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8.閑話
40.永那 中2 夏《野々村風美編》
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他の2人とは違うクラスになった。
だから今は、昼休み以外はいつも2人でいる。
短い休み時間に話すことでもないし、昼休みに4人で集まると真面目な話はできない。
やっと、話せる…。
放課後、ファミレスに寄った。
「なに食うかー!」
「とりあえずポテト」
「風美はホント、ポテト好きな?」
「一緒に食べるでしょ?」
「おうおう!当たり前じゃねーか!!」
何キャラなの…。
「ポテトは巨乳になる秘訣だからね」
「違うってば」
友人がニヤニヤと笑う。
この巨乳いじりも、やめてほしい。
胸が大きいこと、本当に気にしてるんだから…。
…まあ、永那が喜んでくれるなら、べつにいっか…なんて、思えちゃうけど。
いくつか注文して、ドリンクバーで飲み物をコップに注ぐ。
友人はいつものようにいろんなジュースを混ぜていた。
私には、ごちゃ混ぜジュースのどこが美味しいのか全然わからない。
席について、一息吐く。
「私、好きな人いるんだ」
「えぇええっ!?!?」
その反応が面白くて、笑ってしまう。
意外と、打ち明けてもドキドキしていない…。
「マジ!?誰!?」
「軽音部の、後輩」
「後輩!?こ、後輩!?!?」
「シーッ!声大きすぎ!」
「あ、ご、ごめん…。え、なに、恋バナとか初めてすぎて怖い怖い」
「怖いって…なんでよ。しちゃ、ダメ?」
「え、あぁ、いや、えぇぇ、いや、いいけど!いいけど、ウチ、なんもアドバイスとかできないよ!?」
「恋愛相談乗ってたって、前言ってたじゃん」
“うっ…”と罰が悪そうな顔をする。
「それは…ただ…ウチが風美と仲良いから、風美の好みとか、聞かれただけで…」
「そう、なんだ…」
好きな人から他の人の好み聞かれるとか…想像しただけで辛い。
「おー…」
友人が気まずそうに俯く。
「まあ、でも…聞くだけ聞いてよ」
「お、おー。それくらいなら出来るよ?」
「ありがと」
ストローに口をつけて、ジュースを飲む。
「実は去年からずっと好きで」
ドンッとテーブルを叩いて、友人が立ち上がる。
「ナゼ、イママデ、イワナカッタ…?」
「言ったら、からかわれると思って」
注文した品が次々運ばれてきて、テーブルが埋まる。
友人は大人しく着席して、ポテトに手を伸ばす。
「ん~っ、まあ…たしかに…ネタにはしてたかも」
「でしょ?…それが嫌だったから言わなかったの」
「そっか~」
タバコを口に咥えるみたいにポテトを口に咥えて、頬杖をつく。
「もう…からかったり、しないよね…?」
恐る恐る聞くと、彼女は目を見開いた。
ゆっくりポテトが口の中に消えていく。
何かを考えながら、頷いた。
彼女の瞳が真剣なものになって、ホッとする。
ゴクリと唾を飲む。
「私の好きな人…」
彼女に真っ直ぐ見つめられる。
「女の子って言ったら、引く?」
そう聞いた瞬間、彼女がパチパチと高速で瞬きを繰り返した。
ゲホゲホと咽て、口元を手で隠す。
打ち明けてから初めて、心臓が音を鳴らし始めた。
彼女は慌ててジュースを飲んで、深く息を吐く。
「マジ…で…?」
「うん」
どう思われるのか怖くて、私は俯いた。
「引きはしないけど…ビックリし過ぎて死ぬかと思ったわ」
視線だけ彼女に遣ると、顎に手を当てて、眉間にシワを寄せていた。
「え~…マジか…」
本当は引かれてるとか、ないよね…?
沈黙が、辛い。
「ウチ、どうすればいい?」
「え…?」
「あぁ…えっと…その、何かしてあげられることあるのかなって」
想像もしていなかった言葉に、開いた口が塞がらない。
「あ…。じゃあ…2人には、言わないでいてほしい、かな。言うとしても、自分でちゃんと、言うから」
「わかった」
「本当に、引いてない…?」
「引いてないよ!ホントに!!ただビックリしただけだって」
「そっか…。良かった」
ふぅっと息が溢れた。
気づいたら指先が冷たくなっていて、自分が思っていたよりも緊張したいたことに気付かされる。
「ウチって、そんな酷い奴って思われてたん?」
彼女が唇を突き出す。
「え…」
「傷つくわ~。風美の好きな相手が男か女かで引いたりしないし」
「あ…そ、そっか」
「てか、普通に映画とか見てても、ゲイの人とか出てくるじゃん」
そうだ、彼女は洋画好きだった。
「まあ、そりゃあさ?リアルで…身近な人から言われたのは初めてだったから、ビックリはしたよ?でも、今どきそんなことで引く奴のほうがヤバイっしょ」
おもむろに、彼女がスマホを出す。
小気味よく操作して、画面を私に見せてきた。
「最近さ、ウチ、ボーイッシュ女子にハマってんの」
動画がズラリと並んでいて、そのうちのひとつを彼女がタップする。
「これ、マジかっこよくない?」
「ああ…そう、だね」
「ウチもさ、ちょっと目指しちゃおうかなって、思ってんだよね」
1つに結ばれた髪をバサバサと扇ぐ。
「え?そっち?」
「え?どっち?」
「だから…かっこよくて好き、じゃなくて、憧れってこと?」
