392 / 595
6.さんにん
391.ふたり
しおりを挟む
「そっか。なら、良かった」
「はい」
眼鏡を外してコンタクトにすればいいのに、桜はメイクをしてあげた翌日から、また眼鏡をつけて学校に来ていた。
その2つのガラス越しに、彼女の瞳が弧を描く。
あたしは2人に背を向けた。
「じゃーん!」
ぶかぶかの制服が全然似合わない誉が部屋から出てくる。
「おー!ぶかぶかだね」
優里が言う。
「もー!!すぐ大きくなってやる!」
誉がジタバタすると、長い袖がパタパタと肌に当たる音がした。
「あ~、私も中学生になる前、ジャージとか大きいの買ったなー!懐かしい!」
優里があたしの隣に座って、誉を眺めながら言う。
穂が全員分のお茶とお菓子を持ってきてくれたから、さっそくあたしはクッキーを口に入れる。
「誉の中学は学ランなんだね」
興味がなさそうなのに、話だけはちゃんと乗る永那。
「両角さん、似合いそうですね…」
珍しく桜が発言する。
「え、そう?」
「わー!たしかに!!似合いそう!!」
「着てみたら?」
絶対似合う。
「え~、そうかな~」
永那が鼻の下を伸ばして、サルみたいな顔をする。
…これは、着る気があんまりないパターン。
おだて続ければ着るんだろうけど。
「永那ちゃんの…学ラン…」
穂の目がキラキラ輝く。
永那がその表情を見逃すはずもなく…
「よし!誉!それを今すぐ脱げ!」
誉はギャーギャー騒いで抵抗しながらも、永那に制服を脱がされていた。
「ねえ、もしかしてだけどさ?誉が学ランってことは、穂はセーラー服?」
永那がボタンを留めながら聞く。
「うん」
永那はスカートを着たままズボンを穿くけど、雑だからショーツがチラチラ見えている。
誉もいるのに、普通に着替えてることに頭が痛くなる。
穂の家に泊まってた時も普通に着替えてたんだろうな…。
誉は制服を脱がされて、慌てて部屋に戻って服を着ていた。
「見たい!!!」
「え!?」
「私も!」
「あたしも」
「わ、私も…」
「じゃあ、俺も…?」
穂が宙を見ながら前髪を指で梳く。
「んー…どうかな…。もう使わないからって、クローゼットの奥の方に仕舞い込んじゃったからなぁ…」
「私が出してあげるから!ね!」
永那が学ランを着終えて、それを眺める間もなく永那は穂の部屋に入っていった。
「え、永那ちゃん…!」
しばらくして、2人が部屋から出てきた。
学ランとセーラー服…いいな。
「わ~!穂ちゃん可愛い!永那も似合ってる!」
「お似合いのカップルでしょ?」
永那が穂の肩を抱く。
「めっちゃお似合い!」
優里が純粋に褒めて、拍手する。
桜がそれに続いて小さく拍手した。
永那は嬉しそうに笑って、穂は照れて前髪を指で梳く。
あたしはジッと2人を見ながら、コップの縁を人差し指で撫でた。
“いつ3人でするんだろう?”なんて、疚しいことを考えているのは、きっとこの場であたしだけ。
永那と2人で穂を気持ち良くする…。
少しはあたしのことも気持ち良くしてもらえるのかな?
早く、シたい…。
そろそろ、ひとりじゃ、虚しい…。
ぬくもりが、欲しい。
永那が穂の頬にキスをして、唇にもしようとして阻まれている。
「永那ちゃんっ、ダメ!」
優里が苦笑して、桜は鼻の穴を大きくしている。
誉は全然気にしていなくて、ジェンガを準備し始めた。
「倒した人に罰ゲームね!」
「お!楽しそう!」
永那は穂に頬を平手で潰されていた。
それでも楽しそうに笑ってる。
「罰ゲームって何するの!?」
優里が身を乗り出して聞く。
「フッフッフッ…俺は今日のために…カラシ入りたこ焼きを作ったのです!」
「すごーい!」
「楽しそう!」
優里と永那が言う。
…くだらない。
穂を見ると、思いっきり嫌そうな顔をしていた。
桜は苦笑。
永那が座って「やろうぜー!」と腕まくりした。
1回目、優里が倒す。
「もー!嫌だー!!」
そう言いながらも、誉が作ったカラシ入りたこ焼きを口に運ぶ。
「あーーー!無理無理無理!めっちゃ入ってるじゃん!!」
口を大きく開けて、お茶で流し込む。
永那と誉だけが楽しそうにお腹を抱えて笑う。
2回目は永那。
「嘘だろーーー!なんで優里じゃないんだよー!」
「私ばっかり負けるわけじゃないんだよ!いつも私にひどいこと言ってるからだ!やーいやーい!」
「うっせー!次は絶対優里だ!」
永那がたこ焼きを丸呑みする。
たこ焼きが喉を通っていくのが見てわかる。
「俺も負けないぞー!」
「永那ちゃん、ちゃんと噛んだ?」
「穂…噛めるわけないよね!?」
「体に悪いよ…」
穂が馬鹿真面目に永那を心配するから、ちょっと面白い。
「喉に詰まっちゃったら窒息しちゃうかもしれないんだよ?丸呑みはダメ!」
「はいはい」
永那が頭をポリポリ掻く。
「もー…」
穂は不満そうに唇を尖らせた。
「噛まないと罰ゲームになんないじゃん!」
優里が穂に加勢。
「わかったって!でも、どうせ次はないから!」
それが振りだったかのように、3回目も永那がジェンガを倒した。
「はい」
