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8.閑話
44.永那 中2 夏《野々村風美編》
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起き上がると、ペットボトルを渡された。
「ありがとう」
永那が笑みを浮かべながら頷く。
ゴクゴク飲んで、一息つくと、持っていたペットボトルを取られた。
永那はそのまま飲み始めて、また顔が熱くなる。
キス、何回もしてるのに…間接キスで恥ずかしがるなんて、私、子供みたい…。
友達とだって、普通に回し飲みとかしてるのに…どうして好きな人ってなるとこんなにドキドキするんだろう?
「受験勉強、大変ですか?」
「んー…そうだね。ちょっと大変になってきたかも」
「そうですか…。じゃあ、あんまり会わないほうがいいですね」
「え!?あ、いや…」
永那が首を傾げる。
「え、永那とは…会いたい。…ほら!気分転換も、必要でしょ?」
目をパチパチと瞬かせ、ジッと永那が見つめてくる。
「い、今だって…たぶん、勉強、ちょっと根詰め過ぎたというか…だから、たぶん、その、倒れちゃったんだと、思うし…。たまには、息抜きしないと」
「ふーん…」
ちょっと、嘘っぽかった…?
変な汗をかきはじめて、ハンカチをギュッと握る。
「なら、良かった!私も風美先輩に会いたいし」
“会いたい”の一言で、今すぐ踊りだしたくなるくらいに嬉しい。
「え、永那…?」
「はい」
「期末試験、どうだった?」
この話を早く切り上げたくて、違和感のない程度に、適当に話題転換する。
「普通でしたよ?」
「ふ、普通?普通って、どのくらい?」
「んー?どのくらいって言われても…」
「数学、何点だった?」
私の苦手科目そのいち。
「92です」
「え!?嘘!?」
永那は首を傾げて、「本当です」と嫌味なく笑った。
「じゃあ、社会は?」
永那は特別理系が得意なのかもしれない…!
「んー…98だったかな?」
ゴクリと唾を飲む。
なに、その成績…。
「英語は…?」
「90?」
ダメだ…頭が痛くなっきた…。
「え…風美先輩、成績悪かったんですか?」
「…いつも悪いですよ」
「そうなんですか?頭良さそうなのに」
「よく言われる…。でも、平均以下だよ…」
「ありゃまー」
「“ありゃまー”じゃないよ!」
ポコポコ永那の肩を叩くと、彼女がケラケラ笑った。
「もう、永那に勉強教えてもらったほうがいいのかも…」
「いいですよ?」
彼女がニヤリと笑って、予想外の返事に期待が膨らんだ。
「あ、でもさすがに受験勉強は教えられないか」
「ハハハ」と彼女が笑う。
「そもそも、あんまり基礎が出来てないから…」
「基礎?基礎を教えればいいんですか?」
「教えてくれるの…?」
「まあ…上手く教えられるかわからないですけど」
鞄から数学の参考書を出す。
永那が手を出してきたから乗せると、彼女は足を組んでパラパラとページを捲り始めた。
「ふーん。こんな感じなんだ」
一通り見終えると「どこがわからないんですか?」と聞いてくる。
「あ…あの…“どこが”っていうのが、そもそも、わからなくて」
「え!?」
「ごめんなさい…」
さすがの永那も困った顔をして、もう一度参考書を捲り始めた。
「これは、この前授業で習いましたよ。できます?」
「えーっと…」
文章問題…苦手なやつだ…。
「ま、まず…クラスの男子と女子の人数を聞かれてるから…男子をx、女子をyとして…」
緊張する…。
永那を見ると、頷いてくれる。
「クラスの人数が31人だから…x+y=31で…」
覚えられなくなって、ノートとシャープペンを出す。
今言った内容を書き記していく。
「んー…男子の4割と女子の5割、合わせて14人だから…x✕4/100で…」
「“割”だから100じゃなくて10ですね。100は%の時です」
「あっ、そっか…」
手汗がすごくて、シャープペンが滑る。
そのまま解くと、「なんだ、できるじゃないですか」と永那が笑った。
正確には、できてない…。
途中で間違いを指摘されたから正解しただけで…。
「こ、これはね…一応…」
わかってはいても、“できるじゃないですか”と言われて、まるでうっかりミスみたいなフリをしてしまう。
「あ…あのさ…入試で食塩水の問題とかがよく出るみたいなんだけど、未だにちょっと理解できてなくて…」
「あー…あれは公式覚えるやつですよね」
永那が参考書をまた捲って、食塩水の問題が載っているところを開く。
…なぜ、こんなことに。
気分転換したかったのに、普通に勉強してる…。
「濃度6%の食塩水Aと濃度14%の食塩水Bがある。食塩水Aと食塩水Bを」
永那は早口で文章題を読んで“ふーん”と一度頷く。
「はい」
渡されて、ギクッとする。
「えーっと…水の重さを聞かれてるから…水がx…」
「ん?xとyにするのは食塩水AとBの重さですよ。じゃないと式が書けません」
言われた通りにしてみるけど、その先がわからず、手が止まる。
それを見て、永那がツラツラと解説してくれるけど、あまり内容が頭に入ってこない。
「あー…やっぱり私、教えるの下手ですよね?」
永那が苦笑する。
「ううん!そ、そんなことないよ!…私が、理解力ないだけで」
それに、説明してくれる永那は、なんだかすごくかっこよくて、それを見られるだけで嬉しいと思った。
「なんか、恥ずかしいよ…。こんなに勉強できなくて…」
「ありがとう」
永那が笑みを浮かべながら頷く。
ゴクゴク飲んで、一息つくと、持っていたペットボトルを取られた。
永那はそのまま飲み始めて、また顔が熱くなる。
キス、何回もしてるのに…間接キスで恥ずかしがるなんて、私、子供みたい…。
友達とだって、普通に回し飲みとかしてるのに…どうして好きな人ってなるとこんなにドキドキするんだろう?
