66 / 92
第66話 Uberライガでござる その③
しおりを挟む
『黒樹の主』 カカオトレント・ドローム
植物系モンスター。いわゆるトレントと言われる種類のモンスターだ。
上からは枝。 下からは根。 不規則な軌道の攻撃が飛んでくる。
俺は、それらの攻撃を弾いて、前に─── 前に───
急ぐ理由には、コイツの特徴的な攻撃にある。 だが、残念ながら間に合わなかったようだ。
枝の上。 葉に紛れて隠されている小さな花。
そこからばら撒かれる黒い粉……花粉攻撃だ。
「ちっ! 見ているだけで、鼻と目から液体が出そうに……へっ! へっくしゅん!!!」
状態異常を引き出す攻撃は俺には無効だ。 しかし、花粉は別だ。
花粉症は、体を守るための免疫反応が過剰に起きてしまう症状だ。
『うわぁ、見てるだけで花粉症が発症しそう……』
『見てるだけで苦しくなる』
視聴者たちも花粉症は悩みのようだ。 ここは早く討伐しないと同時視聴者数が減少してしまうかもしれない!
けど───「へっ……クシュン!」
「くぅ~ 目が痒い。鼻がかゆい! 何よりクシャミが止まらねぇ! だったら、切り札を使わせてもらうぜ!」
切り札───普段の配信では封印している攻撃方法。
すなわち、攻撃魔法の解禁だ!
『黒樹の主』は、俺が涙で視力が下がっているのが分かっているのだろう。 ここぞとばかりに攻撃を開始してくる。
枝と根の上下攻撃だけではない。 種も弾丸のように発射してくる。
まるでマシンガンの速射力と貫通力───だが、俺は回避しながら詠唱を始める。
『この身は火種 この声が火薬 戦場に立てば 一瞬で火薬』
『灰になるまで魂に音を刻む 燃えろよ ! 俺の魔力!』
『炎獄崩壊《エクスプロージョン》』
俺の腕から放たれた業火。 それは通常の威力ではない。
「周囲にばら撒かれた花粉が仇になるぜ。粉塵爆破ってやつだな」
大盤振る舞いで降りかけている花粉に俺の攻撃魔法───炎が花粉に引火して─── その威力は、音と光を掻き消した。
音と光が消えて、どのくらいの時間が経過したのだろうか?
「あー アー 耳が、ないなった鼓膜が戻って来た。視力も……うん、問題ないな」
『やり過ぎだよ! PC壊れたかと思ったわ!』
『鼓膜ないなった!』
『鼓膜をコンビニで買って来る!』
コメント欄では、クレームが流れて来る。 ま、まぁ、有名なゲーム監督も絶賛ばかりの作品よりも賛否がある方が良いって言ってるからなぁ……これで良し!
「さて、これで『黒樹の主』も倒せ───いや、まだいる!」
周辺に巻き上がっている土煙。 それが消えるよりも早く、弾丸が撃ち込まれてきた。
「種! やはり、まだ生きてるぞ!」
俺は撃たれた種を弾いて防御した。 やがて、土煙が晴れると───
「なるほど、根から大量の水分を吸収したのと、表面を天然の脂肪で燃えづらくしたのか。木のくせに頭が良いな」
再び、俺の目前に出現した『黒樹の主』は葉が焼け落ち、枝も一部が炭化している。
それでも、水分で全体的に膨らんでいて、表面は脂肪でテカテカ光っている。
「まぁ、それでも限界みたいだな……いや、植物系の再生能力で回復しているのか?」
徐々に、焼け落ちた部分が再生している。
う~ん、厄介なモンスターだ。
長期戦は面倒。もう、すぐにでも討伐しようか……いや、ダメだ。
「この状態で倒しても、目的の食材が手に入らないかもしれない」
ぶっちゃけ、今回の目的は、コイツの種だ。 種を弾丸のように撃ち出しているが……
「うん、逃げ回って、逃げ回って、逃げ回って───」
迫り来る連続攻撃を避けて、回復時間を稼ぐ。
「うん、俺自身ではなく、敵の回復時間を稼ぐのは変な気分だぜ。けど───そろそろ十分かな?」
俺は足を止めた。 そろそろインファイトで打ち合っても良い頃合いだろ?
