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8.閑話
37.永那 中2 夏《野々村風美編》
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「でも、誰にも何も言ってないから、気づかれないのも当然かって思ったりもして」
彼女の柔らかい髪を撫でる。
「みんな忙しいんだろうし、仕方ないよなって思ったりもして」
彼女が目を瞑る。
「けど…慰めてほしかった。気づいてほしかったし、そばにいてほしかった」
「ハァ」と息を吐いて、ゆっくりと彼女の瞼が上がった。
「そんなとき、先輩が声をかけてくれて」
眠そうにも見える、とろんとした笑みを浮かべる。
「すごく、嬉しかった」
まっすぐ見つめられて、鼓動がトクトクと音を鳴らし始める。
「“胸さわらせてほしい”なんてクソみたいなお願い、すんなり聞き入れてくれて、なんか…受け止めてくれたみたいで、嬉しかった。遊園地も…すごく良い気晴らしになった」
「そっか。…永那が喜んでくれたなら、良かった」
「だから、今日も、先輩に会いたくなりました」
…なんか、告白されてるみたい。
「それで、こんな時間なのに、また先輩は私を受け止めてくれた」
「そりゃあ…私の初恋の人ですから…」
永那が目を大きく開ける。
2度頷いて「なるほど」と神妙な面持ちになる。
「初恋の人だから、来てくれたんですか?」
「そうだよ。…好きな人から“会いたい”って言われて、嬉しくないわけないよ」
「ふーん」
“ふーん”って…。
「先輩、受験勉強はいいんですか?」
「え?…ああ、してるよ?でも、まだそんなに切羽詰まってる感じでもないし…短時間なら、全然平気だよ」
「そうなんですか」
「…うん」
話の脈絡がわからなくて首を傾げるけど、答えは返ってきそうにない。
…単純に、私の受験を心配してくれたって理解でいいのかな?
彼女が何か真剣そうに考え込んで、ふぅっとため息をついた。
「風美先輩」
「なに?」
「今日も、さわっていいですか?」
永那は、いろんな笑顔をする。
それも、コロコロコロコロすぐに変わって、どれが本当の永那の笑顔なのかわからなくなるほどに。
今は、とてつもなく爽やかな笑顔を向けられている。
そしてその笑顔に、私は逆らえる気がしない。
私の口は気づいたら動いていて「いいよ」と当然のように発していた。
永那が体を起こして、私の胸に触れる。
そのさわり方が、ちょっといやらしい。
ねっとりと纏わりつくみたいに、優しく揉まれる。
「キスしたい」
囁かれて、反射的に頷く。
彼女の柔らかい唇が、私の唇に触れる。
体の芯にボッと火がつくみたいな感覚。
…変な、感覚。
湿った生ぬるい風が私達の間を縫うように吹く。
もうすぐ本格的な夏がくる。
そう思ったら、彼女の舌が私の唇を這った。
ピリピリと、脳から下腹部にかけて、何かが駆け抜けていく。
漏れ出る息は熱くて、頭がボーッとしてくる。
彼女の舌は私の上唇と下唇の隙間に滑り込んできて、待ち構えていた私の舌と絡んだ。
頭が真っ白になる。
少しして、彼女が離れた。
「めっちゃ癒やされました。ありがとうございます」
「どういたしまして」
「…家まで、送りますよ」
もう終わり?なんて思ったけど、家族には“コンビニ行く”って言っちゃったし、仕方ないか…。
あ!コンビニ!
「永那、コンビニ寄ってもいい?」
「はい」
永那が立ち上がるから、私もつられるように立ち上がる。
「だいぶ暑くなってきましたね」
「そうだね。もう夏か~!」
夏休みはきっと勉強三昧になるんだろうな…。
「先輩?」
「ん?」
「また…夜に会ってくれますか?」
永那は俯きながら、ポケットに手を突っ込んで歩いていた。
「どうして…夜なの?放課後とかでもいいんじゃない?」
彼女がポリポリと首を掻く。
「今、夜、ひとりで。…まあ、端的に言えば、寂しくなるんですよね。なんか、急に」
へへへと笑う。
その気持ちは、わからなくもない。
家族がいるからひとりなわけではないけれど、眠る直前、たまにとてつもなく寂しさに襲われる時がある。
「そう、なんだ…。いいよ」
「やったー」
歯を見せて、彼女の目が弧を描く。
「週3で塾行ってるから、その日は無理かもしれないけど」
「何曜日ですか?」
「火曜日と金曜日と土曜」
「わかりました」
「…夏休みに入ったら、ほとんど毎日行くことになるかも。帰りは、そんなに遅くならないと思うけど」
「そっかあ…。夏休みも先輩に会いたかったなあ」
なんだかなあ…。
そんな言い方されたら、もしかしたら永那は私のことが好きなのかもって勘違いしちゃいそう。
コンビニに入ると、エアコンが効いているのか、少し鳥肌が立った。
「なんで、夜、ひとりなの?」
「んー…」
私達はアイスケースを眺めながら会話を続ける。
「お母さんが入院して」
「え!?大丈夫なの!?」
「あ、はい。一応…」
永那を横目に見ると、全然笑っていなかった。
彼女と目が合って、慌ててそらす。
妹から言われたアイスを手に取って、アイスケースから離れる。
永那が後ろからついてくる。