「うん」
“当たり前じゃん”って言うみたいに彼女が頷いた。
それが可笑しくて、笑った。
だから今は、昼休み以外はいつも2人でいる。
短い休み時間に話すことでもないし、昼休みに4人で集まると真面目な話はできない。
やっと、話せる…。
放課後、ファミレスに寄った。
「なに食うかー!」
「とりあえずポテト」
「風美はホント、ポテト好きな?」
「一緒に食べるでしょ?」
「おうおう!当たり前じゃねーか!!」
何キャラなの…。
「ポテトは巨乳になる秘訣だからね」
「違うってば」
友人がニヤニヤと笑う。
この巨乳いじりも、やめてほしい。
胸が大きいこと、本当に気にしてるんだから…。
…まあ、永那が喜んでくれるなら、べつにいっか…なんて、思えちゃうけど。
いくつか注文して、ドリンクバーで飲み物をコップに注ぐ。
友人はいつものようにいろんなジュースを混ぜていた。
私には、ごちゃ混ぜジュースのどこが美味しいのか全然わからない。
席について、一息吐く。
「私、好きな人いるんだ」
「えぇええっ!?!?」
その反応が面白くて、笑ってしまう。
意外と、打ち明けてもドキドキしていない…。
「マジ!?誰!?」
「軽音部の、後輩」
「後輩!?こ、後輩!?!?」
「シーッ!声大きすぎ!」
「あ、ご、ごめん…。え、なに、恋バナとか初めてすぎて怖い怖い」
「怖いって…なんでよ。しちゃ、ダメ?」
「え、あぁ、いや、えぇぇ、いや、いいけど!いいけど、ウチ、なんもアドバイスとかできないよ!?」
「恋愛相談乗ってたって、前言ってたじゃん」
“うっ…”と罰が悪そうな顔をする。
「それは…ただ…ウチが風美と仲良いから、風美の好みとか、聞かれただけで…」
「そう、なんだ…」
好きな人から他の人の好み聞かれるとか…想像しただけで辛い。
「おー…」
友人が気まずそうに俯く。
「まあ、でも…聞くだけ聞いてよ」
「お、おー。それくらいなら出来るよ?」
「ありがと」
ストローに口をつけて、ジュースを飲む。
「実は去年からずっと好きで」
ドンッとテーブルを叩いて、友人が立ち上がる。
「ナゼ、イママデ、イワナカッタ…?」
「言ったら、からかわれると思って」
注文した品が次々運ばれてきて、テーブルが埋まる。
友人は大人しく着席して、ポテトに手を伸ばす。
「ん~っ、まあ…たしかに…ネタにはしてたかも」
「でしょ?…それが嫌だったから言わなかったの」
「そっか~」
タバコを口に咥えるみたいにポテトを口に咥えて、頬杖をつく。
「もう…からかったり、しないよね…?」
恐る恐る聞くと、彼女は目を見開いた。
ゆっくりポテトが口の中に消えていく。
何かを考えながら、頷いた。
彼女の瞳が真剣なものになって、ホッとする。
ゴクリと唾を飲む。
「私の好きな人…」
彼女に真っ直ぐ見つめられる。
「女の子って言ったら、引く?」
そう聞いた瞬間、彼女がパチパチと高速で瞬きを繰り返した。
ゲホゲホと咽て、口元を手で隠す。
打ち明けてから初めて、心臓が音を鳴らし始めた。
彼女は慌ててジュースを飲んで、深く息を吐く。
「マジ…で…?」
「うん」
どう思われるのか怖くて、私は俯いた。
「引きはしないけど…ビックリし過ぎて死ぬかと思ったわ」
視線だけ彼女に遣ると、顎に手を当てて、眉間にシワを寄せていた。
「え~…マジか…」
本当は引かれてるとか、ないよね…?
沈黙が、辛い。
「ウチ、どうすればいい?」
「え…?」
「あぁ…えっと…その、何かしてあげられることあるのかなって」
想像もしていなかった言葉に、開いた口が塞がらない。
「あ…。じゃあ…2人には、言わないでいてほしい、かな。言うとしても、自分でちゃんと、言うから」
「わかった」
「本当に、引いてない…?」
「引いてないよ!ホントに!!ただビックリしただけだって」
「そっか…。良かった」
ふぅっと息が溢れた。
気づいたら指先が冷たくなっていて、自分が思っていたよりも緊張したいたことに気付かされる。
「ウチって、そんな酷い奴って思われてたん?」
彼女が唇を突き出す。
「え…」
「傷つくわ~。風美の好きな相手が男か女かで引いたりしないし」
「あ…そ、そっか」
「てか、普通に映画とか見てても、ゲイの人とか出てくるじゃん」
そうだ、彼女は洋画好きだった。
「まあ、そりゃあさ?リアルで…身近な人から言われたのは初めてだったから、ビックリはしたよ?でも、今どきそんなことで引く奴のほうがヤバイっしょ」
おもむろに、彼女がスマホを出す。
小気味よく操作して、画面を私に見せてきた。
「最近さ、ウチ、ボーイッシュ女子にハマってんの」
動画がズラリと並んでいて、そのうちのひとつを彼女がタップする。
「これ、マジかっこよくない?」
「ああ…そう、だね」
「ウチもさ、ちょっと目指しちゃおうかなって、思ってんだよね」
1つに結ばれた髪をバサバサと扇ぐ。
「え?そっち?」
「え?どっち?」
「だから…かっこよくて好き、じゃなくて、憧れってこと?」
「うん」
“当たり前じゃん”って言うみたいに彼女が頷いた。
それが可笑しくて、笑った。
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