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第7話 縁尾向日葵
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「ほんっっっとうに久しぶりデスね! 三蔵!」
休み時間に僕と縁尾向日葵は廊下に出た。
伸ばしっぱなしの毛量の多い髪の毛にもう夏だと言うのに長袖を着て暑苦しい恰好。その上、名前の通りの満開の花のような笑顔で僕を出迎えてくれる。
「久しぶり……向日葵」
ダメだ。
僕は彼女の前ではできるだけ元気な声色で行かないと。少しでも後ろめたいと感じていることがバレると彼女も気にしてしまう。
せっかく彼女が前と変わらず接してくれているのに。
「元気だった?」
「元気デスヨ~! 最近はゲームにハマって引きこもりがちですけど、エヘヘ。三蔵はやってますか? 『スッパイつーん』!」
「ああ、イカがお酢を水鉄砲でかけあって、負けたら酢烏賊になって食べられちゃうゲームだっけ? 動画でよく見るけど、僕はやってないなぁ……」
「そうですか。面白いですよ! 是非やってください!」
「うん。そうだな。久しぶりに義経の家にでも、行こうかな」
そういうと向日葵はぱああっと顔を明るくした。
「是非! 是非! 私も『スッパイつーん』やりだしてから義経の家にまた遊びに行くようになったんデス~‼ 中学校になると義経は事故や仕事やらで忙しくなっちゃってあまり一緒に遊べませんでしたけド、最近は仕事が軌道に乗ったみたいで、ヒマとよく遊んでくれるようになったんデス~!」
嬉しそうに語り、興奮して息が上がるのに呼応して量の多い髪の毛が上下する。
「そっか……まだ、連載続けてるんだな……」
「凄いデスよ。義経は! 『リライト・ワールド』はもうすぐアニメ化するんじゃないかって噂されてますからね。やっぱり夢のために頑張ってるんですね……あ」
向日葵が失言をしたと口元を抑える。
夢……か。
「向日葵。配信者って何か見てる? 僕最近、動画配信者ハマっててさぁ。Vの者とか。昔はよくわからなかったんだけど見てみたら面白かったんだよねぇ~。向日葵は何が好き?」
夢。
その話題は僕も向日葵も避けたい話題だ。
だから、例え露骨でも話題を逸らした。
「あ、あ! ヒマはデスねぇ~!」
向日葵も僕の気持ちを察して話題逸らしに乗っかろうとした。
その時だった。
ベチャ……!
横から濡れた雑巾が飛んできて———向日葵の頭に当たった。
「向日葵……⁉」
「お~い、お花~! 後ろの棚汚れてっぞ~! 昨日の掃除当番お前だろ~!」
投げてきた奴は少し明るい髪色をしたヘアピンだらけの頭を持つギャルだった。
「荼毘……」
僕が睨みつけると荼毘はひらひらと手を振った。
僕と彼女は知り合いだ。
荼毘は中学一年の頃、同じ学校だった。
一緒のクラスではなかったものの、彼女が僕たちの学年での一番人気者。代表みたいな存在ではあった。
彼女と目が合うと一瞬怯んでしまう。彼女は言葉が強く、こちらの意見を聞いてくれない上にいつも強気でいる。そして気前が良く、人に奢ったり、頭もよく面白い企画を立てたりするため人望があり、そんな強く人望もある彼女を前にするとどうしても怯んでしまう。
三年も経っていると言うに……まだ。
「……ふう」
———ヨシッ!
