俺と私の公爵令嬢生活

桜木弥生

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38話 俺と私の秘密の花園②

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「そうそう。今日は用があって参りました」

 いつもは用がないのに来てたと、目の前の王太子は自分から言いやがった。
 用がないなら来んな!贈り物だって国庫から出てるんだからタダじゃないんだぞ!国民の税金なんだからな!

 って、言えたら楽なのになー…なんて、思いながらも「まぁ、そうなんですの?」と微笑む。令嬢スマイルは身体に染み付いているから、思考が明後日の方に飛んでいても簡単に出来る。

「うちの母達からこれと、これを貴女に、と」

 最初の「これ」で王家の赤い印璽が押された真っ白な封筒を渡され、二つ目の「これ」で、キース王子の後ろに従っていた騎士の一人が持っていた箱を手で示された。
 とりあえず手渡された手紙を受け取る。
 真っ白だと思っていたそれは、うっすらと菖蒲と薔薇と撫子とチューリップの花の模様が入っていた。

「もし差し支えなければ、すぐ読んで頂けますか?そちらの方が説明しやすいですから」
「今、ここで…ですの?」

 現在俺達がいるのはエントランス。
 キース王子が来たからエントランスでお出迎えしてたから。
 だから…さっきの壁ドンもエントランス…玄関でされたとか…
 そしてふと、さっき壁ドンされた時にキース王子が持ってたはずの花束ってどうしただろう?と思って周りを見たら、別の王子の護衛騎士がさり気無く持ってた。

「あぁ。とりあえず移動しましょうか。アンリの部屋でもいいですよ」
「応接間にお茶の準備をさせて頂いておりますわ」
「もう婚約した間柄なんですから、将来妻になる人の部屋も見てみたいと思う男心を叶えてはくれませんか?」
「まぁ。まだ婚約式は挙げていませんもの。いくら殿下のお願いでも、男性を部屋にお入れするなんてできませんわ」

 爽やかに微笑みながら俺の部屋を指定するキース王子に、笑顔で答えてやる。
 この王子、実は真面目そうに見えて一番婚約したらマズい相手だったんじゃ…
 ちょっと貞操の危機―!?


◆◆◆◆◆


 キース王子にエスコートされて応接間に入ると、すでにお茶と茶菓子の準備は出来ていて、部屋に芳しい紅茶の香りが漂っている。
 結局部屋に入る事を諦めたキース王子に、ちょっとの距離でもエスコートをと言われて、自分の家なのにも拘らずキース王子の腕に手を乗せて移動している。

 なんかやたらと触れ合いたがるこの王子に、俺はHPが序所に削られている気分だ…一歩、歩くたびに毒でHP削られる、前世でのゲームみたいな感覚…

 俺を来客用の三人くらい座れるソファに座らせると、当たり前のように隣に座ってくるキース王子。
 もうやだこのひと…座ってもぺったりくっついてきやがる…

「で…では拝見させて頂きますわ…」

 手を取ろうとしてくるキース王子から自分の手を救出し、後ろに控えていたセイラにペーパーナイフを持ってくるように頼んだ。








――――――
今回はかなり短めです。申し訳ありません。
近況ボードに謝罪を載せさせて頂いております。また、次回の投稿日は未定となります。申し訳ありません。
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