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第三章・二人の距離感。11

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「大丈夫よ……これぐらい。アザや怪我なんて剣道で慣れているわ」
「けんどう……ですか?」
 心配して着いてきたアミーナとエレンは不思議そうに首を傾げる。おっと……いけない。この世界では私は剣道なんてやったことが無かったんだったわ。
 何でもないと言っていると、ロンが歩いているのが見えた。
「あ、ロンだわ⁉」
 ロンなら今陛下が何処に居るのか知っているはず。私は、よろよろと横っ腹を押さえながら向かった。
「ロン。陛下は何処に居るのか知らない?」
「ユリア様。お身体大丈夫ですか? 陛下なら今お風呂に入られています。今着替えを持って行こうかと思いまして」
 お、お風呂。私はどうするか迷ってしまう。
 謝りに行くつもりだったけどお風呂に入っているとなると。でも、タイミング的に早く謝らないと、また変な意地を張って謝れなくなってしまうわ。
「ユリア様?」
「身体は大丈夫。それより、それ私が持って行ってもいいかしら? 私もお風呂に入りたいと思っていたから」
 無理やりな言い訳を考える。うぅ……自分で言うのが恥ずかしい。すると何かを感じたのかロン私に着替えの服を渡してくれた。
「では、よろしくお願い致します。二人共、後の事はよろしくお願いしますね」
「はい」
 ロンはアミーナとエレンに後の事を託した。そして頭を下げると立ち去って行く。
 私は着替えの服を覗き込む。自分から行くと言ってしまった。
 今までの私なら有りえないことだ。それには自分でも驚いてしまった。
 あぁ仕方がない……そう仕方がないのよ。
 混乱する自分に何度も言い聞かしながら私は、そのまま浴室の方に向かうことに。
 浴室の方に行くと確かに陛下が入浴していた。着ていた服が脱ぎ捨ててある。
 何だか意識すると余計に恥ずかしくなってくる。私は戸惑いながらも着替えの服を棚に入れるとアミーナ達に手伝ってもらいながらドレスを脱いだ。
 バスタオルで身体を隠すと恐る恐る浴室に入っていく。いつ入っても豪華で広い。
 しばらく歩くと、陛下が湯船に浸かっている姿が見えてきた。湯気で少し見にくいが、よく見ると落ち込んでいるようだった。
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