いたずらはため息と共に

常森 楽

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6.さんにん

391.ふたり

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「そっか。なら、良かった」
「はい」
眼鏡を外してコンタクトにすればいいのに、桜はメイクをしてあげた翌日から、また眼鏡をつけて学校に来ていた。
その2つのガラス越しに、彼女の瞳が弧を描く。
あたしは2人に背を向けた。

「じゃーん!」
ぶかぶかの制服が全然似合わない誉が部屋から出てくる。
「おー!ぶかぶかだね」
優里が言う。
「もー!!すぐ大きくなってやる!」
誉がジタバタすると、長い袖がパタパタと肌に当たる音がした。
「あ~、私も中学生になる前、ジャージとか大きいの買ったなー!懐かしい!」
優里があたしの隣に座って、誉を眺めながら言う。
穂が全員分のお茶とお菓子を持ってきてくれたから、さっそくあたしはクッキーを口に入れる。
「誉の中学は学ランなんだね」
興味がなさそうなのに、話だけはちゃんと乗る永那。
両角もろずみさん、似合いそうですね…」
珍しく桜が発言する。
「え、そう?」
「わー!たしかに!!似合いそう!!」
「着てみたら?」
絶対似合う。
「え~、そうかな~」
永那が鼻の下を伸ばして、サルみたいな顔をする。
…これは、着る気があんまりないパターン。
おだて続ければ着るんだろうけど。
「永那ちゃんの…学ラン…」
穂の目がキラキラ輝く。
永那がその表情を見逃すはずもなく…
「よし!誉!それを今すぐ脱げ!」
誉はギャーギャー騒いで抵抗しながらも、永那に制服を脱がされていた。

「ねえ、もしかしてだけどさ?誉が学ランってことは、穂はセーラー服?」
永那がボタンを留めながら聞く。
「うん」
永那はスカートを着たままズボンを穿くけど、雑だからショーツがチラチラ見えている。
誉もいるのに、普通に着替えてることに頭が痛くなる。
穂の家に泊まってた時も普通に着替えてたんだろうな…。
誉は制服を脱がされて、慌てて部屋に戻って服を着ていた。
「見たい!!!」
「え!?」
「私も!」
「あたしも」
「わ、私も…」
「じゃあ、俺も…?」
穂が宙を見ながら前髪を指で梳く。
「んー…どうかな…。もう使わないからって、クローゼットの奥の方に仕舞い込んじゃったからなぁ…」
「私が出してあげるから!ね!」
永那が学ランを着終えて、それを眺める間もなく永那は穂の部屋に入っていった。
「え、永那ちゃん…!」

しばらくして、2人が部屋から出てきた。
学ランとセーラー服…いいな。
「わ~!穂ちゃん可愛い!永那も似合ってる!」
「お似合いのカップルでしょ?」
永那が穂の肩を抱く。
「めっちゃお似合い!」
優里が純粋に褒めて、拍手する。
桜がそれに続いて小さく拍手した。
永那は嬉しそうに笑って、穂は照れて前髪を指で梳く。
あたしはジッと2人を見ながら、コップの縁を人差し指で撫でた。
“いつ3人でするんだろう?”なんて、やましいことを考えているのは、きっとこの場であたしだけ。
永那と2人で穂を気持ち良くする…。
少しはあたしのことも気持ち良くしてもらえるのかな?
早く、シたい…。
そろそろ、ひとりじゃ、虚しい…。
ぬくもりが、欲しい。

永那が穂の頬にキスをして、唇にもしようとして阻まれている。
「永那ちゃんっ、ダメ!」
優里が苦笑して、桜は鼻の穴を大きくしている。
誉は全然気にしていなくて、ジェンガを準備し始めた。
「倒した人に罰ゲームね!」
「お!楽しそう!」
永那は穂に頬を平手で潰されていた。
それでも楽しそうに笑ってる。
「罰ゲームって何するの!?」
優里が身を乗り出して聞く。
「フッフッフッ…俺は今日のために…カラシ入りたこ焼きを作ったのです!」
「すごーい!」
「楽しそう!」
優里と永那が言う。
…くだらない。
穂を見ると、思いっきり嫌そうな顔をしていた。
桜は苦笑。
永那が座って「やろうぜー!」と腕まくりした。

1回目、優里が倒す。
「もー!嫌だー!!」
そう言いながらも、誉が作ったカラシ入りたこ焼きを口に運ぶ。
「あーーー!無理無理無理!めっちゃ入ってるじゃん!!」
口を大きく開けて、お茶で流し込む。
永那と誉だけが楽しそうにお腹を抱えて笑う。
2回目は永那。
「嘘だろーーー!なんで優里じゃないんだよー!」
「私ばっかり負けるわけじゃないんだよ!いつも私にひどいこと言ってるからだ!やーいやーい!」
「うっせー!次は絶対優里だ!」
永那がたこ焼きを丸呑みする。
たこ焼きが喉を通っていくのが見てわかる。
「俺も負けないぞー!」
「永那ちゃん、ちゃんと噛んだ?」
「穂…噛めるわけないよね!?」
「体に悪いよ…」
穂が馬鹿真面目に永那を心配するから、ちょっと面白い。
「喉に詰まっちゃったら窒息しちゃうかもしれないんだよ?丸呑みはダメ!」
「はいはい」
永那が頭をポリポリ掻く。
「もー…」
穂は不満そうに唇を尖らせた。
「噛まないと罰ゲームになんないじゃん!」
優里が穂に加勢。
「わかったって!でも、どうせ次はないから!」
それが振りだったかのように、3回目も永那がジェンガを倒した。
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