だけど、もう彼女を恐れる必要はない。ずっと逃げていた三年前の僕とはもう違う。
こんないじめを見過ごすことはできない。
そう思って荼毘に詰め寄ろうとしたら、向日葵が僕の体を手で制した。
「……いいんデス。昨日、私の掃除が甘かっただけで、私が悪いんですから」
「向日葵、だけどこれはあんまりで」
「いいんデス!」
向日葵の声は実際は大声とは言えない。
雑巾を投げてきた、遠くにいる荼毘には聞き取れないほどの声量だ。だけど、その低いトーンとこちらからは見えない、向日葵が僕には見せたくない表情から、緊迫感が伝わってくる。
向日葵に気圧されて僕が何も言えずにいると彼女はこちらを向いて笑顔を見せた。
「いいんデスよ。荼毘さんもヒサメも私の友達デス。これも〝イジり〟って奴なんですよ」
「違う」
「違うくないデス。テレビのバラエティ番組と同じデスよ。仲いい友達には多少きつく当たってもいいんデス」
そう言った向日葵の額にはガーゼが張られていた。そして、顔をツイと逸らすと量の多い髪の毛に隠れてまた見えなくなった。
向日葵は荼毘の方へ走っていき、荼毘に小突かれて困り眉のまま口元は笑う。
その隣には氷雨が立って、何か言いたげにうつむいていた。
休み時間に僕と縁尾向日葵は廊下に出た。
伸ばしっぱなしの毛量の多い髪の毛にもう夏だと言うのに長袖を着て暑苦しい恰好。その上、名前の通りの満開の花のような笑顔で僕を出迎えてくれる。
「久しぶり……向日葵」
ダメだ。
僕は彼女の前ではできるだけ元気な声色で行かないと。少しでも後ろめたいと感じていることがバレると彼女も気にしてしまう。
せっかく彼女が前と変わらず接してくれているのに。
「元気だった?」
「元気デスヨ~! 最近はゲームにハマって引きこもりがちですけど、エヘヘ。三蔵はやってますか? 『スッパイつーん』!」
「ああ、イカがお酢を水鉄砲でかけあって、負けたら酢烏賊になって食べられちゃうゲームだっけ? 動画でよく見るけど、僕はやってないなぁ……」
「そうですか。面白いですよ! 是非やってください!」
「うん。そうだな。久しぶりに義経の家にでも、行こうかな」
そういうと向日葵はぱああっと顔を明るくした。
「是非! 是非! 私も『スッパイつーん』やりだしてから義経の家にまた遊びに行くようになったんデス~‼ 中学校になると義経は事故や仕事やらで忙しくなっちゃってあまり一緒に遊べませんでしたけド、最近は仕事が軌道に乗ったみたいで、ヒマとよく遊んでくれるようになったんデス~!」
嬉しそうに語り、興奮して息が上がるのに呼応して量の多い髪の毛が上下する。
「そっか……まだ、連載続けてるんだな……」
「凄いデスよ。義経は! 『リライト・ワールド』はもうすぐアニメ化するんじゃないかって噂されてますからね。やっぱり夢のために頑張ってるんですね……あ」
向日葵が失言をしたと口元を抑える。
夢……か。
「向日葵。配信者って何か見てる? 僕最近、動画配信者ハマっててさぁ。Vの者とか。昔はよくわからなかったんだけど見てみたら面白かったんだよねぇ~。向日葵は何が好き?」
夢。
その話題は僕も向日葵も避けたい話題だ。
だから、例え露骨でも話題を逸らした。
「あ、あ! ヒマはデスねぇ~!」
向日葵も僕の気持ちを察して話題逸らしに乗っかろうとした。
その時だった。
ベチャ……!
横から濡れた雑巾が飛んできて———向日葵の頭に当たった。
「向日葵……⁉」
「お~い、お花~! 後ろの棚汚れてっぞ~! 昨日の掃除当番お前だろ~!」
投げてきた奴は少し明るい髪色をしたヘアピンだらけの頭を持つギャルだった。
「荼毘……」
僕が睨みつけると荼毘はひらひらと手を振った。
僕と彼女は知り合いだ。
荼毘は中学一年の頃、同じ学校だった。
一緒のクラスではなかったものの、彼女が僕たちの学年での一番人気者。代表みたいな存在ではあった。
彼女と目が合うと一瞬怯んでしまう。彼女は言葉が強く、こちらの意見を聞いてくれない上にいつも強気でいる。そして気前が良く、人に奢ったり、頭もよく面白い企画を立てたりするため人望があり、そんな強く人望もある彼女を前にするとどうしても怯んでしまう。
三年も経っていると言うに……まだ。
「……ふう」
———ヨシッ!
だけど、もう彼女を恐れる必要はない。ずっと逃げていた三年前の僕とはもう違う。
こんないじめを見過ごすことはできない。
そう思って荼毘に詰め寄ろうとしたら、向日葵が僕の体を手で制した。
「……いいんデス。昨日、私の掃除が甘かっただけで、私が悪いんですから」
「向日葵、だけどこれはあんまりで」
「いいんデス!」
向日葵の声は実際は大声とは言えない。
雑巾を投げてきた、遠くにいる荼毘には聞き取れないほどの声量だ。だけど、その低いトーンとこちらからは見えない、向日葵が僕には見せたくない表情から、緊迫感が伝わってくる。
向日葵に気圧されて僕が何も言えずにいると彼女はこちらを向いて笑顔を見せた。
「いいんデスよ。荼毘さんもヒサメも私の友達デス。これも〝イジり〟って奴なんですよ」
「違う」
「違うくないデス。テレビのバラエティ番組と同じデスよ。仲いい友達には多少きつく当たってもいいんデス」
そう言った向日葵の額にはガーゼが張られていた。そして、顔をツイと逸らすと量の多い髪の毛に隠れてまた見えなくなった。
向日葵は荼毘の方へ走っていき、荼毘に小突かれて困り眉のまま口元は笑う。
その隣には氷雨が立って、何か言いたげにうつむいていた。
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