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嫉妬から始まる恋心……
嫉妬から始まる恋心……③
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雛森小春さんは亨の映画同好会の仲間で、亨と同い年。
当然指導係は彼の知り合いということもあってか、亨に任せることになった。
彼女も熱心に仕事を覚えているので、今年のお盆も何とか乗り切れそうだった。
重いバケツを運ぶ時も、小さい体なのに率先してやるものだから危なっかしさはあるけど、亨もそれに気付いて彼女が大変そうだったら直ぐに手伝ってあげていた。図々しい性格でもなく、古き良き大和撫子のような彼女と優しい亨は、傍から見たらお似合いのカップルのように見える。
趣味も同じだからか、時折葵の知らない映画の話をしていたり、僕といる時よりも亨の柔らかい笑顔を見る事が多くなった気がする。
亨が僕から意識が逸れてくれたのは喜ばしいことなのに.......凄く気持ちが晴れないのを敢えて見ないフリをしてやり過ごしていた。
学校が夏休み期間に入り、本格的な繁忙期を迎えた。今日も仏花を買い求めてくるお客さんが殆どで、中には知人の四十九日なので百合と菊中心のアレンジメントを組んで届けたりした。
「若いっていいわねー。小春ちゃん、絶対亨くんのこと好きよ。なんか二人を見てると昔を思い出すわ」
閉店後、一緒に店の外の花を片付け終えた百合が入口で、二人で協力して店内清掃をする亨と雛森さんを眺めそう呟いた。
「葵ちゃんは誰かいないの?お母さんとしては好きな人の、ひとりくらいはいて欲しいところだけど」
好きな人のひとり.......と聞いて無意識に亨を目で追う。その事に気がついた葵はすぐ様逸らしては目を伏せた。
「さあ.......僕はそういうのには.......」
「そう?それは残念ね」
葵の返答を聞いて、寂しそうに眉を八の字に曲げて腰に両手を添えて二人を眺め続けていた。
「母さんは.......なんであんな酷い父さんと結婚したの」
単純に思いついた素朴な疑問を投げかける。
滅多にこの手の話はしてこなかった。
百合にとっては苦い過去の一部であると察していたし、何より自身が避けていた。
聞きたくない、母親と僕を捨てた父親の話しを。
「そうね、私が一方的にあの人のことが好きだったからよ」
前方の二人を眺めながら遠い目をして、話し始める百合の隣で、葵は黙って聞いていた。百合と父親の話を全部知っているわけではないが、父が別の人の元へ行くために自分たちのことをしてたのは知っている。父はいなくなる数ヵ月前から家に帰らなくなっていたし、5歳の記憶ながら母親に「葵ちゃん、ごめんね。パパ忙しくて…」と何度も悲しい顔で謝られた記憶が根強くあるからだった。そんな母親に悲しい思いをさせた父を許そうなんて思ったことはない。
だから、いい加減な気持ちで本気で好意を寄せている相手と付き合う亨のことも許せなかった。
「葵ちゃんにはちゃんと話してなかったけど、貴方のパパ。本当は好きな人がいたの。ほんとずっと前の話よ、私たちが学生の頃のね。私が介入できないほどその人とパパはお互い惹かれ合ってたのよ。だけど、大学生にあがったある日突然、彼女が留学して彼の前からいなくなってね、憔悴しきっていた彼を慰め続けたのが私なの」
百合はひとつひとつ思い出すように話し出した。
百合は父のことが好きだったから、何度も何度も父に歩み寄って献身的に支えてきたことにより次第に父も心を開いていった。そして、在学中に葵を身ごもり、そのまま結婚したのだと…。葵が生まれて四年経った頃、父の想い人が戻ってきて余命宣告された病気だと告げられた父は、百合と葵を放ってその人に会いに行くようになったこと。
「でもね、後悔してないのよ。こんなに可愛くて頼もしい息子がいるんだもの。あの人と別れた当初は恨みつらみで葵ちゃんに嫌な父親だって捏造して刷り込んでだけど。あの人も葵ちゃんを愛してなかったわけじゃないのよ?だだ彼は優しいだけだったの」
「そんなの結果的に僕たちを捨てたのと一緒だよ」
「そうね、でも人を恨み続けるって労力のいることなのよ。どうにもならないこと考えてるくらいならこうやって綺麗な花に囲まれて、葵ちゃんと一緒にいる方が幸せじゃない?過去のことは過去の事として、よくも悪くても思い出として胸に仕舞っておくのが一番よ。ほら、あなたの好きなシクラメンだって、枯れてもまた次の季節に向けて花を芽吹かせるじゃない?」
百合の芯の強さに心打たれながらも、いつまでも過去に縛られているのは自分の方ではないかとさえ思えた。高校生の時の彼はいい加減な付き合い方をしていたかもしれないけど、今はどうだろうか。
今の彼なら信じても……。
