文字の大きさ
大
中
小
538 / 595
8.閑話
53.永那 中2 秋〜中3 秋《野々村風美編》
「…どうして、あんなところでしちゃったんだろう?とは思う」
「え?」
「家族に見られる可能性があるなんて、普通に考えればわかることなのに、なんで、あんなところで、あんなこと、しちゃったんだろうね?私。ホント、自分が馬鹿で嫌になる」
「その…本当に、付き合ってたの?」
鼻で笑う。
「そんなわけ、ないでしょ…」
胸が、ズキズキと痛む。
涙が滝のように溢れ出ていく。
「もう、出て行って」
また布団を被った。
ドアが閉まる。
…自分が、嫌い。
永那に全部背負わせて、永那が全部解決してくれて、私はただ逃げて…。
本当は少し、嬉しかったのかも。
“永那と付き合ってる”なんて噂、ちょっとだけ、嬉しかったのかも。
だから死にたいとは思わなかった。
でも嬉しい以上に、私は目立ちたくなかった。
自分の意図しないところで、勝手に私の話をされるのが嫌だった。怖かった。
翌日、久しぶりに自分の姿を鏡で見た。
髪はぐしゃぐしゃだし、肌はギトギト。
数日間、お風呂にも入っていなかった。
ニキビが出来ている。
何日ぶりかのお風呂に入って、気持ちが少しスッキリした。
体重計に乗ると、5キロ以上痩せていた。
胸も小さくなっている気がする。
そしてそのまた翌日、私は学校に行った。
始業式に感じたような視線は全くなく、ホッとする。
でも教室に入る前は、怖かった。
怖くて、帰ろうかと思った。
「風美!」
友達に肩を抱かれる。
「風美~!心配したんだよ~!も~!…わ!痩せた!?ダイエットしてたんか~?この~!」
わかってるくせに…。
頬が緩む。
教室に入ると、一瞬クラスメイトから見られたけれど、普段通りだった。
「私、寮のある学校に進学しようかな」
「え?突然どうした?」
「家族から、離れたいの」
「ウチとは!?」
「それは…離れたくないけど」
「ふぁ~、安心した~」
「なんか…食べ物の研究とかしたいかも」
「食べ物!?」
「うん…農業系の学校とか、どうかな?」
「え、え~…大変そう…」
「美味しいご飯作ってさ?みんなを喜ばせるの」
「ん~、まあ…風美がそうしたいんなら、いいんではないでしょうか?」
「うん」
卒業するまでに、何度も永那を見た。
いつも女の子に囲まれていて、“彼女は作らない宣言”をしていた。
たまに目が合った。
優しく微笑まれて、やっぱり好きだと、何度も思った。
だから、もう一度告白した。
「好きです。私と付き合ってください!」
友人達に陰で見守られながら。
「ごめんなさい。私、彼女は作らない主義なんだ」
「そっか…。わかった、ありがとう」
彼女は1度頷いて、立ち去った。
私が泣き崩れると、みんなが抱きしめてくれた。
「よく頑張った!」「頑張ったぞ~!風美!」「えらいえらい!」
まるで子供みたいに、頭をぐしゃぐしゃに撫で回された。
希望した学校に合格出来て、私は中学卒業と共にこの街を去った。
お母さんもお父さんもお見送りの時に泣いていて、案外私って愛されてるんだなって実感できた。
妹はずっと気まずそうにしていた。
前までの威勢はなくなって、わがままも言わなくなっていた。
「羽美」
見つめられる。
久しぶりに彼女をちゃんと見た気がした。
「お姉ちゃん、頑張るからね。羽美も、頑張って」
「うん」
彼女と抱きしめ合った。
体つきは、ちゃんと運動している子の体で、テニスを頑張っているのだとすぐにわかった。
悪い子なわけじゃない。わかってる。
でも、どうしても相容れない。そんなことはあると思う。例え、家族だとしても。
もしかしたら、いつか、大人になった時、ようやく仲良くあれるのかもしれないし…大人になっても相容れないものは相容れないのかもしれない。
そんなの、誰にもわからない。
だからとりあえず、今はこれで良い。
この距離感で、良い。
高校生活が始まると、慣れない環境で、毎日必死だった。
あっという間に半年経った頃、妹からメッセージが送られてきた。
『今更いらない情報かもしんないけど、永那先輩、今結構ヤバいかも。いろんな子に手出しまくってるって噂…。私も、ちょっと手出されそうになった…。先生からも問題視されてるっぽくて、完全に暴走状態だよ』
暴走状態…?永那が?想像できない。
『なんでそんなことになってるの?』
『わかんない。…けど、永那先輩、成績はめちゃくちゃ良いらしくて、誰かをいじめてるわけでもないから、先生達も困ってるらしくて。もしお姉ちゃんが連絡とか取ってるなら、なんか言ってあげてくんない?』
『連絡は全然とってないけど、してみるね』
『ありがとう!』
…ありがとう?
妹からそんな言葉を言われる日が来るとは思わなかった。
久しぶりに見る、永那の連絡先。
通話ボタンを押しても、彼女は出なかった。
『永那、大丈夫?羽美が心配してるみたいなんだけど、何か話したいことがあれば聞くよ?』
返事は翌日だった。
『大丈夫!ありがと!風美元気?』
やっぱり、彼女は何も言わない。言ってくれない。
『元気だよ』
『良かった!私も元気!』
嘘つき…。
『永那、いつか、自分の気持ちを素直に言える相手に巡り会えるといいね』
『どういう意味?』
『頭良いんでしょ?考えて』
それから他愛ない話をして、メッセージは終わった。
私の恋する気持ちも、いつの間にか終わっていた。
「え?」
「家族に見られる可能性があるなんて、普通に考えればわかることなのに、なんで、あんなところで、あんなこと、しちゃったんだろうね?私。ホント、自分が馬鹿で嫌になる」
「その…本当に、付き合ってたの?」
鼻で笑う。
「そんなわけ、ないでしょ…」
胸が、ズキズキと痛む。
涙が滝のように溢れ出ていく。
「もう、出て行って」
また布団を被った。
ドアが閉まる。
…自分が、嫌い。
永那に全部背負わせて、永那が全部解決してくれて、私はただ逃げて…。
本当は少し、嬉しかったのかも。
“永那と付き合ってる”なんて噂、ちょっとだけ、嬉しかったのかも。
だから死にたいとは思わなかった。
でも嬉しい以上に、私は目立ちたくなかった。
自分の意図しないところで、勝手に私の話をされるのが嫌だった。怖かった。
翌日、久しぶりに自分の姿を鏡で見た。
髪はぐしゃぐしゃだし、肌はギトギト。
数日間、お風呂にも入っていなかった。
ニキビが出来ている。
何日ぶりかのお風呂に入って、気持ちが少しスッキリした。
体重計に乗ると、5キロ以上痩せていた。
胸も小さくなっている気がする。
そしてそのまた翌日、私は学校に行った。
始業式に感じたような視線は全くなく、ホッとする。
でも教室に入る前は、怖かった。
怖くて、帰ろうかと思った。
「風美!」
友達に肩を抱かれる。
「風美~!心配したんだよ~!も~!…わ!痩せた!?ダイエットしてたんか~?この~!」
わかってるくせに…。
頬が緩む。
教室に入ると、一瞬クラスメイトから見られたけれど、普段通りだった。
「私、寮のある学校に進学しようかな」
「え?突然どうした?」
「家族から、離れたいの」
「ウチとは!?」
「それは…離れたくないけど」
「ふぁ~、安心した~」
「なんか…食べ物の研究とかしたいかも」
「食べ物!?」
「うん…農業系の学校とか、どうかな?」
「え、え~…大変そう…」
「美味しいご飯作ってさ?みんなを喜ばせるの」
「ん~、まあ…風美がそうしたいんなら、いいんではないでしょうか?」
「うん」
卒業するまでに、何度も永那を見た。
いつも女の子に囲まれていて、“彼女は作らない宣言”をしていた。
たまに目が合った。
優しく微笑まれて、やっぱり好きだと、何度も思った。
だから、もう一度告白した。
「好きです。私と付き合ってください!」
友人達に陰で見守られながら。
「ごめんなさい。私、彼女は作らない主義なんだ」
「そっか…。わかった、ありがとう」
彼女は1度頷いて、立ち去った。
私が泣き崩れると、みんなが抱きしめてくれた。
「よく頑張った!」「頑張ったぞ~!風美!」「えらいえらい!」
まるで子供みたいに、頭をぐしゃぐしゃに撫で回された。
希望した学校に合格出来て、私は中学卒業と共にこの街を去った。
お母さんもお父さんもお見送りの時に泣いていて、案外私って愛されてるんだなって実感できた。
妹はずっと気まずそうにしていた。
前までの威勢はなくなって、わがままも言わなくなっていた。
「羽美」
見つめられる。
久しぶりに彼女をちゃんと見た気がした。
「お姉ちゃん、頑張るからね。羽美も、頑張って」
「うん」
彼女と抱きしめ合った。
体つきは、ちゃんと運動している子の体で、テニスを頑張っているのだとすぐにわかった。
悪い子なわけじゃない。わかってる。
でも、どうしても相容れない。そんなことはあると思う。例え、家族だとしても。
もしかしたら、いつか、大人になった時、ようやく仲良くあれるのかもしれないし…大人になっても相容れないものは相容れないのかもしれない。
そんなの、誰にもわからない。
だからとりあえず、今はこれで良い。
この距離感で、良い。
高校生活が始まると、慣れない環境で、毎日必死だった。
あっという間に半年経った頃、妹からメッセージが送られてきた。
『今更いらない情報かもしんないけど、永那先輩、今結構ヤバいかも。いろんな子に手出しまくってるって噂…。私も、ちょっと手出されそうになった…。先生からも問題視されてるっぽくて、完全に暴走状態だよ』
暴走状態…?永那が?想像できない。
『なんでそんなことになってるの?』
『わかんない。…けど、永那先輩、成績はめちゃくちゃ良いらしくて、誰かをいじめてるわけでもないから、先生達も困ってるらしくて。もしお姉ちゃんが連絡とか取ってるなら、なんか言ってあげてくんない?』
『連絡は全然とってないけど、してみるね』
『ありがとう!』
…ありがとう?
妹からそんな言葉を言われる日が来るとは思わなかった。
久しぶりに見る、永那の連絡先。
通話ボタンを押しても、彼女は出なかった。
『永那、大丈夫?羽美が心配してるみたいなんだけど、何か話したいことがあれば聞くよ?』
返事は翌日だった。
『大丈夫!ありがと!風美元気?』
やっぱり、彼女は何も言わない。言ってくれない。
『元気だよ』
『良かった!私も元気!』
嘘つき…。
『永那、いつか、自分の気持ちを素直に言える相手に巡り会えるといいね』
『どういう意味?』
『頭良いんでしょ?考えて』
それから他愛ない話をして、メッセージは終わった。
私の恋する気持ちも、いつの間にか終わっていた。
感想 56
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
✽全28話完結
✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
✽他誌にも掲載中です。
✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。
→表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?