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触れられない心
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初めての理人さんとの行為は今まで以上に幸せな気分だった。男の人でイける自分に驚いたが、何より、理人さんが自分のモノで感じている姿が芸術品のように綺麗で脳が震えるほど、徹史を虜にさせていた。
しばらく余韻に浸る徹史の一方で理人さんは終わった瞬間にベッドから降りると裸のままソファに足を広げて座り、一服を始める。
事後は身を寄せ合ってイチャイチャするものだと信じて疑わなかった徹史にとって彼の行動は少し寂しく感じた。
しかし、世の中には事後は淡泊になる人だっていると耳にするし、致し方ないのかもしれない。まだ正式に交際を申し込んだわけではないけれど、身体から関係が始まることもある話だし、期待をしていいんだろうか。
徹史は理人さんの姿を目で追いながらベッドから起き上がる。煙草の煙をくゆらせて物思いにふける彼の姿にドキッとさせられながらも、徹史の頭の中は今後のことでいっぱいだった。
「あの……。理人さん、俺達って……。その……」
「あーそうだ。連絡先教えてよ?」
「はいっ」
徹史が本題を切り出そうとしたのと同時に、理人さんがスマホを手にして左右に振ってきたので、大きくうなずいた。
彼の気が変わらぬうちに急いで鞄からスマホを取り出すと理人さんの座るソファの隣に正座をした。お互いのQRコードを読み取って連絡先を登録する。
「連絡してダメな時とかある?」
「いいえ、特にないです。できれば毎日……。いや、理人さんはありますか?」
できれば毎日したいと提案しようとして言葉を呑み込んだ。それはきっと世間で言う『重たい男』の典型的な行動のような気がしたからだ。
理人さんは恋愛関係においてかなり淡泊そうだし、ここは自分も大人になって相手のペースに合わせることが必要な気がした。
「ないけど、あまり私情に踏み込んでほしくないから誘いのメッセージ以外送ってこないで」
「はい……」
誘いの連絡以外してくるなということは、恋人特有のイチャイチャメッセージも禁止ということだろうか。
せめて週一くらいはやり取りを通して、彼の好きなものとか彼のことをもっと知りたかったがそれも禁止なのだろうか。
「あと、仕事の繁忙期は俺からするとき以外は時間作れないときがあるけど」
想像以上に淡々としている彼を見て、本当に付き合っている方向で合っているのだろうかと不安になる。今までの恋愛遍歴が当てにならないほど、この人との距離感が難しそうで雲行きが怪しい。
「だったら、そういうときは週一くらいで理人さんに連絡するのはアリですか?会えないときはメールで交流を深めたいというか……」
少しでも恋人同士なのだからと思い、せめてもの妥協案を出してみたが理人さんは煙草の灰を灰皿に落とすと天井を仰いでカッカッと笑い始めた。
「なんで?何のために?そんな恋人みたいなこと、ないない」
冗談で言ったつもりはない。
眉を下げて小馬鹿にしたように笑う理人さんにムッとしながらも、彼の言葉に高揚していた心が急降下していく。
「恋人みたいって……。俺たちってそういう関係になったんじゃ……」
身体を重ねたのなら心を重ねたのも同然だと思っていた。
「はあ?たった一回ヤッただけで?俺は君とはセフレのつもりでやっていきたいと思っているんだけど、それとも嫌だった?なら無理強いはしないけど。俺さ、恋人は作らないし、執着もないから、割り切った関係でいてくれると助かるんだけど。なんなら君も適当に遊んでくれていいよ。君もノンケならたまに女も抱きたくなるでしょ?暇つぶしだと思って、彼女出来たら適当に切ってくれて構わないから」
徹史の方など一切目をくれずに、スマホを眺めながら事務的に話を進めてくる。
ほぼ初対面だから気持ちを推し量ってくれとまでは言わないが、勝手に不貞を働くような男だと思われるのは、心外だった。
「セフレの方が……俺も助かります。わかりました……」
徹史は腿の上で拳を握ると息を飲み込んで頭を垂れる。内心では反論したくても、言葉にすれば直ぐにでもこの人に見切りをつけられてしまいそうで、今ここで本当の気持ちを告白することは出来なかった。
「そう、じゃあ。これからも宜しく」
理人さんは煙草を咥えたまま、微笑んでくると灰皿に押しつけて浴室へと入って行ってしまった。
シャワーの音が虚しく響く部屋。
自分の気持ちが相手に通じていたわけではなかった。
理人さんは欲を満たす相手としか見てくれていなかった事実に落胆する。
絶望的な始まりだけど、出会う前のようなただ遠くで眺めるだけの赤の他人に戻ってしまうよりはマシだと思いたかった。
やっと繋がった関係を自ら断ち切ることはしたくない。
この関係を続けていたらいずれ、理人さんの氷のように冷たい心を溶かすことができるだろうか。欲求の対象としてじゃなくて、栗山徹史として、一人の人として、恋愛感情を抱いて求めてくれる日が来ないだろうか。
希望が見えない訳じゃない。
