いたずらはため息と共に

常森 楽

文字の大きさ
548 / 595
8.閑話

63.永那 中3 夏《如月梓編》

しおりを挟む
それからのことは、あんまり覚えていない。
何度かイって、最後に「手、洗ってくる」と永那が部屋を出たところで、意識がなくなった。
眠かったわけじゃなかったと思うけど、緊張の糸が緩んだのと体力の消耗とで眠ってしまった。
ハッと目を覚ますと、永那が隣で寝ていて、言葉にならない声を発した。
自分は服を着ていないし、こんな状況…恋愛漫画の世界じゃん…!
これが大人だったら、お酒で酔っ払った勢いで…って感じになるのかな?
私達はべつに酔っ払っていたわけじゃないけど。

そっと永那の頬に触れてみる。
綺麗な白い肌。
長い睫毛。
サラサラの髪。
筋の通った鼻。
「綺麗だな…」
私もこんな顔に生まれてみたかった。
前世でどんな徳を積んでいたら、こんな顔に生まれてこられるんだろう?
こんなに綺麗だったら、私でもモテモテになるのかな?
相手、選びたい放題だよね。羨ましい。
だからこそ、付き合わなくてもセフレがたくさん作れるんだろうし。
…でも、同じ“綺麗”でも、永那の隣にいた千陽には魅力を感じなかった。
永那が中性的で、千陽が見るからに可愛い女子だから?

そういえば、お兄ちゃんが「結局、素直でいつもニコニコ笑ってる子が可愛いんだよ!世の中、ツンデレ好きが多いけど、俺は圧倒的に素直推しだ!」とかなんとか、言ってた気がする。
「美人は3日で飽きるって言うだろ?素直でニコニコ笑ってる子は一緒にいて楽しいし、飽きない。冷たい美人より、愛嬌のある子に限る!だからお前も、愛嬌のある素直な人間であるべきなんだよ!わかった?」と、持論を捲し立てられた。
その時は意味がわからなかったけど、永那の素直さが人を魅了するのかな。
こんなに話しやすくて、優しくて、綺麗だったら、無敵なんじゃないの?

ゆっくり近づいて、彼女の唇に唇を重ねてみる。
自分の鼻息が荒いし、その息が震えてるのがわかる。
離れて永那を見ていると、彼女の睫毛が静かに上がった。
鼓動がどんどん速くなっていく。
フフッと彼女が笑う。
「キスした?」
「…し、ました。ごめんなさい」
「謝ることないよ」
彼女が起き上がって、目元を擦った。
「寝ちゃった」
「おはよ」
「おはよ」
“んーっ”と伸びをして、永那が時計を見る。
「お腹すいちゃった」
「お昼、食べる?…カップラーメンくらいしか出せないけど」
「ラーメン!食べる!」

「永那はさ」
「ん?」
「どんな子がタイプなの?」
ラーメンが出来上がるまでの間、2人で並んで座っていた。
「んー?難しい質問だな」
「そう?色んな人と話すなら、“この人良いな”みたいなの、少しはないの?」
「みんなに“良いな”って思うよ?」
「え~…チャラいなー…」
「クズだからね」
永那がニヤリと笑う。
私は、ふぅっと息を吐き出す。
「じゃあ、私の良いところを挙げてください」
「素直なところ」
「わ、私って素直?」
「うん。ストーカーした理由聞いた時、ちゃんと答えてくれた。紬と喧嘩した時も、ちゃんと自分の意見言ってた」
「それは…言わざるを得ないような状況で…」
「セックスの時も、ちゃんと全部答えてくれたし、少しも抵抗しなかった」
ボッと顔が熱くなる。
「初めてだと、やっぱ恥ずかしがって“見せたくない”ってなる子もいるからさ?…まあ、それはそれで可愛いんだけど」
「どっちでもいいのね」
「そうなりますね」

ラーメンを啜る。
「今、セフレって何人いるの?」
「んー…主に3人…かな?」
「3人…すごいな…」
「ちなみにその内の1人が梓だよ?」
「え!?今日、初めてなのに?」
「これからも、するでしょ?」
うぅ…。
もっと顔が熱くなるから、俯く。
「それとも、嫌?」
「嫌じゃないです…!永那のセフレに、なってやりますよ!」
「やったー」
やっぱり、クズだ。
「永那は」
「ん?」
「永那は、その…セ、セックスしても、気持ちいいわけじゃないでしょ?」
「あー…」
「その…してくれる側なんだし…ただ、手を使ってるだけでしょ?」
「まあ、そうだね」
「なのに、シたいの?」
「うん」
「なんで?」
「女の子が気持ち良さそうにしてる姿を見るのが好きだから」
「見るだけで、満足するの?」
「うん」
「どういう仕組み?」
「え!?仕組み!?」
永那がケラケラと笑い出す。

「ん~?考えたこと、なかったな。…一応、私がシてもらう時もあるんだよ?」
「そうなんだ…」
私も、シてあげる日がくるのかな…?
想像してみるけど、上手く出来る自信が全くない。
「なんだろうな」
「ん?」
「仕組み。見てるだけでも満足できる仕組みだよ」
「あ…うん」
永那がカップラーメンをほとんど食べ終えて、残った麺を汁の中から探す。
「仕組みを知るためには、やっぱ、もっと経験積まないとな」
「えー…もういいんじゃない?」
「そうかな?」
「そうだと思うよ?」
「とりあえず先輩、同級生、後輩とはヤったから、今度は大人とシてみたいな」
「犯罪だからやめなさい」
「え?犯罪?」
「相手が犯罪者になるよ」
「同性でも?」
「同性でも!」
「梓って頭良いんだね…」
「成績はすこぶる悪いのですが、皮肉ですか?」
「ホントに!ホントにそう思うって!」
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...