いたずらはため息と共に

常森 楽

文字の大きさ
477 / 595
7.向

476.序開

長い休みを少女漫画を読んで過ごして、やっと入学式の日になった。
もちろん、ひそかと先輩で妄想した。
妄想している間はあっという間に時間が過ぎた。
それでもやっぱり、待ちきれないほどに長かったけど。
お母さんは呆れるくらいめかしこんで、お父さんもスーツを着て鼻歌を歌いながら髪をセットしていた。
ひそかは、お気に入りの星のヘアゴムで髪を2つに結んだ。
まだ背が伸びるかもしれないからとお母さんが注文した、少し大きめの制服を着て、鏡を見る。
いつか先輩のブレザーと交換しちゃったりして…。
「ひゃ~!!」
テンションが上がりすぎてその場でクルクル回っていると、お母さんにドアをノックされた。
「ひそか…?準備できた?」
「うん」
3人で家を出る。

正門につくと、ひそかと同じように新しい制服を身に纏った、同級生になるであろう人達がたくさんいた。
片親とだけ来ている人もいれば、親が来ていなさそうな人もいる。
両親が来ている人のほうが少なそうだった。
ほんの少し、自分の親を恥ずかしく感じる。
「ほら、ひそか!写真撮ろう」
お父さんが言って、お母さんと2人で“入学式”の看板の横に立つ。
「あ、すみません。ちょっと写真撮るので、ずれてもらっていいですか?」
ひそか達の隣で写真を撮っていた親子にお父さんが言う。
親子は気まずそうにしながら会釈して、正門をくぐっていった。
「撮るぞー!」
カシャカシャと連写音が鳴って、また恥ずかしくなる。
その後お父さんが隣に来て、自撮り棒を出して写真を撮った。

「じゃあ、後でね」
「ひそか!しっかりな!」
頷いて、ひそかは校内に、お母さん達は体育館に向かった。
靴箱で上履きに履き替え、掲示されているクラス表を見た。
人が多くてなかなか紙に近づけなかったけど、なんとか自分の名前を見つけて、人の流れに乗りながら教室に向かった。
小学校も中学校も、友達はほとんどいなかった。
同じ小学校の子のほとんどが同じ中学校に行くんだから、小学校で友達がいなければ、当たり前のように中学でも友達はできない。
何人か、挨拶をする程度の仲の子はいたけど、体育とかでグループを作らなきゃいけない時の予備要因って感じだった。
そんなひそかの、初めての新しい環境。
お母さん達と離れてから、緊張感がどんどん増していく。
指先が冷たくなっている。

教室に入ると、黒板に席順が書かれていた。
自分の席を見つけて、ひそかは椅子に座った。
既にクラスの中でグループが分かれ始めている。
スマホを出して、SNSを開く。
事前にフォローしておいた人達がいるか確認。
「ねえ!もしかして、ひそかちゃん?」
声をかけられ、ドキッとする。
顔をあげると、SNSで少しメッセージを送りあった子だった。
「あ…うん…」
「わ!同じクラスー!よろしくねー!!」
「よろしく…」
へへへと笑みを浮かべると、相手も笑みを返してくれる。
「あ!改めて…私、飯田 杏奈いいだ あんな
中川なかがわ ひそか」
「ひそかちゃんの家ってちょっと遠いんだよね?朝早くて大変だったんじゃない?」
「ま、まあ…」
「私なんて通学時間30分だけど、それでもダルかったわ~」
杏奈ちゃんはひそかの机に手をついて、本当にダルそうに顔を歪めた。

「あ!ねえ!」
杏奈ちゃんの横を通った女子に彼女が話しかけた。
かなりコミュ力がある子らしい…。
話しかけられた相手も陽気に答え、自然とひそかのそばから2人がいなくなる。
ああいう子達がクラスの中心になるんだろうな…なんて、特に卑屈になるわけでもなく、思った。

それから少しして、担任が教室に入ってきた。
欠席者・遅刻者はおらず、担任の挨拶や自己紹介が始まる。
入学式の流れが説明され、そのまま体育館に誘導された。
廊下に出ると、他のクラスも列をなしてズラズラと体育館に向かった。

体育館に入ると、お父さんが「ひそか!」と手を振った。
これは…ものすごく恥ずかしい…。
顔が熱くなるのが自分でもわかった。
小さく手を振り返して、すぐに目をそらした。

つまらない式が淡々と続き、寝る人がちらほら出始める頃、在校生代表として生徒会長が祝辞を読み上げた。
第一印象は、“頭良さそう”。
でも…3年生ってことは、永那先輩と同じ学年ということ…!
いいなあ、羨ましい。

入学式が終わって教室に戻る時、お父さんがまたひそかを呼んだ。
周りから少し笑われてる気がする…。
今度は手を振り返さずに、ただ俯いた。

教室に戻ると、ひとりひとり自己紹介をさせられた。
みんな入る部活を決めていたり、趣味の話をしたり、たまにふざける人もいたりと、和やかな雰囲気だった。
…嫌なんだよなあ、こういうの。ホントに嫌い。
「中川ひそかです。部活は…まだ決めてません。趣味は…漫画読むこと…です…。よろしくお願いします」
拍手され、すぐに椅子に座る。
絶対“陰キャ”って思われたー…!!
ここで選別されるんだろうな…。
友達がほしいわけじゃないけど、ほしくないわけでもない。
感想 56

あなたにおすすめの小説

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! ✽全28話完結 ✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 ✽他誌にも掲載中です。 ✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。 →表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。