「お姉ちゃんは夜10時までバイトだから、帰ってくるのはいつも10時半くらいなんです」
「そっか…。じゃあ、お姉さんが帰ってくるまでひとりなんだ」
「はい」
彼女の柔らかい髪を撫でる。
「みんな忙しいんだろうし、仕方ないよなって思ったりもして」
彼女が目を瞑る。
「けど…慰めてほしかった。気づいてほしかったし、そばにいてほしかった」
「ハァ」と息を吐いて、ゆっくりと彼女の瞼が上がった。
「そんなとき、先輩が声をかけてくれて」
眠そうにも見える、とろんとした笑みを浮かべる。
「すごく、嬉しかった」
まっすぐ見つめられて、鼓動がトクトクと音を鳴らし始める。
「“胸さわらせてほしい”なんてクソみたいなお願い、すんなり聞き入れてくれて、なんか…受け止めてくれたみたいで、嬉しかった。遊園地も…すごく良い気晴らしになった」
「そっか。…永那が喜んでくれたなら、良かった」
「だから、今日も、先輩に会いたくなりました」
…なんか、告白されてるみたい。
「それで、こんな時間なのに、また先輩は私を受け止めてくれた」
「そりゃあ…私の初恋の人ですから…」
永那が目を大きく開ける。
2度頷いて「なるほど」と神妙な面持ちになる。
「初恋の人だから、来てくれたんですか?」
「そうだよ。…好きな人から“会いたい”って言われて、嬉しくないわけないよ」
「ふーん」
“ふーん”って…。
「先輩、受験勉強はいいんですか?」
「え?…ああ、してるよ?でも、まだそんなに切羽詰まってる感じでもないし…短時間なら、全然平気だよ」
「そうなんですか」
「…うん」
話の脈絡がわからなくて首を傾げるけど、答えは返ってきそうにない。
…単純に、私の受験を心配してくれたって理解でいいのかな?
彼女が何か真剣そうに考え込んで、ふぅっとため息をついた。
「風美先輩」
「なに?」
「今日も、さわっていいですか?」
永那は、いろんな笑顔をする。
それも、コロコロコロコロすぐに変わって、どれが本当の永那の笑顔なのかわからなくなるほどに。
今は、とてつもなく爽やかな笑顔を向けられている。
そしてその笑顔に、私は逆らえる気がしない。
私の口は気づいたら動いていて「いいよ」と当然のように発していた。
永那が体を起こして、私の胸に触れる。
そのさわり方が、ちょっといやらしい。
ねっとりと纏わりつくみたいに、優しく揉まれる。
「キスしたい」
囁かれて、反射的に頷く。
彼女の柔らかい唇が、私の唇に触れる。
体の芯にボッと火がつくみたいな感覚。
…変な、感覚。
湿った生ぬるい風が私達の間を縫うように吹く。
もうすぐ本格的な夏がくる。
そう思ったら、彼女の舌が私の唇を這った。
ピリピリと、脳から下腹部にかけて、何かが駆け抜けていく。
漏れ出る息は熱くて、頭がボーッとしてくる。
彼女の舌は私の上唇と下唇の隙間に滑り込んできて、待ち構えていた私の舌と絡んだ。
頭が真っ白になる。
少しして、彼女が離れた。
「めっちゃ癒やされました。ありがとうございます」
「どういたしまして」
「…家まで、送りますよ」
もう終わり?なんて思ったけど、家族には“コンビニ行く”って言っちゃったし、仕方ないか…。
あ!コンビニ!
「永那、コンビニ寄ってもいい?」
「はい」
永那が立ち上がるから、私もつられるように立ち上がる。
「だいぶ暑くなってきましたね」
「そうだね。もう夏か~!」
夏休みはきっと勉強三昧になるんだろうな…。
「先輩?」
「ん?」
「また…夜に会ってくれますか?」
永那は俯きながら、ポケットに手を突っ込んで歩いていた。
「どうして…夜なの?放課後とかでもいいんじゃない?」
彼女がポリポリと首を掻く。
「今、夜、ひとりで。…まあ、端的に言えば、寂しくなるんですよね。なんか、急に」
へへへと笑う。
その気持ちは、わからなくもない。
家族がいるからひとりなわけではないけれど、眠る直前、たまにとてつもなく寂しさに襲われる時がある。
「そう、なんだ…。いいよ」
「やったー」
歯を見せて、彼女の目が弧を描く。
「週3で塾行ってるから、その日は無理かもしれないけど」
「何曜日ですか?」
「火曜日と金曜日と土曜」
「わかりました」
「…夏休みに入ったら、ほとんど毎日行くことになるかも。帰りは、そんなに遅くならないと思うけど」
「そっかあ…。夏休みも先輩に会いたかったなあ」
なんだかなあ…。
そんな言い方されたら、もしかしたら永那は私のことが好きなのかもって勘違いしちゃいそう。
コンビニに入ると、エアコンが効いているのか、少し鳥肌が立った。
「なんで、夜、ひとりなの?」
「んー…」
私達はアイスケースを眺めながら会話を続ける。
「お母さんが入院して」
「え!?大丈夫なの!?」
「あ、はい。一応…」
永那を横目に見ると、全然笑っていなかった。
彼女と目が合って、慌ててそらす。
妹から言われたアイスを手に取って、アイスケースから離れる。
永那が後ろからついてくる。
「お姉ちゃんは夜10時までバイトだから、帰ってくるのはいつも10時半くらいなんです」
「そっか…。じゃあ、お姉さんが帰ってくるまでひとりなんだ」
「はい」
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