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8.閑話
38.永那 中2 夏《野々村風美編》
「お母さんは…病気か何か?」
「怪我です」
「そうなんだ…。早く退院できるといいね」
「そう…っすね」
お菓子売り場で立ち止まる。
チラリと永那を見るけど、彼女は暇そうに両手を後頭部にやって、適当に商品を見ていた。
お父さんの話が出てこないということは、いないということなのだろうと推測する。
そこまで聞くのは、なんだか気が引けた。
いつも食べてるお菓子を取って、レジに向かう。
「先輩って、普段、友達と何話します?」
「え?」
私が永那に告白してから、そんなにたくさん話したわけではないけれど、こんなに突飛な話題を振ってくるような子だったっけ?と、永那に対する印象が少し変わる。
部活で一緒にいた印象では、いつも話の流れを掴むのが上手くて、コミュ力高いなあと思っていたけれど。
「同じバンドが好きだから、よくその話、してるかな。どうして?」
「ふーん」
また“ふーん”だ。
なんなんだろう…?
「風美先輩って、なんていうか…世渡り上手な感じがするから、普段どんななんだろう?って思って」
「世渡り上手…かな…?っていうかそれ、褒めてる?」
「褒めてます褒めてます」
永那がケラケラ笑う。
本当に褒めてるのかなあ…?怪しい…。
コンビニを出ると、永那は足元に転がっていた小石を蹴り始める。
たまに横に逸れて、追いかけるように小走りする。
「趣味が同じだと」
少し遠くに小石が飛んで、また走る。
私はマイペースに永那の後ろを歩く。
「やっぱり、仲良くなりやすいんですかね?」
私が追いつくのを待って、また小石を蹴った。
「うん、そうじゃないかな。…なんか、友達関係に悩んでるの?」
小石が側溝に落ちて、「あー」と、大して残念でもなさそうな顔をして言う。
「私じゃなくて、友達全然できない友達がいて」
「なにそれ」
思わず笑う。
「いや、ホント困ってるんですよ、私が」
「なんで永那が?」
「そいつ、私しか友達いないから、ずっと私の隣にいて」
…なんか、ちょっと羨ましい。
「どうしたらそいつに友達できるかなあ?って、考えてて」
「永那は、優しいね」
「そうですか?」
「うん。普通、そんなこと考えないよ」
「ふーん」
遠くに見えていたはずの家がだんだん近くなってきて、少し寂しい。
「でも、私が困ってるから考えてるだけで…本当に優しいわけじゃないですよ」
自嘲するように笑う。
“そんなことないよ”と言おうとしたけど、永那が「あ、もう家ついちゃった」と、まだついていないのに言ったから、何も言えなかった。
風が吹いて、背中が押される。
…まだ、永那と一緒にいたいな。
気づけば彼女の腕を掴んで、口づけしていた。
心臓がドックンドックンと音を立てて、慌てて離れる。
永那は少し驚いていたけど、ニカッと歯を見せて笑った。
「じゃあ風美先輩、また!」
「…あ、うん」
あと数歩でマンションの入口につくというところで、彼女は踵を返した。
「…永那!」
呼ぶと、彼女が振り向く。
「好き」
「ありがとうございます。私も、風美先輩、好きです」
そう笑顔を向けられて、一瞬で舞い上がる。
「おやすみなさい!」
彼女が背を向け、スタスタと遠ざかっていく。
「あ、それって…」
“どういう好き?”
言っても、もう声の届かない距離に彼女はいた。
しばらく誰もいない道を眺めていた。
風が吹いて、ハッとして、急いで家に戻る。
妹にアイスを渡すと「溶けてんじゃん!」と怒られた。
「ごめんごめん」
「マジお姉ちゃんトロい!最低!」
「ごめんって…」
イライラする気持ちを必死に抑えて、部屋に入った。
結局、やっぱりお金は返してもらえない。
それが余計イライラを増幅させるから、イヤホンを耳につけて、音楽を流す。
椅子に座って参考書を開く。
さっき買ったお菓子を開けて、邪魔にならないところに置いた。
シャープペンを手に持つと、さっきの唇の感触が蘇って、思わず机に顔を突っ伏した。
「あ~…やばい…」
ため息が溢れる。
「やばいやばいやばいやばい」
好きが溢れる。
頭の中で、永那に言われた“好きです”が反響するように繰り返される。
胸がキュゥッと締めつけられて、苦しさにも似た何かを感じた。
「あ~!!」
バタバタと足を動かしても落ち着かない。
ゴンゴンと頭を机にぶつけても落ち着かない。
口元のニヤつきが、全然戻らない。
全然勉強が出来る気がしなかったから、シャワーを浴びて、早々にベッドに潜った。
しばらく眠れなかったけど、気づいたら朝になっていた。
目覚めた瞬間から思い出して、ついニヤけちゃう。
両手で顔を隠して、「ん~!!」と悶える。
「風美、何してるの?」
お母さんに話しかけられて、急に恥ずかしくなった。
「お、お母さん…!なんで」
「“なんで”って、全然起きてこないから」
時計を見ると、もう家を出る30分前だった。
「え!?なんで!?」
ベッドから飛び下りて、バタバタと準備を始める。
お母さんの呆れたようなため息を無視して、慌ただしく家を出た。
「怪我です」
「そうなんだ…。早く退院できるといいね」
「そう…っすね」
お菓子売り場で立ち止まる。
チラリと永那を見るけど、彼女は暇そうに両手を後頭部にやって、適当に商品を見ていた。
お父さんの話が出てこないということは、いないということなのだろうと推測する。
そこまで聞くのは、なんだか気が引けた。
いつも食べてるお菓子を取って、レジに向かう。
「先輩って、普段、友達と何話します?」
「え?」
私が永那に告白してから、そんなにたくさん話したわけではないけれど、こんなに突飛な話題を振ってくるような子だったっけ?と、永那に対する印象が少し変わる。
部活で一緒にいた印象では、いつも話の流れを掴むのが上手くて、コミュ力高いなあと思っていたけれど。
「同じバンドが好きだから、よくその話、してるかな。どうして?」
「ふーん」
また“ふーん”だ。
なんなんだろう…?
「風美先輩って、なんていうか…世渡り上手な感じがするから、普段どんななんだろう?って思って」
「世渡り上手…かな…?っていうかそれ、褒めてる?」
「褒めてます褒めてます」
永那がケラケラ笑う。
本当に褒めてるのかなあ…?怪しい…。
コンビニを出ると、永那は足元に転がっていた小石を蹴り始める。
たまに横に逸れて、追いかけるように小走りする。
「趣味が同じだと」
少し遠くに小石が飛んで、また走る。
私はマイペースに永那の後ろを歩く。
「やっぱり、仲良くなりやすいんですかね?」
私が追いつくのを待って、また小石を蹴った。
「うん、そうじゃないかな。…なんか、友達関係に悩んでるの?」
小石が側溝に落ちて、「あー」と、大して残念でもなさそうな顔をして言う。
「私じゃなくて、友達全然できない友達がいて」
「なにそれ」
思わず笑う。
「いや、ホント困ってるんですよ、私が」
「なんで永那が?」
「そいつ、私しか友達いないから、ずっと私の隣にいて」
…なんか、ちょっと羨ましい。
「どうしたらそいつに友達できるかなあ?って、考えてて」
「永那は、優しいね」
「そうですか?」
「うん。普通、そんなこと考えないよ」
「ふーん」
遠くに見えていたはずの家がだんだん近くなってきて、少し寂しい。
「でも、私が困ってるから考えてるだけで…本当に優しいわけじゃないですよ」
自嘲するように笑う。
“そんなことないよ”と言おうとしたけど、永那が「あ、もう家ついちゃった」と、まだついていないのに言ったから、何も言えなかった。
風が吹いて、背中が押される。
…まだ、永那と一緒にいたいな。
気づけば彼女の腕を掴んで、口づけしていた。
心臓がドックンドックンと音を立てて、慌てて離れる。
永那は少し驚いていたけど、ニカッと歯を見せて笑った。
「じゃあ風美先輩、また!」
「…あ、うん」
あと数歩でマンションの入口につくというところで、彼女は踵を返した。
「…永那!」
呼ぶと、彼女が振り向く。
「好き」
「ありがとうございます。私も、風美先輩、好きです」
そう笑顔を向けられて、一瞬で舞い上がる。
「おやすみなさい!」
彼女が背を向け、スタスタと遠ざかっていく。
「あ、それって…」
“どういう好き?”
言っても、もう声の届かない距離に彼女はいた。
しばらく誰もいない道を眺めていた。
風が吹いて、ハッとして、急いで家に戻る。
妹にアイスを渡すと「溶けてんじゃん!」と怒られた。
「ごめんごめん」
「マジお姉ちゃんトロい!最低!」
「ごめんって…」
イライラする気持ちを必死に抑えて、部屋に入った。
結局、やっぱりお金は返してもらえない。
それが余計イライラを増幅させるから、イヤホンを耳につけて、音楽を流す。
椅子に座って参考書を開く。
さっき買ったお菓子を開けて、邪魔にならないところに置いた。
シャープペンを手に持つと、さっきの唇の感触が蘇って、思わず机に顔を突っ伏した。
「あ~…やばい…」
ため息が溢れる。
「やばいやばいやばいやばい」
好きが溢れる。
頭の中で、永那に言われた“好きです”が反響するように繰り返される。
胸がキュゥッと締めつけられて、苦しさにも似た何かを感じた。
「あ~!!」
バタバタと足を動かしても落ち着かない。
ゴンゴンと頭を机にぶつけても落ち着かない。
口元のニヤつきが、全然戻らない。
全然勉強が出来る気がしなかったから、シャワーを浴びて、早々にベッドに潜った。
しばらく眠れなかったけど、気づいたら朝になっていた。
目覚めた瞬間から思い出して、ついニヤけちゃう。
両手で顔を隠して、「ん~!!」と悶える。
「風美、何してるの?」
お母さんに話しかけられて、急に恥ずかしくなった。
「お、お母さん…!なんで」
「“なんで”って、全然起きてこないから」
時計を見ると、もう家を出る30分前だった。
「え!?なんで!?」
ベッドから飛び下りて、バタバタと準備を始める。
お母さんの呆れたようなため息を無視して、慌ただしく家を出た。
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