憧れはすぐ側に

なめめ

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律仁さんの本気

11-2

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片付けをしていたのであろう、天体望遠鏡のケースを肩から提げては此方へと向かってくる。

先輩とは何十分前の事があるせいか、渉太は顔を合わせるのが少し気まずかった。
何よりまた泣きっ面を見られて下手に心配させたくない·····。

かといって不自然に避けるのもおかしい気がして、気持ち数歩だけ律仁さんの後ろに隠れるようにして後退った。

「もういい時間だしお開きにしようと思うんだけど」

腕時計の時刻を見ると午前零時を回っていた。大樹先輩の言う通りそろそろいい時間。

「帰りの車、渉太乗るよな?」

本当は先輩も少なからず俺に話しかけることに気まずさは感じている筈だ。
律仁さんは知らないにしても、振った人間と振られた人間に違いない。

それでもサークルの部長だから、何の挙動の変化もなく自分に声を掛けてくれる。
誰が見ても憧れるし、先輩の鏡と言うのが正しいとでも言える人。

渉太は「はい」と頷くと先輩に「じゃあ、車で待っててくれないか。皆いると思うから」
と行きと同じ車に乗るように促される。

正直4、5人いる中に自分一人は居心地は悪いが野宿をする訳にも行かないし、他に選択肢はない。

律仁さんと話しをしたかったが先輩の前で話せるような内容じゃないし、その気になったらまた会えるような気がした。

律仁さんに軽く会釈をして先輩の言った通りに車のある駐車場へ向かおうとした時、
Tシャツの背中当たりを強く引っ張られては大きくがっちりとした右腕に肩ごと抱き寄せられた。

「えっ·····」

人質に取られた人みたいになったが、そんな緊迫した物ではなく。
律仁さんの匂いが鼻孔を通して全身に広がっては、その匂いに反応するようにドキドキしては心拍数が上がる。

「渉太は俺が送ってく」

明らかに大樹先輩に向けた言葉なのに低くて優しい声が耳元に直に響いて逆上せるくらいに顔が熱くなった。

大樹先輩が目の前で驚いたように目と口を大きく開けて俺たち二人を見ていたので我に返る。
渉太は律仁さんの腕を掴んで引き剥がそうと試みるが、がっちり右肩を掴んだまま離れなかった。
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