どうしても、理人さんを手に入れたい。
理人さんが欲しい……。
こんなに欲しいと思えたのは理人さんが初めてだった。
しばらく余韻に浸る徹史の一方で理人さんは終わった瞬間にベッドから降りると裸のままソファに足を広げて座り、一服を始める。
事後は身を寄せ合ってイチャイチャするものだと信じて疑わなかった徹史にとって彼の行動は少し寂しく感じた。
しかし、世の中には事後は淡泊になる人だっていると耳にするし、致し方ないのかもしれない。まだ正式に交際を申し込んだわけではないけれど、身体から関係が始まることもある話だし、期待をしていいんだろうか。
徹史は理人さんの姿を目で追いながらベッドから起き上がる。煙草の煙をくゆらせて物思いにふける彼の姿にドキッとさせられながらも、徹史の頭の中は今後のことでいっぱいだった。
「あの……。理人さん、俺達って……。その……」
「あーそうだ。連絡先教えてよ?」
「はいっ」
徹史が本題を切り出そうとしたのと同時に、理人さんがスマホを手にして左右に振ってきたので、大きくうなずいた。
彼の気が変わらぬうちに急いで鞄からスマホを取り出すと理人さんの座るソファの隣に正座をした。お互いのQRコードを読み取って連絡先を登録する。
「連絡してダメな時とかある?」
「いいえ、特にないです。できれば毎日……。いや、理人さんはありますか?」
できれば毎日したいと提案しようとして言葉を呑み込んだ。それはきっと世間で言う『重たい男』の典型的な行動のような気がしたからだ。
理人さんは恋愛関係においてかなり淡泊そうだし、ここは自分も大人になって相手のペースに合わせることが必要な気がした。
「ないけど、あまり私情に踏み込んでほしくないから誘いのメッセージ以外送ってこないで」
「はい……」
誘いの連絡以外してくるなということは、恋人特有のイチャイチャメッセージも禁止ということだろうか。
せめて週一くらいはやり取りを通して、彼の好きなものとか彼のことをもっと知りたかったがそれも禁止なのだろうか。
「あと、仕事の繁忙期は俺からするとき以外は時間作れないときがあるけど」
想像以上に淡々としている彼を見て、本当に付き合っている方向で合っているのだろうかと不安になる。今までの恋愛遍歴が当てにならないほど、この人との距離感が難しそうで雲行きが怪しい。
「だったら、そういうときは週一くらいで理人さんに連絡するのはアリですか?会えないときはメールで交流を深めたいというか……」
少しでも恋人同士なのだからと思い、せめてもの妥協案を出してみたが理人さんは煙草の灰を灰皿に落とすと天井を仰いでカッカッと笑い始めた。
「なんで?何のために?そんな恋人みたいなこと、ないない」
冗談で言ったつもりはない。
眉を下げて小馬鹿にしたように笑う理人さんにムッとしながらも、彼の言葉に高揚していた心が急降下していく。
「恋人みたいって……。俺たちってそういう関係になったんじゃ……」
身体を重ねたのなら心を重ねたのも同然だと思っていた。
「はあ?たった一回ヤッただけで?俺は君とはセフレのつもりでやっていきたいと思っているんだけど、それとも嫌だった?なら無理強いはしないけど。俺さ、恋人は作らないし、執着もないから、割り切った関係でいてくれると助かるんだけど。なんなら君も適当に遊んでくれていいよ。君もノンケならたまに女も抱きたくなるでしょ?暇つぶしだと思って、彼女出来たら適当に切ってくれて構わないから」
徹史の方など一切目をくれずに、スマホを眺めながら事務的に話を進めてくる。
ほぼ初対面だから気持ちを推し量ってくれとまでは言わないが、勝手に不貞を働くような男だと思われるのは、心外だった。
「セフレの方が……俺も助かります。わかりました……」
徹史は腿の上で拳を握ると息を飲み込んで頭を垂れる。内心では反論したくても、言葉にすれば直ぐにでもこの人に見切りをつけられてしまいそうで、今ここで本当の気持ちを告白することは出来なかった。
「そう、じゃあ。これからも宜しく」
理人さんは煙草を咥えたまま、微笑んでくると灰皿に押しつけて浴室へと入って行ってしまった。
シャワーの音が虚しく響く部屋。
自分の気持ちが相手に通じていたわけではなかった。
理人さんは欲を満たす相手としか見てくれていなかった事実に落胆する。
絶望的な始まりだけど、出会う前のようなただ遠くで眺めるだけの赤の他人に戻ってしまうよりはマシだと思いたかった。
やっと繋がった関係を自ら断ち切ることはしたくない。
この関係を続けていたらいずれ、理人さんの氷のように冷たい心を溶かすことができるだろうか。欲求の対象としてじゃなくて、栗山徹史として、一人の人として、恋愛感情を抱いて求めてくれる日が来ないだろうか。
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どうしても、理人さんを手に入れたい。
理人さんが欲しい……。
こんなに欲しいと思えたのは理人さんが初めてだった。
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