ステッドファスト ー恋に一途な僕らの再会ー

ブンダバー

文字の大きさ
2 / 3

第一話

しおりを挟む

中学の時、俺は捨て猫を拾った。思っていたよりすごく懐いてめちゃくちゃ可愛かった。

ーはずなのに、高校で再会した猫は、身長も伸びてただただイケメンになっていた。
そして涼くん涼くんとついてくる従順なあいつはもういなくて、悪態をついてぶっきらぼうなツンケン猫になっていた。
 それは大学に入ってもなかなか変わらなかった。
あいつはつんけんするくせに遊びに誘ってきたりして本当によくわからんやつだった。ただ、少し子供扱いをするとほっぺを膨らませて拗ねる姿だけは昔から変わらず可愛かった。

 あいつと会わなくなって5回目の誕生日がやってこようとしている。 

 12月に入ると街がキラキラしだして、クリスマスがやってくる。
心なしか街ゆく人びともキラキラして少し浮かれている様子になる。ただクリスマスが過ぎると一気に年末、お正月モードで息つく間もなく年が明ける。
 これは毎年思うことだけれど、クリスマスからのお正月への切り替え様は感心さえ覚えるほどガラッと変わるのが面白い。世間がそんな頃、俺はもう春に出す広告のことを考えていて、そうしている合間にまた一つ歳をとった。
今年で28歳、まだまだ若いはずなのにマネージャーという肩書きのせいなのか最近の若者らしいキラキラ感はとっくにない。
 
エスカレーター式の大学の商学部を卒業して俺は大手広告会社に就職した。
俺にはデザインセンスはまるでないけど、友人で仲良しの佑くんのようなデザイナーが言葉で伝えきれない部分を伝えられるよう支えたいと思ってこの会社の営業として入った。
幸い、大学で学んだことが生かされ社内ではまあまあ活躍し、5年という早さでチームマネージャーになった。
俺のチームでは主にコスメ商品の広告を扱うことが多く、俺が顔を出すと女性タレントの機嫌がいいから。だそうだ。自慢じゃないが、多少顔が整っていることもあって、中高大学とそれなりにモテてきた。
まあタレントは俺らにとって商品だから、手を出したりはない。時々そういうクズもいる様だけど。

「マネージャー、ミーティングお願いします。」

週に1度、チーム全員が集まって今週一週間の仕事とプロジェクトの進捗を確認する。今日は以前からお世話になっているコスメブランドから広告モデルを変えて、ブランドイメージを一新するという依頼。

「男?」

「はい!次は男性モデルがいいんじゃないかと!女の子がメイクするのって結局は好きな人とか恋人にかわいいって言ってもらいたいからだったりするじゃないですか!だから今回はその男性目線、的なコンセプトにしてみてもいいんじゃないかと思ったんですけど、、、いかがでしょうか?」
「….なるほどね。ん~たしかに最近パターン化もマンネリしててのイメージキャラクター替えだしそれくらいインパクトとあるといいかもな………うんじゃあそれで。候補もういるの?」
「私このブランドの男性キャラクターなら絶対この人っていうのが…………!こ、こちらの資料……」
「いいよ、じゃあ、その人で。」
「え?!いいんですか?!」
「お前がそこまでいうならぴったりなんだろ。俺来週出張だし会える時間ないから。加藤の了承得たらそれでいいよ。スケジュールの調整とギャラの確認はクライアントによろしく。」
「……はい!ありがとうございます!!私がんばります!」
「おう、期待してるよ~。以上、会議終わり」

会議室を後にした後、遠くの方で新人たちがキャッキャする声が聞こえた。
“ひゃ~櫻井MGに褒められちゃった~!““え!?やば!いいなぁ!!、きゃっきゃっ“こういう声は悪い気はしない。
「っしゃあとは帰ってビール開けるだけ~♪」
「ちょっと。」
「ん?おー加藤。」

 加藤は大学からの同級生で新卒でこの会社に一緒に入社した同期でもある。俺の学生時代からのあれこれも当然知っている。

「あの子あんな喜んじゃって……ただ予定の時間過ぎてて巻いただけって知ったら傷つくわよ?」
「そ、そんないい加減な理由じゃないもんね?!」
「いい歳した男がもんとか言っても可愛くないけど。」
「ん~~~まぁ、あれであの子もやる気出て俺も早く帰れて一石二鳥ってことで!あとはよろしく。」
「よろしくってちょっと鏑木!!」
「お前のことはまじで信用してるから。な?ニヤ」
「~~~~~っ////まじでその顔でそういうこと言うのやめて!」

 加藤は俺の顔だけがどうもタイプらしい。

「じゃーな、おつかれ~。」
「初日の撮影には来なさいよ!!」
 いまだに俺は絶対にマネージャーの器じゃない。どちらかというと、加藤の方が向いていると思うが、マネージャーになって良かったことは直接的な上司がいなくなったので、あまり残業をせずに済むようになった。だから早く上がれた日には必ず寄るところがある。カランカラン~…
「こんばん、は!」
「お、涼くん。いらっしゃい。ろーきも来てるよ。」
「やっほ涼ちゃん!」
 
この時の俺はまだまた再会することになるなんて思いもしなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...