いたずらはため息と共に

常森 楽

文字の大きさ
362 / 595
6.さんにん

361.クリスマス

しおりを挟む
「待って…!待っ…!」
穂がコケそうになって、慌ててフェンスを掴む。
私は割とすぐに慣れて、不格好だけど、一応滑れるようになった。
でも穂は怖がって、全くフェンスから離れようとしない。
穂がスケートのこと言い始めたのに。
強引に引き離そうとすると睨まれるから、仕方なく穂の近くをスイスイ滑る。
彼女に見せびらかすように。
むぅっと唇を尖らせる彼女が可愛い。

スケートの利用時間が終わる頃には、なんとか手を繋いで、穂も真ん中近くを滑った。
白いクリスマスツリーのようなオブジェが立っていたから、2人で眺めた。
靴を返して、メインの大きなクリスマスツリーを見に行く。
「スケートってけっこう疲れるんだね」
私に寄りかかるようにして穂が歩く。
「今日はエッチもしたしね」
耳元で囁くと「もー!」と肩を叩かれた。
「でも、楽しかったね?」
穂は眉をハの字にして、笑った。
「うん!」

「うおー、でかーっ!」
丸いオーナメントに2人が映る。
何枚か写真を撮って、早々にツリーから離れた。
やっぱりメインなだけあって、人がぎゅうぎゅうにいて、とてもじゃないけどのんびりしていられる感じではなかった。
人混みを掻き分けて「すみません」と言いながら、ギュッと手を繋いで、メインのクリスマスツリーから離れた。

会場から少し離れたところにベンチがあったから2人で座る。
彼女が頭を寄せてくれるから、私もその上に頭を乗せた。
「綺麗だね」
「穂のほうが綺麗だよ?」
ドラマとかであるあるの台詞を言ってみる。
いつだったかも似たようなことを言ってみたけど、笑い話になったような…。
穂はフフッと笑って、「永那ちゃん好き」と小さく呟いた。
どうやら今回は成功らしい。
寒いけど、寒くない。
心がぽかぽかして、キラキラの世界を遠目に見る。
「穂」
「なに?」
「来年はさ、違うイルミネーション見に行こう?」
「来年、受験だよ?」
「そっかあ…。じゃあ、再来年」
「うん」
2人でボーッと夜景を眺める。
少しずつ人が減っていく。
イルミネーションがより綺麗に見えた。

ポケットのスマホが振動する。
さっきから何度か通知が来ていたのは知っていた。
無視していたけど、今回は長いから電話だ。
画面を見ると、誉からだった。
「うい」
「お母さん怒ってるよー」
「マジ?」
穂を見ると、ほげーっと呑気な顔をしていた。
「急いで帰ります」
「俺寝てると思うけど」
「おー、ごめんな?おやすみ」
「おやすみ」
通話が切れて、スマホの時計を確認すれば、もう11時近くになっていた。
「穂、お母さん怒ってるって!帰ろ!」
「え!?なんで!?」
「もう11時」
彼女の手を引いて、走り出す。
「嘘!?もう!?…私、不良になっちゃった」
落ち込む彼女を無視して、走って駅に行く。

電車に乗ると、意外にも人がたくさんいてびっくりした。
穂と密着できて嬉しい。
彼女を抱きしめながら電車に揺られる。
家につくと、お母さんの眉間にシワが刻まれていた。
「ごめんなさい…」
穂が項垂れる。
「心配するでしょ!いくら2人だからって、こんな時間まで連絡もなしに!」
「ごめんなさい」
言いつつ、なんだか嬉しい。
私はお母さんに、こんなふうに叱られたことなんてないから。
お母さんは「ハァ」とため息をついて「永那ちゃん、何笑ってるの」と目を細められた。
私はそっと目をそらす。
「早くお風呂入ってきなさい。…これから、ちゃんと連絡するように!」
「はーい」
項垂れたままの穂の手を引いて、部屋に行く。

「穂、そんな落ち込まないでよ」
鞄を置いて、彼女の両頬を包む。
「楽しくなかった?嫌だった?」
彼女の瞳がようやく上向いて、私を見た。
「楽しかった!私、すごく、楽しかったよ」
「じゃあ、次から気をつければいいじゃん?」
穂は少し考えて、頷く。
手を繋いだままお風呂に向かうと、コーヒーを飲みながら仕事をしていたお母さんと目が合った。
困ったような…それでも、優しい笑みを向けられて、私も笑みを返す。

体が冷え切っていた。
長時間外にいたから当たり前か。
あたたかいシャワーを浴びると、芯まであったまる気がした。
いつも通り、彼女の体を洗う。
「んっ」
彼女が壁に手をついて、シャワーのお湯が当たる綺麗な黒髪が、背中で波打っている。
中指をゆっくりお尻の穴に挿入する。
「ハァ」
…ああ、可愛い。
なかで指を曲げると「だ、め…っ」と彼女が言う。
「今日お尻でイっちゃったもんね?」
囁くと、「もう、おしまい…!」と言われてしまった。
仕方なく、ゆっくり指を抜く。
手を洗って、自分の体も洗う。
烏の行水だ。

今日は大人しく寝る。
彼女を後ろから抱いて、うなじの匂いを嗅いだ。
「永那ちゃん…」
「んー?」
フゥッと彼女が息を吐く。
「さっきの…永那ちゃんの、初めての人…」
「うん?」
彼女はまた「ハァ」とため息をつく。
「永那ちゃんは、あの人と…エッチ…したんだよね?」
「…そうだね」
「どう、だったの?その…何回くらい、エッチしたの?」
そんなこと、普通は聞かないよね?
可愛い穂。
こんなこと知りたがるの、穂くらいじゃない?
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...