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7.向
482.序開
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修学旅行のお土産は渡したし、“ごめんね”を言い合って、一応仲直りもした。
でも気まずいことに変わりはなく、キスもセックスも全くしなくなり、修学旅行から帰って2ヶ月後に、ウチから別れを告げた。
彼女は泣いた。
「ごめんね、クリスマス前に」
そう言うと「クリスマス当日に言われるよりマシ」と、彼女は泣きながら笑った。
「篠田先輩と、上手くいくといいね」
彼女が言うから、心の中でため息をつく。
「だから、篠田さんとは何もないって。ただの友達」
「…うん…そうだよね」
結局、どれだけ言っても、最後の最後まで彼女は勘違いしたままだった。
全然納得していなさそうな顔をしていたし、「バイバイ」と言った後も「応援してる」と返されたから。
言い返すのも面倒で、ウチは頷いて、彼女から去った。
クリスマスは家族と過ごし、そのまま退屈な冬休みに突入した。
あまりに退屈だったから、早めの受験勉強でもしようかと思って、予備校に通い始めた。
そしたら、篠田さんが同じ予備校にいてビックリした。
「わ!高野さん!」
「篠田さん、奇遇だね」
会う度に話すようになって、少しずつ仲良くなっていった。
2人で遊ぶような仲ではなかったし、相変わらずメッセージを送りもしなかったけど、予備校の中だけでは、まるで友達みたいだった。
会話の中に、しょっちゅう両角さんや空井さん、佐藤さんの話が出てきて、聞いていて楽しかった。
佐藤さんの色んな面を知れて、ウチまで彼女達と仲が良い気さえしてくる。
「佐藤さんって、まだ両角さんのこと、好きなの?」
かなり緊張しながら、1番聞きたかったことを聞く。
「ん~?どうかな~?他に好きな人いるって言ってたし」
「その…好きな人って…?」
「教えてくれないんだよ~、ひどいよね~」
篠田さんが頬を膨らませる。
「私の知らない人、とは言ってたかな?」
「そうなんだ」
「ちょっと先生に質問してくるね!」と彼女が去ってしまい、それ以上は聞けなかった。
どうやら篠田さんは、あまり両角さんや佐藤さんのことを聞かれたくないらしく、ウチがこういった話題を振ると逃げるように話をそらされたり、どこかに行ってしまったりする。
みんなで遊んだ話はたくさんしてくれるのに、なんだか腑に落ちない。
このことを中学の時の友達に相談したら、「その子、麗良のこと好きだったりして~!」とからかわれた。
「え!?そんなわけないでしょ」
「いやいや、だってさ?麗良のこと好きじゃなかったら、他の子の話なんて普通にするじゃん?でもしたがらないってことは、麗良に他の子のこと考えてほしくないってことだよ~!」
そう言われれば、そんな気もしてきて…。
「麗良って、無意識に女子に優しくする癖あるからさ~」
あれだけ彼女が篠田さんのことを気にしていたのも、ウチが篠田さんを好きだったんじゃなく、篠田さんがウチを好きだったのなら辻褄が合う気がする。
そうか…。篠田さんはウチのことが…。
次に篠田さんに会った時、なんとなく気まずかった。
べつに篠田さんに勘違いさせるつもりはなかったけど、無意識に優しく接してしまっていたのかもしれない。
そう思って、挨拶程度の会話で済ませたら、彼女から話しかけられ、確信めいたものを感じてしまった。
サッカーをやめて、長く付き合った恋人とも別れ、彼女がいるから卓球部にも行きづらくなっていたところに舞い込んできたこの話に、浮かれた。
高校では両角さんが圧倒的人気で、ウチは中学の時ほどチヤホヤされなくなっていた。
サッカーをやめたことも原因だったと思う。
彼女がいたから特になんとも思わなかったけど、いざ別れると寂しかった。
圧倒的に人気者な両角さんのそばにいながら、両角さんではなく、ウチが選ばれたことに、優越感を抱く。
それからウチは積極的に篠田さんに話しかけるようにして、なるべく両角さんや佐藤さんの話は出さないように心がけた。
授業終わりに家まで送った時なんか、彼女にすごく喜ばれた。
“もうこれは、告白されるまで秒読みだな”と思っていたら、予備校に佐藤さんが来た。
篠田さんが佐藤さんの腕を引っ張り、佐藤さんは他の子の腕を引っ張っていた。
意味がわからず、頭がパニックを起こし、呆然と彼女達を見た。
佐藤さんは相変わらず美しくて、良い香りがして、ドキドキした。
「あ!高野さんだ!…千陽、桜ちゃん、私の友達」
「こんにちは…」
桜と呼ばれた子が会釈するから、ウチも頭を下げる。
つい、佐藤さんに目を遣る。
急展開に全く思考が追いつかない。
初めて目が合って、息をするのも忘れる。
「ほら、千陽、ちゃんと挨拶しなさい!」
「ハァ」と佐藤さんがため息をつく。
「よろしく」
その澄んだ声で、ぶっ倒れそうになった。
「よ、よろしく…」
なんとか答えたけど、その後の篠田さんの会話は全く頭に入ってこなかった。
篠田さん…ウチが佐藤さんの話しなくなったからって連れてきたの!?
ちょっと、油断し過ぎじゃない!?
ウチだって…佐藤さんを目の前にしてしまったら…揺らいじゃうよ。
でも気まずいことに変わりはなく、キスもセックスも全くしなくなり、修学旅行から帰って2ヶ月後に、ウチから別れを告げた。
彼女は泣いた。
「ごめんね、クリスマス前に」
そう言うと「クリスマス当日に言われるよりマシ」と、彼女は泣きながら笑った。
「篠田先輩と、上手くいくといいね」
彼女が言うから、心の中でため息をつく。
「だから、篠田さんとは何もないって。ただの友達」
「…うん…そうだよね」
結局、どれだけ言っても、最後の最後まで彼女は勘違いしたままだった。
全然納得していなさそうな顔をしていたし、「バイバイ」と言った後も「応援してる」と返されたから。
言い返すのも面倒で、ウチは頷いて、彼女から去った。
クリスマスは家族と過ごし、そのまま退屈な冬休みに突入した。
あまりに退屈だったから、早めの受験勉強でもしようかと思って、予備校に通い始めた。
そしたら、篠田さんが同じ予備校にいてビックリした。
「わ!高野さん!」
「篠田さん、奇遇だね」
会う度に話すようになって、少しずつ仲良くなっていった。
2人で遊ぶような仲ではなかったし、相変わらずメッセージを送りもしなかったけど、予備校の中だけでは、まるで友達みたいだった。
会話の中に、しょっちゅう両角さんや空井さん、佐藤さんの話が出てきて、聞いていて楽しかった。
佐藤さんの色んな面を知れて、ウチまで彼女達と仲が良い気さえしてくる。
「佐藤さんって、まだ両角さんのこと、好きなの?」
かなり緊張しながら、1番聞きたかったことを聞く。
「ん~?どうかな~?他に好きな人いるって言ってたし」
「その…好きな人って…?」
「教えてくれないんだよ~、ひどいよね~」
篠田さんが頬を膨らませる。
「私の知らない人、とは言ってたかな?」
「そうなんだ」
「ちょっと先生に質問してくるね!」と彼女が去ってしまい、それ以上は聞けなかった。
どうやら篠田さんは、あまり両角さんや佐藤さんのことを聞かれたくないらしく、ウチがこういった話題を振ると逃げるように話をそらされたり、どこかに行ってしまったりする。
みんなで遊んだ話はたくさんしてくれるのに、なんだか腑に落ちない。
このことを中学の時の友達に相談したら、「その子、麗良のこと好きだったりして~!」とからかわれた。
「え!?そんなわけないでしょ」
「いやいや、だってさ?麗良のこと好きじゃなかったら、他の子の話なんて普通にするじゃん?でもしたがらないってことは、麗良に他の子のこと考えてほしくないってことだよ~!」
そう言われれば、そんな気もしてきて…。
「麗良って、無意識に女子に優しくする癖あるからさ~」
あれだけ彼女が篠田さんのことを気にしていたのも、ウチが篠田さんを好きだったんじゃなく、篠田さんがウチを好きだったのなら辻褄が合う気がする。
そうか…。篠田さんはウチのことが…。
次に篠田さんに会った時、なんとなく気まずかった。
べつに篠田さんに勘違いさせるつもりはなかったけど、無意識に優しく接してしまっていたのかもしれない。
そう思って、挨拶程度の会話で済ませたら、彼女から話しかけられ、確信めいたものを感じてしまった。
サッカーをやめて、長く付き合った恋人とも別れ、彼女がいるから卓球部にも行きづらくなっていたところに舞い込んできたこの話に、浮かれた。
高校では両角さんが圧倒的人気で、ウチは中学の時ほどチヤホヤされなくなっていた。
サッカーをやめたことも原因だったと思う。
彼女がいたから特になんとも思わなかったけど、いざ別れると寂しかった。
圧倒的に人気者な両角さんのそばにいながら、両角さんではなく、ウチが選ばれたことに、優越感を抱く。
それからウチは積極的に篠田さんに話しかけるようにして、なるべく両角さんや佐藤さんの話は出さないように心がけた。
授業終わりに家まで送った時なんか、彼女にすごく喜ばれた。
“もうこれは、告白されるまで秒読みだな”と思っていたら、予備校に佐藤さんが来た。
篠田さんが佐藤さんの腕を引っ張り、佐藤さんは他の子の腕を引っ張っていた。
意味がわからず、頭がパニックを起こし、呆然と彼女達を見た。
佐藤さんは相変わらず美しくて、良い香りがして、ドキドキした。
「あ!高野さんだ!…千陽、桜ちゃん、私の友達」
「こんにちは…」
桜と呼ばれた子が会釈するから、ウチも頭を下げる。
つい、佐藤さんに目を遣る。
急展開に全く思考が追いつかない。
初めて目が合って、息をするのも忘れる。
「ほら、千陽、ちゃんと挨拶しなさい!」
「ハァ」と佐藤さんがため息をつく。
「よろしく」
その澄んだ声で、ぶっ倒れそうになった。
「よ、よろしく…」
なんとか答えたけど、その後の篠田さんの会話は全く頭に入ってこなかった。
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