通りすがりの日常。

花房山

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君と僕の青い春

放課後ストラグル …女子高校生

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「んー、結構遅くなったなぁ…。」

所属しているバトミントン部のメニューが一通り終わり、
顧問との挨拶もそこそこに急いで戻った部室。
鞄から携帯を取り出し、時間を確認する。
16:15
今日は午前中に最後の期末テストを受け、久しぶりの部活だった。
だがどうもやる気は起きず、
代わりにただただ帰りたいという中身のない気持ちが湧き上がり、
いつもみたいな冗談は言わず、
大してキツくもないメニューへの愚痴も漏らさずに淡々とこなした。
だからか、いつもより早く終わった気がしていた。それなのに。

「いつもとおんなじ、ね…。」

何となく、気に食わなかった。

「いいや、帰ろ…、」

一人二人と部員が入ってくる中、
労りの声を掛ける気にもなれず、手早く着替えを済ませる。
気持ちとは裏腹に火照った身体のせいで着る気にもなれない
ブレザーを適当にたたみ、鞄に突っ込む。
鞄を手にガヤガヤと部員たちの声で賑わう部室から出ようと立ち上がり
扉へと向かうと、後ろから後輩たちの「お疲れ様でしたー!」という声が聞こえ、
顔の横でひらひらと手を振ることで応える。

体育館の下駄箱からローファーを取り出し、履く。
玄関のスライド式のドアをゆっくりと開ける。いつもより重い気がした。
外に出ると夕方にしては肌寒い空気が身体を包む。

「もうすぐ冬か。」

これはブレザーを着ていても良かったかもしれない。
だが、手元にある鞄の中から取り出すという少しの手間さえ酷く億劫に感じられ、
代わりに首に引っ掛けたままのネクタイを手に取りながら、足を校門へと進める。

空は薄いオレンジ色に染まり、薄暗くなっていく。
敷地内に植えられている木はまだ青々と茂っているものもあれば、
茶色く変色し淋しげに佇むものもある。
今年ももうすぐ終わる。
はたして濃かったのか薄かったのか、
自分のこれまでの一年をなんとなく振り返る。

そう考えてしまう時点で取り留めることもない日々だったんだなぁ、いや、でも、

そんなことを考えながら、周りに向けていた視線を正面に戻すと、
幾人かの生徒が同じく校門に向かって歩いていた。
午前終わりのため生徒は帰っているだろうし、
勉強のために残っているなんて殊勝な奴はこの学校にはいないだろう。
外部活はもっと遅い終わりの筈だ。
中部活は自分のところしか活動していなかったし、自分が一番に出てきた。
そんな偏った思考から誰だろうと、興味本位にその背中を注視した。
制服姿の男女と、青いTシャツに短パンの男子。
制服の方はたしか3年生の有名なカップルだ。
この間別れたと伝え聞いたが、また復縁したのか。
運動着姿だからあっちはまだ部活途中か。
考えとは他所に出来上がった手元を見る。
ふむ、中々にきれいな出来だ。
少し満足げな気分で顔を戻す。
すると青いTシャツの男子が校門の手前のグラウンドへと続く道で立ち止まって、
どこかを見つめている。
なんとなく気になって、その横顔をよく見ようとあまり良くない眼を凝らした。

ーーあぁ、あれは、

いつの間にか歩きはじめていた君の背中を呆然と見送る。
と。
唐突に振り返る。
目が、合う。
息が詰まる。
ぼやける視界の中、君だけが鮮明に浮かび上がるかのようで、目が逸らせない。
時が止まったかのような、
そんな空間は君がまたグラウンドに向けてあるき出した事で崩れた。
「、っは」
息を短く吐き、君を追う視線を強引に剥がし、足を校門へと再び進める。
緩やかに上昇していく心拍数。胸に何かが詰まったかのように息苦しい。

「なんだったの、ほんとに…。」

正直目が合ったかはわからない。自分を見ていたのかもわからない。
なんせ眼鏡がないと黒板の字がわからない程だ。
それに10秒にも満たないほんの少しの出来事。
それでも。
そっと後ろに目をやる。誰もいないアスファルトの空間。
耳の中で鼓動が大きく鳴る。

あぁ、なんて自分勝手な思考で、なんて浅ましいのだろう。


ーカップルを見ていたのって、私を思い出してくれていたからなのかな

「なーんてね。」

END
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