憧れはすぐ側に

なめめ

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律仁さんと先輩と、藤咲と

30-1

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「すみません、お待たせしました」

渉太は授業終わりに寄り道をせず、大学の正門で停まっている車の助手席に真っ先に乗り込んだ。当然、迎えに来てくれたのは律仁さん。

「いいよ、あんまり待ってないから」
「でも律仁さん、大学の前はバレると大変だから……」

月日が経って薄れているとはいえ、サークルの集まりに律がいた事は今でも噂でちらほらと耳にすることはある。それくらい、律が大学生と関わっていることは大事件だった。
律仁さんは「まぁ、外に出なければ」と苦笑いしているので本人も警戒はしているよう。

これだったらアトリエで待ち合わせの方が無難かと思ったが、あそこもあそこで夕方時は学生がチラホラと勉強で居座っているから考えものだった。

「藤咲くん、あれから元気ですか?」
「んーどうだろう。俺もライブから初めて連絡貰ったからさ。尚弥くん関係者の打ち上げにも来なかったから」

藤咲がドタキャン寸前の事件が起こったライブの日から数週間程して、律仁さんに直接藤咲が「お詫びをしたい」と連絡をしていたらしくて、律仁さんの仕事の都合に合わせて食事をすることになった。

「渉太も一緒に」と言われたので、喜ぶべきなのか躊躇うところだが、渉太の中でまた藤咲と友達として仲良く出来たらなんて微かな期待はあったから同伴することにした。

呼ばれた場所は都内の有名なビルの上階の高級感焼肉店。黒いベストとワイシャツに長めの腰エプロンに綺麗な内装。店員の制服からして、そこらへんの安いランチバイキングのお店と雰囲気からして違う。渉太が普段入り慣れないところなだけに、肝を冷やして身構えている一方で律仁さんは何食わぬ顔で中へと入っていくと店員さんに案内されるのを渉太も親鳥の後を追うよう雛鳥のようについていく。

藤咲の選ぶお店はこうも渉太には毎回敷居が高い。お店に到着する前まで仲良くなりたいなんて思った自分がお門違いのような……。

お店の奥の個室の部屋にたどり着くと、藤咲が既に待っていた。
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