51 / 61
44話 俺と私の秘密の花園⑧
しおりを挟む
用を足してすっきりした。
なんとか、令嬢として…ってか、人としての一線を越えるのは免れた。
…かなりギリギリだったけど。
「まず、このドレスが悪いんだよなー…ごてごてして、スカートの中にも色々と穿かなきゃいけねーし…おかげでトイレ行くにも一人じゃ難しいし…」
そう。普通の令嬢ならドレスの中にパニエを何枚も重ねてるからメイド一人か二人に手伝って貰ってのトイレだ。
でも、元日本人の俺にしてみたら他人…しかも女の子にトイレの介助されるとか、絶対嫌だ。
だから一人でできるように訓練したから、なんとかできるようにはなったけど…それでも、正装だと一人じゃ無理だ。
今日は王妃様方との茶会だからコルセットも緩めにして貰ったから、そのお陰でなんとか一人でもトイレできる。
「さて。戻らねぇとな…」
離れを出て、来た方向を確認。確かあっちから来たはず。
って…来た方向から左の方向の大きな木の足元に何かある?
ちょこんと草むらから出たそれが気になって近付く。
そこにあったのは、普段は縛っている燃えるような赤毛を解いて肩に散し、同色の赤い瞳は閉じられて男にしては長い睫が影を落とした、ランディス王子だった。
「ランディス様?…」
腕を胸の前で組み、足を投げ出して木に寄りかかるようにして眠っている。
って、何で王子がこんなとこで寝てるんだよ。
思わず隣にしゃがんでランディス王子の寝顔を覗き込むと、閉ざされた睫が強く震え、ゆっくりと瞳が開かれた。
「…ん…?…」
焦点合ってないな。これ、寝ぼけてるやつだ。
「…ゆめ…かな…」
普段女性に見せている微笑とは違って、蕩ける様に微笑むランディス王子に胸が高鳴り、頬が熱くなる。うん。これは卑怯だ。
令嬢達が惚れるのが判ってしまうかもしれない。
とろんとした表情で俺の赤い頬に手を伸ばすと、頬、頭と順番に撫でられて引き寄せられた。
「ラっ…ランディス様!?」
ぎゅうぎゅうと強く抱きしめてくる力強い腕に成す統べなく取り込まれる。
ってか痛い!力入れすぎだボケ!!
兄様曰く『ランディスは寝起きが性質が悪いからなぁ』と以前苦笑しながら言ってた事があるけど、コレか!
ジタバタともがくけど二十歳過ぎた男の力には敵わない。
でもこのままも色々とマズいと思うんだ。一応俺、キース王子の婚約者だし。
ランディス王子は兄様と子供の頃からの付き合いだから、俺もそこそこ知っている。アンリも子供の頃は時々遊んで貰ってた。
前世で言うならば『幼馴染』という立場に当たるんじゃないだろうか。王子を幼馴染扱いするのは恐れ多いけど。
まぁ、だからと言ってこの状況を甘んじてちゃいけないよなー。
「ランディス様、起きてくださいませ」
ペシペシと抱き締めてくる二の腕を叩いて起こそうとするけど、全然離れてくれない。さっき高鳴った胸はもう落ち着いたし頬の熱さも無くなった。
つか、本当に寝起きの性質悪ぃなぁ…
せめてもの救いは、この場所がドレスが汚れ難い芝っぽい草を使ってる事か。
この草は前世ではないと思うから、多分ゲーム使用なんだろうな。
擦れても草の匂いも色も付かないし、その草の下にある土も付かないから普通に座っても大丈夫なやつだ。そしてふかふかで結構気持ちが良い。
まぁ、俺が今座ってるのはランディス王子の膝の上だけど。
さて。どうするかな…コレ…
なんとか、令嬢として…ってか、人としての一線を越えるのは免れた。
…かなりギリギリだったけど。
「まず、このドレスが悪いんだよなー…ごてごてして、スカートの中にも色々と穿かなきゃいけねーし…おかげでトイレ行くにも一人じゃ難しいし…」
そう。普通の令嬢ならドレスの中にパニエを何枚も重ねてるからメイド一人か二人に手伝って貰ってのトイレだ。
でも、元日本人の俺にしてみたら他人…しかも女の子にトイレの介助されるとか、絶対嫌だ。
だから一人でできるように訓練したから、なんとかできるようにはなったけど…それでも、正装だと一人じゃ無理だ。
今日は王妃様方との茶会だからコルセットも緩めにして貰ったから、そのお陰でなんとか一人でもトイレできる。
「さて。戻らねぇとな…」
離れを出て、来た方向を確認。確かあっちから来たはず。
って…来た方向から左の方向の大きな木の足元に何かある?
ちょこんと草むらから出たそれが気になって近付く。
そこにあったのは、普段は縛っている燃えるような赤毛を解いて肩に散し、同色の赤い瞳は閉じられて男にしては長い睫が影を落とした、ランディス王子だった。
「ランディス様?…」
腕を胸の前で組み、足を投げ出して木に寄りかかるようにして眠っている。
って、何で王子がこんなとこで寝てるんだよ。
思わず隣にしゃがんでランディス王子の寝顔を覗き込むと、閉ざされた睫が強く震え、ゆっくりと瞳が開かれた。
「…ん…?…」
焦点合ってないな。これ、寝ぼけてるやつだ。
「…ゆめ…かな…」
普段女性に見せている微笑とは違って、蕩ける様に微笑むランディス王子に胸が高鳴り、頬が熱くなる。うん。これは卑怯だ。
令嬢達が惚れるのが判ってしまうかもしれない。
とろんとした表情で俺の赤い頬に手を伸ばすと、頬、頭と順番に撫でられて引き寄せられた。
「ラっ…ランディス様!?」
ぎゅうぎゅうと強く抱きしめてくる力強い腕に成す統べなく取り込まれる。
ってか痛い!力入れすぎだボケ!!
兄様曰く『ランディスは寝起きが性質が悪いからなぁ』と以前苦笑しながら言ってた事があるけど、コレか!
ジタバタともがくけど二十歳過ぎた男の力には敵わない。
でもこのままも色々とマズいと思うんだ。一応俺、キース王子の婚約者だし。
ランディス王子は兄様と子供の頃からの付き合いだから、俺もそこそこ知っている。アンリも子供の頃は時々遊んで貰ってた。
前世で言うならば『幼馴染』という立場に当たるんじゃないだろうか。王子を幼馴染扱いするのは恐れ多いけど。
まぁ、だからと言ってこの状況を甘んじてちゃいけないよなー。
「ランディス様、起きてくださいませ」
ペシペシと抱き締めてくる二の腕を叩いて起こそうとするけど、全然離れてくれない。さっき高鳴った胸はもう落ち着いたし頬の熱さも無くなった。
つか、本当に寝起きの性質悪ぃなぁ…
せめてもの救いは、この場所がドレスが汚れ難い芝っぽい草を使ってる事か。
この草は前世ではないと思うから、多分ゲーム使用なんだろうな。
擦れても草の匂いも色も付かないし、その草の下にある土も付かないから普通に座っても大丈夫なやつだ。そしてふかふかで結構気持ちが良い。
まぁ、俺が今座ってるのはランディス王子の膝の上だけど。
さて。どうするかな…コレ…
0
あなたにおすすめの小説
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい
椰子ふみの
恋愛
ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。
ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!
そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。
ゲームの強制力?
何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
乙女ゲームに転生した悪役令嬢! 人気が無い公園で出歯亀する
ひなクラゲ
恋愛
私は気がついたら、乙女ゲームに転生していました
それも悪役令嬢に!!
ゲーム通りだとこの後、王子と婚約させられ、数年後には婚約破棄&追放が待っているわ
なんとかしないと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる