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7.向
424.期待
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「あいつら、結局花見してたわ」
飲み物が無くなったから、追加で買いに行ってくれた永那ちゃんが戻ってきて言う。
「え!?マジ!?」
「優里、見つかんなよ?」
「あい…」
「ホント、この前穂と場所探しといて良かったわ」
「あざまーっす!」
永那ちゃんが座ると、千陽が紙袋を中央に置く。
「お!ケーキですね!!楽しみ~!」
優里ちゃんが体を左右に揺らす。
隣に座る森山さんと永那ちゃんに肩がぶつかり、永那ちゃんが避けるように私に近づいた。
千陽が紙袋を逆さにひっくり返す。
ひっくり返す!?
優里ちゃんも驚愕している。
永那ちゃんと森山さんは、ボーッと見ているだけだった。
ボトボトといろんな物が落ちて、それを千陽が手で広げる。
「なにこれ?」
永那ちゃんがひとつ手に取る。
「またおにぎり!?」
優里ちゃんは両手を頬に当て、ムンクの叫びのようにしている。
「普通のケーキも考えたけど、クラスの連中に気づかれたら嫌だし…と思って、買ってみた。あたしも食べたことないから、おいしいかはわかんない」
“連中”って…。
「へえ…おにぎりの形をしたケーキってこと?」
「そ」
コンビニで売られているおにぎりにそっくりで、いろんな味がある。
「ロウソクは立てられないけど」
千陽が森山さんを見ると、森山さんは顔の前でパタパタと手を振る。
「だ、大丈夫!外だと、火を使うのも危ないだろうし…!」
千陽が頷く。
「桜、どれが良いか選んで?ひとり2つだから」
「え!?い、いいの?」
「桜の誕生日祝いなんだから、桜が最初に決まってるでしょ?」
優里ちゃんが激しめに頭を上下に振る。
「で、では…」
森山さんは苺とミルクティーを選ぶ。
「次は!次は誰が選ぶ!?」
優里ちゃんが体を前のめりにしながら言う。
「穂」
「え!?私!?どうして?」
「好きだから」
まっすぐ見つめられ、ゴクリと唾を飲む。
なんだか、キスでもされてしまいそうな…。
「私達はー!?千陽ー!!!私達は好きじゃないのー!?」
優里ちゃんが両目を手で覆って「うえーん!」と嘘泣きする。
「ハァ」と千陽が小さく息を吐いて、「じゃあ、じゃんけんね」と、最初からそうする予定だったみたいに言った。
永那ちゃん、千陽、優里ちゃん、私の順。
一気に2つ選ぶのではなく、ひとつずつ選んで2周することになった。
「穂は何が良い?」
「えっ?」
永那ちゃんがあぐらをかきながら、頬杖をついている。
「わ、私は、なんでもいいよ?」
「苺がいい?」
「え、永那ちゃんが好きなのを選ぶんだよ?」
「私は穂が好きだから、穂が好きな物を残しておく。…いや、優里が取るかもしんないから、私が先に選んで、後で穂と交換する」
「私は取らないよ!」
優里ちゃんが永那ちゃんの肩をポカポカ叩く。
…それじゃあ、じゃんけんをした意味がないんじゃないかな?
「大丈夫!じゃんけんで決まったことなんだし、そんなズルはだめ!交換もしないよ?」
永那ちゃんの左眉が上がる。
「永那のバーカバーカ!穂ちゃんのこと、まだまだわかってないなあ…ぷぷぷ」
優里ちゃんは永那ちゃんに睨まれて、森山さんの背中に隠れた。
全員が選び終えて、ハッピーバースデーを歌って、食べた。
「一口ちょうだい」と言い合って、分け合って、ほとんど選んだ意味を成していなかった。
何かを分け合える友達がいる。
それがこんなにも楽しいことだなんて知らなかった。
きっとクラスメイトがここに混ざっていたら、私は遠慮して、“楽しむ”なんてことはできなかったと思う。
永那ちゃんと優里ちゃんがよくわからない掛け合いをして、それを私と千陽と森山さんが眺める。
ここにたまに誉が入って、3対3になるのもバランスがいい気がしている。
誉、呼んであげればよかったかも…なんて、今更思う。
春の風が吹く。
その度に桜がチラチラと舞って、まるで喜んでいるかのよう。
永那ちゃんが2千円分の駄菓子を森山さんに渡して、優里ちゃんが羨ましがる。
森山さんが喜ぶのかわからなかったけれど、彼女は笑顔でお礼を言っていた。
「春休み、みんなで遊ぶ?」
永那ちゃんが言う。
“絶対毎日一緒に過ごす”と言っていたけれど、ちゃんと友達のことを忘れていないのも好き。
「私、予備校の春休み講習あるし、部活もあるから無理そう…」
優里ちゃんが俯く。
期末試験、結果が今までで1番良かったらしく、このまま頑張ればかなり上位の大学に行けるかもしれないと、優里ちゃんは喜んでいた。
勉強に部活に遊びに…両立出来ていて素直に凄いと思う。
「夜だったら平気なんだけど…永那、厳しいもんね?」
「まあ…そだな。ごめん」
「永那が謝ることじゃないよ!!」
永那ちゃんは少し申し訳なさそうに頷いた。
飲み物が無くなったから、追加で買いに行ってくれた永那ちゃんが戻ってきて言う。
「え!?マジ!?」
「優里、見つかんなよ?」
「あい…」
「ホント、この前穂と場所探しといて良かったわ」
「あざまーっす!」
永那ちゃんが座ると、千陽が紙袋を中央に置く。
「お!ケーキですね!!楽しみ~!」
優里ちゃんが体を左右に揺らす。
隣に座る森山さんと永那ちゃんに肩がぶつかり、永那ちゃんが避けるように私に近づいた。
千陽が紙袋を逆さにひっくり返す。
ひっくり返す!?
優里ちゃんも驚愕している。
永那ちゃんと森山さんは、ボーッと見ているだけだった。
ボトボトといろんな物が落ちて、それを千陽が手で広げる。
「なにこれ?」
永那ちゃんがひとつ手に取る。
「またおにぎり!?」
優里ちゃんは両手を頬に当て、ムンクの叫びのようにしている。
「普通のケーキも考えたけど、クラスの連中に気づかれたら嫌だし…と思って、買ってみた。あたしも食べたことないから、おいしいかはわかんない」
“連中”って…。
「へえ…おにぎりの形をしたケーキってこと?」
「そ」
コンビニで売られているおにぎりにそっくりで、いろんな味がある。
「ロウソクは立てられないけど」
千陽が森山さんを見ると、森山さんは顔の前でパタパタと手を振る。
「だ、大丈夫!外だと、火を使うのも危ないだろうし…!」
千陽が頷く。
「桜、どれが良いか選んで?ひとり2つだから」
「え!?い、いいの?」
「桜の誕生日祝いなんだから、桜が最初に決まってるでしょ?」
優里ちゃんが激しめに頭を上下に振る。
「で、では…」
森山さんは苺とミルクティーを選ぶ。
「次は!次は誰が選ぶ!?」
優里ちゃんが体を前のめりにしながら言う。
「穂」
「え!?私!?どうして?」
「好きだから」
まっすぐ見つめられ、ゴクリと唾を飲む。
なんだか、キスでもされてしまいそうな…。
「私達はー!?千陽ー!!!私達は好きじゃないのー!?」
優里ちゃんが両目を手で覆って「うえーん!」と嘘泣きする。
「ハァ」と千陽が小さく息を吐いて、「じゃあ、じゃんけんね」と、最初からそうする予定だったみたいに言った。
永那ちゃん、千陽、優里ちゃん、私の順。
一気に2つ選ぶのではなく、ひとつずつ選んで2周することになった。
「穂は何が良い?」
「えっ?」
永那ちゃんがあぐらをかきながら、頬杖をついている。
「わ、私は、なんでもいいよ?」
「苺がいい?」
「え、永那ちゃんが好きなのを選ぶんだよ?」
「私は穂が好きだから、穂が好きな物を残しておく。…いや、優里が取るかもしんないから、私が先に選んで、後で穂と交換する」
「私は取らないよ!」
優里ちゃんが永那ちゃんの肩をポカポカ叩く。
…それじゃあ、じゃんけんをした意味がないんじゃないかな?
「大丈夫!じゃんけんで決まったことなんだし、そんなズルはだめ!交換もしないよ?」
永那ちゃんの左眉が上がる。
「永那のバーカバーカ!穂ちゃんのこと、まだまだわかってないなあ…ぷぷぷ」
優里ちゃんは永那ちゃんに睨まれて、森山さんの背中に隠れた。
全員が選び終えて、ハッピーバースデーを歌って、食べた。
「一口ちょうだい」と言い合って、分け合って、ほとんど選んだ意味を成していなかった。
何かを分け合える友達がいる。
それがこんなにも楽しいことだなんて知らなかった。
きっとクラスメイトがここに混ざっていたら、私は遠慮して、“楽しむ”なんてことはできなかったと思う。
永那ちゃんと優里ちゃんがよくわからない掛け合いをして、それを私と千陽と森山さんが眺める。
ここにたまに誉が入って、3対3になるのもバランスがいい気がしている。
誉、呼んであげればよかったかも…なんて、今更思う。
春の風が吹く。
その度に桜がチラチラと舞って、まるで喜んでいるかのよう。
永那ちゃんが2千円分の駄菓子を森山さんに渡して、優里ちゃんが羨ましがる。
森山さんが喜ぶのかわからなかったけれど、彼女は笑顔でお礼を言っていた。
「春休み、みんなで遊ぶ?」
永那ちゃんが言う。
“絶対毎日一緒に過ごす”と言っていたけれど、ちゃんと友達のことを忘れていないのも好き。
「私、予備校の春休み講習あるし、部活もあるから無理そう…」
優里ちゃんが俯く。
期末試験、結果が今までで1番良かったらしく、このまま頑張ればかなり上位の大学に行けるかもしれないと、優里ちゃんは喜んでいた。
勉強に部活に遊びに…両立出来ていて素直に凄いと思う。
「夜だったら平気なんだけど…永那、厳しいもんね?」
「まあ…そだな。ごめん」
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永那ちゃんは少し申し訳なさそうに頷いた。
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