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6.さんにん
351.クリスマス
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■■■
千陽の家に寄ってから、3人で私の家に帰った。
千陽に手を引かれて、私の部屋に入る。
永那ちゃんも入ってこようとしたけれど、千陽が追い出していた。
「してあげる」
千陽はポーチを出して、メイク道具をテーブルに並べた。
彼女に言われるがままに、目を閉じたり開けたりする。
ふわふわと千陽の良い香りが漂ってくるから、気づいたら「良い匂い」と言っていた。
「穂もつける?」
鞄から香水が出されて、ふわっとミストをかけられる。
「できた」
顔をジッと見られて恥ずかしくなるけど、俯かないように堪える。
「うん。可愛い」
千陽が鏡をわたしてくれて、自分の顔を見る。
「わあ、すごい」
まつ毛がくるりと上向いて、薄く施された化粧に、ワクワクする。
ほんの少し、悪さをしているみたいな…冒険しているみたいな、そんな高揚感。
「せっかくだから、優里に貰ったリップ塗ったら?」
そう言われて、テーブルの下の棚から、誕生日に優里ちゃんから貰った色付きのリップクリームを取り出した。
試しに家で1度だけつけたことがあるけれど、それ以来畏れ多くて使っていなかった。
塗ると、唇のピンク色が際立って、艶々と煌いた。
フゥッと息を吐いて、高鳴る鼓動を鎮める。
「穂、しよ?」
久しぶりに聞いた気がする、千陽からのお誘いの言葉にドキッとする。
でも、そのまま…私は彼女に近づいて、口付けを交わした。
「千陽、ありがとう」
「うん」
緊張と恥ずかしさが混じって、部屋から出たくない気持ちにもなるけれど…それは、メイクをしてくれた千陽に失礼だから、胸を張る。
ドアを開けると、永那ちゃんが目を輝かせた。
「穂…」
見つめられて、恥ずかしくなって、前髪を指で梳く。
「めっちゃ可愛い」
ギュッと抱きしめられて、息が漏れる。
嬉しくて、永那ちゃんの背に手を回した。
「おー…姉ちゃん…なんか、大人っぽい」
誉が寝癖がついた髪をぴょんぴょん跳ねさせながら、そばに来た。
「な!私もそれ思った!」
永那ちゃんが自慢気に鼻の穴を膨らませる。
千陽は私とドアのすき間を縫うように部屋から出て、眠そうにあくびをしながらラグに座った。
永那ちゃんと誉が私の撮影会を始めて、数枚撮られてから恥ずかしさが増して、逃げるように千陽のそばに座った。
話しているうちにインターホンが鳴って、森山さんが来た。
その10分後に優里ちゃんが来て、クリスマスパーティが始まった。
ちなみにお母さんはまだ部屋で寝ている。
優里ちゃんがクリスマスパーティの企画をしてくれると言っていたので、私達は彼女の進行に任せる。
最初はジェスチャーゲームをするとのことだった。
グーとパーで2つのグループに分かれた。
私は千陽と優里ちゃんと同じグループになった。
3分間で、何個正解できるかを競う。
ジェスチャーゲームって、結構恥ずかしそうだけど…。
「発言禁止だからね!絶対!特に永那!」
「は?そんなのわかってるし」
「本当かなー」
優里ちゃんが目を細めて永那ちゃんを睨んだ。
最初に永那ちゃん、森山さん、誉のグループがゲームをする。
優里ちゃんがお題を出して、私が時間を計る。
千陽は、何個正解したかを数える係になった。
「じゃあいくよー?…スタート!」
優里ちゃんが私を見て合図してくれるから、スマホのタイマーのスタートボタンを押す。
立っていた永那ちゃんが優里ちゃんのスマホの画面を確認して、中腰になった。
手を巻く仕草をして、空中を指差す。
お尻を拭いて、また空中を指差す。
「トイレ!」
誉が言って、永那ちゃんは首を横に振る。
「こ、れ!」
小声で永那ちゃんが言って「こらー!声出すな!」と優里ちゃんに叱られた。
永那ちゃんはまた手を巻く仕草をして、左手で何かを押さえてから右手で引っ張る。
「トイレットペーパー」
森山さんが手を挙げて回答すると、永那ちゃんは頷いてラグに座った。
入れ替わるように誉が立つ。
誉が優里ちゃんのスマホの画面を凝視して、考え込む。
3秒くらい考えてから、踊り始めた。
「ダンス!」
「歌?」
「歌手!」
「ライブ」
惜しいところまで出てくるけど、なかなか正解にならない。
誉が必死に笑顔を作ったり、手を振ったりして、ようやく「アイドル!」と大きな声で森山さんが正解を言う。
森山さんと誉が入れ替わる。
森山さんは顔を真っ赤にしながら、何かを振りかざした。
「刀!」
「切る!」
「剣!」
「殺す!」
…誉が物騒なことを言っていて、ソワソワする。
「パス!」
森山さんは首を横に振って、次のお題を見た。
四つん這いになって、吠えるように口をパクパクと開く。
「犬!」
永那ちゃんが言って、永那ちゃんと森山さんが交代した。
3分経って、私達の番になる。
永那ちゃん達は7個正解した。
優里ちゃんが予想していた通り、ジェスチャーするとき、永那ちゃんは何度も声を出していた。
