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8.閑話
4.永那 中2 冬《古賀日和編》
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「やっぱり昨日も部活来なかったー!悲しー!」
軽音部の子が教室で叫ぶ。
「永那先輩に会いたいよ~!」
「もう2年生の教室行っちゃおうよ?」
「無理だよ~」
「そんなんじゃ先輩、卒業しちゃうよ!?いいの!?」
「やだー!」
「じゃあ、ほら!行くよ!」
奥歯を強く噛む。
…私、とんでもないことをしてしまったのでは?
クラスの隅にいるような私が、中心にいるような子を差し置いて…先輩と…。
顔が熱くなる。
みんなより、ほんの少し“大人”になれたような気がした。
授業に集中できないまま、放課後になった。
「日和!」
ドキッとする。
「な、なに?」
「もう、何度も呼んでるのに全然反応ないからビビったよ」
気づけば違うクラスの部活の友人が、隣にいた。
「ご、ごめんね」
「早く部活行こ?」
「…あー、今日…私…用事があって…」
「そうなの?…なんだ。早く言ってよ」
「ホント、ごめん」
友人と別れた後、私は走ってあの場所に向かう。
先輩はまだいなかった。
ドキドキしながら待っていると「日和」と、優しい声で呼ばれた。
「先輩っ」
「また、待っててくれた」
その微笑みに、キュンとする。
ふっと近づかれて、優しくキスされる。
ジッと見つめられたから、恥ずかしくて俯いた。
「日和の連絡先教えてよ?」
「えっ?」
「だめ?」
「あ、いいえ!だめじゃ、ないです。嬉しいです」
永那先輩と連絡先交換。
彼女がメッセージを送ってくれた。
眉毛の太い、うんちのスタンプに「よろしく!」と書かれていた。
なぜ、うんち…?
ふいに手を繋がれて、心臓がドキドキし始めた。
「公園行こ?」
ベンチに座る。
小学生くらいの子が何人かいて、遊んでいる。
ドキドキし過ぎて、何を話せばいいのか、わからない。
何か言おうと思うんだけど、何も出てこなくて余計に焦る。
日が暮れていく空を眺めて、焦る気持ちを落ち着かせようとするけど、落ち着かない。
「日和の家族のこと、教えてよ」
「えっ?家族、ですか…?」
「お父さんはどんな人?どんな仕事してるの?」
「普通の、サラリーマンですよ。仕事から帰ってきたら、ご飯食べて、ビール飲んで…私がテレビを見てるのに、勝手にチャンネル変えて、野球とか見始めるんです」
「へえ。お母さんは?」
「スーパーで、パートしてます。ちょっと、心配性なんですけど…いつも私のことを気にしてくれる、なんだかんだ、優しいお母さんです」
「他に、姉弟は?」
「お兄ちゃんが、います。…頭が良くて、友達も多くて、本当に兄妹なのかな?って、たまに疑っちゃうくらい優秀なんです」
「ふーん。仲良いの?」
「うーん…どう、ですかね?悪くはないと思うんですけど…」
「ふーん」
「先輩は…」
「お姉ちゃんがいるよ。私も、お姉ちゃんとは…仲良くもないし、悪くもないみたいな…そんな感じかな。…ねえ、私、日和の家に遊びに行ってみたいな?」
「え!?」
「無理だったらいいけど」
「あ、お母さんに、聞いてみます…」
「できれば、誰もいない日に行きたいけど」
永那先輩が流し目に私を見た。
誰も…いない日…。
急に太ももの付け根がモゾモゾし始める。
「…私、人の親って、苦手だから」
そう言われて、顔が熱くなる。
そうだよ!何エッチなこと考えてるの!私の馬鹿!
「聞いてみます」
「うん。楽しみにしてるね」
『来週の土曜日、お母さんとお父さんが2人で出かけます。お兄ちゃんは塾です。…先輩は、あいてますか?』
初めて送るメッセージ。
手汗を何度も拭きながら送った。
『あいてるよ。何時にする?』
『10時頃は、どうですか?』
『りょーかい!』
毎日部屋を掃除した。
レイアウトを変えてみたり、可愛い置物を買ってみたり。
服も、全然決まらなかった。
最後の最後まで決まらなくて、最終的に何が何だかわからなくなって、結局最初に考えた服装になった。
長いようであっという間な1週間が過ぎて、あの場所で先輩を待つ。
「日和」
私服姿に、ドキドキした。
黒のパンツに、白のシャツ。
シンプルなのにかっこいい。
家について、お茶とお菓子を出す。
「ありがと」
先輩は床に座って、ベッドに寄りかかっていた。
私が隣に座ると、近づかれて、肩が触れ合う。
「日和は、なんで私に“好き”って言ったの?」
「あ、あの…その…」
“勢いで”なんて言っていいのか、わからない。
「雨の日が、初対面だよね?他に接点あったっけ?」
「…雨の日が、初対面です」
「ふーん」
彼女の目が細くなる。
…何を、考えているんだろう?
「あの日、先輩が…優しくしてくれて…私…」
「そっか」
彼女を見ると、唇が触れ合って、息が荒くなる。
一度離れて、もう一度重なった。
舌が入ってきて、一気に体が強張った。
「大丈夫だよ」
そう囁かれて、また彼女のやわらかな舌が口内に入ってくる。
目をギュッと瞑る。
彼女に身を委ねるように、ただ、されるがままになる。
息が、し難い。
…苦しい。
そう思ったとき、彼女が離れた。
軽音部の子が教室で叫ぶ。
「永那先輩に会いたいよ~!」
「もう2年生の教室行っちゃおうよ?」
「無理だよ~」
「そんなんじゃ先輩、卒業しちゃうよ!?いいの!?」
「やだー!」
「じゃあ、ほら!行くよ!」
奥歯を強く噛む。
…私、とんでもないことをしてしまったのでは?
クラスの隅にいるような私が、中心にいるような子を差し置いて…先輩と…。
顔が熱くなる。
みんなより、ほんの少し“大人”になれたような気がした。
授業に集中できないまま、放課後になった。
「日和!」
ドキッとする。
「な、なに?」
「もう、何度も呼んでるのに全然反応ないからビビったよ」
気づけば違うクラスの部活の友人が、隣にいた。
「ご、ごめんね」
「早く部活行こ?」
「…あー、今日…私…用事があって…」
「そうなの?…なんだ。早く言ってよ」
「ホント、ごめん」
友人と別れた後、私は走ってあの場所に向かう。
先輩はまだいなかった。
ドキドキしながら待っていると「日和」と、優しい声で呼ばれた。
「先輩っ」
「また、待っててくれた」
その微笑みに、キュンとする。
ふっと近づかれて、優しくキスされる。
ジッと見つめられたから、恥ずかしくて俯いた。
「日和の連絡先教えてよ?」
「えっ?」
「だめ?」
「あ、いいえ!だめじゃ、ないです。嬉しいです」
永那先輩と連絡先交換。
彼女がメッセージを送ってくれた。
眉毛の太い、うんちのスタンプに「よろしく!」と書かれていた。
なぜ、うんち…?
ふいに手を繋がれて、心臓がドキドキし始めた。
「公園行こ?」
ベンチに座る。
小学生くらいの子が何人かいて、遊んでいる。
ドキドキし過ぎて、何を話せばいいのか、わからない。
何か言おうと思うんだけど、何も出てこなくて余計に焦る。
日が暮れていく空を眺めて、焦る気持ちを落ち着かせようとするけど、落ち着かない。
「日和の家族のこと、教えてよ」
「えっ?家族、ですか…?」
「お父さんはどんな人?どんな仕事してるの?」
「普通の、サラリーマンですよ。仕事から帰ってきたら、ご飯食べて、ビール飲んで…私がテレビを見てるのに、勝手にチャンネル変えて、野球とか見始めるんです」
「へえ。お母さんは?」
「スーパーで、パートしてます。ちょっと、心配性なんですけど…いつも私のことを気にしてくれる、なんだかんだ、優しいお母さんです」
「他に、姉弟は?」
「お兄ちゃんが、います。…頭が良くて、友達も多くて、本当に兄妹なのかな?って、たまに疑っちゃうくらい優秀なんです」
「ふーん。仲良いの?」
「うーん…どう、ですかね?悪くはないと思うんですけど…」
「ふーん」
「先輩は…」
「お姉ちゃんがいるよ。私も、お姉ちゃんとは…仲良くもないし、悪くもないみたいな…そんな感じかな。…ねえ、私、日和の家に遊びに行ってみたいな?」
「え!?」
「無理だったらいいけど」
「あ、お母さんに、聞いてみます…」
「できれば、誰もいない日に行きたいけど」
永那先輩が流し目に私を見た。
誰も…いない日…。
急に太ももの付け根がモゾモゾし始める。
「…私、人の親って、苦手だから」
そう言われて、顔が熱くなる。
そうだよ!何エッチなこと考えてるの!私の馬鹿!
「聞いてみます」
「うん。楽しみにしてるね」
『来週の土曜日、お母さんとお父さんが2人で出かけます。お兄ちゃんは塾です。…先輩は、あいてますか?』
初めて送るメッセージ。
手汗を何度も拭きながら送った。
『あいてるよ。何時にする?』
『10時頃は、どうですか?』
『りょーかい!』
毎日部屋を掃除した。
レイアウトを変えてみたり、可愛い置物を買ってみたり。
服も、全然決まらなかった。
最後の最後まで決まらなくて、最終的に何が何だかわからなくなって、結局最初に考えた服装になった。
長いようであっという間な1週間が過ぎて、あの場所で先輩を待つ。
「日和」
私服姿に、ドキドキした。
黒のパンツに、白のシャツ。
シンプルなのにかっこいい。
家について、お茶とお菓子を出す。
「ありがと」
先輩は床に座って、ベッドに寄りかかっていた。
私が隣に座ると、近づかれて、肩が触れ合う。
「日和は、なんで私に“好き”って言ったの?」
「あ、あの…その…」
“勢いで”なんて言っていいのか、わからない。
「雨の日が、初対面だよね?他に接点あったっけ?」
「…雨の日が、初対面です」
「ふーん」
彼女の目が細くなる。
…何を、考えているんだろう?
「あの日、先輩が…優しくしてくれて…私…」
「そっか」
彼女を見ると、唇が触れ合って、息が荒くなる。
一度離れて、もう一度重なった。
舌が入ってきて、一気に体が強張った。
「大丈夫だよ」
そう囁かれて、また彼女のやわらかな舌が口内に入ってくる。
目をギュッと瞑る。
彼女に身を委ねるように、ただ、されるがままになる。
息が、し難い。
…苦しい。
そう思ったとき、彼女が離れた。
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