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5.時間
268.修学旅行
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次の日以降も、私は修学旅行で行く場所の説明をしたり、写真を見せたりして過ごした。
「帰ってきたら、一緒にどこかお出かけしませんか?」とお誘いすると、目に涙を浮かべながら喜ばれた。
千陽は頬杖をついて、私の話を聞いてくれていた。
永那ちゃんはたまに写真を撮って、次の日には印刷された写真が飾られていた。
…私も真似して、永那ちゃんとの2人の写真を部屋に飾っている。もちろん、みんなが写っているものも。
修学旅行の前日。
「明日から!明日からね!大丈夫!」
お母さんがカレンダーを指差して言う。
永那ちゃんの部屋にはボストンバッグが置かれていて、準備は整っていた。
「帰ってきたら、みんなとお出かけ!」
今日は夜ご飯を作って、千陽と4人で食べた。
「お土産、楽しみにしててください」
「うん!!!」
「ご飯、作り置きしておいたので、食べてください」
「うん!!!」
「穂、ありがと」
永那ちゃんが頭を撫でてくれる。
「私も~!」
お母さんが言って、永那ちゃんはお母さんの頭を撫でる。
お母さんが嬉しそうにするのを見届けてから、永那ちゃんの視線が千陽に向く。
「千陽」
既に玄関に立っていた千陽が、顔をこちらに向ける。
永那ちゃんが彼女のそばに立って、頭を撫でる。
「ありがと」
千陽は何も言わなかったけど、伏し目がちに弧を描く瞳が彼女の気持ちを表していた。
「大丈夫そうで、良かったね」
帰り道、千陽が言う。
「そうだね…本当に、大丈夫だといいけど」
私はまだ、お母さんがパニックを起こしたところを見たことがない。
永那ちゃんから聞いた話しか知らなくて、少し不安だ。
永那ちゃんは2回お姉さんに連絡したものの、返事はないらしく、結局お母さんをひとりで家に残すことになってしまったと心配そうにしていた。
「あたし達が心配しても仕方ないし、せっかくなんだから、楽しまない?」
千陽が優しく笑う。
「そのほうが、永那も楽しめるんじゃない?」
繋ぐ手をギュッと握る。
「そうだね…!ありがとう、千陽」
「あたしのこと、もっと好きになった?」
大きな瞳に見つめられる。
「もう…これ以上好きにさせないで?」
千陽の口元が綻んで、彼女はそっぽを向く。
私、少し千陽の扱いに慣れてきたよね?
触れるだけのキスをして、私は帰途についた。
…千陽の言うとおりだ。
私が心配していても仕方ない。
できることは全部やったと、思う。
永那ちゃんが楽しめるようにと頑張ってきたんだから、私が変に心配して、永那ちゃんの不安を煽っちゃだめだ。
翌朝、8時に学校集合。
既に大型バスが校門前に並んでいた。
バスで空港まで行って、飛行機に乗る。
現地到着予定時間は12時頃。
7時半に私がつくと、既に永那ちゃんも千陽もいた。
「おはよう」
「「おはよ」」
千陽が私の腕に抱きつく。
「穂…永那、飛行機怖いんだって」
「おい、言うなよ!」
「怖いの?」
「い、いや…ほら…乗ったことないから…」
頭をポリポリ掻いて、永那ちゃんが俯く。
「おっはよー!」
優里ちゃんに後ろから抱きつかれる。
「おはよう、優里ちゃん」
「優里遅いぞ!」
「え!?めっちゃ余裕持って来たんだけど!?」
「優里がいないから、私が辱めを受けている」
「ん!?どういうこと!?」
「永那ちゃん、飛行機怖いんだって」
「プーッ!ホントにー!?永那が!怖い!?」
「うっせー!」
永那ちゃんの耳が真っ赤になっている。
…可愛い。
他のクラスメイトからもからかわれて、永那ちゃんが本格的に不機嫌になり始めた。
「永那ちゃん、楽しみだね」
目を合わせて私が言うと、下唇を噛んで、視線をそらされる。
「…うん」
「班ごとに集まったかー?」
先生が言う。
「あれ?森山さんは?」
「いないね…」
「先生ー!森山さんがいません!」
優里ちゃんが大声を出す。
「あー?森山ー?」
他の班がバスに乗り込むなか、私達は森山さんを待った。
先生が家に電話をしたら、“さっき出た”と謝られたらしい。
「しゅ、しゅびばせん…!」
ぜえぜえと息を切らしながら、森山さんが額の汗を拭う。
「良かった~!」
「なにしてたの?」
千陽が冷めた目を森山さんに向ける。
「あ、あの…」
「また?」
森山さんが目をそらしながら「すみませんでした…」と言った。
バスに乗り込んで、優里ちゃんが口を開く。
「“また?”ってなに?」
「鼻血」
「は、鼻血!?大丈夫なの!?森山さん!」
「あ、は、はい…ご、ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした…」
「あんまり鼻血が出るようなら、病院に行ったほうが…」
私が言うと、千陽がプッと笑う。
ちなみに永那ちゃんは私の肩に頭を乗せて、もう寝ている。
「千陽、笑い事じゃないよ?ホントに、危ないんだから」
「はいはい」
「あ、あの、本当に、大丈夫なので!わ、私、昔から…その…出やすいタイプで…」
「そっか…」
「森山さんって、下の名前なに?」
優里ちゃんが聞く。
こういうとき、本当に優里ちゃんがいてくれてよかったと思う。
「さ、桜です」
「桜ちゃん!…森山桜…なんか、すごく、アーティストっぽい名前…」
優里ちゃんが顎を擦る。
「じゃあ、桜ちゃんって呼んでもいいかな?」
森山さんの顔が紅潮して「あ、は、はい」と答える。
「私のことは優里って呼んでね」
森山さんが頷く。
「帰ってきたら、一緒にどこかお出かけしませんか?」とお誘いすると、目に涙を浮かべながら喜ばれた。
千陽は頬杖をついて、私の話を聞いてくれていた。
永那ちゃんはたまに写真を撮って、次の日には印刷された写真が飾られていた。
…私も真似して、永那ちゃんとの2人の写真を部屋に飾っている。もちろん、みんなが写っているものも。
修学旅行の前日。
「明日から!明日からね!大丈夫!」
お母さんがカレンダーを指差して言う。
永那ちゃんの部屋にはボストンバッグが置かれていて、準備は整っていた。
「帰ってきたら、みんなとお出かけ!」
今日は夜ご飯を作って、千陽と4人で食べた。
「お土産、楽しみにしててください」
「うん!!!」
「ご飯、作り置きしておいたので、食べてください」
「うん!!!」
「穂、ありがと」
永那ちゃんが頭を撫でてくれる。
「私も~!」
お母さんが言って、永那ちゃんはお母さんの頭を撫でる。
お母さんが嬉しそうにするのを見届けてから、永那ちゃんの視線が千陽に向く。
「千陽」
既に玄関に立っていた千陽が、顔をこちらに向ける。
永那ちゃんが彼女のそばに立って、頭を撫でる。
「ありがと」
千陽は何も言わなかったけど、伏し目がちに弧を描く瞳が彼女の気持ちを表していた。
「大丈夫そうで、良かったね」
帰り道、千陽が言う。
「そうだね…本当に、大丈夫だといいけど」
私はまだ、お母さんがパニックを起こしたところを見たことがない。
永那ちゃんから聞いた話しか知らなくて、少し不安だ。
永那ちゃんは2回お姉さんに連絡したものの、返事はないらしく、結局お母さんをひとりで家に残すことになってしまったと心配そうにしていた。
「あたし達が心配しても仕方ないし、せっかくなんだから、楽しまない?」
千陽が優しく笑う。
「そのほうが、永那も楽しめるんじゃない?」
繋ぐ手をギュッと握る。
「そうだね…!ありがとう、千陽」
「あたしのこと、もっと好きになった?」
大きな瞳に見つめられる。
「もう…これ以上好きにさせないで?」
千陽の口元が綻んで、彼女はそっぽを向く。
私、少し千陽の扱いに慣れてきたよね?
触れるだけのキスをして、私は帰途についた。
…千陽の言うとおりだ。
私が心配していても仕方ない。
できることは全部やったと、思う。
永那ちゃんが楽しめるようにと頑張ってきたんだから、私が変に心配して、永那ちゃんの不安を煽っちゃだめだ。
翌朝、8時に学校集合。
既に大型バスが校門前に並んでいた。
バスで空港まで行って、飛行機に乗る。
現地到着予定時間は12時頃。
7時半に私がつくと、既に永那ちゃんも千陽もいた。
「おはよう」
「「おはよ」」
千陽が私の腕に抱きつく。
「穂…永那、飛行機怖いんだって」
「おい、言うなよ!」
「怖いの?」
「い、いや…ほら…乗ったことないから…」
頭をポリポリ掻いて、永那ちゃんが俯く。
「おっはよー!」
優里ちゃんに後ろから抱きつかれる。
「おはよう、優里ちゃん」
「優里遅いぞ!」
「え!?めっちゃ余裕持って来たんだけど!?」
「優里がいないから、私が辱めを受けている」
「ん!?どういうこと!?」
「永那ちゃん、飛行機怖いんだって」
「プーッ!ホントにー!?永那が!怖い!?」
「うっせー!」
永那ちゃんの耳が真っ赤になっている。
…可愛い。
他のクラスメイトからもからかわれて、永那ちゃんが本格的に不機嫌になり始めた。
「永那ちゃん、楽しみだね」
目を合わせて私が言うと、下唇を噛んで、視線をそらされる。
「…うん」
「班ごとに集まったかー?」
先生が言う。
「あれ?森山さんは?」
「いないね…」
「先生ー!森山さんがいません!」
優里ちゃんが大声を出す。
「あー?森山ー?」
他の班がバスに乗り込むなか、私達は森山さんを待った。
先生が家に電話をしたら、“さっき出た”と謝られたらしい。
「しゅ、しゅびばせん…!」
ぜえぜえと息を切らしながら、森山さんが額の汗を拭う。
「良かった~!」
「なにしてたの?」
千陽が冷めた目を森山さんに向ける。
「あ、あの…」
「また?」
森山さんが目をそらしながら「すみませんでした…」と言った。
バスに乗り込んで、優里ちゃんが口を開く。
「“また?”ってなに?」
「鼻血」
「は、鼻血!?大丈夫なの!?森山さん!」
「あ、は、はい…ご、ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした…」
「あんまり鼻血が出るようなら、病院に行ったほうが…」
私が言うと、千陽がプッと笑う。
ちなみに永那ちゃんは私の肩に頭を乗せて、もう寝ている。
「千陽、笑い事じゃないよ?ホントに、危ないんだから」
「はいはい」
「あ、あの、本当に、大丈夫なので!わ、私、昔から…その…出やすいタイプで…」
「そっか…」
「森山さんって、下の名前なに?」
優里ちゃんが聞く。
こういうとき、本当に優里ちゃんがいてくれてよかったと思う。
「さ、桜です」
「桜ちゃん!…森山桜…なんか、すごく、アーティストっぽい名前…」
優里ちゃんが顎を擦る。
「じゃあ、桜ちゃんって呼んでもいいかな?」
森山さんの顔が紅潮して「あ、は、はい」と答える。
「私のことは優里って呼んでね」
森山さんが頷く。
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