眼鏡を外してコンタクトにすればいいのに、桜はメイクをしてあげた翌日から、また眼鏡をつけて学校に来ていた。
その2つのガラス越しに、彼女の瞳が弧を描く。
あたしは2人に背を向けた。
「じゃーん!」
ぶかぶかの制服が全然似合わない誉が部屋から出てくる。
「おー!ぶかぶかだね」
優里が言う。
「もー!!すぐ大きくなってやる!」
誉がジタバタすると、長い袖がパタパタと肌に当たる音がした。
「あ~、私も中学生になる前、ジャージとか大きいの買ったなー!懐かしい!」
優里があたしの隣に座って、誉を眺めながら言う。
穂が全員分のお茶とお菓子を持ってきてくれたから、さっそくあたしはクッキーを口に入れる。
「誉の中学は学ランなんだね」
興味がなさそうなのに、話だけはちゃんと乗る永那。
「両角さん、似合いそうですね…」
珍しく桜が発言する。
「え、そう?」
「わー!たしかに!!似合いそう!!」
「着てみたら?」
絶対似合う。
「え~、そうかな~」
永那が鼻の下を伸ばして、サルみたいな顔をする。
…これは、着る気があんまりないパターン。
おだて続ければ着るんだろうけど。
「永那ちゃんの…学ラン…」
穂の目がキラキラ輝く。
永那がその表情を見逃すはずもなく…
「よし!誉!それを今すぐ脱げ!」
誉はギャーギャー騒いで抵抗しながらも、永那に制服を脱がされていた。
「ねえ、もしかしてだけどさ?誉が学ランってことは、穂はセーラー服?」
永那がボタンを留めながら聞く。
「うん」
永那はスカートを着たままズボンを穿くけど、雑だからショーツがチラチラ見えている。
誉もいるのに、普通に着替えてることに頭が痛くなる。
穂の家に泊まってた時も普通に着替えてたんだろうな…。
誉は制服を脱がされて、慌てて部屋に戻って服を着ていた。
「見たい!!!」
「え!?」
「私も!」
「あたしも」
「わ、私も…」
「じゃあ、俺も…?」
穂が宙を見ながら前髪を指で梳く。
「んー…どうかな…。もう使わないからって、クローゼットの奥の方に仕舞い込んじゃったからなぁ…」
「私が出してあげるから!ね!」
永那が学ランを着終えて、それを眺める間もなく永那は穂の部屋に入っていった。
「え、永那ちゃん…!」
しばらくして、2人が部屋から出てきた。
学ランとセーラー服…いいな。
「わ~!穂ちゃん可愛い!永那も似合ってる!」
「お似合いのカップルでしょ?」
永那が穂の肩を抱く。
「めっちゃお似合い!」
優里が純粋に褒めて、拍手する。
桜がそれに続いて小さく拍手した。
永那は嬉しそうに笑って、穂は照れて前髪を指で梳く。
あたしはジッと2人を見ながら、コップの縁を人差し指で撫でた。
“いつ3人でするんだろう?”なんて、疚しいことを考えているのは、きっとこの場であたしだけ。
永那と2人で穂を気持ち良くする…。
少しはあたしのことも気持ち良くしてもらえるのかな?
早く、シたい…。
そろそろ、ひとりじゃ、虚しい…。
ぬくもりが、欲しい。
永那が穂の頬にキスをして、唇にもしようとして阻まれている。
「永那ちゃんっ、ダメ!」
優里が苦笑して、桜は鼻の穴を大きくしている。
誉は全然気にしていなくて、ジェンガを準備し始めた。
「倒した人に罰ゲームね!」
「お!楽しそう!」
永那は穂に頬を平手で潰されていた。
それでも楽しそうに笑ってる。
「罰ゲームって何するの!?」
優里が身を乗り出して聞く。
「フッフッフッ…俺は今日のために…カラシ入りたこ焼きを作ったのです!」
「すごーい!」
「楽しそう!」
優里と永那が言う。
…くだらない。
穂を見ると、思いっきり嫌そうな顔をしていた。
桜は苦笑。
永那が座って「やろうぜー!」と腕まくりした。
1回目、優里が倒す。
「もー!嫌だー!!」
そう言いながらも、誉が作ったカラシ入りたこ焼きを口に運ぶ。
「あーーー!無理無理無理!めっちゃ入ってるじゃん!!」
口を大きく開けて、お茶で流し込む。
永那と誉だけが楽しそうにお腹を抱えて笑う。
2回目は永那。
「嘘だろーーー!なんで優里じゃないんだよー!」
「私ばっかり負けるわけじゃないんだよ!いつも私にひどいこと言ってるからだ!やーいやーい!」
「うっせー!次は絶対優里だ!」
永那がたこ焼きを丸呑みする。
たこ焼きが喉を通っていくのが見てわかる。
「俺も負けないぞー!」
「永那ちゃん、ちゃんと噛んだ?」
「穂…噛めるわけないよね!?」
「体に悪いよ…」
穂が馬鹿真面目に永那を心配するから、ちょっと面白い。
「喉に詰まっちゃったら窒息しちゃうかもしれないんだよ?丸呑みはダメ!」
「はいはい」
永那が頭をポリポリ掻く。
「もー…」
穂は不満そうに唇を尖らせた。
「噛まないと罰ゲームになんないじゃん!」
優里が穂に加勢。
「わかったって!でも、どうせ次はないから!」
それが振りだったかのように、3回目も永那がジェンガを倒した。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる