361 / 595
6.さんにん
360.クリスマス
しおりを挟む
項垂れていたら、アラームが鳴った。
穂が目を擦りながら起きる。
「永那ちゃん」
「おはよ、穂」
安心する。
「おはよう」
彼女の唇に、押し付けるようにキスをする。
そのまま舌を絡めて、押し倒す。
しばらく彼女を堪能していたら、トントンと肩を叩かれた。
離れると、2人の間に橋がかかる。
「準備、しないと…」
「そうだね」
彼女を起こして、ギュッと抱きしめる。
「穂…好き」
フフッと彼女が笑って「私も、永那ちゃん好き」と返してくれた。
穂は顔を洗って、歯磨きをして、髪を丁寧に結って、服を着替えた。
私はコンタクトをつけて服を着るだけだったから、ボーッと彼女を見ていた。
穂のお母さんがくれたジャケット。
白シャツに黒のテーパードパンツという、いつもの服装をしても、ジャケットを着ただけで一気にお洒落になるから嬉しい。
手を繋いで外に出る。
「穂」
「ん?」
「SNSさ?非公開にしてよ」
「どうして?」
「んー…ほら…変な人に見られるかもしれないじゃん?」
「変な人?」
「どんな人が見ているかわからないのが、SNSだよ?」
「私のアカウントなんて、クラスの子しか見てないよ」
穂が苦笑する。
「そ、そーかな?…他の人も、見てるかも」
穂は首を傾げて、ジッと私を見た。
「例えば?」
「それは…ほら…知らない人だよ」
彼女が立ち止まって、顔が近づく。
「どうしたの?急に」
「あー…いやー…」
目をそらすと、目線の先に穂が移動する。
「ハァ」と穂がため息をついて、スマホを見た。
自分のアカウントから、設定画面を開く。
「えーっと…これでいいのかな」
彼女が非公開に設定したのを確認して、私はフゥッと息を吐いた。
「それで…私のアカウントは誰に見られてたの?」
唾を飲む。
「教えて?永那ちゃん」
ジッと見られて、逃げられないことを悟る。
「先輩…」
「先輩?」
「前に…会った…あの…昔、助けてくれたっていう」
穂がパチパチと、何度も瞬きをする。
「え!?な、なんで、わかったの?」
「穂の投稿に“いいね”してたよ。気づいてなかったの?知らない人から“いいね”されてるって…」
「全員、クラスの子だと思ってたから」
そう言って、穂は自分の投稿の“いいね”を見始める。
手を繋いで、歩く。
「この人」
私が言うと、彼女が心音のアカウントを見る。
グッと奥歯を強く噛む。
しばらく彼女はスマホを眺めていた。
「綺麗な人」
唇を尖らせて、上目遣いに私を見る。
…可愛い。
「この人が…永那ちゃんの…初めての、人…?」
彼女の瞳が不安げに揺らぐ。
「キスしたって…言ってたよね…」
眉根が垂れて、穂の顔がどんどん俯いていく。
「穂?私は穂が好きだよ。穂以外あり得ない」
「…うん」
今日は純粋に楽しみたかったのになあ…。
言うのは帰ってからにすべきだったか?
でも、イルミネーションの写真も穂が載せることを考えると…。
なるべく心音に見られたくない。
穂がまたスマホの画面に目を落とす。
「とりあえず、それは置いとかない?私は、穂と初めてのイルミネーションを楽しみたいな」
彼女は少し考えてから、口元に弧を描いて頷いた。
「好きだよ、穂」
「私も」
繋いだ手をポケットに入れる。
ギュッと握られるから、握り返した。
会場につくと、もう、人が溢れ返っていた。
「はぐれないようにしなきゃね」
「うん」
体をより密着させる。
赤、黄色、緑、紫、青…たくさんの色が輝いていた。
「穂!あっちに食べ物売ってるみたい!」
遊園地の本格的なイルミネーションを見に行くか、クリスマスマーケットがあるイルミネーションを見に行くかで迷った。
今回は、クリスマスマーケットのほう。
「永那ちゃん!スノードーム売ってるよ!」
「ホントだ!初めて見た…」
「そうなの?」
恐る恐る手に取って、揺らしてみる。
チラチラとドームの中で雪が舞う。
「100均とかでは、小さいのなら見たことあるかな?でも、なんか…こういう、本格的なのは、初めて」
穂がスノードームを手に取って、裏のネジを回す。
「オルゴールになってるみたい」
金属を弾く、綺麗な音色。
人がごった返していて、お酒を飲んでいる人もいて、賑わっている。
…なのに、音が鮮明に耳に届く。
「すごい」
吸い寄せられるように魅入っていると、穂にギュッギュッと手を握られた。
彼女が優しく微笑んでいて、キュンとする。
「永那ちゃん、あっちにも色々あるよ。行こ?」
私は頷いて、いくつものテントを見て回った。
木の実とフェルトで作られた妖精のオーナメントが可愛くて、穂とお揃いで買った。
キラキラした世界。
穂を見ると、彼女の瞳もキラキラ輝いていて、見蕩れる。
食べ物をいくつか買って、なんとか見つけた席に座った。
2人で写真を撮って、分け合って食べる。
「永那ちゃん、永那ちゃん」
「なに?」
「スケートしたことある?」
「ない」
「できるんだって!」
「じゃあ、してみよっか」
ホットレモネードを飲み干して、また2人で手を繋ぐ。
走ってスケート会場に向かう。
それだけで楽しい。
穂も笑ってる。
それだけで、幸せだ。
