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5.時間
272.修学旅行
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部屋に戻って、優里ちゃんと森山さんが先にドライヤーをかける。
私は、永那ちゃんと千陽と3人で布団に座って一息つくことにした。
永那ちゃんが寝転んで、私の膝に頭を乗せる。
「永那ちゃん、まだ濡れてるよ…」
「んー」
もう瞼が落ちている。
永那ちゃんの頭を上げて、予備のフェイスタオルを膝に敷く。
彼女の髪を撫でると、スゥスゥと寝息が聞こえてくる。
千陽が私の肩に頭を乗せて、スマホのカメラを起動した。
私が笑うと、カシャッとシャッター音が鳴る。
千陽を見ると、触れるだけのキスをされて、顔が熱くなる。
「ありがと」
「え?」
「永那に…何か言ってくれたんでしょ?」
「あ…いや、そんな、大したことは…」
千陽がフフッと笑う。
グレープソーダをゴクゴク飲んで、千陽は唇を舐めた。
「あたし、ぶどう好きなの」
「そうなんだ」
千陽は膝を抱えて、頬を乗せた。
…そういえば、私もネットカフェに行ったとき、グレープソーダを飲んだ。
やっぱり、永那ちゃんはかっこいい…。
「穂ちゃん、お待たせー…って、永那寝たの!?」
「うん」
「えー…みんなでUNOしようと思ってたのにー」
私は永那ちゃんの頭をそっと下ろして、立ち上がる。
「私も、ドライヤーかけてくるね」
「はーい!」
優里ちゃんが鞄をガサゴソ漁っている。
私がドライヤーをかけ終えて、みんなで遊んでいると、ドアがノックされた。
私が開けると「おおぅっ、空井さん」と塩見君が笑った。
「どうしたの?」
「あー、いや、そのー、みんなで遊ばないかな?って」
塩見君がポリポリ頬を掻く。
塩見君の後ろには4人の男子が立っていた。
「なにー?」
優里ちゃんが顔を出す。
「みんなで遊ばないかって…」
私が言うと、優里ちゃんは眉間にシワを寄せる。
「なぜ塩見?」
「ほ、ほら…文化祭委員で仲良くなったし?」
優里ちゃんが首を90度に曲げる。
「仲良くなったの?」
優里ちゃんの目が私を向く。
私は苦笑しながら首を傾げた。
「千陽と、森山さんが…かな?」
「そ、空井さん…!俺、けっこう傷つくよ…」
「あ、ごめんなさい」
優里ちゃんと、後ろにいた男子が笑う。
「今さー、もう永那が寝ちゃったんだよね。だから私達の部屋は無理かなー」
「じゃあ俺達の部屋来ない?」
「千陽ー、桜ちゃーん、塩見が部屋に来ないかって言ってるんだけど、どうする?」
「めんどくさい」
「わ、私は、みなさんに…あわ、合わせます…」
「…ということで、無理そうです」
全部のやり取りを優里ちゃんがやってくれるからホッとする。
「マジかよー…けっこう勇気出して来たのに」
「どんまい!」
塩見君がポリポリ頭を掻く。
「両角が寝てるのはいつものことなんだし、ちょっとだけ…頼む…!」
彼は顔をくしゃくしゃにして、パチンと手を合わせた。
「お菓子も持ってきてます!」
後ろの男子も加勢する。
「えー。…しばし待たれよ」
優里ちゃんがドアを閉める。
「どうする?」
「私は…どっちでも…」
「ハァ」と優里ちゃんがため息をつく。
「千陽、桜ちゃん、どうする?」
森山さんは首を傾げた。
「なんで塩見と遊ばなきゃいけないの?」
千陽が冷めた目を向ける。
「私にもわからない…でも、勇気出して来たって…」
「そんなくだらない勇気、どうでもいい」
千陽は…辛辣だなあ。
「千陽は、嫌なの?」
大きな目が私をとらえて、「べつに、どっちでもいい」と言う。
「じゃあ…少しだけなら、いいんじゃないかな?」
私が笑うと、千陽がそっぽを向く。
「消灯時間まであと1時間だし…」
「オッケー」
優里ちゃんがドアを開けて、塩見君達を招き入れた。
永那ちゃんには、きちんと布団をかぶせておいた。
「森山、鼻血出してない?」
塩見君が森山さんの隣に座る。
「あ、はい…おかげ様で…」
他の男子の視線が千陽に向いていて、私は苦笑する。
「お、UNO?」
「そー、みんなでやろー」
優里ちゃんが言って、カードを配り直す。
「そろそろ、消灯時間だね」
私が言って、塩見君達がソワソワする。
「…そ、それくらい、いいんじゃない?ちょっと隠れてさ、先生に見つかんないように」
眉間にシワが寄る。
「はー?塩見何言ってんの?」
優里ちゃんが言う。
「いや、だってけっこう楽しくない!?」
「少しだけって言ってなかった?」
私が言うと、塩見君がギクッとする。
「決められた消灯時間で寝ないと、明日辛くなるよ?」
「あー…そ、そうだね」
「塩見君達も、ちゃんと寝たほうがいいよ。…明日も、長い1日になるんだから」
「おー…じゃ、じゃあ…帰るか」
塩見君達は立ち上がって、部屋を出た。
「さすが穂ちゃん」
「え?」
「穂ちゃんが真顔で言うと背中がゾワゾワするんだよ」
なぜか優里ちゃんが楽しそうに笑いながら言う。
私は首を傾げて、曖昧に頷いた。
私は、永那ちゃんと千陽と3人で布団に座って一息つくことにした。
永那ちゃんが寝転んで、私の膝に頭を乗せる。
「永那ちゃん、まだ濡れてるよ…」
「んー」
もう瞼が落ちている。
永那ちゃんの頭を上げて、予備のフェイスタオルを膝に敷く。
彼女の髪を撫でると、スゥスゥと寝息が聞こえてくる。
千陽が私の肩に頭を乗せて、スマホのカメラを起動した。
私が笑うと、カシャッとシャッター音が鳴る。
千陽を見ると、触れるだけのキスをされて、顔が熱くなる。
「ありがと」
「え?」
「永那に…何か言ってくれたんでしょ?」
「あ…いや、そんな、大したことは…」
千陽がフフッと笑う。
グレープソーダをゴクゴク飲んで、千陽は唇を舐めた。
「あたし、ぶどう好きなの」
「そうなんだ」
千陽は膝を抱えて、頬を乗せた。
…そういえば、私もネットカフェに行ったとき、グレープソーダを飲んだ。
やっぱり、永那ちゃんはかっこいい…。
「穂ちゃん、お待たせー…って、永那寝たの!?」
「うん」
「えー…みんなでUNOしようと思ってたのにー」
私は永那ちゃんの頭をそっと下ろして、立ち上がる。
「私も、ドライヤーかけてくるね」
「はーい!」
優里ちゃんが鞄をガサゴソ漁っている。
私がドライヤーをかけ終えて、みんなで遊んでいると、ドアがノックされた。
私が開けると「おおぅっ、空井さん」と塩見君が笑った。
「どうしたの?」
「あー、いや、そのー、みんなで遊ばないかな?って」
塩見君がポリポリ頬を掻く。
塩見君の後ろには4人の男子が立っていた。
「なにー?」
優里ちゃんが顔を出す。
「みんなで遊ばないかって…」
私が言うと、優里ちゃんは眉間にシワを寄せる。
「なぜ塩見?」
「ほ、ほら…文化祭委員で仲良くなったし?」
優里ちゃんが首を90度に曲げる。
「仲良くなったの?」
優里ちゃんの目が私を向く。
私は苦笑しながら首を傾げた。
「千陽と、森山さんが…かな?」
「そ、空井さん…!俺、けっこう傷つくよ…」
「あ、ごめんなさい」
優里ちゃんと、後ろにいた男子が笑う。
「今さー、もう永那が寝ちゃったんだよね。だから私達の部屋は無理かなー」
「じゃあ俺達の部屋来ない?」
「千陽ー、桜ちゃーん、塩見が部屋に来ないかって言ってるんだけど、どうする?」
「めんどくさい」
「わ、私は、みなさんに…あわ、合わせます…」
「…ということで、無理そうです」
全部のやり取りを優里ちゃんがやってくれるからホッとする。
「マジかよー…けっこう勇気出して来たのに」
「どんまい!」
塩見君がポリポリ頭を掻く。
「両角が寝てるのはいつものことなんだし、ちょっとだけ…頼む…!」
彼は顔をくしゃくしゃにして、パチンと手を合わせた。
「お菓子も持ってきてます!」
後ろの男子も加勢する。
「えー。…しばし待たれよ」
優里ちゃんがドアを閉める。
「どうする?」
「私は…どっちでも…」
「ハァ」と優里ちゃんがため息をつく。
「千陽、桜ちゃん、どうする?」
森山さんは首を傾げた。
「なんで塩見と遊ばなきゃいけないの?」
千陽が冷めた目を向ける。
「私にもわからない…でも、勇気出して来たって…」
「そんなくだらない勇気、どうでもいい」
千陽は…辛辣だなあ。
「千陽は、嫌なの?」
大きな目が私をとらえて、「べつに、どっちでもいい」と言う。
「じゃあ…少しだけなら、いいんじゃないかな?」
私が笑うと、千陽がそっぽを向く。
「消灯時間まであと1時間だし…」
「オッケー」
優里ちゃんがドアを開けて、塩見君達を招き入れた。
永那ちゃんには、きちんと布団をかぶせておいた。
「森山、鼻血出してない?」
塩見君が森山さんの隣に座る。
「あ、はい…おかげ様で…」
他の男子の視線が千陽に向いていて、私は苦笑する。
「お、UNO?」
「そー、みんなでやろー」
優里ちゃんが言って、カードを配り直す。
「そろそろ、消灯時間だね」
私が言って、塩見君達がソワソワする。
「…そ、それくらい、いいんじゃない?ちょっと隠れてさ、先生に見つかんないように」
眉間にシワが寄る。
「はー?塩見何言ってんの?」
優里ちゃんが言う。
「いや、だってけっこう楽しくない!?」
「少しだけって言ってなかった?」
私が言うと、塩見君がギクッとする。
「決められた消灯時間で寝ないと、明日辛くなるよ?」
「あー…そ、そうだね」
「塩見君達も、ちゃんと寝たほうがいいよ。…明日も、長い1日になるんだから」
「おー…じゃ、じゃあ…帰るか」
塩見君達は立ち上がって、部屋を出た。
「さすが穂ちゃん」
「え?」
「穂ちゃんが真顔で言うと背中がゾワゾワするんだよ」
なぜか優里ちゃんが楽しそうに笑いながら言う。
私は首を傾げて、曖昧に頷いた。
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