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43話 俺と私の秘密の花園⑦
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うーん。これ、まだ続くんかな…
王妃様方に座ることを許可されて、新しく用意された椅子に座らせられたキース王子。
俺の事を忘れたかのように、アイリス様とミランダ様と、戻ってきたリサ様はキース王子に『女性に贈る物』のレクチャーをしている。
キース王子が来た時に淹れて貰った紅茶はすでに冷めてるから、かなり時間は経っている。
そして、残りの少ないカップを口元に近付けながらチラリとアイリス様とミランダ様の間にいる人物を見た。
休憩が終わっても戻って来ないキース王子を迎えに来たその人は、王妃様方に「丁度良いわ。貴方もお座りなさいな」と有無を言わさずに座らせられた。
拝見した数は少なくて、そのどれも威厳のある姿だったけど、現在は妻三人に囲まれて肩を窄めて小さくなっている。
ブロムリア王国国王、グリディスタ・エンディライト・ブロムリア。
濃茶の髪を後ろで一つに纏め、普段は気難しい印象を受ける切れ長の碧い眼は、緑と青の間の何とも言えない綺麗な色をしている。
普段なら。だけど。
今は、両側にいるアイリス様とミランダ様に「旦那様は贈り物をしようと思って下さるのは良いけれど、女性に剣を贈ったり、鎧飾りを送るのはどうかしらね」等とチクチクと虐められ、小さく「…ハイ…ハイ…スミマセン…」と繰り返している。
リサ様はそれを見ながら頷いて、時折二人と同じようにグリディスタ王と、リサ様の隣に座るキース王子を責めている。…それはもう嬉しそうに。
そして俺は、現在、危機に瀕している…
テーブルの下で膝を擦り合わせ、その衝動を抑えるも、そろそろ限界かもしれない。
トイレに行きたい!!
すぐ話も終わるだろうと、終わったら席を立たせて貰おうと思ってたけど、全然終わる素振りを見せないし、これ、話遮って行ってくるか…
「あ…あのぅ…」
小さく発した俺の声にすぐに気付いてくれたリサ様は、察してくれたらしく微笑みながら頷いた。
「どうぞ、行っていらしてくださいな。ここからなら城の中よりも、あそこに見える離れの方が近いですわ。侍女に案内させますわね」
「いえ。場所さえ教えて頂けましたら一人で大丈夫ですわ」
嬉しい言葉だけど、人数が増えた茶会…しかも国王と次期王の二人だから、メイド達もかなり大変そうだし、現在二人いるメイドの一人を連れて行ったら一人になっちまうからそれは申し訳ない。
ゆっくりと椅子を立つとキース王子が「どちらへ?」と声を掛けてきた。
うん。この場から逃げたいんだろうけど、椅子から腰を浮かせた途端、リサ様に両肩を押さえつけられた。
「キース?令嬢の行動に対して、聞いて良い事と悪い事がある事は知っていますわよね?」
幻覚かな?…満面の笑顔のリサ様の頭に角が見える…
大人しく座らせられたキース王子は意味を理解したのか小さく「ハイ」と答えて、その後に続くリサ様からの説教に備えるように縮こまった。
うん。グリディスタ王とキース王子は完全な親子だね。二人とも同じ体勢になっている。
「では、少し失礼致します」
腹に負担を掛けないよう気をつけながら軽く膝を曲げて礼を取り、薔薇の咲き誇る庭園の中に進んだ。
よし。暫く進んだし、後ろ見てももう見えない。
目の前の離れというより離宮と言った方が良いくらい、こじんまりとはしているけど豪華な建物に向ってダッシュした。
もれるーーー!!!
王妃様方に座ることを許可されて、新しく用意された椅子に座らせられたキース王子。
俺の事を忘れたかのように、アイリス様とミランダ様と、戻ってきたリサ様はキース王子に『女性に贈る物』のレクチャーをしている。
キース王子が来た時に淹れて貰った紅茶はすでに冷めてるから、かなり時間は経っている。
そして、残りの少ないカップを口元に近付けながらチラリとアイリス様とミランダ様の間にいる人物を見た。
休憩が終わっても戻って来ないキース王子を迎えに来たその人は、王妃様方に「丁度良いわ。貴方もお座りなさいな」と有無を言わさずに座らせられた。
拝見した数は少なくて、そのどれも威厳のある姿だったけど、現在は妻三人に囲まれて肩を窄めて小さくなっている。
ブロムリア王国国王、グリディスタ・エンディライト・ブロムリア。
濃茶の髪を後ろで一つに纏め、普段は気難しい印象を受ける切れ長の碧い眼は、緑と青の間の何とも言えない綺麗な色をしている。
普段なら。だけど。
今は、両側にいるアイリス様とミランダ様に「旦那様は贈り物をしようと思って下さるのは良いけれど、女性に剣を贈ったり、鎧飾りを送るのはどうかしらね」等とチクチクと虐められ、小さく「…ハイ…ハイ…スミマセン…」と繰り返している。
リサ様はそれを見ながら頷いて、時折二人と同じようにグリディスタ王と、リサ様の隣に座るキース王子を責めている。…それはもう嬉しそうに。
そして俺は、現在、危機に瀕している…
テーブルの下で膝を擦り合わせ、その衝動を抑えるも、そろそろ限界かもしれない。
トイレに行きたい!!
すぐ話も終わるだろうと、終わったら席を立たせて貰おうと思ってたけど、全然終わる素振りを見せないし、これ、話遮って行ってくるか…
「あ…あのぅ…」
小さく発した俺の声にすぐに気付いてくれたリサ様は、察してくれたらしく微笑みながら頷いた。
「どうぞ、行っていらしてくださいな。ここからなら城の中よりも、あそこに見える離れの方が近いですわ。侍女に案内させますわね」
「いえ。場所さえ教えて頂けましたら一人で大丈夫ですわ」
嬉しい言葉だけど、人数が増えた茶会…しかも国王と次期王の二人だから、メイド達もかなり大変そうだし、現在二人いるメイドの一人を連れて行ったら一人になっちまうからそれは申し訳ない。
ゆっくりと椅子を立つとキース王子が「どちらへ?」と声を掛けてきた。
うん。この場から逃げたいんだろうけど、椅子から腰を浮かせた途端、リサ様に両肩を押さえつけられた。
「キース?令嬢の行動に対して、聞いて良い事と悪い事がある事は知っていますわよね?」
幻覚かな?…満面の笑顔のリサ様の頭に角が見える…
大人しく座らせられたキース王子は意味を理解したのか小さく「ハイ」と答えて、その後に続くリサ様からの説教に備えるように縮こまった。
うん。グリディスタ王とキース王子は完全な親子だね。二人とも同じ体勢になっている。
「では、少し失礼致します」
腹に負担を掛けないよう気をつけながら軽く膝を曲げて礼を取り、薔薇の咲き誇る庭園の中に進んだ。
よし。暫く進んだし、後ろ見てももう見えない。
目の前の離れというより離宮と言った方が良いくらい、こじんまりとはしているけど豪華な建物に向ってダッシュした。
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