自然と足が亨に向かって一歩を踏み出したところで隣の百合が「そろそろ、あの子たち帰してあげなきゃね」と呟いては、先に行かれてしまった。
当然指導係は彼の知り合いということもあってか、亨に任せることになった。
彼女も熱心に仕事を覚えているので、今年のお盆も何とか乗り切れそうだった。
重いバケツを運ぶ時も、小さい体なのに率先してやるものだから危なっかしさはあるけど、亨もそれに気付いて彼女が大変そうだったら直ぐに手伝ってあげていた。図々しい性格でもなく、古き良き大和撫子のような彼女と優しい亨は、傍から見たらお似合いのカップルのように見える。
趣味も同じだからか、時折葵の知らない映画の話をしていたり、僕といる時よりも亨の柔らかい笑顔を見る事が多くなった気がする。
亨が僕から意識が逸れてくれたのは喜ばしいことなのに.......凄く気持ちが晴れないのを敢えて見ないフリをしてやり過ごしていた。
学校が夏休み期間に入り、本格的な繁忙期を迎えた。今日も仏花を買い求めてくるお客さんが殆どで、中には知人の四十九日なので百合と菊中心のアレンジメントを組んで届けたりした。
「若いっていいわねー。小春ちゃん、絶対亨くんのこと好きよ。なんか二人を見てると昔を思い出すわ」
閉店後、一緒に店の外の花を片付け終えた百合が入口で、二人で協力して店内清掃をする亨と雛森さんを眺めそう呟いた。
「葵ちゃんは誰かいないの?お母さんとしては好きな人の、ひとりくらいはいて欲しいところだけど」
好きな人のひとり.......と聞いて無意識に亨を目で追う。その事に気がついた葵はすぐ様逸らしては目を伏せた。
「さあ.......僕はそういうのには.......」
「そう?それは残念ね」
葵の返答を聞いて、寂しそうに眉を八の字に曲げて腰に両手を添えて二人を眺め続けていた。
「母さんは.......なんであんな酷い父さんと結婚したの」
単純に思いついた素朴な疑問を投げかける。
滅多にこの手の話はしてこなかった。
百合にとっては苦い過去の一部であると察していたし、何より自身が避けていた。
聞きたくない、母親と僕を捨てた父親の話しを。
「そうね、私が一方的にあの人のことが好きだったからよ」
前方の二人を眺めながら遠い目をして、話し始める百合の隣で、葵は黙って聞いていた。百合と父親の話を全部知っているわけではないが、父が別の人の元へ行くために自分たちのことをしてたのは知っている。父はいなくなる数ヵ月前から家に帰らなくなっていたし、5歳の記憶ながら母親に「葵ちゃん、ごめんね。パパ忙しくて…」と何度も悲しい顔で謝られた記憶が根強くあるからだった。そんな母親に悲しい思いをさせた父を許そうなんて思ったことはない。
だから、いい加減な気持ちで本気で好意を寄せている相手と付き合う亨のことも許せなかった。
「葵ちゃんにはちゃんと話してなかったけど、貴方のパパ。本当は好きな人がいたの。ほんとずっと前の話よ、私たちが学生の頃のね。私が介入できないほどその人とパパはお互い惹かれ合ってたのよ。だけど、大学生にあがったある日突然、彼女が留学して彼の前からいなくなってね、憔悴しきっていた彼を慰め続けたのが私なの」
百合はひとつひとつ思い出すように話し出した。
百合は父のことが好きだったから、何度も何度も父に歩み寄って献身的に支えてきたことにより次第に父も心を開いていった。そして、在学中に葵を身ごもり、そのまま結婚したのだと…。葵が生まれて四年経った頃、父の想い人が戻ってきて余命宣告された病気だと告げられた父は、百合と葵を放ってその人に会いに行くようになったこと。
「でもね、後悔してないのよ。こんなに可愛くて頼もしい息子がいるんだもの。あの人と別れた当初は恨みつらみで葵ちゃんに嫌な父親だって捏造して刷り込んでだけど。あの人も葵ちゃんを愛してなかったわけじゃないのよ?だだ彼は優しいだけだったの」
「そんなの結果的に僕たちを捨てたのと一緒だよ」
「そうね、でも人を恨み続けるって労力のいることなのよ。どうにもならないこと考えてるくらいならこうやって綺麗な花に囲まれて、葵ちゃんと一緒にいる方が幸せじゃない?過去のことは過去の事として、よくも悪くても思い出として胸に仕舞っておくのが一番よ。ほら、あなたの好きなシクラメンだって、枯れてもまた次の季節に向けて花を芽吹かせるじゃない?」
百合の芯の強さに心打たれながらも、いつまでも過去に縛られているのは自分の方ではないかとさえ思えた。高校生の時の彼はいい加減な付き合い方をしていたかもしれないけど、今はどうだろうか。
今の彼なら信じても……。
自然と足が亨に向かって一歩を踏み出したところで隣の百合が「そろそろ、あの子たち帰してあげなきゃね」と呟いては、先に行かれてしまった。
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