いたずらはため息と共に

常森 楽

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6.さんにん

352.クリスマス

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森山さんが優里ちゃんのスマホを持って、お題を出してくれる。
誉が時間を計って、永那ちゃんが正解を数える係になった。
優里ちゃんがジェスチャーを始めたけれど、無言の時間が数秒間続く。
「姉ちゃんと千陽、なんか言いなよ!」
誉が笑いながら言うから、私は仕方なく「ダンス」と答えた。
優里ちゃんが、変なポーズを取っている。
首を左右に振って、両手を上げたり下げたり…そのうち足も上げ始めた。
口を尖らせて、息をフゥーッと吐いている。
…なんなんだろう?
「パス!」
優里ちゃんが次のジェスチャーを始めるけど、全然わからない。
横を見ると、千陽はただボーッと優里ちゃんを眺めていた。
「千陽、わかる?」
「さあ?」
優里ちゃんは精一杯首を伸ばして、口をモグモグ動かしている。
…動物かな?
永那ちゃんがお腹を抱えて笑い始めて、私と千陽の視線が永那ちゃんに向く。
「もうダメだろー!優里のチーム負け!千陽やる気ないし」
「なー?」
誉も笑い始める。

「真剣にしてよー!2人ともー!」
優里ちゃんが頬を膨らませて、怒ってしまう。
「え、わ、私は…考えてるよ?」
「あたし、ジェスチャーなんてやりたくないし」
千陽は髪をいじり始めて、ため息をつく。
「…そっちか!」
優里ちゃんは項垂れて、そのうち膝が床について、寝転んだ。
優里ちゃんのジェスチャーが終わったら、次は千陽がする番だった。
たしかに…千陽がジェスチャーしてるところなんて想像できない。
「千陽、答えわかってたの?」
私が聞くと、千陽はニコリと微笑んで「知らない」と答える。
…わかってそうだなあ。
「答え、なんだったの?」
優里ちゃんに聞くと「最初のは噴水!次はキリンだよ~」と膨れっ面で答えてくれた。
「噴水とキリンかー…わからなかった…ごめんね」
「私、穂のジェスチャー見たかった!から、もう一回やろうぜー」
永那ちゃんが言う。
「千陽のグループ、ハンデありすぎない!?」
誉が言って、千陽はフンとそっぽを向いた。

「次は千陽からやらせよう」
優里ちゃんが言って、もう一度私達のグループがゲームを始める。
千陽は大きくため息をついてから、仕方なさそうに立ち上がって、森山さんの持つスマホの画面を眺めた。
「パス」「パス」「パス」「パス」
小気味よく言って、またため息をつく。
無表情に両手を前に出して、手を垂らす。
「おばけ!」
優里ちゃんが言って、千陽が頷く。
私のジェスチャーの番になったから、立ち上がる。
スマホの画面には“ボクシング”と書かれていた。
パンチするように手を出す。
右手、左手と交互に出すけど、それを見た永那ちゃんと千陽が笑い始めた。
へ、変かな…?
「穂、可愛いー!なにそれー!」
永那ちゃんが言うから、途端に恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
「永那うるさい!」
優里ちゃんの真剣な眼差しに救われる。
「パンチ!」
私が首を横に振ると「ボクシング!」と正解を当てられた。
優里ちゃんと交代して、私はラグに座る。

結局私達の正解数は4個で、永那ちゃん達には勝てなかった。
次に、みんなでケーキのデコレーションをした。
優里ちゃんが買っておいてくれた市販のスポンジに、生クリームやチョコ、フルーツを飾り付けていく。
千陽は興味なさげにボーッと眺めるだけで、永那ちゃんはカシャカシャと写真を撮っていた。
だから実際にデコレーションをしたのは残りの4人で、優里ちゃんがぷんぷん怒っていた。
永那ちゃんが撮った写真を見せると、すぐに機嫌が良くなっていてホッとする。
みんなでケーキを食べて、「次はプレゼント交換!」と優里ちゃんが両手を上げた。
「みんな、ちゃんと2千円前後で用意した?」
聞かれて、各々頷く。
「じゃあ音楽流すからねー!音楽が止まったら、それがプレゼントです!」
それぞれ用意したプレゼントを手に持って、円になって座る。
事前に優里ちゃんから“食べ物・飲み物は禁止”と言われていたから、私はマグカップにした。
音楽が流れ始めて、グルグルとプレゼントを回す。

音楽が止まって、手に持っていたプレゼントをお互いに見合った。
「くぁっ…!穂のやつ、私のだ!もっと可愛いのにすれば良かった…!最悪!」
永那ちゃんが床に転がって頭を抱えた。
…永那ちゃんから。
何かよく分からないけど、なんでも、嬉しい。
千陽のは森山さんに、優里ちゃんのは千陽に、森山さんのは誉に、誉のは永那ちゃんに、私のは優里ちゃんにわたった。
袋を開けると、大きい目が描かれたアイマスクだった。
ふわふわしてて、さわり心地は良いかな。
「これ、瞼動かせるんだよ」
永那ちゃんがそばに来て、アイマスクの生地を動かす。
それを私の頭に着けて、ゲラゲラ笑われた。
みんなが笑い始めるから、私は慌てて取る。
「なかなか似合ってたよ?」
永那ちゃんがニヤリと笑う。
「もー」
口を尖らせると、いつものように、そっとキスされた。
みんなを見ても、それぞれプレゼントの話をしていて、全く気にしていないみたいだった。
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