
今日は昼まで佐藤さんがいたから、ベッドのシーツを洗えなかったんだ。
寝転ぶと、少し佐藤さんの匂いがする。
こう…永那ちゃんが最初に寝たときも同じだったけど、自分のベッドから人の匂いがするっていうのは、なんだか不思議な気持ちになる。
明日の朝、シーツを替えるだけ替えよう。
しばらく眠れなかったけど、一応は眠れた。
目覚めた瞬間から憂鬱で、項垂れる。
私はシーツを替えて、朝ご飯を食べて、浴衣を着る。
ため息を大きくついて、駅に向かう。
駅にはもう、永那ちゃんが立っていた。
嬉しそうに笑う顔を向けられて、申し訳なくなって俯く。
「穂?」
「永那ちゃん…」
「なんかあった?」
私は頷く。
「でも、家に帰ってから、話す」
「…わかった。じゃあ、行こっか」
永那ちゃんと繋ぐ手は、しっとりと汗をかいていて、それすらも申し訳なく思えてくる。
部屋について、お茶を用意する。
2人でベッドに座った。
「で?どうした?」
「あの…」
私は深呼吸する。
「一昨日ね、佐藤さんが家に泊まったの。夜遅かったから」
永那ちゃんをチラリと見ると、目を細めていた。
あー…この目は、もう察してるのかな…。
「あの、家に予備の布団がなくて、一緒にベッドで寝たんだけど…」
私は俯いて、どんどん顔が熱くなっていく。
「で?」
トーンの低い声。
心臓がドッドッドッと駆けるように速くなる。
「キ、キスを…してしまいました」
「浮気じゃん」
胸がズキリと痛む。
「あ、あの…最初は、なんで私が佐藤さんを好きなのか聞かれて、それに答えたの。結果的には、私が永那ちゃんを佐藤さんから奪ってしまった形になったけど、それでも佐藤さんは怒りもせず、一緒に遊んでくれて、それが嬉しかったから好きだって」
永那ちゃんは足を組んで、膝に頬杖をついている。
睨むように見られて、私は萎縮する。
「そしたら、泣き始めちゃって…」
永那ちゃんの眉がピクリと動く。
「だから私、彼女を抱きしめて、顔を拭いてあげて…。そしたらいきなり」
永那ちゃんの眉間にシワが寄る。
「“だめ”って言ったんだけど、佐藤さん“寂しい”って。何度も寂しいって言って。永那ちゃんを盗ったんだから、その分を埋めてよって言われて」
「許しちゃったんだ?」
やっと反応が返ってくる。
私は頷く。
「それで?」
「“今だけ千陽って呼んでほしい”って言うから、千陽って呼んで…佐藤さんも私のことを名前で呼んで」
永那ちゃんが大きくため息をつく。
「それで、永那ちゃんとのセックスは気持ちいいか?って聞かれて“うん”って答えて。どんなことしたのかも聞かれて…友達なら話すのは普通でしょって」
永那ちゃんが目を閉じてしまう。
「私の、この首の痕」
私は永那ちゃんにつけられたマーキングに触れる。
「“キスマークでしょ?”って言われて。“いつつけられたの?”って聞かれたから体育祭の日って答えたら、永那ちゃんが手を振り払った日だねって言われたの」
「うん」
永那ちゃんは目を閉じたまま、ジッと動かない。
「佐藤さんが…私に背を向けて…気づいたら、服のボタンを全部外していて、私の手を…胸に…。お詫びに、さわってって…」
「ハァ」と大きなため息をついて、項垂れる。
「…マジで浮気じゃん」
「ご、ごめんなさい」
佐藤さんは朝とお昼を一緒に食べて、帰った。
この時間ならまだそこまで混んではいないはず。
食事中、彼女はご機嫌だった。
約束通り、私は佐藤さんを“佐藤さん”と呼び、佐藤さんは私を“空井さん”と呼んだ。
佐藤さんが帰って、1人部屋にこもった。
…どう、永那ちゃんに話せばいいんだろう。
頭を抱えた。文字通り、本当に。
永那ちゃんは、あんな凄まじい攻めに耐えたの?
私は、泣いている彼女を突き放すなんてできなくて、つい許してしまった。
お、恐ろしい…。
海の日、佐藤さんが泣いたから、肩を少し抱いたと永那ちゃんから謝られた。
“永那が言ったから好きになったのに。責任取ってよ。あたしには永那しかいないのに”と泣かれて、ついそうしてしまったと。
私は全然、肩を抱くくらい気にしないから、謝らなくていいと言ったけど、永那ちゃんは気にしているみたいだった。
そんな永那ちゃんに…私は何て説明をすればいいの?
怒るかな。悲しむかな。呆れるかな。
…永那ちゃんがどんな反応をするのか、全く想像できない。
それこそ佐藤さんが言うように、本当に“絶交”なんてことになったら洒落にならない。
夜まで考えても何も思い浮かばず、夜ご飯を久しぶりに失敗して、お母さんと誉に心配された。
そしてベッドの前に立って、また頭を抱えた。
今日は昼まで佐藤さんがいたから、ベッドのシーツを洗えなかったんだ。
寝転ぶと、少し佐藤さんの匂いがする。
こう…永那ちゃんが最初に寝たときも同じだったけど、自分のベッドから人の匂いがするっていうのは、なんだか不思議な気持ちになる。
明日の朝、シーツを替えるだけ替えよう。
しばらく眠れなかったけど、一応は眠れた。
目覚めた瞬間から憂鬱で、項垂れる。
私はシーツを替えて、朝ご飯を食べて、浴衣を着る。
ため息を大きくついて、駅に向かう。
駅にはもう、永那ちゃんが立っていた。
嬉しそうに笑う顔を向けられて、申し訳なくなって俯く。
「穂?」
「永那ちゃん…」
「なんかあった?」
私は頷く。
「でも、家に帰ってから、話す」
「…わかった。じゃあ、行こっか」
永那ちゃんと繋ぐ手は、しっとりと汗をかいていて、それすらも申し訳なく思えてくる。
部屋について、お茶を用意する。
2人でベッドに座った。
「で?どうした?」
「あの…」
私は深呼吸する。
「一昨日ね、佐藤さんが家に泊まったの。夜遅かったから」
永那ちゃんをチラリと見ると、目を細めていた。
あー…この目は、もう察してるのかな…。
「あの、家に予備の布団がなくて、一緒にベッドで寝たんだけど…」
私は俯いて、どんどん顔が熱くなっていく。
「で?」
トーンの低い声。
心臓がドッドッドッと駆けるように速くなる。
「キ、キスを…してしまいました」
「浮気じゃん」
胸がズキリと痛む。
「あ、あの…最初は、なんで私が佐藤さんを好きなのか聞かれて、それに答えたの。結果的には、私が永那ちゃんを佐藤さんから奪ってしまった形になったけど、それでも佐藤さんは怒りもせず、一緒に遊んでくれて、それが嬉しかったから好きだって」
永那ちゃんは足を組んで、膝に頬杖をついている。
睨むように見られて、私は萎縮する。
「そしたら、泣き始めちゃって…」
永那ちゃんの眉がピクリと動く。
「だから私、彼女を抱きしめて、顔を拭いてあげて…。そしたらいきなり」
永那ちゃんの眉間にシワが寄る。
「“だめ”って言ったんだけど、佐藤さん“寂しい”って。何度も寂しいって言って。永那ちゃんを盗ったんだから、その分を埋めてよって言われて」
「許しちゃったんだ?」
やっと反応が返ってくる。
私は頷く。
「それで?」
「“今だけ千陽って呼んでほしい”って言うから、千陽って呼んで…佐藤さんも私のことを名前で呼んで」
永那ちゃんが大きくため息をつく。
「それで、永那ちゃんとのセックスは気持ちいいか?って聞かれて“うん”って答えて。どんなことしたのかも聞かれて…友達なら話すのは普通でしょって」
永那ちゃんが目を閉じてしまう。
「私の、この首の痕」
私は永那ちゃんにつけられたマーキングに触れる。
「“キスマークでしょ?”って言われて。“いつつけられたの?”って聞かれたから体育祭の日って答えたら、永那ちゃんが手を振り払った日だねって言われたの」
「うん」
永那ちゃんは目を閉じたまま、ジッと動かない。
「佐藤さんが…私に背を向けて…気づいたら、服のボタンを全部外していて、私の手を…胸に…。お詫びに、さわってって…」
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