穂が目を擦りながら起きる。
「永那ちゃん」
「おはよ、穂」
安心する。
「おはよう」
彼女の唇に、押し付けるようにキスをする。
そのまま舌を絡めて、押し倒す。
しばらく彼女を堪能していたら、トントンと肩を叩かれた。
離れると、2人の間に橋がかかる。
「準備、しないと…」
「そうだね」
彼女を起こして、ギュッと抱きしめる。
「穂…好き」
フフッと彼女が笑って「私も、永那ちゃん好き」と返してくれた。
穂は顔を洗って、歯磨きをして、髪を丁寧に結って、服を着替えた。
私はコンタクトをつけて服を着るだけだったから、ボーッと彼女を見ていた。
穂のお母さんがくれたジャケット。
白シャツに黒のテーパードパンツという、いつもの服装をしても、ジャケットを着ただけで一気にお洒落になるから嬉しい。
手を繋いで外に出る。
「穂」
「ん?」
「SNSさ?非公開にしてよ」
「どうして?」
「んー…ほら…変な人に見られるかもしれないじゃん?」
「変な人?」
「どんな人が見ているかわからないのが、SNSだよ?」
「私のアカウントなんて、クラスの子しか見てないよ」
穂が苦笑する。
「そ、そーかな?…他の人も、見てるかも」
穂は首を傾げて、ジッと私を見た。
「例えば?」
「それは…ほら…知らない人だよ」
彼女が立ち止まって、顔が近づく。
「どうしたの?急に」
「あー…いやー…」
目をそらすと、目線の先に穂が移動する。
「ハァ」と穂がため息をついて、スマホを見た。
自分のアカウントから、設定画面を開く。
「えーっと…これでいいのかな」
彼女が非公開に設定したのを確認して、私はフゥッと息を吐いた。
「それで…私のアカウントは誰に見られてたの?」
唾を飲む。
「教えて?永那ちゃん」
ジッと見られて、逃げられないことを悟る。
「先輩…」
「先輩?」
「前に…会った…あの…昔、助けてくれたっていう」
穂がパチパチと、何度も瞬きをする。
「え!?な、なんで、わかったの?」
「穂の投稿に“いいね”してたよ。気づいてなかったの?知らない人から“いいね”されてるって…」
「全員、クラスの子だと思ってたから」
そう言って、穂は自分の投稿の“いいね”を見始める。
手を繋いで、歩く。
「この人」
私が言うと、彼女が心音のアカウントを見る。
グッと奥歯を強く噛む。
しばらく彼女はスマホを眺めていた。
「綺麗な人」
唇を尖らせて、上目遣いに私を見る。
…可愛い。
「この人が…永那ちゃんの…初めての、人…?」
彼女の瞳が不安げに揺らぐ。
「キスしたって…言ってたよね…」
眉根が垂れて、穂の顔がどんどん俯いていく。
「穂?私は穂が好きだよ。穂以外あり得ない」
「…うん」
今日は純粋に楽しみたかったのになあ…。
言うのは帰ってからにすべきだったか?
でも、イルミネーションの写真も穂が載せることを考えると…。
なるべく心音に見られたくない。
穂がまたスマホの画面に目を落とす。
「とりあえず、それは置いとかない?私は、穂と初めてのイルミネーションを楽しみたいな」
彼女は少し考えてから、口元に弧を描いて頷いた。
「好きだよ、穂」
「私も」
繋いだ手をポケットに入れる。
ギュッと握られるから、握り返した。
会場につくと、もう、人が溢れ返っていた。
「はぐれないようにしなきゃね」
「うん」
体をより密着させる。
赤、黄色、緑、紫、青…たくさんの色が輝いていた。
「穂!あっちに食べ物売ってるみたい!」
遊園地の本格的なイルミネーションを見に行くか、クリスマスマーケットがあるイルミネーションを見に行くかで迷った。
今回は、クリスマスマーケットのほう。
「永那ちゃん!スノードーム売ってるよ!」
「ホントだ!初めて見た…」
「そうなの?」
恐る恐る手に取って、揺らしてみる。
チラチラとドームの中で雪が舞う。
「100均とかでは、小さいのなら見たことあるかな?でも、なんか…こういう、本格的なのは、初めて」
穂がスノードームを手に取って、裏のネジを回す。
「オルゴールになってるみたい」
金属を弾く、綺麗な音色。
人がごった返していて、お酒を飲んでいる人もいて、賑わっている。
…なのに、音が鮮明に耳に届く。
「すごい」
吸い寄せられるように魅入っていると、穂にギュッギュッと手を握られた。
彼女が優しく微笑んでいて、キュンとする。
「永那ちゃん、あっちにも色々あるよ。行こ?」
私は頷いて、いくつものテントを見て回った。
木の実とフェルトで作られた妖精のオーナメントが可愛くて、穂とお揃いで買った。
キラキラした世界。
穂を見ると、彼女の瞳もキラキラ輝いていて、見蕩れる。
食べ物をいくつか買って、なんとか見つけた席に座った。
2人で写真を撮って、分け合って食べる。
「永那ちゃん、永那ちゃん」
「なに?」
「スケートしたことある?」
「ない」
「できるんだって!」
「じゃあ、してみよっか」
ホットレモネードを飲み干して、また2人で手を繋ぐ。
走ってスケート会場に向かう。
それだけで楽しい。
穂も笑ってる。
それだけで、幸せだ。
3
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる