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第一話
しおりを挟む中学の時、俺は捨て猫を拾った。思っていたよりすごく懐いてめちゃくちゃ可愛かった。
ーはずなのに、高校で再会した猫は、身長も伸びてただただイケメンになっていた。
そして涼くん涼くんとついてくる従順なあいつはもういなくて、悪態をついてぶっきらぼうなツンケン猫になっていた。
それは大学に入ってもなかなか変わらなかった。
あいつはつんけんするくせに遊びに誘ってきたりして本当によくわからんやつだった。ただ、少し子供扱いをするとほっぺを膨らませて拗ねる姿だけは昔から変わらず可愛かった。
あいつと会わなくなって5回目の誕生日がやってこようとしている。
12月に入ると街がキラキラしだして、クリスマスがやってくる。
心なしか街ゆく人びともキラキラして少し浮かれている様子になる。ただクリスマスが過ぎると一気に年末、お正月モードで息つく間もなく年が明ける。
これは毎年思うことだけれど、クリスマスからのお正月への切り替え様は感心さえ覚えるほどガラッと変わるのが面白い。世間がそんな頃、俺はもう春に出す広告のことを考えていて、そうしている合間にまた一つ歳をとった。
今年で28歳、まだまだ若いはずなのにマネージャーという肩書きのせいなのか最近の若者らしいキラキラ感はとっくにない。
エスカレーター式の大学の商学部を卒業して俺は大手広告会社に就職した。
俺にはデザインセンスはまるでないけど、友人で仲良しの佑くんのようなデザイナーが言葉で伝えきれない部分を伝えられるよう支えたいと思ってこの会社の営業として入った。
幸い、大学で学んだことが生かされ社内ではまあまあ活躍し、5年という早さでチームマネージャーになった。
俺のチームでは主にコスメ商品の広告を扱うことが多く、俺が顔を出すと女性タレントの機嫌がいいから。だそうだ。自慢じゃないが、多少顔が整っていることもあって、中高大学とそれなりにモテてきた。
まあタレントは俺らにとって商品だから、手を出したりはない。時々そういうクズもいる様だけど。
「マネージャー、ミーティングお願いします。」
週に1度、チーム全員が集まって今週一週間の仕事とプロジェクトの進捗を確認する。今日は以前からお世話になっているコスメブランドから広告モデルを変えて、ブランドイメージを一新するという依頼。
「男?」
「はい!次は男性モデルがいいんじゃないかと!女の子がメイクするのって結局は好きな人とか恋人にかわいいって言ってもらいたいからだったりするじゃないですか!だから今回はその男性目線、的なコンセプトにしてみてもいいんじゃないかと思ったんですけど、、、いかがでしょうか?」
「….なるほどね。ん~たしかに最近パターン化もマンネリしててのイメージキャラクター替えだしそれくらいインパクトとあるといいかもな………うんじゃあそれで。候補もういるの?」
「私このブランドの男性キャラクターなら絶対この人っていうのが…………!こ、こちらの資料……」
「いいよ、じゃあ、その人で。」
「え?!いいんですか?!」
「お前がそこまでいうならぴったりなんだろ。俺来週出張だし会える時間ないから。加藤の了承得たらそれでいいよ。スケジュールの調整とギャラの確認はクライアントによろしく。」
「……はい!ありがとうございます!!私がんばります!」
「おう、期待してるよ~。以上、会議終わり」
会議室を後にした後、遠くの方で新人たちがキャッキャする声が聞こえた。
“ひゃ~櫻井MGに褒められちゃった~!““え!?やば!いいなぁ!!、きゃっきゃっ“こういう声は悪い気はしない。
「っしゃあとは帰ってビール開けるだけ~♪」
「ちょっと。」
「ん?おー加藤。」
加藤は大学からの同級生で新卒でこの会社に一緒に入社した同期でもある。俺の学生時代からのあれこれも当然知っている。
「あの子あんな喜んじゃって……ただ予定の時間過ぎてて巻いただけって知ったら傷つくわよ?」
「そ、そんないい加減な理由じゃないもんね?!」
「いい歳した男がもんとか言っても可愛くないけど。」
「ん~~~まぁ、あれであの子もやる気出て俺も早く帰れて一石二鳥ってことで!あとはよろしく。」
「よろしくってちょっと鏑木!!」
「お前のことはまじで信用してるから。な?ニヤ」
「~~~~~っ////まじでその顔でそういうこと言うのやめて!」
加藤は俺の顔だけがどうもタイプらしい。
「じゃーな、おつかれ~。」
「初日の撮影には来なさいよ!!」
いまだに俺は絶対にマネージャーの器じゃない。どちらかというと、加藤の方が向いていると思うが、マネージャーになって良かったことは直接的な上司がいなくなったので、あまり残業をせずに済むようになった。だから早く上がれた日には必ず寄るところがある。カランカラン~…
「こんばん、は!」
「お、涼くん。いらっしゃい。ろーきも来てるよ。」
「やっほ涼ちゃん!」
この時の俺はまだまた再会することになるなんて思いもしなかった。
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