「失格じゃないの?」と千陽が言っていたけど、永那ちゃんは「答えは言ってない!」とふんぞり返った。
千陽の家に寄ってから、3人で私の家に帰った。
千陽に手を引かれて、私の部屋に入る。
永那ちゃんも入ってこようとしたけれど、千陽が追い出していた。
「してあげる」
千陽はポーチを出して、メイク道具をテーブルに並べた。
彼女に言われるがままに、目を閉じたり開けたりする。
ふわふわと千陽の良い香りが漂ってくるから、気づいたら「良い匂い」と言っていた。
「穂もつける?」
鞄から香水が出されて、ふわっとミストをかけられる。
「できた」
顔をジッと見られて恥ずかしくなるけど、俯かないように堪える。
「うん。可愛い」
千陽が鏡をわたしてくれて、自分の顔を見る。
「わあ、すごい」
まつ毛がくるりと上向いて、薄く施された化粧に、ワクワクする。
ほんの少し、悪さをしているみたいな…冒険しているみたいな、そんな高揚感。
「せっかくだから、優里に貰ったリップ塗ったら?」
そう言われて、テーブルの下の棚から、誕生日に優里ちゃんから貰った色付きのリップクリームを取り出した。
試しに家で1度だけつけたことがあるけれど、それ以来畏れ多くて使っていなかった。
塗ると、唇のピンク色が際立って、艶々と煌いた。
フゥッと息を吐いて、高鳴る鼓動を鎮める。
「穂、しよ?」
久しぶりに聞いた気がする、千陽からのお誘いの言葉にドキッとする。
でも、そのまま…私は彼女に近づいて、口付けを交わした。
「千陽、ありがとう」
「うん」
緊張と恥ずかしさが混じって、部屋から出たくない気持ちにもなるけれど…それは、メイクをしてくれた千陽に失礼だから、胸を張る。
ドアを開けると、永那ちゃんが目を輝かせた。
「穂…」
見つめられて、恥ずかしくなって、前髪を指で梳く。
「めっちゃ可愛い」
ギュッと抱きしめられて、息が漏れる。
嬉しくて、永那ちゃんの背に手を回した。
「おー…姉ちゃん…なんか、大人っぽい」
誉が寝癖がついた髪をぴょんぴょん跳ねさせながら、そばに来た。
「な!私もそれ思った!」
永那ちゃんが自慢気に鼻の穴を膨らませる。
千陽は私とドアのすき間を縫うように部屋から出て、眠そうにあくびをしながらラグに座った。
永那ちゃんと誉が私の撮影会を始めて、数枚撮られてから恥ずかしさが増して、逃げるように千陽のそばに座った。
話しているうちにインターホンが鳴って、森山さんが来た。
その10分後に優里ちゃんが来て、クリスマスパーティが始まった。
ちなみにお母さんはまだ部屋で寝ている。
優里ちゃんがクリスマスパーティの企画をしてくれると言っていたので、私達は彼女の進行に任せる。
最初はジェスチャーゲームをするとのことだった。
グーとパーで2つのグループに分かれた。
私は千陽と優里ちゃんと同じグループになった。
3分間で、何個正解できるかを競う。
ジェスチャーゲームって、結構恥ずかしそうだけど…。
「発言禁止だからね!絶対!特に永那!」
「は?そんなのわかってるし」
「本当かなー」
優里ちゃんが目を細めて永那ちゃんを睨んだ。
最初に永那ちゃん、森山さん、誉のグループがゲームをする。
優里ちゃんがお題を出して、私が時間を計る。
千陽は、何個正解したかを数える係になった。
「じゃあいくよー?…スタート!」
優里ちゃんが私を見て合図してくれるから、スマホのタイマーのスタートボタンを押す。
立っていた永那ちゃんが優里ちゃんのスマホの画面を確認して、中腰になった。
手を巻く仕草をして、空中を指差す。
お尻を拭いて、また空中を指差す。
「トイレ!」
誉が言って、永那ちゃんは首を横に振る。
「こ、れ!」
小声で永那ちゃんが言って「こらー!声出すな!」と優里ちゃんに叱られた。
永那ちゃんはまた手を巻く仕草をして、左手で何かを押さえてから右手で引っ張る。
「トイレットペーパー」
森山さんが手を挙げて回答すると、永那ちゃんは頷いてラグに座った。
入れ替わるように誉が立つ。
誉が優里ちゃんのスマホの画面を凝視して、考え込む。
3秒くらい考えてから、踊り始めた。
「ダンス!」
「歌?」
「歌手!」
「ライブ」
惜しいところまで出てくるけど、なかなか正解にならない。
誉が必死に笑顔を作ったり、手を振ったりして、ようやく「アイドル!」と大きな声で森山さんが正解を言う。
森山さんと誉が入れ替わる。
森山さんは顔を真っ赤にしながら、何かを振りかざした。
「刀!」
「切る!」
「剣!」
「殺す!」
…誉が物騒なことを言っていて、ソワソワする。
「パス!」
森山さんは首を横に振って、次のお題を見た。
四つん這いになって、吠えるように口をパクパクと開く。
「犬!」
永那ちゃんが言って、永那ちゃんと森山さんが交代した。
3分経って、私達の番になる。
永那ちゃん達は7個正解した。
優里ちゃんが予想していた通り、ジェスチャーするとき、永那ちゃんは何度も声を出していた。
「失格じゃないの?」と千陽が言っていたけど、永那ちゃんは「答えは言ってない!」とふんぞり返った。
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