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第五章・運命の歯車が動き出す。7

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『……母上にはすまないとは思っているが、仕方がない事だ。
 下手にこの事を知られたら聖皇庁はどんな手を使ってでも母上の出産を妨害しただろう。現にスパイをこの屋敷の送り込んだぐらいだからな」
「えっ? スパイを!?」
『偽聖女が送り込んだスパイだ。メイドとして潜り込み『虹色のダイヤ』を盗み、刺客に渡し母上に濡れ衣を着せた』
「えっ!? じゃあ『虹色のダイヤ』が無くなった原因はメイドが⁉」
 道理で刺客に指輪に渡った訳だ。不思議には思っていた。
 屋敷の周りには警備をする護衛騎士は居るのに、どうやって盗み出したのか。外からの盗みに入ったのなら誰かに気づかれるはずだし。
 護衛を欺くような凄腕のプロか……またまた内部の犯行か。でも内部だとは思いたくはなかった。この屋敷で働く使用人達は私を気遣ってくれる優しい人達ばかりだったから。だから、それ以上考えないようにしていたのに……。
 しかし、その思いは見事に裏切られてしまった。
 ショックで胸が締め付けられそうになる。どうして、こんな事を?
『あの女は偽聖女の崇拝している信者。偽聖女に情報を流したり、指輪を盗み犯人に仕立て上げようとした。向こうは、ある程度利用した後、始末するみたいだったが。大事な証人だ。今はそうなる前に上手く誘導させ身を隠させている。洗いざらい聞いたから間違いはない。犯行を認めた。君に言わなかったのは向こうを油断させるためだったんだ』
 メイドの裏切りもショックだが、また濡れ衣を着せられるとは思ってもみなかった。
 レイナ様はそこまでして私の事を排除したいの!?
『言っただろう? 母上……いや、サファード一族の能力は聖皇庁を脅かすほど大きいと。だが、その女もあの偽聖女の『魅了』に支配されていたに過ぎない。元はと言えば、聖皇庁が偽聖女を利用して国を乗っ取るための計画だ。そのためにはサファード一族の能力が邪魔だったので消そうとしたのだろう』
 神を信仰している教団が、そんな恐ろしい事を企ていたとは……。
 しかも、その計画にはサファード一族を陥れる計画があったなんて。
 私はその言葉に恐怖を抱き、身震いする。
『だが、しかし心配をする必要はない。計画など私からしたら筒抜けだ。それに、証拠もすでにいくつか集めてある。あの者達に制裁を下すのも時間の問題だろう。そのために、今は早く大きくなりマナを溜めないとならないがな』
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