俺と私の公爵令嬢生活

桜木弥生

文字の大きさ
4 / 61

3話 俺と私のイメチェン大作戦①

しおりを挟む
「お嬢様!!またそのままのお洋服でお休みになられたのですね!?」

 ハイ。朝から怒られてるのは俺です。アンリエッタです。

 昨日の件があってそのままベッドにダイブしてしまった為、服もそのまま寝ました。
 そんな感じで俺を起こしに来たメイド長、セイラにめっちゃ叱られてます。

「ご自分で『もう17歳なのだから、普段の着替えくらいは一人でできます』と仰ったのはお嬢様自身ですよ!?」
「ご…ごめんなさいね…セイラ…あの後も少し眩暈があったのでそのまま休んでしまったの…」

 昨日の事を言い訳にすると、セイラの隣でセイラの怒りが静まるまで待機していたユーリンがカッと目を見開いた。

「だから大丈夫ですか?と申し上げましたのに!!!」

 いやん。寝た子起こしちゃった。

「ごめんなさい…心配を「心配を掛けたくなかったのは存じております!!ですが、私達もお嬢様が無理をされる方が辛いんですよ!?」

 俺の言葉をユーリンが遮ると、セイラがそっと俺の額に手を置いた。

「熱はないようですね…ですが、無理は禁物ですよ。本日のご予定は、午前中にダンス。
 午後は外国語とテーブルマナーの先生がいらっしゃる予定でしたが、念の為、今日は全てキャンセル致します」
「ありがとう。ごめんなさいね」
「だからと言って、遊びに行ったりはダメですからね。あと私達はアンリエッタ様の側使えです。お謝りにならないでくださいまし」

 厳しくも優しいセイラは今年で33歳になる。
 漆黒の髪を綺麗に撫で付けて後ろで纏めており、瞳も髪と同じく黒色。
 前のメイド長の娘で、15の頃から当家に仕えてくれている頼もしい存在だ。

 メイド長なので他の仕事もあるはずなのに、小さい頃から面倒を見て貰っていたせいか、何かとアンリエッタの世話を焼いてくれている。

 セイラ本人には恥ずかしくて言えないが、第二の母と思うくらい慕っていたりもする。

 そして、俺がお兄様に…と言うか男に転生していたなら、絶対嫁にしたいくらいの女性だ。


 さて。思いもかけずに今日はお休みになったわけだが。

 俺の記憶が確かなら、ゲーム内のサラとアンリエッタが出会うのは今日だったはず。

 午後のテーブルマナーの先生が来る直前に屋敷を抜け出して街に一人で散策に行ったアンリエッタが人攫いに会う。
 そしてそこでサラに出会い、サラに手を引かれて人攫いから逃げ出す。

 …はずなんだけど、まずテーブルマナーの授業無くなったし?
 出かけんなって言われたし?
 コレ、すでにフラグ折れたんじゃね?
 一人で散策にさえ出なければ人攫いにも会わないだろうし。

 よし!神は俺に味方した!!

「そういえば、今日はアラン様もお勤めがお休みだそうですよ」

 セイラが俺の着替えを出しながら言うと、ユーリンが備え付けの小部屋からバスタオルを腕に掛けた状態で出てくる。

「お湯の準備が整っております。
 朝食もございますし、さっと汗だけ流されては如何ですか?」
「ありがとう。そうするわね」

 流石に公爵令嬢が汗臭いのはいろんな意味でマズイ。
 それじゃなくても昨日倒れて冷や汗とかかいたのにそのまま寝てしまったから、湯浴みなんてしていない。
 準備をしてくれたユーリンにお礼を言って、ユーリンの出てきた小部屋に向かう。


 俺の部屋は廊下から入って正面が大きな窓。
 左側に天蓋付きの大きなベッドがあり、その奥に服を仕舞っているクローゼットがある。
 クローゼットと言っても、流石金持ちというか…クローゼットだけで20畳はありそうな広いスペースだ。
 まぁ部屋はもっと広いんだけど。

 そのクローゼットのドアの隣にもう一つドアがあり、そこを開けるとさっきのユーリンが出てきた小部屋になる。
 8畳くらいの小部屋に入ると、足元は平らな石を並べて出来た石床に、小さな猫足付きのユニットバスが置いてあり、そこで簡単な湯浴みができるようになっている。

 もちろんシャワーなんかは無いし、風呂釜なんていうのもないから入るにはお湯を大量に沸かして浴槽に入れなくてはいけない。
 この浴室はアンリエッタ専用で浴槽が小さいから湯量も少なくてすむからまだマシな方だけど、大浴場はかなりな湯量を使うから金持ちは『風呂番』という風呂だけの為の仕事をする人を雇ったりする。

 そんな『お湯を入れる』という大変な作業だが、ここはアンリエッタの私室。
 もちろん、風呂番を部屋に入れるわけにはいかず、この部屋の浴室を使うとなると、ユーリン率いるアンリエッタ専属メイド部隊がやらなくてはいけないわけで…
 記憶が戻った(元)男としては、か弱い女性達にそんな力仕事をさせたのが申し訳なくなってくる…今度から、みんなの手を煩わせないよう大浴場に入る事にしよう…
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。

星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。 引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。 見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。 つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。 ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。 しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。 その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…? 果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!? ※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com
恋愛
 完結しました。 説明しよう。私ことアリアーティア・ローランスは超絶ど近眼の悪役令嬢である……。  気が付いたらファンタジー系ライトノベル≪君の瞳に恋したボク≫の悪役令嬢に転生していたアリアーティア。  原作悪役令嬢には、超絶ど近眼なのにそれを隠して奮闘していたがあらゆることが裏目に出てしまい最後はお約束のように酷い断罪をされる結末が待っていた。  えぇぇぇっ?!それって私の未来なの?!  腹黒最低王子の婚約者になるのも、訳ありヒロインをいじめた罪で死刑になるのも、絶体に嫌だ!  私の視力と明るい未来を守るため、瓶底眼鏡を離さないんだから!  眼鏡は顔の一部です! ※この話は短編≪ど近眼悪役令嬢に転生したので意地でも眼鏡を離さない!≫の連載版です。 基本のストーリーはそのままですが、後半が他サイトに掲載しているのとは少し違うバージョンになりますのでタイトルも変えてあります。 途中まで恋愛タグは迷子です。

処理中です...