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7.向
422.舞う
「ねー、早く行こー?場所取られちゃうよー?こんなに綺麗に桜咲いてるんだし!」
「優里…!」
珍しく千陽が大声を上げた。
「へっ!?な、なに!?」
「え!?なになに?場所ってなに?」
塩見君と他のクラスメイトが話に食いついてくる。
「え、もしかしてこれから花見とかする系?」
「わ!楽しそう!」「私も行きたーい!」「俺も俺も!」
優里ちゃんの笑顔が引きつっていく。
千陽は眉間を親指で押さえ、深くため息をついた。
「…私、永那ちゃん起こしてくるね」
そっと荷物を取って立ち上がる。
「あ~…えっと~…ば、場所って言うのは~」
優里ちゃんが必死に誤魔化そうとするけれど、誤魔化そうとすればするほど真実味が増していくような気がした。
「永那ちゃん」
スゥスゥと寝息を立てる永那ちゃん。
修了式は、学籍番号の前後の人に連れられて、なんとか体育館に行けたらしい。
でも教室に戻ってきて、先生の挨拶が始まったらすぐに寝てしまっていた。
彼女の机の横に掛かっている鞄は、食べすぎた時のお腹みたいに膨れ上がっている。
ファスナーが閉まりきらず、ラッピングであろう透明の袋がニョキッと生えていた。
本当に2千円分買ってきたんだ…。可愛い。
近所の駄菓子屋で、よくお喋りをするおじいちゃんがやっているお店で買ったのだとか…。
私もいつか、連れて行ってもらいたいな。
「永那ちゃん」
彼女の唇を指でなぞる。
「千陽が困ってるよ?助けてあげないの?」
サラサラの髪を耳にかけてあげると、彼女の寝顔がちゃんと見えて、笑みが溢れる。
「永那ちゃん、私のお弁当、食べないの?」
彼女の頬をツンツンとつつく。
「永那ちゃん…。大好きな、永那ちゃん」
耳元で、囁く。
「…す、い」
彼女がようやく起き上がって、あくびをした。
「おはよう。やっと起きたね、お寝坊さん」
トロンとした瞳が、私を見つめる。
「穂…可愛い…」
「永那ちゃん?」
「ん?」
「千陽が困ってるよ?」
永那ちゃんが千陽達の方を見る。
「秘密なのー!内緒なのー!」と優里ちゃんは逃げ回っていた。
千陽は無視を決め込むことにしたらしい。
森山さんは苦笑している。
「なにあれ?」
「優里ちゃんがお花見のこと、うっかり言っちゃったの」
「バカだなあ、あいつは」
ポリポリと頭を掻く。
「穂、ここにいて?すぐ教室から出られるように準備しててね?」
「え?…うん」
永那ちゃんは鞄を持って、千陽達の方に行く。
「あ!両角!花見するんでしょ?俺らも混ぜろよー」
永那ちゃんが行ったことによって、追いかけられていた優里ちゃんが解放される。
膝に手をついて、ふぅっと額を手の甲で拭っていた。
「花見ねえ…」
「高2最後なんだし、みんなでパーッとさ!な?」
「あ!校長のヅラが取れてる!桜と一緒に舞っちゃってるじゃん!」
永那ちゃんが窓の外を指さす。
あいている手で、千陽のブレザーの裾をちょんちょんと引っ張った。
千陽はすぐに気づいて、森山さんの手を取って私の方に歩き始める。
「え!?やっぱあれヅラだよな!?今どきあんなわかりやすいのつけてる奴いないよな!?」
「どこどこ?」
クラスメイトの視線が窓の外に釘付けになる。
永那ちゃんが後ずさる。
優里ちゃんは窓の近くに寄って、みんなと一緒に外を見た。
「え?どこ?」
みんなが騒ぐ。
「両角?」
誰かが振り向く。
「走れ!」
スローモーションみたいに、永那ちゃんが走って私の手を取った。
千陽と森山さんは既に教室にはいなかった。
「嘘だよ!バーカ!」
「両角~!!」
教室からガタガタと音が聞こえる。
「マジ、あいつ追いかけろ!」
叫ぶ声が廊下に響く。
永那ちゃんに引っ張られるように廊下を走る。
あっという間に千陽達に追いついて、私の後ろを千陽が駆ける。苦しそうだ。
…って、優里ちゃんは!?
「永那~!待ってよ~!」
半泣きの声が聞こえてきて、つい足を止めてあげたくなる。
でもそれを永那ちゃんが許さない。
「穂!一段飛ばしするよ!」
「え!?待っ…」
手を離され、永那ちゃんが階段を一段飛ばしながら駆け下りていく。
千陽と森山さんも器用に。
彼女達のスカートがひらひらと舞うように踊った。
私は怖くて、手すりに掴まりながら、全速力で駆け下りた。
千陽と森山さんが先に走り出す。
1番下で待ってくれていた永那ちゃんに手を引っ張られ、また2人に追いつく。
足が縺れそう…。
「こら!廊下は走らない!」
通りかかった先生が言う。
“ごめんなさい”を言う余裕がない。
校門を出て、公園に向かう。
桜が舞う中、4人で走った。
学校が見えなくなって、ようやく永那ちゃんが止まった。
千陽は両膝に手をつき、肩で息をしている。
森山さんは地面に座り込んでしまった。
永那ちゃんは荒く呼吸をしているものの、まだ警戒しているのか、学校の方を睨んでいた。
私は永那ちゃんに寄りかかるようにして、「ハァ、ハァ」と必死に空気を吸った。
こんなに走って、ケーキとかお弁当とか、ぐちゃぐちゃになっちゃってないかな…?
「優里…!」
珍しく千陽が大声を上げた。
「へっ!?な、なに!?」
「え!?なになに?場所ってなに?」
塩見君と他のクラスメイトが話に食いついてくる。
「え、もしかしてこれから花見とかする系?」
「わ!楽しそう!」「私も行きたーい!」「俺も俺も!」
優里ちゃんの笑顔が引きつっていく。
千陽は眉間を親指で押さえ、深くため息をついた。
「…私、永那ちゃん起こしてくるね」
そっと荷物を取って立ち上がる。
「あ~…えっと~…ば、場所って言うのは~」
優里ちゃんが必死に誤魔化そうとするけれど、誤魔化そうとすればするほど真実味が増していくような気がした。
「永那ちゃん」
スゥスゥと寝息を立てる永那ちゃん。
修了式は、学籍番号の前後の人に連れられて、なんとか体育館に行けたらしい。
でも教室に戻ってきて、先生の挨拶が始まったらすぐに寝てしまっていた。
彼女の机の横に掛かっている鞄は、食べすぎた時のお腹みたいに膨れ上がっている。
ファスナーが閉まりきらず、ラッピングであろう透明の袋がニョキッと生えていた。
本当に2千円分買ってきたんだ…。可愛い。
近所の駄菓子屋で、よくお喋りをするおじいちゃんがやっているお店で買ったのだとか…。
私もいつか、連れて行ってもらいたいな。
「永那ちゃん」
彼女の唇を指でなぞる。
「千陽が困ってるよ?助けてあげないの?」
サラサラの髪を耳にかけてあげると、彼女の寝顔がちゃんと見えて、笑みが溢れる。
「永那ちゃん、私のお弁当、食べないの?」
彼女の頬をツンツンとつつく。
「永那ちゃん…。大好きな、永那ちゃん」
耳元で、囁く。
「…す、い」
彼女がようやく起き上がって、あくびをした。
「おはよう。やっと起きたね、お寝坊さん」
トロンとした瞳が、私を見つめる。
「穂…可愛い…」
「永那ちゃん?」
「ん?」
「千陽が困ってるよ?」
永那ちゃんが千陽達の方を見る。
「秘密なのー!内緒なのー!」と優里ちゃんは逃げ回っていた。
千陽は無視を決め込むことにしたらしい。
森山さんは苦笑している。
「なにあれ?」
「優里ちゃんがお花見のこと、うっかり言っちゃったの」
「バカだなあ、あいつは」
ポリポリと頭を掻く。
「穂、ここにいて?すぐ教室から出られるように準備しててね?」
「え?…うん」
永那ちゃんは鞄を持って、千陽達の方に行く。
「あ!両角!花見するんでしょ?俺らも混ぜろよー」
永那ちゃんが行ったことによって、追いかけられていた優里ちゃんが解放される。
膝に手をついて、ふぅっと額を手の甲で拭っていた。
「花見ねえ…」
「高2最後なんだし、みんなでパーッとさ!な?」
「あ!校長のヅラが取れてる!桜と一緒に舞っちゃってるじゃん!」
永那ちゃんが窓の外を指さす。
あいている手で、千陽のブレザーの裾をちょんちょんと引っ張った。
千陽はすぐに気づいて、森山さんの手を取って私の方に歩き始める。
「え!?やっぱあれヅラだよな!?今どきあんなわかりやすいのつけてる奴いないよな!?」
「どこどこ?」
クラスメイトの視線が窓の外に釘付けになる。
永那ちゃんが後ずさる。
優里ちゃんは窓の近くに寄って、みんなと一緒に外を見た。
「え?どこ?」
みんなが騒ぐ。
「両角?」
誰かが振り向く。
「走れ!」
スローモーションみたいに、永那ちゃんが走って私の手を取った。
千陽と森山さんは既に教室にはいなかった。
「嘘だよ!バーカ!」
「両角~!!」
教室からガタガタと音が聞こえる。
「マジ、あいつ追いかけろ!」
叫ぶ声が廊下に響く。
永那ちゃんに引っ張られるように廊下を走る。
あっという間に千陽達に追いついて、私の後ろを千陽が駆ける。苦しそうだ。
…って、優里ちゃんは!?
「永那~!待ってよ~!」
半泣きの声が聞こえてきて、つい足を止めてあげたくなる。
でもそれを永那ちゃんが許さない。
「穂!一段飛ばしするよ!」
「え!?待っ…」
手を離され、永那ちゃんが階段を一段飛ばしながら駆け下りていく。
千陽と森山さんも器用に。
彼女達のスカートがひらひらと舞うように踊った。
私は怖くて、手すりに掴まりながら、全速力で駆け下りた。
千陽と森山さんが先に走り出す。
1番下で待ってくれていた永那ちゃんに手を引っ張られ、また2人に追いつく。
足が縺れそう…。
「こら!廊下は走らない!」
通りかかった先生が言う。
“ごめんなさい”を言う余裕がない。
校門を出て、公園に向かう。
桜が舞う中、4人で走った。
学校が見えなくなって、ようやく永那ちゃんが止まった。
千陽は両膝に手をつき、肩で息をしている。
森山さんは地面に座り込んでしまった。
永那ちゃんは荒く呼吸をしているものの、まだ警戒しているのか、学校の方を睨んでいた。
私は永那ちゃんに寄りかかるようにして、「ハァ、ハァ」と必死に空気を吸った。
こんなに走って、ケーキとかお弁当とか、ぐちゃぐちゃになっちゃってないかな…?
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