文字の大きさ
大
中
小
187 / 595
4.踏み込む
186.文化祭準備
両肩から手が伸びてくる。
びっくりして振り向くと、千陽がいた。
後ろから抱きしめられて、彼女の胸のあたたかさが背中に押し付けられる。
「穂」
耳元で囁かれる。
「もし永那が他の女にいったら、あたしと一緒にいようね?」
そんな言い方をされても、本当に困る。
「あたし、永那のことは奪えないって諦めてるけど、穂は奪えるかも…って思ってる」
私も奪えません。
「大事な彼女を放って、他の女の黄色い声に鼻の下伸ばすなんて、信じられない」
彼女の顔が異常に近い。
私は少しも動いてはいけない気がして、目を閉じて、全神経を集中する。
「穂、好き」
奥歯を噛みしめる。
「おい」
ぬくもりが背中から消える。
「なにやってんだよ」
永那ちゃんが千陽の腕を掴んでいる。
「痛い」
「うっさい。離れろ」
2人が睨み合う。
「え、永那と千陽喧嘩?」「どした?」「永那ホントかっこいい」「痴話喧嘩?」
クラスの女子が周りに集まってくる。
「2人ともなにやってんのー」
優里ちゃんが割って入る。
「ほら、すぐ喧嘩しない!」
永那ちゃんがイライラしながらも、千陽の腕を掴む手を離した。
「穂?こいつの妄言に耳を貸してはいけないよ?」
永那ちゃんに両耳を塞がれる。
目の前に永那ちゃんの顔があって、見つめられて、鼓動がトクトクと速まっていく。
「千陽、マジでなにしたの?」「空井さんと仲良かったっけ?」
周りの人たちの笑い声が聞こえるけど、それは曇って聞こえてくる。
ただジッと永那ちゃんと見つめ合っていると、2人だけの時間みたいにも思えた。
顔の前で、パチンと手が叩かれる。
「こらこら、イチャイチャしない!」
優里ちゃんが言う。
そう言われて、急に恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
「え、どゆこと?」と1人が言って、優里ちゃんが「あ、しまった…」という顔をする。
期末テスト期間中と夏休みのノリで言ったんだろうな。
永那ちゃんが立ち上がって「今、穂と付き合ってるからさ」と言い放った。
クラスがシンと静まり返る。
「マジで!?」
ドッとクラス中が湧く。
穴があったら入りたい。
「え、永那って千陽と付き合ってたんじゃないの?」「なんで空井さん?」「空井さんって恋愛するんだ…」「なんで付き合うことになったの?」「いつから?」
いろんな声が飛び交って、消えたくなる。
私は両手で顔を覆って、目をギュッと閉じた。
「これでみんな知ったからね?…千陽、変なことすんなよ?」
千陽は何も返事をしない。
ぷいとそっぽを向いてるところが想像できる。
チャイムが鳴っても、みんながコソコソ何か話しているのがわかって、授業に集中できなかった。
今までは恋愛話に興味がなくて、話題になっていても何も思わなかったけど、いざ当事者になると、“早くみんな忘れて”と心から願った。
休み時間、永那ちゃんが寝ているから、みんな私のところに来た。
話したこともない人からたくさん話しかけられて、逃げるようにトイレに行った。
1年生のトイレにひきこもらせてもらう。
…もう嫌だ。
っていうか、なんで永那ちゃん寝てるの!?
あんな暴露してすぐ寝るなんて、ひどいよ…。
…だんだんイライラしてきた。
“自ら宣伝するように言うのはやめよう”って言ったのに、なんであんな大声で、全員に…。
千陽のことはわかるけど、だからって、あんなふうに言って放置って…!
腕時計を見て、私はトイレから出る。
教室に戻ると、みんなの視線が突き刺さる。
席に座ると、前の席の子が振り向いた。
「空井、さ…ん…。ごめんなさい…」
彼女は何も話さずに、すぐに前を向いた。
不思議と脳みそは冷え切っていて、授業の内容もスラスラと入ってきた。
休み時間は本を読む。
優里ちゃんがそばに来て謝っていたけど「優里ちゃんは何も悪くないよ?」と言ったら、また謝って席に戻っていった。
授業が終わっても、永那ちゃんは起きなかった。
私はそのまま家に帰る。
千陽からの視線を感じたけれど、今、話したい気分にはなれなかった。
彼女からも何も話しかけてこなかったのは、彼女が私の気持ちを察してくれたからなのかは、わからない。
次の日、何度か誰かに話しかけられたけれど、その誰もが、結局何も話さないまま去っていく。
好都合にも思えた。
誰とも話したい気分にならない。
…それでも、生徒会はある。
一応、生徒会長候補になることを発表する日なのだから“しっかりしなくては”という気持ちに持っていく。
生徒会室の前で深呼吸して、ドアを開ける。
「おつかれさまです、空井先輩」
金井さんが言う。
「おつかれさま」
いつもの席に座る。
生徒会長は既に座っていて、彼を見ると腕組みしながら頷かれた。
全員が揃ったところで、生徒会長から次期生徒会長候補として、私の名前が呼ばれた。
「他に立候補する方がいるかもしれませんが、今回の文化祭では仮の生徒会長として、精一杯頑張ります。よろしくお願いします」
そう挨拶して、拍手される。
次に副生徒会長の挨拶に移行した。
その後、文化祭についての話し合いが行われ、生徒会は6時過ぎに終わった。
「空井先輩」
日住君に声をかけられた。
少し顔を近づけられて「聞きましたよ…大丈夫ですか?」と聞かれる。
「なにが?」
「…両角先輩と空井先輩がお付き合いしてるって。すごい話題になってますね」
びっくりして振り向くと、千陽がいた。
後ろから抱きしめられて、彼女の胸のあたたかさが背中に押し付けられる。
「穂」
耳元で囁かれる。
「もし永那が他の女にいったら、あたしと一緒にいようね?」
そんな言い方をされても、本当に困る。
「あたし、永那のことは奪えないって諦めてるけど、穂は奪えるかも…って思ってる」
私も奪えません。
「大事な彼女を放って、他の女の黄色い声に鼻の下伸ばすなんて、信じられない」
彼女の顔が異常に近い。
私は少しも動いてはいけない気がして、目を閉じて、全神経を集中する。
「穂、好き」
奥歯を噛みしめる。
「おい」
ぬくもりが背中から消える。
「なにやってんだよ」
永那ちゃんが千陽の腕を掴んでいる。
「痛い」
「うっさい。離れろ」
2人が睨み合う。
「え、永那と千陽喧嘩?」「どした?」「永那ホントかっこいい」「痴話喧嘩?」
クラスの女子が周りに集まってくる。
「2人ともなにやってんのー」
優里ちゃんが割って入る。
「ほら、すぐ喧嘩しない!」
永那ちゃんがイライラしながらも、千陽の腕を掴む手を離した。
「穂?こいつの妄言に耳を貸してはいけないよ?」
永那ちゃんに両耳を塞がれる。
目の前に永那ちゃんの顔があって、見つめられて、鼓動がトクトクと速まっていく。
「千陽、マジでなにしたの?」「空井さんと仲良かったっけ?」
周りの人たちの笑い声が聞こえるけど、それは曇って聞こえてくる。
ただジッと永那ちゃんと見つめ合っていると、2人だけの時間みたいにも思えた。
顔の前で、パチンと手が叩かれる。
「こらこら、イチャイチャしない!」
優里ちゃんが言う。
そう言われて、急に恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
「え、どゆこと?」と1人が言って、優里ちゃんが「あ、しまった…」という顔をする。
期末テスト期間中と夏休みのノリで言ったんだろうな。
永那ちゃんが立ち上がって「今、穂と付き合ってるからさ」と言い放った。
クラスがシンと静まり返る。
「マジで!?」
ドッとクラス中が湧く。
穴があったら入りたい。
「え、永那って千陽と付き合ってたんじゃないの?」「なんで空井さん?」「空井さんって恋愛するんだ…」「なんで付き合うことになったの?」「いつから?」
いろんな声が飛び交って、消えたくなる。
私は両手で顔を覆って、目をギュッと閉じた。
「これでみんな知ったからね?…千陽、変なことすんなよ?」
千陽は何も返事をしない。
ぷいとそっぽを向いてるところが想像できる。
チャイムが鳴っても、みんながコソコソ何か話しているのがわかって、授業に集中できなかった。
今までは恋愛話に興味がなくて、話題になっていても何も思わなかったけど、いざ当事者になると、“早くみんな忘れて”と心から願った。
休み時間、永那ちゃんが寝ているから、みんな私のところに来た。
話したこともない人からたくさん話しかけられて、逃げるようにトイレに行った。
1年生のトイレにひきこもらせてもらう。
…もう嫌だ。
っていうか、なんで永那ちゃん寝てるの!?
あんな暴露してすぐ寝るなんて、ひどいよ…。
…だんだんイライラしてきた。
“自ら宣伝するように言うのはやめよう”って言ったのに、なんであんな大声で、全員に…。
千陽のことはわかるけど、だからって、あんなふうに言って放置って…!
腕時計を見て、私はトイレから出る。
教室に戻ると、みんなの視線が突き刺さる。
席に座ると、前の席の子が振り向いた。
「空井、さ…ん…。ごめんなさい…」
彼女は何も話さずに、すぐに前を向いた。
不思議と脳みそは冷え切っていて、授業の内容もスラスラと入ってきた。
休み時間は本を読む。
優里ちゃんがそばに来て謝っていたけど「優里ちゃんは何も悪くないよ?」と言ったら、また謝って席に戻っていった。
授業が終わっても、永那ちゃんは起きなかった。
私はそのまま家に帰る。
千陽からの視線を感じたけれど、今、話したい気分にはなれなかった。
彼女からも何も話しかけてこなかったのは、彼女が私の気持ちを察してくれたからなのかは、わからない。
次の日、何度か誰かに話しかけられたけれど、その誰もが、結局何も話さないまま去っていく。
好都合にも思えた。
誰とも話したい気分にならない。
…それでも、生徒会はある。
一応、生徒会長候補になることを発表する日なのだから“しっかりしなくては”という気持ちに持っていく。
生徒会室の前で深呼吸して、ドアを開ける。
「おつかれさまです、空井先輩」
金井さんが言う。
「おつかれさま」
いつもの席に座る。
生徒会長は既に座っていて、彼を見ると腕組みしながら頷かれた。
全員が揃ったところで、生徒会長から次期生徒会長候補として、私の名前が呼ばれた。
「他に立候補する方がいるかもしれませんが、今回の文化祭では仮の生徒会長として、精一杯頑張ります。よろしくお願いします」
そう挨拶して、拍手される。
次に副生徒会長の挨拶に移行した。
その後、文化祭についての話し合いが行われ、生徒会は6時過ぎに終わった。
「空井先輩」
日住君に声をかけられた。
少し顔を近づけられて「聞きましたよ…大丈夫ですか?」と聞かれる。
「なにが?」
「…両角先輩と空井先輩がお付き合いしてるって。すごい話題になってますね」
感想 56
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
✽全28話完結
✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
✽他誌にも掲載中です。
✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。
→表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?