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4.踏み込む
237.先輩
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「でもさ、私達からお母さんにちゃんと何度も説明して、その人がお姉さんにも話してくれたら、大丈夫じゃない?」
「そう…だと、いいな」
「頑張ったんだね、永那ちゃん」
頭を撫でてくれる、その姿が、愛おしい。
「穂と千陽がいてくれたから…話せたんだよ」
彼女が、透き通るような、綺麗な笑顔を浮かべた。
つい、私も笑みが溢れる。
「それで…もし、その人に、会うってなったら…穂は、嫌かな?」
「どうして?」
「え…いや、だって…そういう関係だった相手だよ?嫌じゃない?」
「でも、永那ちゃんを助けてくれた人なんでしょ?」
純粋に言われると、なんだか胸の辺りがむず痒くなるような感覚に襲われる。
「んー…まあ、でも…」
息を吐き出す。
「永那ちゃんは、あんまり、会いたくないの?」
「…わからない」
「私、一緒に行こうか?」
フッと笑ってしまう。
「それは、大丈夫」
「そっか」
会わずにすむなら、会いたくない。
思い出したくない、過去だから。
でも、彼女がお姉ちゃんに私のことを話してくれるなら、会ってお礼を言うのが筋だと思う。
心音先輩が“会いたくない”と言うなら、それはそれで良いけど…私が“会いたくない”と言うのは、我がままに思えた。
「穂、キスしたい」
「え!?」
「だめ?」
「いい…よ…」
チラチラ千陽を見てから、彼女の頬がピンク色に染まる。
可愛い。
彼女の顎を寄せて、そっと唇を重ねる。
何度も、何度も。
「いつまでやってんの。…人、来るよ。もうすぐ来る時間でしょ」
千陽がそばに立って言う。
私はもっとしていたかったけど、穂はその言葉で慌てて私から離れた。
前髪を指で梳く。
穂は…照れるといつもそうする。
優里が学校に来て、2日間だけ私の家で勉強会をすることにしたと伝えた。
「永那の家初めてー!楽しみー!」
優里のいつもの調子が、安心する。
とりあえず、私の事情は優里には話さないことにした。
優里のことだから、あからさまに心配して、それが思いっきり顔に出かねないと判断した。
何かあればその都度説明することにして、とりあえず放置。
今のお母さんの感じなら、たぶん大丈夫。
そう、信じたい。
次の週の、火曜日。
3人が家に来た。
優里は鈍くさいところもあるけど、基本的に礼儀正しい。
愛嬌もあるし、素直だし、お母さんとも上手くやってくれた。
…というか、一番お母さんと友達っぽく話していた。
「永那のお母さん可愛いー!綺麗!美人!」
「え~!!嬉し~!!!」
2人で抱き合っていた。
穂も千陽もそんなことしないから、なんか、新鮮だった。
私は今まで、勝手に恥ずかしいと思って、誰も家に呼ばなかった。
今となっては、その考えが馬鹿馬鹿しいとすら思う。
友達を呼ぶようになってから、お母さんは鼻歌を歌いながらお風呂に入るようになった。
穂が来た最初の日はまだ無理だったけど、たった1ヶ月でこんなにも変われるのかと、驚いている。
思えば、高1のときに優里が話しかけてきたときも、こんな感じだったような。
千陽の前に立って、目を輝かせながら「ねえ、なんでそんなに綺麗なの?お人形さんなの?」と聞いてきた。
千陽は首を傾げてから「知らない」と答えた。
「かーっ!完璧とはこのことか!神は二物も三物も与えるのだ!なぜ!なぜ!私には何一つ与えなかったのかー!神よー!」
そう叫んで両手を上げていた。
「ちょっとさわらせて?」
舌をペロリと出しながら、千陽の胸を指差す。
「やだ」
「えー!お願いお願いお願いします!」
千陽の眉間にシワが寄る。
「ちょっとだけ~!」
千陽は大きくため息をついて、無視した。
優里が盛大に転んでスカートが捲れてショーツが丸見えになったとき、筆箱を散乱させて転がる消しゴムを追いかけていたとき、ゴミと教科書を両方持っていて教科書をゴミ箱に入れたとき…他にもいろいろあるけど、そういうことをしでかしたとき、千陽がいつも面倒そうに手伝っていた。
面倒そうだけど…楽しそうに。
それから千陽と優里は仲良くなっていって、気づけば私達の間に優里がいた。
体育のとき、更衣室で千陽の胸をさわっている優里を見た。
(さわれて良かったね)と心の中で言っておいた。
優里は「破壊力!」と叫んで、自分の胸と比べていた。
そんな落ち込むならさわらなきゃいいのに…と思う。
「永那ちゃん」
「ん?」
「あのさ…4ヶ月記念日のことなんだけど」
「うん?」
「デート、したい」
畳に正座して、俯きがちに、上目遣いに私を見る。
「デート?」
「うん。家じゃなくて…どこか、2人で出かけたいんだけど…どうかな?…私達、あんまり、そういう、ちゃんとしたデート、してない気がして…」
…たしかに。
4人で出かけたり、公園に行ったりはしたけど…デートらしいデートと言えば、私が告白した、海に行った日以来、ないんじゃないの?
