いたずらはため息と共に

常森 楽

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7.向

440.足りない

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「穂、千陽」
呼ぶと、2人が頬を紅潮させながら私を見た。
どうやら千陽も体勢が楽ではなかったようで、すぐに穂の隣に仰向けになる。
穂は慌てて布団を捲って体に巻き付けた。
千陽も脚を交差させて、下半身をねじるように横に向け、下腹部が見えないようにする。
「ちょっと休憩」
「もう…?」
穂が寂しそうに見つめてくる。
思わず笑みが溢れる。
可愛い…ホント、可愛い。
「ごめんね。どうもこの姿勢だと背中が痛くなっちゃって…」

私はベッドから下りて、冷蔵庫に向かう。
「ねえ、千陽。これ、飲んでいいやつ?」
「うん」
「どれでもいいの?」
「何があるの?」
「水以外に、コーラとかオレンジジュースもある」
「ふーん。まあ、いいんじゃない?」
「わーい」
コーラを取って、ソファに座る。
千陽が立ち上がって、クローゼットを開けた。
丁寧にビニールに入れられたバスローブを出して、羽織る。
「なにそれ、めっちゃ金持ちみたい」
「金持ちだし」
「私も着たい!」
コーラをテーブルに置いて、千陽のそばに寄る。
「わ、私も…」
可愛すぎる穂が手を伸ばすから、バスローブを渡してあげる。

私は服の上から真っ白なモコモコのバスローブを羽織って、テーブルに置いたコーラを手に取る。
大きな窓の前に仁王立ちした。
「ハッハッハッ、愚民どもよー!働けー!働けー!」
「馬鹿じゃないの?」
「うるさい!…それにしても、眺め良いなあ!」
「パパとママのおすすめだからね…」
「なんで千陽んはタワマンじゃないの?金持ちと言えばタワマンじゃない?」
「昔は住んでたらしいんだけど、ママが頭痛くなるって言うから」
「ふーん。ここは痛くならないの?」
「たまになら平気みたい」
「へえ」
穂が私の隣に立つ。
「すごいね。本当、眺め良いね」
千陽はテクテクとコーヒーメーカーのそばに行って、淹れ始める。
「穂もいる?」
「うん、ありがとう」

3人でソファに座る。
千陽、穂、私の順。
「ホテルのスイートルームなんて、最初で最後なんじゃないの?私」
「働けば泊まれるでしょ」
「いいかい?千陽ちゃん。世の中そんなに甘くないんだよ?」
私が両膝に両肘を乗せて説教するように千陽に言うと、穂が楽しそうに笑った。
…可愛い。
「それにしても…本当に良かったのかな?お金…」
「大丈夫って何度も言ってるでしょ。パパが出張ないのが悪いんだし」
「それは悪くないんじゃ…」
「悪い。普段いないくせに、こういう時に限って…」
穂が苦笑する。
「それに、あたしがいなければパパとママは思う存分セックス出来るんだし、ちょうどいいんでしょ。超~楽しそうに送り出してくれたよ」
千陽は無表情だ。
チビチビとコーヒーを飲んでいる。

千陽の親は、千陽にお金さえ渡しておけばいいと思ってる。
それが良いことなのか悪いことなのかはわからない。
最良ではないにしても、こうして私達の分までお金を嫌味なく出してくれるところは、素直にかっこいいと思う。
“それが愛情だ”と言われてしまえば、私は否定出来ない。
千陽の親は、千陽を束縛しない。
放置はしてるけど。
でも完全に放置してるわけでもない。
“自由にさせてあげている”、“千陽のやりたいと思うことに躊躇わずにお金を出してあげている”と捉えれば、良い親に思えてしまう。
親って難しい。

千陽がコーヒーをテーブルに置く。
両手で穂の頬を包んで、唇を重ねた。
「ち、千陽…」
「休憩おしまい。穂だって、さっき、“もう?”って言ってたでしょ?」
穂がコクリと頷く。
…勝手に始めやがって。
「あたし、まだ1回もイかせてもらってないし?」
チラリと見られて、目が合った。
「永那は休んでたければ休んでて?あたし、穂とするから」
そう言われて、目を細める。
左眉を上げて唇を突き出しても、そのまま無視されて、2人がキスを始めた。
コーラを飲んで、2人の様子を眺める。

「穂、好き」
「私も、千陽好きだよ」
チュッチュッと音が響く。
「穂~、私は~?」
「永那ちゃんも、すっ」
穂が話せないように、千陽が舌を忍ばせた。
こんにゃろー!穂は私の彼女だぞ!!忘れたのか!?忘れるな!
千陽がソファの上で膝立ちになって、穂の上に跨る。
穂は少し苦しそうに上を向かされていた。
それはそれでエロい…。
休む必要はないんだけど、この隙に“どうしたものか?”と考える。
千陽は穂の膝に座り、穂のバスローブの紐を解いた。
穂の胸元が曝け出される。
ああ…さわりたい…。
…じゃなくて、ホント、どうしよう?
“穂とする”という千陽の言葉に従ってか、穂も千陽のバスローブの紐を解く。
お互いにお互いの胸に触れる。
千陽の豊満な乳房が、穂の指の形に合わせて窪みを作る。
っていうか千陽、ショーツ穿いてないから直に穂の太ももに座ってんな。
少し腰が揺れている。
さっきイかせてあげなかったのは可哀想だったか。

ん…?あれ?待てよ…。これは…。
2人の体を、まるで舐め回すかのように見る。
決して、見たいという思いだけで見ているわけではないのだと、ここに誓おう。
私は2人の願いを叶えるために、この環境と、2人の位置と、体を見ているのだ。
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