着火と防ぐために水分を急激に蓄えたためだろう。 動きが酷く鈍く感じる。
接近戦に持ち込むのは容易だった。
「それじゃ……これで終わりだぜ!」
最後のあがき……『黒樹の主』は攻撃を繰り出してきたが……もう力は残っていないみたいだ。
拳撃を連続で打ち込む。 枝も、根も、幹も、全てが砕けていく音。
そして『黒樹の主』は消滅していた。
「討伐成功! それじゃ、目的の食材は───あったぞ!」
俺は地面に転がった食材を拾い上げた。
ラグビーボールのような形状。 堅い実……カカオポット。
要するに、コイツから手に入る食材の正体は、カカオの実。 チョコレートの材料だ。
「まぁ、名前がカカオトレント・ドロームだからな。手に入る食材もカカオ───やっぱり、ネタばれが過ぎるかな?」
植物系モンスター。いわゆるトレントと言われる種類のモンスターだ。
上からは枝。 下からは根。 不規則な軌道の攻撃が飛んでくる。
俺は、それらの攻撃を弾いて、前に─── 前に───
急ぐ理由には、コイツの特徴的な攻撃にある。 だが、残念ながら間に合わなかったようだ。
枝の上。 葉に紛れて隠されている小さな花。
そこからばら撒かれる黒い粉……花粉攻撃だ。
「ちっ! 見ているだけで、鼻と目から液体が出そうに……へっ! へっくしゅん!!!」
状態異常を引き出す攻撃は俺には無効だ。 しかし、花粉は別だ。
花粉症は、体を守るための免疫反応が過剰に起きてしまう症状だ。
『うわぁ、見てるだけで花粉症が発症しそう……』
『見てるだけで苦しくなる』
視聴者たちも花粉症は悩みのようだ。 ここは早く討伐しないと同時視聴者数が減少してしまうかもしれない!
けど───「へっ……クシュン!」
「くぅ~ 目が痒い。鼻がかゆい! 何よりクシャミが止まらねぇ! だったら、切り札を使わせてもらうぜ!」
切り札───普段の配信では封印している攻撃方法。
すなわち、攻撃魔法の解禁だ!
『黒樹の主』は、俺が涙で視力が下がっているのが分かっているのだろう。 ここぞとばかりに攻撃を開始してくる。
枝と根の上下攻撃だけではない。 種も弾丸のように発射してくる。
まるでマシンガンの速射力と貫通力───だが、俺は回避しながら詠唱を始める。
『この身は火種 この声が火薬 戦場に立てば 一瞬で火薬』
『灰になるまで魂に音を刻む 燃えろよ ! 俺の魔力!』
『炎獄崩壊《エクスプロージョン》』
俺の腕から放たれた業火。 それは通常の威力ではない。
「周囲にばら撒かれた花粉が仇になるぜ。粉塵爆破ってやつだな」
大盤振る舞いで降りかけている花粉に俺の攻撃魔法───炎が花粉に引火して─── その威力は、音と光を掻き消した。
音と光が消えて、どのくらいの時間が経過したのだろうか?
「あー アー 耳が、ないなった鼓膜が戻って来た。視力も……うん、問題ないな」
『やり過ぎだよ! PC壊れたかと思ったわ!』
『鼓膜ないなった!』
『鼓膜をコンビニで買って来る!』
コメント欄では、クレームが流れて来る。 ま、まぁ、有名なゲーム監督も絶賛ばかりの作品よりも賛否がある方が良いって言ってるからなぁ……これで良し!
「さて、これで『黒樹の主』も倒せ───いや、まだいる!」
周辺に巻き上がっている土煙。 それが消えるよりも早く、弾丸が撃ち込まれてきた。
「種! やはり、まだ生きてるぞ!」
俺は撃たれた種を弾いて防御した。 やがて、土煙が晴れると───
「なるほど、根から大量の水分を吸収したのと、表面を天然の脂肪で燃えづらくしたのか。木のくせに頭が良いな」
再び、俺の目前に出現した『黒樹の主』は葉が焼け落ち、枝も一部が炭化している。
それでも、水分で全体的に膨らんでいて、表面は脂肪でテカテカ光っている。
「まぁ、それでも限界みたいだな……いや、植物系の再生能力で回復しているのか?」
徐々に、焼け落ちた部分が再生している。
う~ん、厄介なモンスターだ。
長期戦は面倒。もう、すぐにでも討伐しようか……いや、ダメだ。
「この状態で倒しても、目的の食材が手に入らないかもしれない」
ぶっちゃけ、今回の目的は、コイツの種だ。 種を弾丸のように撃ち出しているが……
「うん、逃げ回って、逃げ回って、逃げ回って───」
迫り来る連続攻撃を避けて、回復時間を稼ぐ。
「うん、俺自身ではなく、敵の回復時間を稼ぐのは変な気分だぜ。けど───そろそろ十分かな?」
俺は足を止めた。 そろそろインファイトで打ち合っても良い頃合いだろ?
着火と防ぐために水分を急激に蓄えたためだろう。 動きが酷く鈍く感じる。
接近戦に持ち込むのは容易だった。
「それじゃ……これで終わりだぜ!」
最後のあがき……『黒樹の主』は攻撃を繰り出してきたが……もう力は残っていないみたいだ。
拳撃を連続で打ち込む。 枝も、根も、幹も、全てが砕けていく音。
そして『黒樹の主』は消滅していた。
「討伐成功! それじゃ、目的の食材は───あったぞ!」
俺は地面に転がった食材を拾い上げた。
ラグビーボールのような形状。 堅い実……カカオポット。
要するに、コイツから手に入る食材の正体は、カカオの実。 チョコレートの材料だ。
「まぁ、名前がカカオトレント・ドロームだからな。手に入る食材もカカオ───やっぱり、ネタばれが過ぎるかな?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる