いたずらはため息と共に

常森 楽

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8.閑話

51.永那 中2 夏〜秋《野々村風美編》

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「う、嘘だよ!嘘!冗談だって…。泣かないで?」
保冷剤で彼女の耳たぶを冷やす。
フフッと彼女が笑うから、俯いた。
消毒して、鏡で彼女に位置を確認してもらう。
マーカーで印をつけて、ピアッサーの針の位置を確認。
芽衣につけてもらったというピアスが輝いていて、嫉妬した。
「い、いくよ…?」
「思いっきりね!」
「うん…」
深呼吸する。
「せーの!」
ガチャッと音が鳴る。
恐る恐るピアッサーを取ると、ちゃんと彼女の耳にピアスが光っていた。
「出来た?」
「うん!」
彼女が鏡で耳を確認する。
「お~!すげ~!」
「お揃いの場所」
「だね。風美、結構位置高いところになっちゃったけど良かったの?」
「いいの」

しばらく2人で鏡を眺めていた。
たまに見つめ合って、笑い合う。
彼女にチュッとキスされて、を思い出した。
彼女の頬を両手で包んで、私からもキスをする。
永那から、私の大事なところをさわられることは、もうなかった。
少しもどかしかったけど、芽衣ともシてるんだって思ったら、私も気乗りしなかった。
ただ“好き”という気持ちだけが溢れていく。

その夜、さっそく家族にバレた。
羽美は「いいな~!私もしたい!」と言い、お母さんは「やめてよ、ちょっと…。どうするのよ…」と頭を抱え、お父さんは無言だった。

それから数日後、塾の夏合宿があり、1週間みっちり勉強三昧の日々となった。
たまにピアスに触れて、永那を思い出すと、頑張れた。
でも同時に、“今頃、芽衣といるのかな?”と考えてしまうから、集中できていたかどうかと聞かれれば、胸を張って頷くことは出来なかった。
1週間、お風呂の時間から就寝時間までの間が唯一の自由時間で、回収されたスマホが返される。
毎日永那に連絡しようか迷って、結局しなかった。
1度だけ友達から連絡があり、愚痴を言った。
お母さんからは2度。
ちゃんと合宿所についたかの確認と、勉強が捗っているかどうかの確認。
少しくらい、“体調はどう?”とか気遣ってくれてもいいのに。

合宿が終わった後、永那に連絡した。
『夏合宿終わったよ!』
『おつかれさま!よくがんばりました◎』
“◎”が嬉しい。
『会いたい』
『会おう。いつにする?』
『明日はどう?』
『いいよ』

羽美と話してほしくなくて、公園で会うことにした。
永那が目一杯褒めてくれて、1週間の疲れが癒されていく。
ベンチに2人で座って、キスして、胸に触れられる。
いつも通り。
いつも通りなはずなのに、私は脚をもぞもぞと動かした。
あれから、自分でさわる回数が増えた。
自分じゃ感覚にはなれなくて、盛大に焦らされているようで、もどかしい。
フフッと永那が笑う。
「風美、どうしたの?」
「な、なにが?」
「なんか、ずっと動いてる」
太ももに手を置かれて、ビクッとする。
「べ、べつに…?なんでもないよ?」
「ふーん」
大して興味もなさそうに、永那が口づけを再開した。
彼女の手が私の太ももを撫でる。
汗が流れ落ちる。
息が粗くなって、彼女に跨った。
膝立ちでいると、直に太ももに触れられた。
それだけで気持ち良い。
徐々に彼女の手が上がっていく。
「風美?」
「なに?」
「嫌なら、言って?」
薄茶色の瞳が、上目遣いに、まっすぐ私を捕らえる。
「嫌じゃ、ない」
「本当?」
「うん。ずっと、さわってほしかった…」
彼女が歯を見せて笑う。
「そっか。良かった」

キスをする。舌を絡めて。
彼女が私のショーツを下ろして、気持ち良いところに触れた。
「んっ」
「こんなとこで、こんなこと、していいの?」
「今日だけっ、今日だけだからっ」
「わかった」
「ぁぁっ」
クチュクチュと音が鳴って、恥ずかしい。
もし、誰かに見られたら…って思うと、余計に。
彼女にもたれかかる。
「風美、この前より感じてるみたい」
「んっ、んッ」
永那の言う通り、この前みたいな、ジワリとした温かさのある気持ち良さではない。
内側の炎が燃え盛って、あまりに熱くて、暑くて、汗が止まらない。
「あっ」
体の芯が、炎をあげた。
そして、一気に力が抜ける。
「気持ちいい…気持ちいい…。永那、好き」
彼女が私のなかからいなくなって、反対の手で背中を優しく叩いてくれる。

羽美がいない日に、もう一度家に来てもらった。
私達はすぐにベッドに寝転んで、情事に夢中になった。

塾の夏合宿が終わってから、夏休みが終わるまでの2週間、永那とは5回会った。
そのうち2回エッチをして、3回は公園でキスとお喋りだけだった。
芽衣よりも会えている気がして、勝手に優越感に浸る。

始業式、やたら視線を感じた。
始業式から3日後、いつも仲良くしている友人、クラスの違う2人が私のところに駆け寄ってきた。
「風美!後輩のがいるってマジ!?」
「え…?」
クラスメイトの視線が一気に私に集まる。
みんながヒソヒソと話し始める。
「え、2人とも何言ってんの?」
同じクラスの友人が顔を引きつらせて、私を見る。
「今学校中の話題になってるんだよ!風美と2年の女子がキスしてたって!!」
血の気が引いていく。
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