憧れはすぐ側に

なめめ

文字の大きさ
24 / 286
あの人のこと

5-2

しおりを挟む
そんな憂わしげな先輩を前にして本当は先輩に彼女がいた事がショックでヤケになっていたとは口が裂けても言えない。

「大丈夫です。あの時はただ自分が羽目外しちゃっただけなんで」

当たり障りのない言葉を選んで誤魔化すと
先輩は「そうか?」と半ば疑心した反応を見せては渉太は冷や汗をかきながらも「そうです」と強く言い放った。頑なな渉太を見てか「渉太は真面目そうだから羽目外すことあるんだなー」と納得してくれたようだった。

やっぱり律仁さんは大樹先輩が好きなことを本人に話していないのだろうか。
はたまた、大樹先輩は優しいから敢えて触れないで居てくれているのかもしれない·····。
だとしても大樹先輩の普段と変わらない態度から先程の逃げたい程の緊張や不安は渉太の中から無くなっていた。

「そういえば、あの後律仁が送ってくれたんだろ?大丈夫だったか?本当は誘った俺が渉太を送ってあげるべきだったんだけど、すまんな」

「大丈夫です。なんか俺が酔っ払ってて動けないからホテルに泊まらせてくれたみたいで、助かりました」

「そうか。律仁、渉太のこと気に入ってたみたいだったもんなー」
「えっ·····?」

気に入っていた·····?
優しいかと思えば人の心引っ掻き回して笑っていたあの人が·····?渉太には、ただ自分が友達のこと好きだから面白がっていたようにしか見えなかった。居酒屋時だって字がどうのだとかよく分からないことを喋っていた。

そう言えば結局あのノートは千切らずに放置をしたままであったことを思い出した。
帰ったら破いて捨ててしまおうか·····。

「そんなことないです。ただ輪の中に外れてた俺が面白かっただけだと思うんで」

「んー律仁、初対面のやつにあそこまでしないんだよなー。軽率な奴じゃないし。でも、ちょっと分かるんだよな。渉太ってさ、どっちかと言うと人に寄り付かないタイプだろ?それでいてなんか手懐けたくなる。動物で例えるなら猫みたいな?って失礼だよな。でも、庇ってやりたくなるんだよな」

律仁さんが自分を気に入ってるか軽率な人か人じゃないかより、渉太の中では今、好きな人から庇ってやりたくなるなんて言葉が出てくるとは思わず、動揺をしていた。顔から火が出るくらいに熱くなる。

大樹先輩の言葉から少しの可能性をも探してしまう自分が卑しい。彼女がいるって分かっているのに好意を寄せることを止められない自分がいた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

処理中です...