「受験勉強、大変ですか?」
「んー…そうだね。ちょっと大変になってきたかも」
「そうですか…。じゃあ、あんまり会わないほうがいいですね」
「え!?あ、いや…」
永那が首を傾げる。
「え、永那とは…会いたい。…ほら!気分転換も、必要でしょ?」
目をパチパチと瞬かせ、ジッと永那が見つめてくる。
「い、今だって…たぶん、勉強、ちょっと根詰め過ぎたというか…だから、たぶん、その、倒れちゃったんだと、思うし…。たまには、息抜きしないと」
「ふーん…」
ちょっと、嘘っぽかった…?
変な汗をかきはじめて、ハンカチをギュッと握る。
「なら、良かった!私も風美先輩に会いたいし」
“会いたい”の一言で、今すぐ踊りだしたくなるくらいに嬉しい。
「え、永那…?」
「はい」
「期末試験、どうだった?」
この話を早く切り上げたくて、違和感のない程度に、適当に話題転換する。
「普通でしたよ?」
「ふ、普通?普通って、どのくらい?」
「んー?どのくらいって言われても…」
「数学、何点だった?」
私の苦手科目そのいち。
「92です」
「え!?嘘!?」
永那は首を傾げて、「本当です」と嫌味なく笑った。
「じゃあ、社会は?」
永那は特別理系が得意なのかもしれない…!
「んー…98だったかな?」
ゴクリと唾を飲む。
なに、その成績…。
「英語は…?」
「90?」
ダメだ…頭が痛くなっきた…。
「え…風美先輩、成績悪かったんですか?」
「…いつも悪いですよ」
「そうなんですか?頭良さそうなのに」
「よく言われる…。でも、平均以下だよ…」
「ありゃまー」
「“ありゃまー”じゃないよ!」
ポコポコ永那の肩を叩くと、彼女がケラケラ笑った。
「もう、永那に勉強教えてもらったほうがいいのかも…」
「いいですよ?」
彼女がニヤリと笑って、予想外の返事に期待が膨らんだ。
「あ、でもさすがに受験勉強は教えられないか」
「ハハハ」と彼女が笑う。
「そもそも、あんまり基礎が出来てないから…」
「基礎?基礎を教えればいいんですか?」
「教えてくれるの…?」
「まあ…上手く教えられるかわからないですけど」
鞄から数学の参考書を出す。
永那が手を出してきたから乗せると、彼女は足を組んでパラパラとページを捲り始めた。
「ふーん。こんな感じなんだ」
一通り見終えると「どこがわからないんですか?」と聞いてくる。
「あ…あの…“どこが”っていうのが、そもそも、わからなくて」
「え!?」
「ごめんなさい…」
さすがの永那も困った顔をして、もう一度参考書を捲り始めた。
「これは、この前授業で習いましたよ。できます?」
「えーっと…」
文章問題…苦手なやつだ…。
「ま、まず…クラスの男子と女子の人数を聞かれてるから…男子をx、女子をyとして…」
緊張する…。
永那を見ると、頷いてくれる。
「クラスの人数が31人だから…x+y=31で…」
覚えられなくなって、ノートとシャープペンを出す。
今言った内容を書き記していく。
「んー…男子の4割と女子の5割、合わせて14人だから…x✕4/100で…」
「“割”だから100じゃなくて10ですね。100は%の時です」
「あっ、そっか…」
手汗がすごくて、シャープペンが滑る。
そのまま解くと、「なんだ、できるじゃないですか」と永那が笑った。
正確には、できてない…。
途中で間違いを指摘されたから正解しただけで…。
「こ、これはね…一応…」
わかってはいても、“できるじゃないですか”と言われて、まるでうっかりミスみたいなフリをしてしまう。
「あ…あのさ…入試で食塩水の問題とかがよく出るみたいなんだけど、未だにちょっと理解できてなくて…」
「あー…あれは公式覚えるやつですよね」
永那が参考書をまた捲って、食塩水の問題が載っているところを開く。
…なぜ、こんなことに。
気分転換したかったのに、普通に勉強してる…。
「濃度6%の食塩水Aと濃度14%の食塩水Bがある。食塩水Aと食塩水Bを」
永那は早口で文章題を読んで“ふーん”と一度頷く。
「はい」
渡されて、ギクッとする。
「えーっと…水の重さを聞かれてるから…水がx…」
「ん?xとyにするのは食塩水AとBの重さですよ。じゃないと式が書けません」
言われた通りにしてみるけど、その先がわからず、手が止まる。
それを見て、永那がツラツラと解説してくれるけど、あまり内容が頭に入ってこない。
「あー…やっぱり私、教えるの下手ですよね?」
永那が苦笑する。
「ううん!そ、そんなことないよ!…私が、理解力ないだけで」
それに、説明してくれる永那は、なんだかすごくかっこよくて、それを見られるだけで嬉しいと思った。
「なんか、恥ずかしいよ…。こんなに勉強できなくて…」
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