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8.閑話
3.永那 中2 冬《古賀日和編》
「永那先輩」
今まで耳を通り抜けていた言葉が、やけに脳に響いた。
つい、耳を傾けてしまう。
軽音部の子が話している。
「今日は来るかなー?」
「ほとんど来ないんでしょ?次来たときは絶対連絡先教えてもらいなよ?」
「無理~、勇気出ない~」
「え~、部活の先輩でしょー?頑張れよー。もう冬だよ?」
「そうだけど、永那先輩、彼女いるっぽいしさ~」
「前にもそれ聞いたー。でも本人は“いない”って言ってるんでしょ?」
「両角先輩ってめっちゃチャラいんじゃないの?良い噂聞かないけど…。“いない”って…あくまで付き合ってる人のことでしょ?やめたほうがいいって」
菫ちゃんが話に加わって、視線を会話のほうに向ける。
「菫は頭かたすぎ~、チャラいのが良いんじゃん!かっこいいんじゃん!顔もかっこいいし、歌もめっちゃ上手いんだよ~」
「ハァ」と菫ちゃんが頭を抱える。
私に声をかけてくれた永那先輩からは、想像もできない。
あの人が…チャラい…?
信じられない…。
でも、菫ちゃんが言ってることは嘘じゃないんだろうし…。
考えながら、机に引っ掛けてある鞄をそっと撫でた。
タオルを返そうと思って学校に持ってきたけど、どう返すのかまで考えていなかった…。
先輩と同じ部活の子ですら連絡先を聞けないのに…私なんか、どう話しかければいいんだろう?
学校では到底無理そうだったから、とりあえず、昨日会った道で待ってみることにした。
誰かが通りかかるたびにドキッとする。
…心臓に悪い。
透明の袋にタオルと、お礼のお菓子を入れた。
それをギュッと握りしめて、眺める。
ついリボンなんかつけちゃって…私、やりすぎかな?
プレゼントじゃないんだから…。
「あれ?」
その声に、肩が上がった。
恐る恐る顔を上げると、永那先輩だった。
「どうしたの?」
「あ、あのっ…これ…昨日の…」
「ああ、べつに良かったのに」
笑みを浮かべながら、先輩が袋を受け取る。
ハハッと笑って、「リボンついてる」と呟くから、恥ずかしくて顔が熱くなる。
「お菓子も?ありがとう」
「い、いいえ…こちらこそ…昨日はありがとうございました」
フフッと笑って「教科書、波打ってなかった?」と上目遣いに聞かれる。
…かっこいい。
「ア、アイロンで…やったので…そんなには…」
「へえ。マメだね」
「そ、そうですかね?」
先輩は鞄に袋をしまって、ニコリと笑う。
「わざわざ、待ってくれてたの?」
「あ…はい。す、すみません。2年生の教室に行く勇気が…なくて…」
「まあ、そうだよね」
「せ、先輩は、この辺りに住んでるんですか?」
「んー…ちょっと離れてるかな」
「そう…なんですか」
じゃあ、どうしてここにいるんだろう?
「日和は?」
名前を呼ばれて、胸が高鳴る。
「私は…真っ直ぐ行って、坂を上った先です」
「ふーん」
先輩は、来た道を振り向いて頷いた。
…このままじゃ…このままじゃ…先輩との繋がりが…なくなっちゃう。
連絡先…連絡先を、聞かなきゃ。
…聞いてどうするの?
聞いたって、話せることなんて、ない…。
「んじゃ」
嫌。…待って。何か、何か、言わないと…。
「好きです!」
「…え?」
冬だというのに、汗が吹き出る。
あれ…?違う…それを、言いたかったんじゃなくて…。
じゃあ、何を…。
「…ふーん」
先輩の目はスーッと細くなって、左端の口角が上がっていた。
背筋がゾワリとする。
「あ…あの…」
目が、離せない。
「その好きって、どういう好き?」
先輩が一歩、私に近づく。
黙っていると、もう一歩。
俯いて、また一歩。
気づいたら、電柱に押しやられていた。
「ねえ」
心臓がバクバクと鳴って、目眩がしてくる。
もう、頭の中が真っ白だ。
「その好きってさ?先輩としての好き?それとも…“キスしたい”の、好き?」
彼女の指が私の顎に触れて、顔を上げさせられた。
…近い。
「どっち?」
「キス…したい、の…」
言い切る前に、唇を塞がれた。
…温かい。やわらかい。
チュッと音を立てて、彼女が離れる。
妖艶に微笑まれて、太ももの付け根がムズムズした。
これは…チャラい…。
頭を撫でられて、全身の力が抜けそうになる。
「嬉しい?」
ただ私は必死に立っていた。電柱に体を預けて。
「ねえ、嬉しい?」
少し悲しそうな、不安そうな声にハッとして、気づけば「はい」と答えていた。
「ふーん。じゃ、また明日ね」
そう言って、彼女は手をひらひら振りながら去っていった。
私はその場にへたり込んで、キュンキュンする胸と、モゾモゾする太ももの付け根が鎮まるまで、そこにいた。
「あーーー!!!」
初めての告白。初めてのキス。
何もかもが突然過ぎて、気持ちの整理が全くつかない。
ベッドに寝転んで、枕に顔を埋める。
“また明日”ってなに!?
明日も…あそこで待ってれば良いってこと?
眠れなかった。
全然、眠れなかった。
いつも通りのはずの自慰も、自然と指が激しく動いた。
先輩を想像すると、何度もイった。
今まで耳を通り抜けていた言葉が、やけに脳に響いた。
つい、耳を傾けてしまう。
軽音部の子が話している。
「今日は来るかなー?」
「ほとんど来ないんでしょ?次来たときは絶対連絡先教えてもらいなよ?」
「無理~、勇気出ない~」
「え~、部活の先輩でしょー?頑張れよー。もう冬だよ?」
「そうだけど、永那先輩、彼女いるっぽいしさ~」
「前にもそれ聞いたー。でも本人は“いない”って言ってるんでしょ?」
「両角先輩ってめっちゃチャラいんじゃないの?良い噂聞かないけど…。“いない”って…あくまで付き合ってる人のことでしょ?やめたほうがいいって」
菫ちゃんが話に加わって、視線を会話のほうに向ける。
「菫は頭かたすぎ~、チャラいのが良いんじゃん!かっこいいんじゃん!顔もかっこいいし、歌もめっちゃ上手いんだよ~」
「ハァ」と菫ちゃんが頭を抱える。
私に声をかけてくれた永那先輩からは、想像もできない。
あの人が…チャラい…?
信じられない…。
でも、菫ちゃんが言ってることは嘘じゃないんだろうし…。
考えながら、机に引っ掛けてある鞄をそっと撫でた。
タオルを返そうと思って学校に持ってきたけど、どう返すのかまで考えていなかった…。
先輩と同じ部活の子ですら連絡先を聞けないのに…私なんか、どう話しかければいいんだろう?
学校では到底無理そうだったから、とりあえず、昨日会った道で待ってみることにした。
誰かが通りかかるたびにドキッとする。
…心臓に悪い。
透明の袋にタオルと、お礼のお菓子を入れた。
それをギュッと握りしめて、眺める。
ついリボンなんかつけちゃって…私、やりすぎかな?
プレゼントじゃないんだから…。
「あれ?」
その声に、肩が上がった。
恐る恐る顔を上げると、永那先輩だった。
「どうしたの?」
「あ、あのっ…これ…昨日の…」
「ああ、べつに良かったのに」
笑みを浮かべながら、先輩が袋を受け取る。
ハハッと笑って、「リボンついてる」と呟くから、恥ずかしくて顔が熱くなる。
「お菓子も?ありがとう」
「い、いいえ…こちらこそ…昨日はありがとうございました」
フフッと笑って「教科書、波打ってなかった?」と上目遣いに聞かれる。
…かっこいい。
「ア、アイロンで…やったので…そんなには…」
「へえ。マメだね」
「そ、そうですかね?」
先輩は鞄に袋をしまって、ニコリと笑う。
「わざわざ、待ってくれてたの?」
「あ…はい。す、すみません。2年生の教室に行く勇気が…なくて…」
「まあ、そうだよね」
「せ、先輩は、この辺りに住んでるんですか?」
「んー…ちょっと離れてるかな」
「そう…なんですか」
じゃあ、どうしてここにいるんだろう?
「日和は?」
名前を呼ばれて、胸が高鳴る。
「私は…真っ直ぐ行って、坂を上った先です」
「ふーん」
先輩は、来た道を振り向いて頷いた。
…このままじゃ…このままじゃ…先輩との繋がりが…なくなっちゃう。
連絡先…連絡先を、聞かなきゃ。
…聞いてどうするの?
聞いたって、話せることなんて、ない…。
「んじゃ」
嫌。…待って。何か、何か、言わないと…。
「好きです!」
「…え?」
冬だというのに、汗が吹き出る。
あれ…?違う…それを、言いたかったんじゃなくて…。
じゃあ、何を…。
「…ふーん」
先輩の目はスーッと細くなって、左端の口角が上がっていた。
背筋がゾワリとする。
「あ…あの…」
目が、離せない。
「その好きって、どういう好き?」
先輩が一歩、私に近づく。
黙っていると、もう一歩。
俯いて、また一歩。
気づいたら、電柱に押しやられていた。
「ねえ」
心臓がバクバクと鳴って、目眩がしてくる。
もう、頭の中が真っ白だ。
「その好きってさ?先輩としての好き?それとも…“キスしたい”の、好き?」
彼女の指が私の顎に触れて、顔を上げさせられた。
…近い。
「どっち?」
「キス…したい、の…」
言い切る前に、唇を塞がれた。
…温かい。やわらかい。
チュッと音を立てて、彼女が離れる。
妖艶に微笑まれて、太ももの付け根がムズムズした。
これは…チャラい…。
頭を撫でられて、全身の力が抜けそうになる。
「嬉しい?」
ただ私は必死に立っていた。電柱に体を預けて。
「ねえ、嬉しい?」
少し悲しそうな、不安そうな声にハッとして、気づけば「はい」と答えていた。
「ふーん。じゃ、また明日ね」
そう言って、彼女は手をひらひら振りながら去っていった。
私はその場にへたり込んで、キュンキュンする胸と、モゾモゾする太ももの付け根が鎮まるまで、そこにいた。
「あーーー!!!」
初めての告白。初めてのキス。
何もかもが突然過ぎて、気持ちの整理が全くつかない。
ベッドに寝転んで、枕に顔を埋める。
“また明日”ってなに!?
明日も…あそこで待ってれば良いってこと?
眠れなかった。
全然、眠れなかった。
いつも通りのはずの自慰も、自然と指が激しく動いた。
先輩を想像すると、何度もイった。
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