「わかった。どこ行きたい?」
「水族館とか…」
「水族館?いいよ」
穂が子供みたいに笑う。
…可愛い。
「私ね、いろいろ調べたの」
誉と海に行ったとき、誉も似たようなこと言ってたな。性格の似た姉弟。
…っていうか穂、テスト勉強はいいのかな。
私が言えることでもないけど。
「そう…だと、いいな」
「頑張ったんだね、永那ちゃん」
頭を撫でてくれる、その姿が、愛おしい。
「穂と千陽がいてくれたから…話せたんだよ」
彼女が、透き通るような、綺麗な笑顔を浮かべた。
つい、私も笑みが溢れる。
「それで…もし、その人に、会うってなったら…穂は、嫌かな?」
「どうして?」
「え…いや、だって…そういう関係だった相手だよ?嫌じゃない?」
「でも、永那ちゃんを助けてくれた人なんでしょ?」
純粋に言われると、なんだか胸の辺りがむず痒くなるような感覚に襲われる。
「んー…まあ、でも…」
息を吐き出す。
「永那ちゃんは、あんまり、会いたくないの?」
「…わからない」
「私、一緒に行こうか?」
フッと笑ってしまう。
「それは、大丈夫」
「そっか」
会わずにすむなら、会いたくない。
思い出したくない、過去だから。
でも、彼女がお姉ちゃんに私のことを話してくれるなら、会ってお礼を言うのが筋だと思う。
心音先輩が“会いたくない”と言うなら、それはそれで良いけど…私が“会いたくない”と言うのは、我がままに思えた。
「穂、キスしたい」
「え!?」
「だめ?」
「いい…よ…」
チラチラ千陽を見てから、彼女の頬がピンク色に染まる。
可愛い。
彼女の顎を寄せて、そっと唇を重ねる。
何度も、何度も。
「いつまでやってんの。…人、来るよ。もうすぐ来る時間でしょ」
千陽がそばに立って言う。
私はもっとしていたかったけど、穂はその言葉で慌てて私から離れた。
前髪を指で梳く。
穂は…照れるといつもそうする。
優里が学校に来て、2日間だけ私の家で勉強会をすることにしたと伝えた。
「永那の家初めてー!楽しみー!」
優里のいつもの調子が、安心する。
とりあえず、私の事情は優里には話さないことにした。
優里のことだから、あからさまに心配して、それが思いっきり顔に出かねないと判断した。
何かあればその都度説明することにして、とりあえず放置。
今のお母さんの感じなら、たぶん大丈夫。
そう、信じたい。
次の週の、火曜日。
3人が家に来た。
優里は鈍くさいところもあるけど、基本的に礼儀正しい。
愛嬌もあるし、素直だし、お母さんとも上手くやってくれた。
…というか、一番お母さんと友達っぽく話していた。
「永那のお母さん可愛いー!綺麗!美人!」
「え~!!嬉し~!!!」
2人で抱き合っていた。
穂も千陽もそんなことしないから、なんか、新鮮だった。
私は今まで、勝手に恥ずかしいと思って、誰も家に呼ばなかった。
今となっては、その考えが馬鹿馬鹿しいとすら思う。
友達を呼ぶようになってから、お母さんは鼻歌を歌いながらお風呂に入るようになった。
穂が来た最初の日はまだ無理だったけど、たった1ヶ月でこんなにも変われるのかと、驚いている。
思えば、高1のときに優里が話しかけてきたときも、こんな感じだったような。
千陽の前に立って、目を輝かせながら「ねえ、なんでそんなに綺麗なの?お人形さんなの?」と聞いてきた。
千陽は首を傾げてから「知らない」と答えた。
「かーっ!完璧とはこのことか!神は二物も三物も与えるのだ!なぜ!なぜ!私には何一つ与えなかったのかー!神よー!」
そう叫んで両手を上げていた。
「ちょっとさわらせて?」
舌をペロリと出しながら、千陽の胸を指差す。
「やだ」
「えー!お願いお願いお願いします!」
千陽の眉間にシワが寄る。
「ちょっとだけ~!」
千陽は大きくため息をついて、無視した。
優里が盛大に転んでスカートが捲れてショーツが丸見えになったとき、筆箱を散乱させて転がる消しゴムを追いかけていたとき、ゴミと教科書を両方持っていて教科書をゴミ箱に入れたとき…他にもいろいろあるけど、そういうことをしでかしたとき、千陽がいつも面倒そうに手伝っていた。
面倒そうだけど…楽しそうに。
それから千陽と優里は仲良くなっていって、気づけば私達の間に優里がいた。
体育のとき、更衣室で千陽の胸をさわっている優里を見た。
(さわれて良かったね)と心の中で言っておいた。
優里は「破壊力!」と叫んで、自分の胸と比べていた。
そんな落ち込むならさわらなきゃいいのに…と思う。
「永那ちゃん」
「ん?」
「あのさ…4ヶ月記念日のことなんだけど」
「うん?」
「デート、したい」
畳に正座して、俯きがちに、上目遣いに私を見る。
「デート?」
「うん。家じゃなくて…どこか、2人で出かけたいんだけど…どうかな?…私達、あんまり、そういう、ちゃんとしたデート、してない気がして…」
…たしかに。
4人で出かけたり、公園に行ったりはしたけど…デートらしいデートと言えば、私が告白した、海に行った日以来、ないんじゃないの?
「わかった。どこ行きたい?」
「水族館とか…」
「水族館?いいよ」
穂が子供みたいに笑う。
…可愛い。
「私ね、いろいろ調べたの」
誉と海に行ったとき、誉も似たようなこと言ってたな。性格の似た姉弟。
…っていうか穂、テスト勉強はいいのかな。
私が言えることでもないけど。
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