最愛はすぐ側に

なめめ

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夫婦と佐野旭

夫婦と佐野旭①

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園の中庭に水の入ったビニールプール入れて、様々な色のヨーヨー風船をキットで作っては中へと浮かべる。所謂ヨーヨー釣りというやつだ。小学生のときは地元のお祭りで友達とよく遊びに行っていた時のことを思い出す。

 那月がこのような道具をどこから仕入れたのかも、イメージからは結びつかない、白地のタオルを頭に巻く彼の姿も不思議でならなかったが、笑顔で子供に釣り糸を渡している姿に親近感を覚えた。

「ねーね、お兄ちゃん。僕、赤のヨーヨー欲しい」
「分かったよー。今作るから待っててね」

 遊びに来ていた男の子に強請られて笑顔で応える那月からは、普段の自分勝手で少しだけ口の悪さが伺える姿は見受けられない。

 単純に気持ちの切り替えなのか、はたまたこれが那月の本心なのかは分からないが、渉太に対する突っつきにくさはなくなっていた。

「あの、那月くん。那月くんってお祭りとか好きなの?なんかずっと楽しそうだったから……」

 釣りに来る子供たちが途切れ、テントの真下のパイプ椅子に座り飲料水を飲んでいる那月に隣で座っていた渉太が話し掛ける。

那月はペットボトルから口を離すと、此方を睨みつけてきた。何度見ても表舞台に居る彼と自分に接してくる那月の違いにギョっとさせられる。

「ああ、嫌いじゃない」

 一瞬だけ渉太の顔を見た後で、ペットボトルの口を眺めながら呟く。

「先輩。ああ、嫌いじゃない……。ってクールぶって言ってるけど小さい頃の遼人、私の何倍もはしゃいでたんですよ」

 そんな那月の横で他の出店で出していた青いシロップのかき氷を食べながら星杏さんがクスクスと笑っていた。

「星杏、余計なこと言うな」
「だって事実じゃん。好きすぎて番組の使い古しのビニールプールを貰ってきてまで露店開いてるくせに。職権乱用」
「うっぜ……。お前ならわかるだろ、俺達の育った場所だから、少しでも貢献したかったからやってるんだろ。お前だってかき氷食って、園内廻って楽しんでんじゃん。少しは此奴見習って手伝えよ」

 耳朶を真っ赤にしながら、照れ隠しのように立ち上がった那月は星杏さんのかき氷に被りついた。「あ、ちょっとー」と言って頬を膨らませて怒る星杏さんと那月くんは仲の良い兄妹、そのものの姿で微笑ましかった。

「遼人くん、星杏ちゃん」
 
そんな兄妹の口喧嘩を遠巻きで眺めていると口元に白髪交じりの髪型の男性と目尻に皺のある女性が二人に話し掛けてきた。

「久しぶりだね、元気だったかい?近くまで来たから家内と寄ってみたんだ」

 雰囲気から温厚そうな夫婦。しかし那月の表情は老夫婦を見るなり、緩んでいた口元が固く結ばれた。

「どうも……」

 那月は頭に巻いていたタオルを僅かに引っ張って、頭から外すと深々と立ち上がって会釈をする。星杏さんも先程まで茶化していた様子から、スッと笑みが消えると夫婦に向かってお辞儀をしていた。
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